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2017年08月12日

[ヘイザンとシェイバーの『アダルト・アタッチメント尺度』:愛着形成の3タイプ]

ヘイザンとシェイバーの『アダルト・アタッチメント尺度』:愛着形成の3タイプ

精神科医・精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、人間の精神発達過程や人間関係の傾向を説明する『愛着理論(attachment theory)』を提唱した。愛着理論でいう『愛着(attachment)』とは、乳幼児期に特定の近しい他者に対して形成される『情緒的な深い結びつき』のことである。

愛着が形成された他者と一緒にいると『安心感・安全感・信頼感・自己肯定感』などをはじめとする『居心地の良さ』を感じることができる。児童期・思春期・青年期以降にも人は親友・恋人・配偶者など親密な相手に対して愛着を形成することが多く、そういった相手と一緒にいる時には安心して居心地が良くなり、反対に決定的に別れてしまうと(二度と会えないような関係破綻になると)苦痛や孤独、寂しさ、怒りに悩まされることになりやすい。対象喪失の悲哀感にも、愛着の破綻や喪失が関係している。

1980年代前半までの愛着研究は、主に乳幼児期の母子関係に関わるものであり、乳幼児期の愛着以外の愛着を心理学的に測定・評価する心理テストが開発されていなかった。その後、1985年にメインらが成人の愛着を測定するための『半構造化面接法(成人愛着面接法)』を開発して発達心理学の分野で使用され始めた。1987年には、ヘイザンシェイバーが、成人の愛着測定のための質問紙法の心理テストを開発している。

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2017年05月17日

[R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)の『愛のトライアングル理論』:親密さ・情熱・コミットメント+決心]

R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)の『愛のトライアングル理論』:親密さ・情熱・コミットメント+決心

R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)『愛のトライアングル理論』を提示して、人間の恋愛経験は三角形の頂点(角)のように『3つの要素』から構成されているとした。R.J.スタンバーグのいう恋愛経験の3要素とは、『親密さ(intimacy)』『情熱(passion)』『コミットメント・決心(commitment, decision)』の3つである。

親密さ(intimacy)……二人の間の緊密さ、密着性、居心地の良さ、結合度の強さであり、二人がそれらを相手に対して実感として感じているということである。親密さのあるカップルは、相互的な自己開示を行っていて、相手への好意・評価・賞賛の思いを抱いており、親密なコミュニケーションを繰り返す傾向が見られる。

情熱(passion)……恋愛関係のプロセスで生じる強い感情・情動であり、『相手と一緒にいたい・相手を自分のものだけにしたい・相手と素敵な時間を共有したい・相手と性的なスキンシップをしたい・相手とロマンティックな雰囲気を楽しみたい』などの欲求と合わさって感じられるものである。情熱を感じているカップルは、相手とのロマンティックな関係を求めて楽しみ、相手に対して性的魅力・身体的魅力を感じている傾向がある。自尊心や擁護、安心、親和、支配と服従などの感情・関係も関わってくる。

コミットメント・決心(commitment, decision)……短期的にはその相手のことを愛して大切にしようとする決意であり、長期的には愛のある相手との素晴らしい関係を頑張って維持していこうとするコミットメント(自己関与)のことである。

『親密さ(intimacy)』『情熱(passion)』『コミットメント・決心(commitment, decision)』の3つの要素のバランスが取れているほど理想的な恋愛関係と言えるが、どれか1つの要素だけが突出していて他の2つの要素がない関係は恋愛とは異なる別の関係性に移行しやすくなるとされる。2つの要素が結びつくと、それぞれ特徴的な恋愛関係が成り立つようにもなる。

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2017年04月09日

[アスペルガー障害のADHD的な不注意(注意散漫)と感情のセルフコントロールの弱さ]

アスペルガー障害のADHD的な不注意(注意散漫)と感情のセルフコントロールの弱さ

アスペルガー障害にはADHD(注意欠如・多動性障害)にも似た『不注意(注意散漫)・集中力の低さの特徴』が見られることがあり、一つの物事や対象に注意力を集中できないことが『実行・遂行機能の低さ』にもつながっている。遂行能力(実行能力)というのは、特定の課題に注意を集中して段取りをつけながら確実にやり遂げていく能力であるが、アスペルガー障害ではこの遂行能力が低くなりがちで、一つの仕事や課題を期日までにきちんとやり遂げることが一般にかなり苦手である。

アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴

ADHDの人との類似したアスペルガー障害の特徴として、『一つの物事に注意を集中できない・計画的に課題の遂行をすることができない・レポートや宿題などを忘れずに期日までに遂行できない・整理整頓や片付けをすることが非常に苦手である(部屋・机の上が乱雑に散らかりやすい)』といったことも上げることができるだろう。アスペルガー障害の人には、幼児期から児童期にかけてADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けたことのある人も含まれている。

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[アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴]

アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴

アスペルガー障害の人は、知能の発達水準・発達速度に対して運動神経系の発達が遅れがちであり、一般に不自然に見える機械的な動きをしたり、書いた文字が年齢不相応に汚かったり、ボール遊び・着替え・食事作法などが異常に苦手だったりと『動作のぎこちなさ・運動能力の低さ・言葉の発音の拙さ』が目立ちやすい。

アスペルガー障害の感覚過敏性とマルチタスクの苦手さ

総じて手先・動作が不器用な印象を与えることが多く、学校の科目でいえば体育・図工・家庭科・技術などの実技科目が苦手な傾向が強い。特にサッカーや野球、バスケットボールといった他者とのコミュニケーションやチームワークが必要な団体競技は苦手であることが殆どである。

アスペルガー障害の問題として、他者の意図や感情を推測できない『心の理論の障害』を前提にする『コミュニケーション障害』が上げられるが、アスペルガー障害の人が特に苦手で学ぶことができないのは、『表情・態度・ジェスチャー・状況・文脈』から相手の意図を読み取る『ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)』である。ノンバーバル・コミュニケーションは幼少期からの対人関係や日常生活を通して自然に学習が進められていくものであるが、その学習が適切に進まない障害のことを『非言語性学習障害(NLD:Nonverbal Learning Disability)』と呼んでいる。

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[アスペルガー障害の各種の特徴と感覚過敏性の影響]

アスペルガー障害の各種の特徴と感覚過敏性の影響

アスペルガー障害を含む自閉症スペクトラムに見られる特徴として、以下のようなものがある。アスペルガー障害と自閉症(高機能自閉症は知能発達の遅れはないが)の大きな違いは、『言葉・知能の発達の遅れがないこと=言語的・論理的・抽象的な能力が平均以上に高いこともある』である。

1.五感の感覚刺激に対する感覚過敏性。

2.非言語性学習障害(NLD)

3.動作がぎこちなくて運動が苦手

4.実行・遂行機能の低さ

5.ADHD(注意欠如多動性障害)と類似した不注意・多動の問題。

6.空想・夢想に耽溺しやすい、(直接の対人関係よりデジタルな反応・刺激・成果を好んで)ゲーム依存症・ネット依存症になりやすい。

特徴の一つとして『感覚過敏性』がある。『視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感の感覚』で感じ取る『光・音・におい・味・触感』に対する過敏性がでやすいのだが、視覚が過敏だと視野の範囲で動くものがあれば集中できず、白地に黒の文字で書かれた文書はコントラストが強すぎて非常に読みづらく感じたりする。

聴覚が過敏なタイプだと、掃除機・洗濯機・炊事などの生活音にも敏感に反応して苦痛を感じたりイライラしやすく、普通の人にとっては心地よいメロディーである飲食店の小さな音量のBGM(歌謡曲)などもうるさいノイズに感じて落ち着くことができない。味覚も好き嫌いが激しい偏食の傾向があり、『食べられるもの』と『食べられないもの』の違いがはっきりしていることが多い。

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2017年04月04日

[アスペルガー障害の根本症状を説明する『共感―システム化理論(empathizing-systemizing theory)』]

アスペルガー障害の根本症状を説明する『共感―システム化理論(empathizing-systemizing theory)』

特定の行動パターンの固執性(こだわり行動)は、『臨機応変な対応ができない・相手や状況に合わせて協調できない・他人にまでマイルールを押し付けてトラブルになる・奇異さや違和感などを持たれやすい・地位や影響力を持つと他人に自分のやり方を強制したり監視したりしやすい』などのデメリットが当然ある。だが、それだけではなく『単調なルーチンワークに適応しやすい・決まった規則や秩序に従った定型業務が得意である・飽きずに一つの事柄を突き詰めて究められる』などのメリットになることも少なからずある。

アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』2:強迫性障害との違い

特定の分野・対象だけに非常に強くて深い興味関心を持つという『興味関心の狭さ』にもメリットとデメリットがある。デメリットは『他者とのコミュニケーションに興味を持てない・社会性や協調性が低下する・生活や社会適応のために必要なバランス感覚がなくなる』などである。メリットとしては『他人や周囲に惑わされずに特定分野に熱中して没頭できる・専門家に相当するような特定分野の知識情報を得られることがある・物事や概念の分類整理が的確である』などが上げられる。

アスペルガー障害の人は、特に複雑な物事を一定のルールや秩序に従って整理し理解するという『システム化の能力』に優れていることが多く、社会的な活動や対人的な意思疎通(コミュニケーション)が苦手な代わりに、『コンピューター・エンジニアリング・法律・数学・科学(広義のサイエンス)・会計・建築・音楽・空間デザイン』などの分野で活躍できる適性・資質・集中力に恵まれていることも少なくないのである。

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[アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』2:強迫性障害との違い]

アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』2:強迫性障害との違い

自閉症の常同行動やアスペルガー障害のこだわり行動(狭い領域への関心の集中)は、本人が意識してやめることができないという意味では、非合理的な思考・行動を自分で止めることができずに苦しんだり悩んだりする『強迫性障害の強迫行為』とも似ているが、常同行動・こだわり行動は強迫性障害とは違って『主観的な苦悩・違和感』がないという点で明確に違っている。

アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』1:特定の行動パターンへの固執性

自閉症やアスペルガー障害の人は、特定の行動パターンに固執して繰り返すことについて悩んだり苦しんだりしているわけではなく、むしろ同じ行動パターンを繰り返すことで精神状態を安定させたりストレスを和らげていることが多い。強迫性障害の人は、強迫観念・強迫行為が無意味で非合理的なもの(バカバカしいもの)であることが分かっていて、それに苦しんだり悩んだり恥ずかしく思っていることが殆どである。

強迫性障害の人は、自分でなかなか制御できない強迫行為に違和感・異常性を感じて、できればやめたいと考えているので人前ではできるだけ強迫行為を隠そうとするが、自閉症スペクトラムの人は一般的に自分の常同行動・こだわり行動を人に見られないように隠そうとはしないのである。

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[アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』1:特定の行動パターンへの固執性]

アスペルガー障害の『こだわり行動』と『興味関心の狭さ』1:特定の行動パターンへの固執性

自閉症スペクトラムの特徴である『こだわり行動(特定の行動パターンへの固執性)』『興味関心の狭さ』は、アスペルガー障害にも共通している。同じ状態や同じ行動パターンを何度も繰り返すというような固執性が見られたり、特定の対象・分野・記憶への非常に強い偏った興味関心が現れたりする。

ADHD(注意欠如・多動性障害)では集中力が続かずに、注意が切り替わりやすいという『注意の転導性』が問題になるが、アスペルガー障害では逆に注意の転導性が低いために(注意の転導性の低さの原因には遺伝要因が関与していると推測される)、一つの行動や対象に囚われやすくなっていて注意を適切に切り替えることができないのである。

特定の行動パターンの固執性(こだわり行動)は、いつも同じように行動する(反復行動をする)とか決まった方法(やり方)を絶対に変えないとかいった形で現れるが、そういった固執性のある行動パターンを維持することには『ストレス緩和・精神状態の安定』といった効果があることが多い。そのため、無理やりにいつも繰り返している行動パターンをやめさせようとすると、強い緊張感・不安感が生まれてストレスになったり、適切に対処できずにパニック・攻撃行動になってしまうことがある。

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2017年03月26日

[アスペルガー障害の知的能力の偏り:セントラル・コヒーレンス仮説(中枢性統合仮説)]

アスペルガー障害の知的能力の偏り:セントラル・コヒーレンス仮説(中枢性統合仮説)

アスペルガー障害の人は知的能力(言語能力・計算能力・空間認識能力)が高かったり、特定の専門分野についての知識・情報が異常に多かったりすることはあるが、TPOに合わせた常識的な振る舞い方や日常的な雑談・対応のような誰でも簡単にできるようなことが苦手になりやすい傾向がある。高機能自閉症では具体的な事物・名前の記憶能力や視覚的・空間的な再現能力が優れていることが多いが、『抽象的な思考・一般化の能力』が低いことがある。

アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴2:自分の感情・感覚も自覚しづらい

アスペルガー障害も高機能自閉症に類似した能力の偏りが見られることはあるが、『抽象的な思考・一般化の能力』が特別に劣っていないケースも多い。ただ『客観的な知識・情報』『主観的な意見・感想』とを織り交ぜて書くような文系学部に多い論文・レポートが苦手なことは多い。

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[アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴2:自分の感情・感覚も自覚しづらい]

アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴2:自分の感情・感覚も自覚しづらい

アスペルガー障害の思春期以下の子供・未成年者には、自分から積極的に話しかけていこうとしてよくしゃべる人が多いが、『自分の興味関心があることだけをまくし立てるように話す+相手の話を聞こうとする姿勢がなく感情も推測しない+TPOや相手の表情・反応にほとんど注意を払わない』という特徴があるので、『双方向的な会話のキャッチボール』がなかなか成り立たないということになる。

アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴1:語彙は豊富だが一方的

アスペルガー障害の人も成長するに従って、他者との会話や人間関係の経験を積んで学ぶことができるので、少しずつ相手の話を聞けるようになり、表情・態度を見てから話すという『双方向的なコミュニケーション』もある程度はできるようになるが、自分の関心のある話題になると過度に熱中して、相手の反応をほとんど見ずに一方的に話し続けやすい傾向はある。

アスペルガー障害の一方的なコミュニケーションの原因としては、話したり書いたりのアウトプットの能力である『表出性言語能力』に対して、相手の言葉を聞き取って適切に理解する能力である『受容性言語能力』が低いということもある。受容性言語能力には、相手の話した言葉をしっかり聞いて意味を理解するという直接の能力だけではなく、状況や文脈を適切に理解するという高度な社会的認知の能力も含まれている。

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[アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴1:語彙は豊富だが一方的]

アスペルガー障害の『社会性の障害』とコミュニケーションの特徴1:語彙は豊富だが一方的

アスペルガー障害の特徴として『社会性(対人関係)の障害』があるが、この障害によって、暗黙のルールやマナーとしてある社会常識が分からなかったり、前後の文脈(状況)を理解する能力が低かったりする。TPOに合わせる社会常識や他者の気持ちがよく分からないために、突然悪気もなく他人に失礼なことを言ってしまったり、相手の短所・コンプレックスに触れるような発言を遠慮なくしてしまうのである。

『その相手に言ってはいけないこと』や『その場で話すべきではない話題・質問』が分からないために、アスペルガー障害の人には『人を怒らせやすい・人に不快な思いをさせやすい』という対人トラブルを起こしやすいが、本人は相手がなぜ率直な疑問・意見を嫌がって怒るのか分からず逆に不満や理不尽さを感じてしまうことさえある。相手(他者)が自分の言動をどのように受け取って解釈しているのかということが想像できず、また初めから他者の思惑・感想に対する共感的な興味も薄いのである。

アスペルガー障害の特徴には『コミュニケーションの障害(状況に合わせた言語の用い方の障害)』もあるが、アスペルガー障害は『知的障害がないことの前提(自閉症スペクトラムでいう高機能群)』があるので、自閉症のような言語能力・言語発達そのものの著しい遅れ・障害があるわけではない。アスペルガー障害は言語発達に遅れがなくて言語能力も正常圏にあるのだが、他者との双方向的なコミュニケーションが苦手だったりトラブルを起こしやすかったりするのである。

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2017年03月09日

[アスペルガー障害・自閉症とソーシャルブレイン2:情動的共感が弱いために成功することもある]

アスペルガー障害・自閉症とソーシャルブレイン2:情動的共感が弱いために成功することもある

自閉症の子供は『モノ・風景の写真』と『顔の写真』を記憶させる実験を行うとモノ・風景の写真のほうをよく覚えている傾向があるというか、厳密には(一般の人は明らかに顔の写真のほうをよく覚えているのだが)顔の写真の記憶力が特別に上がってこないのである。この実験結果は、自閉症(アスペルガー障害含む自閉症スペクトラム)の子供のソーシャルブレインの発達不全を現わしており、顔を特別なものとして認知していないということを示している。

アスペルガー障害・自閉症とソーシャルブレイン1:人間の『顔』に対する特別な認知能力

自閉症・アスペルガー障害ではない健常な人のソーシャルブレインは、『人間の顔』を特別な興味関心・記憶・好き嫌いの対象として扱うように遺伝的・発達的に設計されているものなのだが、特に重症度の高い自閉症では『人間の顔』『モノ・風景・顔以外の身体』との注意・興味・価値の区別がほとんど無くなっているのである。

アスペルガー障害の人は他者の感情や意図に対して、『頭で分かること=認知的共感』『心で感じること=情動的共感』の双方が苦手であり、他者の表情や態度から気持ちを読み取る『ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)』もあまりできないことが多い。

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[アスペルガー障害・自閉症とソーシャルブレイン1:人間の『顔』に対する特別な認知能力]

アスペルガー障害・自閉症とソーシャルブレイン1:人間の『顔』に対する特別な認知能力

『ソーシャルブレイン(社会的脳)』が発達していて社会的能力やコミュニケーション能力が高い人は、『他者の顔・表情』からさまざまな情報を半ば自動的に読み取ることができる。愛想笑いや無表情など感情が読み取りにくい表情も確かにあるが、標準的なソーシャルブレインの発達プロセスが進展していけば典型的な『元気な顔・明るい顔・怒った顔』『落ち込んだ顔・暗い顔・悲しい顔』の区別は自然にできるようになってくる。

アスペルガー障害と心の理論2:頭で分かる認知的共感と心で感じる情動的共感

人間の『顔』には、その人のその時点での感情・気分・興味が現れるだけではなく、その人の人格・性格・生き様の大まかな雰囲気・感じまでもが反映されやすく、親しい関係であればあるほど注意深く相手の顔を見れば『その人の今の気持ち・状況・考えていること』などが何となく分かることが多い。無論、完璧に相手の顔だけから感情や考え、人間性が分かるわけではないが、社会的能力が高い人ほど『顔』から読み取ることのできるコミュニケーションに役立てられる情報は多いのである。

社会的な動物である人間は、他者とのコミュニケーションや適応的な集団生活(集団行動)を成り立たせるための『ソーシャルブレイン(社会的脳)』を持っているが、特に『顔に対する認知能力』を発達させている。人間にとっての『顔』は単なる身体の一部ではなく、非常に重要な社会的認知・評価の手がかりとして活用されるものだからであり、人間は他人に見られる『顔』を常に清潔にしようとしその手入れやチェックに相当な時間をかけている。

現代では、顔については美醜が問題にされやすいが、それ以前に顔は自分の人柄・性格・感情・気分・興味を相手に知らず知らずのうちに伝達してしまう『社会的器官・ソーシャルブレインの一部』として機能しているのである。

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[アスペルガー障害と心の理論2:頭で分かる認知的共感と心で感じる情動的共感]

アスペルガー障害と心の理論2:頭で分かる認知的共感と心で感じる情動的共感

子供は9歳頃になると『相手を傷つけたり不快にしたりする言葉』『相手の表情・態度・目線が意味する気持ち・内面』が概ね分かるようになり、(特別にいじめたいとか攻撃したいとかいう意図がない限りは)意識してそういった言葉を相手に使うことを避けるようになってくる。

アスペルガー障害の子供もこういった『心の理論の発達』を前提とした、人を傷つける言葉の自己抑制ができないわけではないが、通常は9歳頃にできることが12歳以降までかかることが多く、状況・文脈・他人の気持ちに配慮したコミュニケーション面の発達に遅れが見られるのである。

アスペルガー障害と心の理論1:他人の嘘や騙しにも気づきにくい単純さ・純粋さ

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)であるアスペルガー障害の『人間関係(社会性)の障害』『コミュニケーション(言葉の発達)の障害』の中核的症状は、分かりやすく言えば『他者に対する共感性の乏しさ』に集約される。その他者に対する共感性の乏しさの原因として考えられているのが、『心の理論の障害』『情動的共感の弱さ』なのである。

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[アスペルガー障害と心の理論1:他人の嘘や騙しにも気づきにくい単純さ・純粋さ]

アスペルガー障害と心の理論1:他人の嘘や騙しにも気づきにくい単純さ・純粋さ

広汎性発達障害(PDD)であるアスペルガー障害では、『人間関係(社会性)の障害』『コミュニケーション(言葉の発達)の障害』が大きな問題になってくるが、その根底にあるのが『心の理論の障害』である。

発達障害の人に特有のコミュニケーション形態に影響する『心の理論』とは、言葉・表情・態度・動作などを参考にして、『他人の意図・感情・立場』を適切に推測する心理的な能力のことである。アスペルガー障害ではこの心の理論が障害されることによって、他人に不愉快な思いをさせたり傷つけることを言ってしまったりしやすいのだが、本人には『悪意や悪気・嫌がらせの目的・傷つける意図』などは全くないのである。

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2017年02月26日

[アスペルガー障害における社会性の障害と他者の意図・感情を推測する『心の理論』:サリーとアン課題]

アスペルガー障害における社会性の障害と他者の意図・感情を推測する『心の理論』:サリーとアン課題

アスペルガー障害の『社会性の障害』として典型的なものに、他者の感情・意図を適切に推測する能力とされる『心の理論』が障害されるということがある。イギリスの発達心理学者サイモン・バロン・コーエン(Simon Baron-Cohen,1971〜)は、自閉症スペクトラムの根本障害の原因をこの『心の理論の発達不全』に求めているが、人間の赤ちゃんは生後5〜9か月の時期から『注意の共有』によって他者の心(意図・感情)を推測するための心の理論を発達させ始めるのである。

他者の気持ちや意図を推測する『心の理論』が上手く発達していかないアスペルガー障害の幼児の特徴としては、ままごとやお医者さんごっこなどに代表される、ぬいぐるみ・おもちゃを役割のある人間(家族)になぞらえてなりきる『ごっこ遊び(想像力を駆使した遊び)』がほとんど見られないということもある。ごっこ遊びよりも、テレビやアニメの登場人物の決まった台詞やポーズをそのまま何度も繰り返す『オウム返し』が見られやすい。

アスペルガー障害における『社会性の障害』と身だしなみ・親密な人間関係:3

アスペルガー障害の幼児の子供は、情緒的な想像力を働かせてコミュニケーション(あれこれ会話)しながら遊ぶごっこ遊びなどよりも、むしろ論理的なルールがしっかりしているトランプや将棋、テレビゲーム(スマホゲーム)を好む傾向がある。他者の立場に立って物事を見るという心の理論も発達しづらいので、4歳児くらいから解くことのできる『サリーとアン課題』にも正答することが難しくなる。

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[アスペルガー障害における『社会性の障害』と身だしなみ・親密な人間関係:3]

アスペルガー障害における『社会性の障害』と身だしなみ・親密な人間関係:3

アスペルガー障害の人は『他者への興味関心(特に他者の内面心理への関心)』が非常に弱く、他人が自分の外見や行動をどのように見ているのかということにもほとんど頓着せず気にしない傾向がある。そのため、アスペルガー障害の人は『服装・髪型・身だしなみ』が無頓着になりやすく、ぼさぼさ頭にボロボロの着古した服を着ていても何も気にならないし恥ずかしいといった感情も抱かないことが多い。

人の考えや感情、評価などにはじめから興味や配慮があまりないので、人からどんな風に思われているかということを想像して自分の言動を変えることが少なく、『人の気持ちとは関係のない事実・真実・知識・モノ』などの執着的な興味を持ち続けることが多いのである。

アスペルガー障害における『社会性の障害』と相互応答のためのノンバーバル・コミュニケーションの苦手さ:2

服装や身だしなみ、流行にこだわらないアスペルガー障害の成功者や経営者、知識人(学者)は意外に多いとされ、マイクロソフト創業者で世界トップの大富豪であるビル・ゲイツも若い頃はスーツの堅苦しい服装を嫌い、ボロボロのジーンズと穴あきのセーターでチェーン店のファストフードを好んで食べていたともいう。

他人や周囲の感情に無頓着で配慮しないことが、アスペルガー障害の『対人関係のトラブル・人から誤解されて怒らせたり嫌われたりする問題』の原因にもなっている。アスペルガー障害の人は状況の前後の文脈(コンテクスト)を読んだり、暗黙の社会的ルールを守ったりすることが苦手であり、端的には『社会常識・TPO・相手の受け止め方(自分の言動を相手がどう評価するか)』がよく分からないままに自分の率直な考え・感想を言葉にしてしまうのである。

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[アスペルガー障害における『社会性の障害』と相互応答のためのノンバーバル・コミュニケーションの苦手さ:2]

アスペルガー障害における『社会性の障害』と相互応答のためのノンバーバル・コミュニケーションの苦手さ:2

アスペルガー障害の人は、他者と『ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)』を含めた相互的なやり取りである『相互応答性』が障害されているという特徴もある。

一般的な双方向のコミュニケーションでは、声のリズムや身体のジェスチャー、顔の表情も言葉と同期しているのだが、アスペルガー障害の人は『言葉だけのやり取り』になりやすく、穏やかな目線や笑顔、声の高さ、身振り手振りでポジティブな感情(好意的な関心)を相手に伝える『非言語的コミュニケーション』があまり行われていないのである。

アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1

アスペルガー障害は自閉症スペクトラムの一部を構成する障害(症候群)でもあるから、『他者と視線が合いにくい』『相手の顔や体を見ようとしない』『声の調子が平板で単調』『表情や身振りが乏しい』といった特徴を呈しやすく、他者との相互的なコミュニケーション状況においてぎこちない不自然さが出やすいのである。

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[アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1]

アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1

イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)は、オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)が初めて報告した『アスペルガー障害(Asperger Disorders)』を再発見して当時の精神医学会に広めた功績がある。

“ウイングの3つ組”として知られるアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)の典型的な特徴は、『社会性の障害(対人関係の障害)・コミュニケーションの障害(言語の障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動・興味の偏り)』の3つである。社会性の障害というのは、学校・職場・地域などの社会集団において他者や状況に合わせて適応的に行動できないという障害である。

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2017年01月29日

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:孤立型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:孤立型の特徴

孤立型のアスペルガー障害は、周囲や他者に対する興味関心が乏しいタイプで、受動型以上に『対人関係への無関心・消極性』が目立ち、相手から話しかけられてもあまり相互的な反応・返事を返さないような特徴がある。場合によっては、無関心が非常に強いそっけなさや冷淡さ、とっつきにくさといった印象を周囲に与えるため、人間関係が一般に作られにくく幼稚園・学校・職場などで孤立しやすくなる。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴

他者と仲良くなれる機会や友達になれそうな状況があっても、自ら誰かと特別に親しい人間関係を作りたいとか、孤立している孤独な状況がつらいとかいった思いそのものが殆どないので、『友達関係・交友関係・社会的関係』をほとんど築けないままに人生の発達段階を過ごしていくことが多くなる。乳幼児期にも、おもちゃや絵本などで黙々とひとり遊びをしていることが多く、友達の輪の中に自ら入っていくという行動も見られない。

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posted by ESDV Words Labo at 09:05 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする