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2017年01月29日

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴

アスペルガー障害の受動型は自分から他者に話しかけたり関わったりしないということであり、積極奇異型と比較すると『対人関係の消極性』が目立っている。他者に対する興味や会話への好奇心はあり、向こうから誘われたり話しかけられれば嬉しそうに応じることもあるのだが、自分から積極的・主体的に『交遊・親密さ』を求めて関わっていくことが少ないのである。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型

受動型のアスペルガー障害は、対人関係やコミュニケーションにおける『受け身(受動性)・消極性』が目立つタイプであり、アスペルガー障害が他者(外部)に対する興味・反応が乏しく、自分の内的世界に閉じこもる自閉症スペクトラムの一部であることと関係している部分が多い。知的障害がないアスペルガー障害では、受動型でも平均以上の知能指数や記憶力を示すことがあり、特に自分が興味関心を抱けた特定分野に関して特別に優れた暗記力・成績を発揮したりもする。

自分一人で興味関心のあることや趣味・娯楽に熱中して楽しむことが多く、向こうから誘われなければ自分から積極的・主体的に『交友関係・親密さ』を求めることがほとんどないという点では、『自閉症スペクトラム的』であると同時に『回避性パーソナリティー障害的』でもあると言えるかもしれない。

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[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型の特徴

イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)は、アスペルガー障害(Asperger Disorders)を以下の3つのタイプに分類している。アスペルガー障害全般に共通する特徴として、積極的でも消極的(受動的)でも『対人関係の不器用さ・トラブル』が目立つということがあり、『双方向的・相互的なコミュニケーションの苦手さ(不自然な身体の動き・表情・堅苦しさ・大げさな感じなど)』もある。

1.積極奇異型

2.受動型

3.孤立型

積極奇異型のアスペルガー障害は、物事に対する興味関心が強く、新たな出来事への好奇心も持っているので、『積極的だが奇妙な印象を与える行動』が特徴となる。アスペルガー障害の中では比較的多い典型的なタイプの一つであり、『相手の都合・感情・事情』などに配慮することなく、一方的に捲し立てるようにしゃべったり、TPOにふさわしくない常識はずれな言動(相手の気にしていることに対するストレートな発言など)をしたりするので、対人トラブルが多くなる。

基本的に節度なく饒舌に良くしゃべるタイプだが、相手の気持ちを考えた言動をしづらく、理屈っぽい知識自慢や批判めいた発言を繰り返したりするので『相互的なコミュニケーション(気軽な楽しい雑談・相手の話を聴きながらの対応)』が成り立たなかったり、話しているうちに相手を怒らせてしまうという問題が起こりやすい。

自分の興味関心のあることばかりを一方的に延々と話し続けたり、相手の話そうとしている内容には完全に無関心で反応がなかったりする(共感・同意・話を広げるなどの反応がない)ので、相手側にコミュニケーションする満足・楽しさを感じてもらうことが難しいのである。

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2017年01月27日

[ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性]

ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性

L.ウイングが、アスペルガー障害を含む自閉症スペクトラム(自閉症の連続体)の中核症状として定義したのが『ウイングの3つ組』である。ウイングの3つ組とは、『対人関係の障害(社会性の障害)・コミュニケーションの障害(言語機能の発達障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動と興味の偏り)』の3つの特徴的な自閉症スペクトラムの問題のことである。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

アスペルガー障害にありがちな誤解・偏見として、『人間的な情緒・感情がまったくない』や『人間の個別的な特徴を理解することができない』があるが、実際にはアスペルガー障害の子供も親への愛着を形成しており、親と離れていると寂しさや孤独感(ホームシック)を訴えることはあるし、動物好きで熱心にペットの遊び相手や世話をしたりすることも少なくない。客観的な人間観察をすることでその相手がどのような特徴を持っているかを正確に分析することもできることがあり、人間個人のさまざまな特徴や傾向について全く理解できないというわけではない。

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[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

フリッツ・Vは、幼児期になると友達と上手く遊べないとか友達と一緒の場に参加できない、他人に興味を示さない、気に入らないと相手を叩く(気に入ると急に抱き着く)、他人との距離感がないなどのアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)に特有の『社会性(対人関係)の障害』が目立ってきたのである。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

知能が高くて言語能力・計算能力(数字の概念)の発達も早かったのに、『他者との関係性・距離感を踏まえた適切なコミュニケーション』ができず『相手がどう感じているか何を考えているかを推測して対応する能力(心の理論と呼ばれる共感と推測の能力)』も著しく低かった。

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[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)は、1944年にアスペルガー障害(アスペルガー症候群,Asperger disorder)について発表した。アスペルガー障害発見のきっかけになったのは、ドイツがオーストリア侵攻をして第二次世界大戦が始まろうとする混乱期の1939年に診療した『フリッツ・Vの症例』であった。

第一次世界大戦で敗れてからのドイツとオーストリアは、英仏の戦勝国への賠償金の支払いなどによるインフレと失業で経済が疲弊して、親から捨てられて何の保護や教育、医療も受けられない不遇な子供達が溢れていた。この社会混乱の時期にハンス・アスペルガーは、提唱者である医師のエルヴィン・ラツァールらと共に『クリニック併設のデイセンター(生活支援施設)』の運営に参加していたのである。

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2016年08月11日

[『世界の警察』となった超大国アメリカの単独主義外交:9.11の米国同時多発テロ]

『世界の警察』となった超大国アメリカの単独主義外交:9.11の米国同時多発テロ

ソ連というライバルを失って世界の超大国(スーパーパワー)となったアメリカは、『世界の警察』を自認してアメリカ中心の世界秩序を再構築するための軍事・外交政策や内政干渉を積極的に行うようになっていく。アメリカの味方なのか敵なのかの判断基準は、『民主主義・自由主義・人権尊重・親米政権(あるいは米国の市場拡大や資源獲得)』のいずれかに合致しているかいないかである。

ゴルバチョフとソ連崩壊:米ソ冷戦の終結による世界秩序の不安定化

反米の独裁国家や人権侵害の宗教国家、テロリスト擁護のイスラム国家などは『米国の敵(世界秩序の紊乱者・テロ支援国家・人権抑圧国家)』と見なされて、アメリカの指令や要請に従わなければ(拒否権を持つ常任理事国は別だが)『国連決議後の経済制裁・軍事制裁』を受けやすくなった。世界最強の軍事力を背景にして『世界の警察』として支配的に振る舞うアメリカは、1990年のイラクのフセイン政権のクウェート侵攻に対し、国連決議を経て国連軍を結成して『湾岸戦争(1991年)』を戦った。

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2016年07月26日

[アイザイア・バーリン(Isaiah Berlin)の自由論:消極的自由と積極的自由]

アイザイア・バーリン(Isaiah Berlin)の自由論:消極的自由と積極的自由

政治学の自由主義(リベラリズム)でいう『自由』について、イギリスのオックスフォード大の政治思想家・哲学者のアイザイア・バーリン(Isaiah Berlin, 1909-1997)は、『消極的自由(negative liberty)』『積極的自由(positive liberty)』を分類して定義した。

『消極的自由(negative liberty)』というのは『政治権力からの自由』であり、自分の意志・希望・価値観に逆らって何かをしろと強制されたり拘束されたりしない自由のことである。消極的自由は一般的に自由と呼ばれる観念が指し示している『自分の思いのままに行動できるということ(誰かにああしろこうしろと指示命令されないこと)』にかなり近い。

『積極的自由(positive liberty)』というのは『政治権力による自由』であり、生存権をはじめとする基本的人権を政治権力や法の支配によって守ってもらったり実現してもらったりすることである。権力や他者に何かを無理やり強制されないという消極的自由だけがあっても、貧困・病弱・無力な個人にとってはその自由の使い道がなくて無意味であるということから、政治権力が『徴税・社会保障制度(社会福祉制度)・安全保障制度』などを介して個人が結果としての自由を得られるようにバックアップするというわけである。

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2016年04月18日

[E.H.エリクソンのアイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)の臨床的特徴:2]

E.H.エリクソンのアイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)の臨床的特徴:2

エリクソンが指摘した一般的な青年心理の危機・混乱である『アイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)』の臨床的特徴は以下のようなものである。

1.自意識(アイデンティティー感覚)の過剰性……自分がどのような存在であるか、自分が社会や仕事においてどのような役割・職務を果たすべきかというアイデンティティー感覚を過剰に気にしてしまう。他人や社会から自分がどのような人間だと見られているかを過敏に気にしてしまう自意識過剰(excessive awareness)の状態に陥る。

2.選択の回避と心理社会的な機能の麻痺……社会が与えてくれる青年期の『モラトリアム(選択の猶予期間)』を有効活用できずに、社会的・職業的・関係的な選択を回避してしまい、無職・無業やひきこもりなどの状態に陥りやすくなる。健康な自我機能が障害されることによって、社会的なモラトリアムを用いて職業上の役割実験をしたりアイデンティティー選択を模索したりすることができなくなる。決定的な職業選択ができなくなり、恋愛・結婚など重要な人間関係の選択もできなくなるので、心理社会的な機能が麻痺することになる。

3.対人的な距離感の失調……現実性のある適切な対人関係の距離が掴みにくくなり、一時的・遊戯的なその場限りの浅い付き合いだけしかできなくなり、人生や仕事、価値観などに関する深い話し合いの機会も持つことができない。本当の信頼感や安心感に基づいた『継続的かつ有意義な人間関係』を築くことができず、甘えると相手にのめり込むほどに依存してしまい、自立すると孤立したりひきこもったりしがちになってしまう。

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[E.H.エリクソンのアイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)と青年期心理:1]

E.H.エリクソンのアイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)と青年期心理:1

アメリカの精神分析家エリク・H・エリクソン(Erik Homburger Erikson,1902-1994)は、社会的精神発達論(ライフサイクル論)を提唱したことで知られるが、青年期の発達課題として『自己アイデンティティーの確立』を上げた。

自己アイデンティティーの確立とは、自分が他人とは異なる唯一の存在であることを自覚して人生の生き方を定めることであり、自分が社会の中でどのような職業を選択してどんな役割を果たすかを確立していくことである。

自己アイデンティティーは“自己同一性(自我同一性)・自己確認”と訳されることもあるように、『自分が社会においてどのような人間であるかを確認すること』や『自分の現実の人生と自己イメージとを同一化していくこと(自分が自分以外の何者でもないことを自覚して自己定義すること)』を意味している。この自己アイデンティティーの確立の発達課題の達成に失敗・挫折した時に、青年期の精神的危機としての『アイデンティティ拡散症候群(identity diffusion syndrome)』が発症するのである。

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2016年01月17日

[テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『近代的な啓蒙・理性の治療』としての哲学]

テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『近代的な啓蒙・理性の治療』としての哲学

G.W.F.ヘーゲルの“正‐反‐合(テーゼ‐アンチテーゼ‐ジンテーゼ)”の思考プロセスを経由して肯定的な結論を導き出す『弁証法(肯定弁証法)』は、『同一性・権力(画一化・従属化の強制や抑圧)』と結果論的に相関している。T.アドルノはこの同一性と結合した伝統的な『肯定弁証法』を批判するために、“非同一性(個別性・多様性)”を担保する『否定弁証法』を提唱したのである。

テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『同一性‐非同一性』の原理

ヘーゲルの世界精神や弁証法を前提とする啓蒙的な近代思想は、『全体最適化・社会的利益』へと行き着きやすく、『個体(個人)の多面的な差異・個性』を抹殺する傾向をそのロジックの中に内包している。

すなわち、世界恐慌・大量失業などの危機的事態においては、社会構成員がただ『同一性の無個性な主体』として生存できれば良いではないかとする価値観が優勢となり、『哲学・芸術の主体性(非同一性=権力や多数派に迎合しない主体)』が切り捨てられたり抹殺されたりすることになる。

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[テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『同一性‐非同一性』の原理]

テオドール・アドルノの『否定弁証法』と『同一性‐非同一性』の原理

新マルクス主義やニューレフト(新左翼)運動に大きな影響を与えた『フランクフルト学派』を代表する社会学者が、マックス・ホルクハイマー(Max Horkheimer,1895-1973)テオドール・アドルノ(Theodor Ludwig Wiesengrund Adorno, 1903-1969)である。

マックス・ホルクハイマーとテオドール・アドルノは共著『啓蒙の弁証法』を通して、近代的な啓蒙主義(道具的理性)を批判する『批判理論』を掲げて、マルクス主義の実践的かつ倫理的な発展を目指した。テオドール・アドルノは自然と他者を支配・搾取してきた近代社会の原動力である『理性(道具的理性)』のネガティブな側面に着目して、『否定弁証法』という独自の批判的な思考形態を提唱した。

マルクス主義的な思想家集団から始まったフランクフルト学派だったが、そこにはマルクス主義(共産主義)だけではなく、G.W.F.ヘーゲルの弁証法やフロイトの精神分析などの理論も融合されるようになり、近代社会全体の発展・倫理の可能性を探求する社会思想の複雑性が生まれていた。

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2015年10月20日

[R.エムディとJ.オソフスキーの“I FEEL Pictures”:母親は赤ちゃんの情緒・感情をどう読み取っているか?]

R.エムディとJ.オソフスキーの“I FEEL Pictures”:母親は赤ちゃんの情緒・感情をどう読み取っているか?

アメリカのコロラド大学の精神科医R.エムディ(R.Emde,1935-)は、乳児が泣き叫びやボディランゲージによって表現する情緒に対して適切に応答する母親の能力のことを『情緒応答性(emotional availability)』という概念で定義した。

アメリカ生まれのスイスの精神科医ダニエル・スターン(Daniel Stern, 1934-2012)は、母親が情緒応答性の能力によって読み取っている乳幼児の情緒信号の情報について、『カテゴリー情報(categorical information)』『勾配情報(gradient information)』に分類している。

カテゴリー情報というのは、ダーウィンの感情と呼ばれる『喜び・怒り・恐れ・悲しみ・驚き・不快』の6つの基本的な強い感情をベースにしたものである。勾配情報というのは、情緒の変化量についての情報のことであり、具体的には『情緒の強さ・抑揚・リズム・調子』などのことである。

精神科医のR.エムディ(R.Emde)J.オソフスキー(J.Osofsky)は、1974年から1976年にかけて母親が乳児の表情からその情緒をどのように推測して読み取っているのかを調べるために、『I FEEL Pictures』という乳児の顔写真(30枚)を使った心理テストを開発した。

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[アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression,依託抑うつ):母親から引き離された乳児の症状]

アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression,依託抑うつ):母親から引き離された乳児の症状

ウィーン生まれのアメリカの精神科医ルネ・スピッツ(Rene Spitz,1887-1974)は、母性的養育・愛情やスキンシップの欠如によって引き起こされる乳幼児の『施設病(ホスピタリズム)』について研究した人物として知られる。

施設病(ホスピタリズム)の乳幼児には、『情緒障害(精神症状)・身体の発育不良・感染症の罹りやすさ・免疫力の低下』などの様々な症状が出てくるが、その主要原因は母性的な養育環境・愛情や保護を失った『母性剥奪(mother deprivation)』である。

乳児が母親から3ヶ月以上にわたって引き離された場合に発生してくる、うつ病の精神運動抑制(精神活動の活発性・高揚性の低下)にも似た精神症状が『依託抑うつ(依託性抑うつ)』と訳される『アナクリティック・ディプレッション(anaclitic depression)』である。

アナクリティック・ディプレッションは全ての乳児に起こる病的な精神状態ではなく、母性剥奪(mother deprivation)が起こる前に少なくとも『6ヶ月以上の良好な母子関係』があった乳児のみに起こる。つまり、アナクリティック・ディプレッションは『母性的養育・愛情や保護の心地よさや安心感』を一定以上の期間にわたって体験したことのある乳児だけに起こるのである。

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2015年08月22日

[アルコール依存症の治療法:“離脱症状・リハビリテーション・アフターケア”]

アルコール依存症の治療法:“離脱症状・リハビリテーション・アフターケア”

アルコール依存症は短期間で治療が終わるような精神疾患ではなく、基本的に精神・身体依存の症状と離脱症状が治りにくい『難治性』であり、その治療にかなりの時間がかかるものである。一般的には、約2〜3年間の治療期間を設定した上で、以下の3段階のステップで依存症の治療に当たることになる。

アルコール依存症の治療と『否認の病』としての特徴

1.アルコール離脱症状の治療(入院・外来での禁酒薬を用いた薬物治療が中心)

2.アルコール・リハビリテーション・プログラム(ARP,入院・外来での治療)

3.アフターケアとサポート体制(主に治療後に行う外来での相談・ケアの体制)

『アルコール離脱症状』というのは、最後に飲酒した6〜10時間後から“手の振戦(手の振るえ)”が始まり、それに加えて『発汗・吐き気(嘔吐)・頻脈・食欲不振・睡眠障害・錯覚・幻覚・軽躁(異常な高揚)・不穏(抑制のなさ)・てんかん発作』などの症状が出てくるもので、一般に『禁断症状』とも呼ばれるものである。

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[アルコール依存症の治療と『否認の病』としての特徴]

アルコール依存症の治療と『否認の病』としての特徴

アルコール依存症は『否認・沈黙の精神疾患』とも言われ、外部に病気の事実が伝わりにくく、また本人の口からアルコール依存症に悩んでいるというカミングアウト(告白)が行われることも極めて少ない。

依存症の問題を提起したり相談してくるのは、患者本人ではなく周囲にいる家族・恋人・近しい関係者であるが、患者本人が長期間にわたって習慣的な大量飲酒を続けてきた背景に、家族・関係者との『共依存(co-dependency)』の問題が存在していることも多い。

アルコール依存症の『生物‐心理‐社会モデル(bio-psycho-social model)』に基づく原因論

共依存というのは、お互いに『相手の問題点(短所・症状)』を補強して維持し合うような悪循環を繰り返す依存関係のことであり、アルコール依存症の問題においては意識的であるにせよ無意識的であるにせよ、『過度の飲酒行為』を周囲の家族・関係者が容認したりサポートしたりその罪悪感を和らげたりしていることが多いのである。

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[アルコール依存症の『生物‐心理‐社会モデル(bio-psycho-social model)』に基づく原因論]

アルコール依存症の『生物‐心理‐社会モデル(bio-psycho-social model)』に基づく原因論

アルコール依存症の原因は、総合的な『生物‐心理‐社会モデル(bio-psycho-social model)』によって説明することが可能であるが、アルコール依存症の親がいる子はそういった親がいない子よりも、約4倍アルコール依存症にかかりやすいという統計的研究の結果もある。

アルコール依存症のCAGEスクリーニング・テストとICD-10の診断基準

アルコール依存症の親から育てられた子供は、『アダルトチルドレン』としての自覚・問題を抱えやすいともされる。それは依存症の親は『教育・保護・愛情などと関連する親としての役割』を果たすことが著しく困難になっていて、子供が家庭で安心感・被保護感・居心地の良さを感じられない『機能不全家族』としての環境が常態化してしまうからである。

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[アルコール依存症のCAGEスクリーニング・テストとICD-10の診断基準]

アルコール依存症のCAGEスクリーニング・テストとICD-10の診断基準

アルコール依存症とは、依存性・耐性のあるアルコール(酒類)を過剰に摂取してしまうと同時に、アルコールを摂取したいという衝動・欲求を自分の意志では制御できない疾患で、結果として心身の健康を害するだけではなく社会的・職業的・対人関係的な支障が生じてしまう。

アルコール依存症の背景には、『生物学的要因(遺伝)・心理的要因(依存・逃避)・社会文化的要因(飲酒行為に対する寛容さ)』などが複雑に絡み合っている。この項目では、アルコール依存症をスクリーニングするための『CAGEスクリーニング』『ICD-10の診断基準』について以下に示す。

CAGEスクリーニング

1.あなたは、自分の酒量を減らさなければならない(Cut Down)と感じたことがありますか?

2.あなたは、誰か他の人に自分の飲酒について批判され、うるさいなと感じたこと(Annoyed)がありますか?

3.あなたは、自分の飲酒について良くないと感じたり、罪悪感(Guilty)を持ったことがありますか?

4.あなたは、神経を落ち着かせるため、または二日酔いを治すために、朝まっさきに飲酒したこと(Eye-opener)がありますか?

“CAGE”というのは、上記の英語の頭文字を連ねてできた言葉である。上記4問のうちで2問に『はい』と答えた場合に、アルコール依存症の疑いが十分にあると見なされる。

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2014年12月19日

[アメリカの力動精神医学と生物学的精神医学・DSM‐W-TR:3]

アメリカの力動精神医学と生物学的精神医学・DSM‐W-TR:3

アメリカの力動的精神医学は1970年代あたりから、『生物学的精神医学(精神医学の生物学主義)』によって衰退の構えを見せるようになり、力動的精神医学(精神の個人史の詳細な分析)よりも記述的精神医学(マニュアル診断+薬物療法)のほうが優勢になったのである。

アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1

アメリカの力動精神医学とアドルフ・マイヤー:2

生物学的精神医学では、精神疾患は『脳の疾患(脳の機能的障害・器質的障害)』と見なされるようになるので、『精神疾患の心理的原因の探求・個人の生活史や人間関係の分析』は殆ど行われなくなり、患者(クライエント)を心理的・歴史的・生物的な一人の縦断的な個人と見なすある種の『ヒューマニズム(人間主義)』は衰えることになった。

1980年代頃からは、力動精神医学から生物学主義に乗り換えたアメリカ精神医学会(APA)が、『DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)を用いたマニュアル診断』『診断名に対応した薬物療法』によって精神疾患の治療を行う枠組みを強固にしていった。

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[アメリカの力動精神医学とアドルフ・マイヤー:2]

アメリカの力動精神医学とアドルフ・マイヤー:2

力動精神医学の基礎理論はジークムント・フロイトの精神分析であるが、アメリカで発展することになった力動精神医学は、当時のアメリカの精神医学会の最大の権威であったアドルフ・マイヤー(Adolf Meyer,1866-1950)『精神疾患の不適応理論(反応型の概念)』『精神生物学』の影響も受けることになった。

アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1

アドルフ・マイヤーはアメリカの精神医学そのものの始祖と見なされることもある重鎮だが、A.マイヤーはアメリカに生まれたアメリカ人ではなく、スイスに生まれてチューリヒ大学医学部で医師免許を取得している。医師免許取得後に、パリとロンドンといったヨーロッパの大都市で医師としての知見を高めた。マイヤーは1892年に渡米して、神経病理学の研究を続けながら精神科で臨床を行っていた。

A.マイヤーは、進化論のチャールズ・ダーウィンや神経病理学で器質力動論を提唱した神経学者J.H.ジャクソンの理論的な影響を受けて、ドイツの精神科医エミール・クレペリンの記述精神医学やアメリカの哲学者ジョン・デューイプラグマティズム(実用主義)にも強い関心を持っていた。エミール・クレペリンの網羅的かつ分類的な精神医学の教科書をアメリカに初めて紹介したのもマイヤーである。

アドルフ・マイヤーは、社会的・生物学的な環境に適応して自己(自我)や能力を発展させていく人間が、環境・他者に対して不適応を起こしてしまった状態が『精神障害(精神疾患)』であると考えた。精神障害(精神疾患)を、環境や他者に対する不適応反応であるとするこのA.マイヤーの考え方を『反応型の概念(concept of reaction-type)』という。

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[アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1]

アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1

ジークムント・フロイトが創始した精神分析は、はじめオーストリアのウィーンを拠点として次第にヨーロッパ全土へと拡大していった。そして、精神分析がヨーロッパ大陸の地理的領域を超えて、イギリスやアメリカにまで伝播していくきっかけになったのが、第二次世界大戦中の『ナチスドイツによるユダヤ人迫害(ユダヤ人の精神分析家の海外亡命)』であった。

S.フロイト本人も1938年にマリー・ボナパルトらの支援を受けて、フランスのパリを経由してイギリスのロンドンに亡命している。フロイトの高弟や高弟から教育分析を受けたユダヤ人の弟子たちも、少なからずアメリカやイギリスに亡命して精神分析の理論や技法を伝えているが、フロイトや弟子の著作を通じてアメリカの精神科医が精神分析を理解した部分も多い。

イギリスの精神分析は、フロイトの『正統派精神分析(自我心理学)』とは異なる発達早期の乳幼児の無意識を重視するメラニー・クラインらの『クライン派』、フロイトとクラインのどちらにも与さない『英国独立学派』に分かれて発展していった。

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