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2006年08月30日

[アレキサンダー・テクニーク(Alexander Technique)]

アレキサンダー・テクニーク(Alexander Technique)

オーストラリアの教師フレデリック・マシアス・アレキサンダー(Frederick Matthias Alexander, 1869-1955)が開発したアレキサンダー・テクニーク(Alexander Technique)は、身体の不必要な緊張を和らげて、過去に身につけた悪い姿勢の癖を矯正するボディ・セラピー(ボディ・ラーニング)である。アレキサンダー・テクニークは、日本のカウンセリングや臨床心理学では身体の適切な利用法と姿勢のあり方を学ぶ『姿勢術』として認識されている。

人間は心身の発達の過程で自分独自の姿勢や動作、行動のパターンを身につけていくが、自然なリラックスした姿勢を維持できなかったり、背筋が曲がった猫背の姿勢の癖をつけてしまったりすると心身の健康を保つことが難しくなる。長年に及ぶ姿勢の崩れが体の崩れにつながり、人生のバランス感覚の喪失にもつながってくるというのがF.M.アレキサンダーの基本的な人間観である。

長期間にわたって不適切で不自然な姿勢を取り続けていると、神経痛や腰痛、関節痛などの疼痛が起こってきたり、肩こりや筋肉痛などの症状が出てきたりするが、アレキサンダー・テクニークで子ども時代のような自然で自由な姿勢と身体の活用法を取り戻すことで、それらの苦痛な症状を緩和できるとする。

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タグ:心理療法
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2006年08月25日

[暗示療法(Suggestion Therapy)・催眠療法(Hypnotherapy)の歴史的変遷:ナンシー学派とサルペトリエール学派による近代的な催眠の確立]

暗示療法(Suggestion Therapy)・催眠療法(Hypnotherapy)の歴史的変遷:ナンシー学派とサルペトリエール学派による近代的な催眠の確立

メスメルの弟子であったピュイセギュール侯爵(Amand-Marie-Jacques de Chastenet, Marquis de Puyse'qur, 1751-1825)は、科学的な催眠磁気の臨床研究によって、催眠トランス状態の発見に至り、ノーベル生理医学賞を受賞することとなる。ピュイセギュール以後、催眠は動物磁気のような物理的現象によって生じるものではなく、暗示や権威といった心理的変容によって生じるものだという認識が強まっていく。

クライエントの言語的教示に対する被暗示性を適切に利用して近代的な催眠の原形を提示したのは、ポルトガルの宗教家ファリア師であり、彼は催眠解除後にも継続する後催眠暗示の技法や知識も体得していたと言われる。ファリア師の基本的な理論と技法は、リエボーへと継承されていき、フランスのナンシー学派の標準的技法となった。

リエボー(Liebeault, Ambrose August ,1823-1904)は磁気術と呼ばれる独自の催眠療法を無料で行ってインチキ医師と軽蔑され一文無しになる苦渋を味わったが、当時の内科医学会の権威者であったベルネーム(Bernheim, Hippolyte-Marie, 1840-1919)にその催眠の有効性を認められ、一躍時代を代表する臨床医として名声と財務を回復した。リエボーやベルネームを中心とするナンシー学派と理論的対立を見せたのが、フランス神経医学界の最高権威であったジャン・マルタン・シャルコー(Jan- Martin Charcot ,1825-1893)であるが、シャルコーの圧倒的な医学的名声と政治的影響力によって、遂に、催眠療法は公的な医学会においてもその科学性や有効性が認められるようになってきた。

シャルコーは精神分析学の創始者であるシグムンド・フロイトの指導教官であったこともあり、フロイトは自由連想法や夢分析による精神分析を行う以前には、『カタルシスによる除反応』を目的とする催眠療法的な精神療法を実施していた。O・アンナ嬢が、エントツ掃除と呼んだブロイアーによる談話療法も、一種の催眠状態を利用したカタルシス療法であったといわれる。

現代的な催眠療法の研究者で最も大きな影響を与えた人物に、ミルトン・エリクソン(Milton Hyland Erickso, 1901-1980)がいるが、彼は催眠療法に関する実証的な事例研究を積み重ねて、催眠を科学のカテゴリーの学問へと発展させた。ミルトン・エリクソンは、『催眠の魔術師』と呼ばれるほどに自由自在で応用性の高い催眠誘導法を多数開発して、どんなクライエントに対しても短時間で変性意識状態に誘導することが出来たという。

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タグ:心理療法
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[暗示療法(Suggestion Therapy)・催眠療法(Hypnotherapy)の歴史的変遷:フランツ・アントン・メスメルの動物磁気説]

暗示療法(Suggestion Therapy)・催眠療法(Hypnotherapy)の歴史的変遷:フランツ・アントン・メスメルの動物磁気説

ここでは、言語的暗示を用いて心理療法を行う『暗示療法(Suggestion Therapy)』と催眠誘導によって変性意識状態(トランス状態)に導く『催眠療法(Hypnotherapy)』をほぼ同義のものとして説明する。まず、暗示(suggestion)とは何かという事であるが、暗示とは、言語的暗示や視覚的シンボルなどを用いて、特定の観念やイメージを心の中に形成した上で、理性的な判断力を低下させその観念を実現させるものである。

暗示は、言語的暗示や視覚的シンボル、聴覚的刺激によって特定の観念やイメージを形成してその観念の通りに行動を起こさせようとするものだが、行動科学分野の『パブロフの犬の実験』で知られるI.P.パブロフ(I.P.Pavlov, 1849-1936)古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とは異なる。古典的条件付けは身体の生理学的反応を応用した、S-R結合(刺激と反応の結合)の理論である。条件刺激に対して条件反応が反射的に起こるS-R理論では、物理的な対象を知覚することによって条件反応が起こる。その為、暗示のように暗示効果のある言語や視覚的シンボルの観念が刺激になることはない。

暗示効果のある言葉やシンボルのことを『暗示刺激』といい、暗示療法では暗示刺激を与えることで、言語的暗示やシンボルを観念化してそれを半ば無意識的に実現させる。『暗示刺激』に対する観念やイメージの実現を『暗示反応』といい、暗示刺激を受けてから暗示反応を起こすまでの間を『暗示過程』という。意識水準が低下したぼんやりとした状態で暗示反応は起こりやすいので、変性意識状態を利用して催眠暗示や記憶の再生を行う催眠療法との共通性が見られる。暗示療法では、心理臨床家(催眠療法家)が治療効果のある暗示刺激を与える『他者暗示』と、自分自身で暗示刺激を唱導して暗示反応を生み出す『自己暗示』とがある。

近代的な体系化された心理療法としての催眠療法以前にも、催眠状態を利用した催眠の誘導技術はかなり古い時代から存在していて、宗教儀式や古代社会の医術、シャーマニズムの呪術などに用いられていた。最も古い文献上の記録では、古代エジプト王国にまで遡るといわれる。古代エジプト王国や古代ギリシアのポリス(都市国家)では、聖職者階級が祭礼儀式の際に催眠の技術を用いて、巫女や神官を恍惚や忘我のトランス状態へ誘導し、神々からの予言や託宣を得ていたと伝えられる。

18世紀の催眠の歴史を振り返った場合にその端緒となるのが、祓魔術(エクソシスト)を生業として民衆からの強い尊敬と信頼を集めていたオーストリアのガスナー神父(J.J.Gassner, 1727-1779)であり、そのガスナーを反駁することで高い名声を勝ち得たフランツ・アントン・メスメル(Franz Anton Mesmer, 1734-1815)である。しかし、ガスナー神父が行った催眠は、カトリックの神父としての伝統的権威を最大限に活用した宗教的な催眠であり、カトリックに古来からある『悪魔祓い』を通して病気の治療を行う心霊療法であった。

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タグ:心理療法
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2006年08月21日

[アルツハイマー型認知症(老年性・若年性・家族性)とその対処方略(新薬開発の試み)]

アルツハイマー型認知症(老年性・若年性・家族性)とその対処方略(新薬開発の試み)

アルツハイマー型認知症は、1907年にドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー(A.Alzheimer, 1864-1915)が発見した脳の神経細胞(ニューロン)の変性や脳萎縮による内因性の認知症である。

アロイス・アルツハイマーは、近代精神医学の精神病理学の体系化(精神疾患の分類整理と診断基準の確立)に大きな貢献をしたエミール・クレペリン(E.Kraepelin, 1856-1926)の弟子であり、クレペリンが編纂した1910年の精神医学の教科書にアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の疾患名と病態が記載されることになった。

認知症は一般的に65歳以上の高齢者の脳疾患と思われやすいが、18〜64歳の年代で発症する若年性認知症(若年性アルツハイマー)が日本だけでも約3〜5万人ほど存在していると言われる。アルツハイマー型認知症は、その大部分を占める『老年性アルツハイマー型認知症』と少数を占める『家族性アルツハイマー型認知症(FAD)』に分類することが出来る。家族性アルツハイマー型認知症(FAD)は、メンデル型の常染色体優性遺伝を示すアルツハイマー病であり、40代〜60代の初老期に発症しやすい認知症である。

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タグ:老人医療
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[アルツハイマー型認知症(Alzheimer's Disease)と脳血管性認知症]

アルツハイマー型認知症(Alzheimer's Disease)と脳血管性認知症

老人性痴呆(痴呆・ボケ)と呼ばれていた知的能力全般の低下と認知機能・記憶機能の障害を中核とする脳疾患は、2004年12月24日から厚生労働省の取り決めによって『認知症』と呼ばれることになった。認知症は、物事を正確に理解する為の認知機能が衰え、物事の名前や過去にした出来事を覚えておく為の記憶機能が障害される疾患であり、知的能力全般の低下と日常生活能力の喪失、人格の急激な変化(気力の消失と感情の平板化など)を顕著に示すのが特徴である。

認知症が進行すると日時・場所・人物を思い出せなくなる失見当識(見当識障害)が発現して、ADL(Activities of Daily Living, 日常生活動作)ASL(Activities of Social Life, 社会生活行動)に支障が起こってくる。

認知症とはそれまで普通に出来ていた日常生活を送る為の知的能力(認知・記憶・判断)や責任能力を喪失する病気であり、基本的には正常な高次脳機能の低下や喪失を原因として発症する。高次脳機能が低下する原因によって認知症を分類する場合には、『アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease)』『脳血管性認知症』に大きく分けられる。それ以外の認知症として、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)と脳血管性認知症の混合型やレビー小体型認知症などがある。

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タグ:老人医療
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2006年08月07日

[アルコール関連障害(アルコール離脱症候群・アルコール精神病)][ウェルニッケ‐コルサコフ症候群]

アルコール関連障害(アルコール離脱症候群・アルコール精神病)

2.アルコール離脱症候群

アルコールを継続的に摂取し続けると耐性と依存性を生じ、段階的に精神依存の形成から身体依存の形成へと嗜癖問題が深刻化していく。アルコール離脱症候群というのは、習慣性(依存性)が形成されてからアルコール摂取を中断したり減量しようとする時に起こってくる離脱症状(禁断症状)の症候群のことであり、依存性薬物を中断・減薬しようとするときに発症してくる退薬症候群に類似したものである。

アルコールは、他の依存性薬物や麻薬と比較しても非常に強い依存性と耐性を持っているといわれ、いったんアルコール依存症やアルコール精神病が発症するとそれを克服・治療する過程では、ほぼ必ずといっていいほどアルコール離脱症候群の不快な症状が出てくる。

アルコールを中断して48時間以内に発症してくる離脱症状を『早期離脱症候群』といい、その後に続いて起きてくるアルコール離脱に伴う身体症状を『後期離脱症候群』という。早期離脱症候群では、動悸や頻脈、大量発汗、吐き気、食欲不振などの自律神経系症状が起きてきて、続いて、手や指がガタガタと振るえる振戦や筋肉の痙攣、全身性の強直間代性痙攣なども起こってくることがある。代表的なアルコール離脱時の精神症状としては、不安感、焦燥感、イライラ、音や光に対する刺激過敏性、憂鬱感や気分の落ち込み、不眠睡眠障害といったうつ病と共通するような症状が発症してくる。

アルコール離脱して48時間以降かなり長い期間にわたって患者を悩ませるのが、『後期離脱症候群』であり、アルコール精神病の幻覚(小動物・虫・小人の幻視、パレイドリアという室内の壁紙に人の影などを見る幻覚)・妄想(被害妄想や嫉妬妄想)・譫妄・意識障害・見当識障害と極めて近い重篤な精神症状が発症してくる。激しい興奮や怒りを見せて精神錯乱や異常な激昂を示すこともあり、急激な人格変化と攻撃性の亢進にも注意と配慮が必要である。

3.アルコール依存症

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タグ:精神疾患
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[アルコール関連障害と急性アルコール中毒]

アルコール関連障害と急性アルコール中毒

アルコール依存症の状態にある患者が発症する精神病圏に近い特異的な精神疾患を『アルコール精神病(alcoholic psychosis)』と呼ぶ。アルコール精神病には、各種の身体症状と合わせて、知覚・記憶・認知・判断・現実見当識といった精神機能が障害される多様な精神症状が現れる。幻覚妄想などの統合失調症の陽性症状に似た症状や脳に器質的病変が生じて知能の低下や認知の障害が起きる認知症(痴呆)に似た症状が発現することもある。こういった重症度の高いアルコール精神病の症状は、長期的な大量飲酒による連続飲酒発作ブラックアウト(一時的な健忘・記憶喪失)を起こした既往のある患者が発症しやすい。

連続飲酒発作というのは、その人のアルコール摂取量の限界まで飲んでは眠り、起きてはまた飲めるだけ飲んで眠りという連続飲酒パターンを示し、24時間絶えず血中にアルコールが残留している状態を維持する発作のことである。アルコール依存症の重症例には、必然的に連続飲酒発作と禁断症状がセットに見られるようになり、アルコールが切れると手・指が震えたり、強烈な不安感や焦燥感を感じたり、幻覚妄想の精神症状が現れるのでそういった不快な苦しい禁断症状を逃れるためにアルコールを摂取しなければいけなくなる。アルコール依存症とは、自分の意志や決断と無関係に、飲むという行為をコントロールすることが出来ないという強迫的飲酒を特徴とする嗜癖(依存症)の病理なのである。

アルコールの過剰摂取と強迫的飲酒による嗜癖(依存症)形成は、『人間の身体状態・精神状態・人間関係・家族関係・職業活動・社会的信頼』の全ての領域に深刻な障害と甚大な損失をもたらすが、こういったアルコール摂取によって生じてくる障害や問題全体をまとめて『アルコール関連障害』という。アルコール関連障害には、アルコール精神病を含めて以下のようなものがある。

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タグ:精神疾患
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[アルコールの作用と代謝][アルコール依存症(alcohol dependence)チェックリスト]

アルコールの作用機序と代謝分解

アルコールとは、化学的にはエチルアルコールのことを指し、一般的には、ビール・日本酒・焼酎・ワイン(果実酒)・ウイスキー・ウォッカなどのアルコール飲料のことを意味する。アルコールが含有されている料理酒やみりんなどもアルコールの一種だが、これらで依存症や中毒を起こす危険性はまずないのでアルコール関連疾患や嗜癖を考える時には無視して良いだろう。

アルコールの薬理作用には、麻酔作用・催眠作用・陶酔酩酊作用などがあるが、一過性で感情興奮や焦燥感などの精神運動亢進をもたらすこともある。アルコールは、『アルコール依存症(alcohol dependence)』の項目で書いたように、精神依存と身体依存という依存性(習慣性)を持ち、向精神薬(マイナートランキライザー)と同様に、飲めば飲むほど薬理作用が弱まるという耐性を持っているので日常的に飲酒していると自然に飲む量が増えていくという性質を持つ。

アルコールの身体への吸収は早く、およそ数分間で胃・十二指腸・小腸から血中に取り込まれ、門脈を通ってアルコールを代謝分解する肝臓へと運ばれる。肝臓は身体に入ったアルコールや有害物質に対する解毒作用を持っているが、肝臓の肝細胞にはエチルアルコールを分解してアセトアルデヒドに変える『アルコール脱水素酵素』『ミクロゾームエタノール酸化酵素』が含まれている。

アセトアルデヒド自体は強い毒性作用を持つ物質であり、『顔が赤くなる・吐き気・頭痛・気分が悪い・二日酔い・悪酔い』などの原因物質であり、一般にお酒に強い人は弱い人に比べてアセトアルデヒドを無毒化して酢酸に変える『アセトアルデヒド脱水素酵素』の量が多いとされている。アルコールの大部分は肝臓で分解され無毒化されるが、極微量が汗・尿・呼気の中へと排出される。

肝臓のアルコール代謝能には個人差があるが、平均身長と体重の人(体重1キロにつき1グラム/1時間で分解できる)を考えると、1時間にだいたい5〜8グラムのアルコールを分解することが出来るといわれる。しかし、日本人は平均的に、アルデヒド脱水素酵素を余り多く持たない人や全く持たない人(アセトアルデヒド脱水素酵素欠損症=顔面紅潮‐フラッシング型)が多くいるので、無理して「一気飲み」などをすると急性アルコール中毒によって死亡することもあるので大学入学時の歓迎コンパなどでは十分な注意が必要である。

通常、アルコールの血中濃度が0.3%を越えると死亡する危険性があるが、『ほろ酔い:0.02〜0.1%、酩酊:0.1%〜0.2%、泥酔:0.2%〜0.3%、昏睡:0.3%〜0.4%、死亡:0.4%以上』という「血中濃度別の酔いの段階」が定義されている。アルコールによる酔いの薬理作用は、精神機能と身体運動機能に影響を及ぼし意識水準を低下させて、運動機能を麻痺させるような麻酔作用を持つので、自動車の運転や機械の操作など危険な作業をしてはならない。

一般的にアルコールの麻酔作用は、『高次脳機能(思考・判断・創造・計算)を司る大脳新皮質』→『本能的情動を司る大脳辺縁系』→『生命維持機能を司る脳幹(延髄)・脊髄』の順番で効き目を表してくることになるが、生命維持機能を持つ脳幹や脊髄に麻酔作用が及んできたら危険なので飲酒を即刻中断すべきである。

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タグ:精神疾患
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[アルコール依存症(alcohol dependence)]

アルコール依存症(alcohol dependence)

過去には、慢性アルコール中毒(アル中)と言われた病的なアルコールへの依存状態を『アルコール依存症(alcohol dependence)』という。アルコール依存症には、アルコールを摂取しないと何となく落ち着かないという軽度の症状、アルコールを摂取しないと手の振戦や発汗などの身体症状が出る中等度の症状、そして、臓器疾患による死亡リスクがある極めて重篤な症状の段階があるが、断酒時に、手・指の振るえが出たり痙攣が起こったりする身体依存が形成されている場合には、アルコール依存症に対する断酒薬(抗酒薬療法)や心理療法など早期治療が必要になってくる。

アルコール依存症は、一般的に『飲みたいという欲求を抑えられない』という精神依存が形成されて、それに続いて、『飲まないと体調が優れない。手や指が振るえて不快感がある。重症化して痙攣を起こしたり認知障害が起きてくる』という身体依存が形成される。

アルコールが手に入りやすいこともあり、比較的誰にでも発症する危険性のある病気であるが、重症化すると、精神病同等(アルコール精神病という)の深刻な幻覚や妄想に襲われて、最悪の場合には、多臓器不全などで死亡することがある危険な病気でもある。日本には医療機関や相談施設、アルコール依存症の自助会を訪れないアルコール依存症患者が数多く言われ、推定で300万人以上のアルコール依存症患者がいるのではないかと言われている。成人の男女の約3〜5%に発症すると言われている精神疾患(嗜癖・依存症)だが、ストレス耐性の弱い人や孤独感や抑うつ感を日常的に強く感じている人、人生全般に対して虚無感を感じている人が罹りやすい疾患である。また、アルコール依存症の特徴として『病識がない』ことが挙げられ、自分で自分が病気であることを認められない『否認の病気』とも言われる。

『自分はアル中ではないし、飲みたいから飲んでいるだけで止めようと思えばすぐに止められる』という口癖があるアルコール依存症患者は多いが、実際に、行動療法などを用いて酒量を減らす試みをしてみても、なかなか思い通りにアルコールの摂取を減らせず、『一定レベルまで減らしたと思ったら、また元のレベルの酒量に戻ってしまう』という感じで一進一退を繰り返すのが現実である。しかし、アルコール依存症は長期化すると、肝臓障害(肝臓ガン・肝硬変)、消化器障害(胃ガン・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・大腸ガン)、糖尿病、心臓疾患、神経疾患、アルコール精神病などを引き起こす進行性の致命的疾患であり、患者の寿命を大きく縮ませる。アルコール依存症患者の平均寿命は、50歳代前半という統計結果が出ているので、周囲の家族や友人がアルコール摂取の異常に気づいたら早期に医療機関や専門相談機関に本人を連れて行ってあげることが大切である。

アルコール依存症に陥るきっかけは様々であるが、飲酒によってストレス解消をしたり嫌な出来事や不快な記憶を忘れようとする人が罹りやすい病気であり、『現実状況からの逃避欲求をアルコール摂取で代理満足させる』『耐え難い日常生活(職場や家庭)のストレスや虚しさを酒で緩和する』というのがアルコール依存症の主要な心理機序である。会社の行事や友人関係の付き合いで飲酒する機会が極端に多い人も、耐性が形成されて依存症になりやすくなる。前述したように、依存性の形成は『精神依存→耐性・依存性の強化→身体依存→禁断症状→休みなく飲み続ける飲酒行為の常態化』という形で進行し悪化していく。

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タグ:精神疾患
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2006年08月04日

[大乗仏教の唯識論に見る阿頼耶識(アラヤ識)][深層心理学的特徴を持つ唯識論の種子薫習]

大乗仏教の唯識論に見る阿頼耶識(アラヤ識)・深層心理学的特徴を持つ唯識論

大乗仏教の唯識派では、「八識」という心の機能を想定し、外的世界に存在する事物は「識」が生み出した虚妄に過ぎないと説く。哲学的理論で唯識派(唯識,唯識論,唯識学派)を分類すると、「物理的客体は精神的主体によって生み出され、この世界の根本原理は精神(観念)である」とする「唯心論(観念論)」に分類されるが、厳密には、唯識論と唯心論は似て非なるものである。唯識論は心の存在そのものも虚妄や我執として否定し、心は「空」であると説く「一切皆空」の立場をとるので、この世界の事象を生み出す本質的原理として「心の実体性(存在)」を認める唯心論とは異なる考え方なのである。

唯識では、客観的実在としての事物・現象の存在を否定し、この世界に存在する全てのものは「心の機能(識)」が生み出したのだという基本認識を持っている。唯識の識は8つあり、これを「八識」というが、この世界にあるありとあらゆる事物を生み出す原因となった識が阿頼耶識(アラヤ識)なのである。阿頼耶識は末那識と並んで、人間の深層心理あるいは無意識に該当するので、フロイトの精神分析学の無意識概念と対象比較することも出来る。しかし、阿頼耶識のある無意識とは、この世界の全ての存在の本質的根拠がある場所で、過去から未来に至る全ての因果が収められている場所なので、フロイトの個人的無意識よりも遥かに壮大で神秘的な意味を帯びた概念である。

唯識論の起源は「西遊記」のエピソード(空想的な物語)の題材とされた玄奘(三蔵法師)が訳出編集した「成唯識論」にあるが、その原典は世親(ヴァスバンドゥ)の「唯識三十頌」である。唯識論という基本的な理論体系そのものを着想したのは、西北インドガンダーラ地方で唯識派の学僧であった無着(アサンガ)世親(ヴァスバンドゥ)の兄弟である。無着の代表作として『摂大乗論(しょうだいじょうろん)』、世親の代表作として『唯識三十頌』『唯識二十論』『浄土論』がある。

唯識論を基盤とする1つの大乗仏教宗派を開いたのは、玄奘三蔵の弟子であった慈恩大師である。慈恩大師が開いた法相宗は、物事の存在の形式やあらゆる事物の存在根拠、存在の区分や分類を学究する唯識の宗派という意味が込められている。法相宗の基本教義を簡潔に表現すれば、「一切皆空」「諸法空相」であり、この世の中にあるありとあらゆる全ての事象は「八識」によって生み出されるが、その「八識」さえも結局は本質や実体を持たない「空」に過ぎないと考える。慈恩大師の法相宗の教えは、南都六宗の一宗派として日本に伝来したが、現在残っている法相宗の総本山は、興福寺薬師寺の2つになっている。

八識には「1.眼識, 2.耳識, 3.鼻識, 4.舌識, 5.身識, 6.意識, 7.末那識(まなしき), 8.阿頼耶識(あらやしき)」の8つの心の機能が定義されている。眼・耳・鼻・舌・身の識というのは一般的な五感の感覚・知覚機能のことを意味していて、意識とは想起可能な意識領域の思考や解釈の心の働きのことである。

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タグ:仏教
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2006年07月14日

[アミタール分析(amytal analysis), アミタール面接技法][バルビツール酸系とベンゾジアゼピン系の催眠鎮静薬]

アミタール分析(amytal analysis), アミタール面接技法

精神医学領域の古典的面接技法(分析技法)として、バルビツール酸系(バルビツール酸化合物)の鎮静薬(麻酔薬)を漸進的に静脈注射して行う『アミタール分析・アミタール面接技法』がある。強力なバルビツール酸系鎮静薬(睡眠薬)を用いて、意識水準を低下させ緊張を和らげて実施するのがアミタール分析であるが、最近の精神科面接では殆ど行われなくなっている。アミタール分析(麻酔面接)で得られる治療的効果が、薬剤の副作用の不利益を上回ると判断される時には実施されることもある。

アミタール分析の特徴は、鎮静薬の薬理作用によって意識をぼんやりとさせることで、半覚醒の変性意識状態へと患者を導くということである。その結果、面接中の精神的緊張を和らげ、自我防衛機制の抵抗反応を弱めることにつながる。アミタール分析を受ける患者は、緊張感や焦燥感が和らいだリラックス状態になることで、ありのままの素直な感情や無意識に抑圧(忘却)していた記憶を表現しやすくなるのである。

アミタール分析の作用メカニズムは、『意識の覚醒水準を低下させて、心的緊張・防衛機制・抵抗感を弱めることで、記憶の想起や感情の解放が起きやすくなる』ということである。日常的に思い出しにくい不快な記憶や自然な情動を想起させるという作用機序を考えると、アミタール分析の適応症には以下のような精神疾患(精神障害)があると考えられる。元々、アメリカのベトナム戦争帰還兵に多く見られた『戦争神経症(戦争のトラウマによるPTSDのフラッシュバックや環境不適応に繋がる強烈な恐怖感・不安感・睡眠障害)』の治療に用いられたのがアミタール分析の始まりである。

解離性健忘を含む心因性健忘、過去のトラウマと関係したPTSD(心的外傷後ストレス障害)、児童虐待のトラウマによる精神症状、過剰適応による心身症(アレキシシミアを伴う心身症)などがアミタール分析の効果を期待できる精神疾患・心理的問題といえるが、現在ではアミタールなど睡眠鎮静薬を用いて心理面接(心理療法)を行うケースは極めて少ない。また、十分なインフォームド・コンセントを成立させるだけでなく、心理面接場面に、医師以外の付き添い(看護士と親族など)がいないと職業倫理に関する問題やセクハラの疑惑に医師・患者が巻き込まれる恐れもある。

バルビツール酸系の薬剤は、精神科診療で短時間作用型の強力な催眠誘導薬(睡眠薬)として処方されることが多かった。鎮静と催眠、筋弛緩の作用が強力であることから、バルビタールやチオペンタール(商品名:ラボナール)は麻酔薬として静脈注射されることもある。また、抗けいれん薬や抗不安薬として精神神経科で処方されることもある薬剤で、中枢神経系の活動性を強く抑制する作用がある。

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2006年07月10日

[土居健郎の『甘え理論』(Amae theory)と甘えの病理の観点と社会不安障害]

土居健郎の『甘え理論』(Amae theory)と甘えの病理としての社会不安障害

乳幼児期の精神発達過程では、母親と赤ちゃんが自他未分離な一体感に包まれた『未分化期(正常な自閉期・正常な共生期)』を経て、3歳頃までにゆっくりと母親から心理的離乳を遂げていく。乳幼児は母親と密接にくっついて『アタッチメント(愛着)』を形成し、心理的な安心感や依存心の充足を得ている。この母子密着のアタッチメント(愛着)や一方的依存心を少しずつ弱めていく過程が『分離・個体化期(5-36ヶ月頃)』と呼ばれる時期に当たる。

分離・個体化期の発達課題とは、『母親と離れている感覚を一定時間以上持続できる能力(心理的離乳)の獲得』であるといえる。甘えの心理が強い人の場合には、この分離の事実を受け容れることが出来ず、母親との分離に伴う孤独感や不安感を退行をはじめとする様々な自我防衛機制を使って止揚(アウフヘーベン)しようとするのである。即ち、甘えの人格構造を持つ人は、分離の不安や苦痛を回避するために、分離以外の甘えや依存によって問題を解決し、外見上の心理的自立を装う傾向が見られるということである。

無意識領域のエス(原始的本能)の力動を起源とする『甘えの心理』は、詰まるところ、『母親との幻想的な一体感』に基づく安心感や信頼感を延々と保持し続けて、他人に依存的な欲求を満たしてもらおうとする心理だといえる。甘えの心理構造を持つ人物の特徴として、『自立心・主体性・責任感が相対的に低い』『他者に人生の責任や選択を依存して委ねようとする』『自分の感情を孤独な状況でコントロールできず、困難を一人で解決できない』『相手の反応一つで“僻む・拗ねる・いじける・恨む・こだわる・嫉妬する”といったアンビバレンツな葛藤状態に陥る』というものがある。

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[土居健郎の『甘え理論』(Amae theory)に基づく日本人論とカルチャーショックの影響]

土居健郎の『甘え理論』(Amae theory)に基づく日本人論とカルチャーショックの影響

土居健郎(1920-)は、東京大学医学部卒業後にアメリカのメニンガー精神医学校サンフランシスコ精神分析協会に留学した。土居健郎は、A.S.ニイルの著作集の翻訳家として知られる霜田静志らと並んで、日本人としては最も早い時期に、フロイトの精神分析学(精神分析療法)を学んだ人物の一人である。

日本の精神分析史の黎明期をささえた土居健郎が著述した“「甘え」の構造(1971)”“続「甘え」の構造”は、日本人特有の精神構造である「無意識的な依存欲求に基づく甘えの構造」を分析したものである。“Amae Theory”の理論概念として海外にも輸出され、「甘え理論」発表当時は画期的な日本人論として国際的に流通した。「甘え」の構造は、1971年の初版刊行から30年以上が経過しているが、今までに、英・仏・独・伊・韓国・インドネシア語などに翻訳されている歴史的価値のある著作である。

現在では、本能的欲求を根源的動因とする甘えの心理特性は、日本人固有のものではなく、日本人以外の欧米人やアジア・アフリカ・中南米の諸民族にも見られるおよそ普遍的な心理であると考えられている。しかし、日本のような『寛容性を前提とする母性原理』『母子密着や育児ノイローゼを招きやすい母性信仰』の強い国では、母親の保護や世話を求めるマザーコンプレックスに由来する甘えの人格構造が強化されやすい傾向はあるかもしれない。

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2006年07月09日

[情動解放のアブリアクション(abreaction)と治療的作用をもたらすカタルシス(catharsis effect)]

情動解放のアブリアクション(abreaction)と治療的作用をもたらすカタルシス(catharsis effect)

抑うつ感や不安感という心理的苦悩を緩和して解決に導く為のカウンセリング・心理療法では、普段の日常生活の中で抑圧している『強烈な感情(情動・情緒)』を発散するアサーティブ(自己開示的)なコミュニケーションが重視される。日常の対人関係や生活環境で表現することの出来ないありのままの情動を解放することを『アブリアクション(abreaction)』といい、一定レベル以上の感情解放であるアブリアクションはカウンセリングの面接構造の中で半ば必然的に生起してくる。

情動の解放や感情の表現という意味でのアブリアクションが全く見られない心理面接は、カウンセリング本来の治療効果を発現させることが難しい。クライエント側が、過去の苦痛・不快を再体験したくないために感情を過剰抑圧しているケースでは、直接的に全身から溢れ出してくるような強烈なアブリアクションは起こり難くなっている。カウンセラーとラポール(相互的信頼感)を形成できない場合にはクライエント側に問題があることもあるが、その多くはカウンセラー(心理臨床家)とクライエントの相互的コミュニケーションの阻害やフランクな関係性の停滞によるものである。

クライエント側が、過去の出来事の記憶やその記憶に付随した不安・孤独・恐怖・嫌悪などの感情を率直に話してくれない場合には、カウンセリングの技法やカウンセラーの話術・関係の築き方をまず見直してみることが必要になるだろう。カウンセラーとクライエントの間に、歩み寄りが困難な人格的な相性の悪さがあり、性格的な不一致の程度が激しい場合には、カウンセリングを継続し続けることで心身症状を悪化させたり気分を落ち込ませることもある。

カウンセラーはクライエントの側の欠点・短所ではなく、利点・長所を積極的に見出すようにする面接の組み立て方を工夫しなければならないが、何よりも大事なのは、カウンセラーに胸襟を開いて安心して話せる心理面接の場を作ることである。率直な意見やありのままの感情を表現しても批判されない(否定されない)面接空間の雰囲気を醸成することで、クライエントは余ほどカウンセラーとの性格的相性が悪くない限り段階的に『アブリアクションの言動や自己洞察の報告』を見せるようになる。

心理社会的ストレスによる身体疾患を抱えた責任感・義務感の強い心身症患者に多い『アレキシシミア(失感情言語症)』の症状が見られる場合には、無理やりにクライエントの感情や気持ちを聞きだそうとするのではなく身体の不調や睡眠障害などをとっかかりにして、次第に感情的な問題に接近するようにすると良い。

アブリアクション(情動解放)は、カウンセリングのカタルシス効果(感情浄化・情動排泄によるストレス低減や精神鎮静の効果)を生み出す前提になるものだが、全く同一のものというわけではない。TPO(時・人・場面)を選ばない暴発的で無軌道なアブリアクションは自傷行為に近いものとなる。

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2006年06月19日

[学習意欲を高めるアフェクティブ・エデュケイション・プログラム(affective education program):生涯学習と職業キャリアを支援する社会制度の整備]

アフェクティブ・エデュケイション・プログラム(affective education program)

『情意教育』とは、「学校教育の学習課題や指導内容」に対する態度・感情・動機付け・心構えを前向きに成長発展させるための教育のことである。学校の教育課程や企業のキャリアアップ、心理臨床的なキャリア・カウンセリングで重視される『情意』とは、課題達成や目標到達に関係する『動機付けや積極的な態度を含む感情機能』のことである。

学校教育の生徒評価や企業活動の社員評価では、「成績考課」「能力考課」と合わせて勉強や仕事に対する前向きな態度や意欲的なモチベーションを評価する「情意考課」を行うこともあるが、結果を数量化可能な「成績考課」と比較すると結果を数量化できない「能力考課・情意考課」には評価者の主観的判断や恣意的感情が介在しやすいという問題がある。

情意考課を行う場合には、一般的に、生徒・社員・職員の『積極性・意欲・責任感・協調性・興味関心・態度』などを対象にして査定を行うことになる。

アフェクティブ・エデュケイション・プログラム(affective education program) とは、1967年に計画された情意教育プログラムであり、黒人層(ネイティブ・アフリカン)や貧困層などマイノリティの格差改善をしようとするアファーマティブ・アクション(差別是正政策)の一環としての効果も期待された。

この諸外国に先駆けて実施された画期的な情意教育・アフェクティブ・エデュケイション・プログラム(affective education program)は、アメリカのペンシルバニア大学の教育学部教授ニューバーグ(N.A.Newberg)が中心となって、フィラデルフィア市教育委員会の教育課程指導普及部の中に設立される事となった。

アフェクティブ・エデュケイション・プログラム(affective education program)は、連邦政府の予算配分による資金援助を受けて行われたもので、当時、十分な義務教育を受けることが出来なかった黒人層やヒスパニック層、貧困層の教育水準を高めるというアファーマティブ・アクション(差別格差是正政策)としての意味合いも持っていた。貧困階層(経済的マイノリティ)の厳しい生活から抜け出すには、専門職(医師・弁護士・政治家・技師)・公務員(国家・地方)・会社員(安定企業のサラリーマン)といった安定的な所得がある職業に就職することが望ましい。1970年代くらいからアメリカ連邦政府は、経済的な理由で十分な教育を受けられない子ども達が将来、経済的に困窮しないように、就職につながる学習活動に興味と意欲を持たせようとする情意教育を行いだしたのである。

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[都会的なアーバン・パーソナリティ(urban personality)・農村的なルーラル・パーソナリティ(rural personality)・田舎的なラスティック・パーソナリティ(rustic personality)]

都会的なアーバン・パーソナリティ(urban personality)・農村的なルーラル・パーソナリティ・田舎的なラスティック・パーソナリティ(rustic personality)

『産業革命とアーバニズム』に関連して、都市的な性格特性と生活様式(ライフスタイル)に関係して形成されるアーバン・パーソナリティ(urban personality)についての説明を簡単に補足しておきたいと思う。

日本や欧米の先進国では、近代社会以降、農林水産業など第一次産業に従事する労働者の数は減少し、営業・企画・販売・接客などサービス業全般が含まれる第三次産業に従事する国民の数が急激に増大した。日本では20世紀半ば頃までは、工業化の影響を受けて製造業(鉄鋼業・繊維業・化学産業・造船業)を中心とする第二次産業が隆盛したが、20世紀末から現在に掛けてサービス業に従事する労働人口が大きくなっている。

都市的な人格構造であるアーバン・パーソナリティは、物理的に豊かな都市環境の影響だけでなく、接客・販売・営業のサービス業、金融サービス業、証券業、投資ビジネス(ファンドビジネス)といった第三次産業の職業活動に従事することの影響も受けて形成される。

農業・漁業・林業といった第一次産業の労働は農村地帯の小規模な共同体(村落)を基盤として行われ、身近な家族親族や同郷の隣人と一緒に協力して働くことになる。

『都市的パーソナリティ(urban personality)』と対比される『農村的パーソナリティ(rural personality)』の特徴は、『農林水産業など相互扶助の精神に基づく協働形態・相互監視機能となる顔見知りの同郷人への関心や干渉の強さ・濃厚な家族親族関係と密接な隣人関係(近所付き合い)・農村共同体特有の伝統(慣習・宗教・行事)の存在・効率性や生産性よりも平等性や共感性を重視する傾向』といったことで表すことが出来る。

現在では、農村部の過疎化と都市部の拡大化、メディア(テレビ・インターネット・書籍雑誌)の発達によって、農村部と都市部の文化的な境界線は必ずしも明瞭ではなくなっている。農村部から都市部へと流入する若年層の人口も大きくなっており、地方特有の方言や習慣、伝統も衰退している風潮がある。

その為、重要文化財や無形文化財、人間国宝としての価値を有する『地方固有の稀少文化・歴史的建築物・伝統行事・工芸技術』を保存して継承することが、現代の国家(地方自治体)・国民の重要な責務となっている。20世紀後半以降の先進国では、農村地帯の衰退と都市化の進行によって、国家と国民の価値観全体が『合理性・効率性・個人主義・自由主義・経済優先』に象徴されるアーバン・パーソナリティの様相を帯びて来ている。

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2006年06月12日

[アパシー・シンドローム(apathy syndrome)と退却神経症],[進路選択の困難とフリーター・NEET・ひきこもり]

アパシー・シンドローム(apathy syndrome)と退却神経症

アパシー(apathy)とは、アイデンティティ拡散状態と深い関係がある『無気力・無感動・無関心・無快楽(アンヘドニア)』を主要な特徴(精神的態度)とする症候群のことである。

一番初めにアパシー概念を精神医学領域に持ち込んだのは、ハーバード大学の精神科医R.H.ウォルターズ(R.H.Walters)である。アパシーの原義は、ギリシア語の“apatheia(アパテイア)”である。アパテイアとは、物理的な快楽に否定的な禁欲主義を説くストア派で使われた用語で、世界の根本原理を観照(テオリア)する平静な精神状態のことを意味した。日本語訳では『意欲減退症候群』と呼ばれることもある。うつ病による抑うつ感や億劫感、憂鬱感、無気力といった精神症状を精神運動抑制というが、アパシーの無関心や無気力はうつ病の抑うつ感ほど重篤なものではない。

また、アパシーそのものが精神医学的に診断される精神疾患という訳ではないが、アパシーの心理状態が慢性化して遷延した場合には神経症水準の不適応症状を示す場合がある。精神科医の笠原嘉(かさはらよみし)が定義した『退却神経症』という社会不適応の病態は、仕事や学業に対して無関心や無気力を示すアパシーの基本症状に類似している。

一般的に、アパシー・シンドローム(意欲減退症候群)は、スチューデント・アパシー(学生の無気力症候群)という心理臨床領域の用語があるように、10代後半(ハイティーン世代)の青年期に発症しやすい抑制的な精神状態である。

アパシーに類似した精神症状を発現する精神病の症状として、顕著な無気力や意欲減退を示すうつ病の精神運動抑制がある。更に、他人(人間関係)や社会への興味を全て失い、感情体験が麻痺してしまう統合失調症の陰性症状も、無気力を主訴とするアパシーに似た部分がある。しかし、多くの青年期にある人たちが経験するアパシーは、統合失調症やうつ病といった深刻度の高い精神病症状とは異なる。

その為、本人も周囲の家族・友人も、殊更に精神の異常性や病理性を気にする態度は控えたほうが良く、アパシーには不必要な薬物療法を受けるリスクも低くなる。青年期に発症するアパシー・シンドロームの主要な障害は『アイデンティティ確立の遷延(モラトリアム)による空虚感・不安定感』であり、アパシーを克服する為の中心的課題は『心理社会的自立につながるアイデンティティの獲得』となる。

社会環境の中で自分が担うべき役割や仕事(学問)とは何なのかを逃避することなく考えることが大切であり、自分が出来そうな小さな目標から実現の為の努力を続けていくことが重要になってくる。アパシーとは、人間が他者と一緒に社会生活を営んでいく上で、直面せざるを得ない『本業(仕事・学業・職業)に対する不安・迷い・後悔』が非常に強くなっている状態であり、逃避・否認・抑圧・退行といった精神分析的な防衛機制が極端に強く働いている状態でもある。

『アパシーの無気力・無関心』『精神病の精神機能の異常』の違いは、アパシーは本業(社会的な義務と関係する職業活動や学業行為)に対する意欲や興味を失う『部分的な選択的退却』を示し、統合失調症の陰性症状などの精神病は、本業も趣味も遊びも含めてあらゆる事柄に対する欲求や意欲を失う『非選択的な全面的退却』を示すということである。うつ病特有の精神症状である『興味や喜びの喪失』は、『何もしたいと思わないし、何をしても今までのような喜びや面白さが感じられない』という主訴に象徴される全面的な喜びや楽しみの喪失症状である。

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2006年06月09日

[アノミー(anomie)],[デュルケームの『自殺論』におけるアノミー的自殺]

アノミー(anomie)

中心的価値観や強制力のある規範を喪失した社会的状況であるアノミー(anomie)とは、ギリシア語のアノミア(anomia, アノモス)に語源を持つ概念である。フランスの社会学者エミール・デュルケーム(E. Durkheim, 1858-1917)によって『無規範状態・無師範状態・神法の無視・道徳価値の混乱』といった意味を持つ専門用語として社会学領域に持ち込まれた。

実証主義の研究手法を社会学に導入しようとしたデュルケームは、社会学機能派を創始して社会環境の要因が個人の行動の生起に与える作用を重視した。デュルケームは著作の『自殺論』の中で、産業革命を経た近代資本主義社会では、際限のない欲望とその挫折、他者に干渉されない自由と自由ゆえの孤立感によって『アノミー的自殺』を行う個人が増加すると主張した。

アノミー的自殺の問題だけでなく、社会変動や環境条件が与える犯罪行動(逸脱行動)への影響を説明する概念としてもアノミー(anomie)は援用することができる。精神的な自由と経済的な繁栄を謳歌する現代社会に漠然と瀰漫している倦怠感と空虚感、生きる気力の減退感の原因として、社会的諸規範の喪失であるアノミーを考えることも出来る。社会全体で共有される普遍的な価値観は現代社会には存在せず、個人の行動を規制する禁欲的な宗教的規範といったものも影響力を失っている。

他者と物事の価値を共有する為の基準が、法規範(罰則)や貨幣(金銭)などに限定されてきており、生活方針や人生の意義を大枠で規定する『社会的な価値観・世界観・倫理観・宗教観』などは自由を制限する煩わしいものと考えられるようになった。

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[ANOVA(分散分析法, Analysis Of Variance)]

ANOVA(分散分析法, Analysis Of Variance)

分散分析法(ANOVA, Analysis Of Variance)とは、統計学的根拠を得る心理統計学分野で利用可能な『量的研究の統計的解析法』の一つである。ANOVAは、ある実験群の連続データの変化を調査したり、複数の実験群(サンプル)間の傾向や特徴を調査したりする場合に用いることができ、実験計画の統計学的な有意性を検証することが出来る。

データを測定する実験群(サンプル群)が2つである場合には、その解析手法は『t検定』と同一のものになる。分散分析法(ANOVA)では、一つの実験群の時間経過によるデータの変化を調査する『一元配置法』や複数の実験群・グループの間にある傾向や特徴の違いを抽出する為に同一のテストを全てのグループに行う『二元配置法』、複数の実験群・グループの間にある傾向の違いを調査する為に異なるテストを異なるグループに対して適用していく『ラテン方格法』などがある。

分散分析法(ANOVA)では、全ての群を比較していくのではなく、時間経過(要因A)、集団間(要因B)、テスト間(要因C)、地域間(要因D)のように、『要因による効果』を測定するのが主要な目的となる。分散を利用して複数群の平均値を分析することに特徴があり、これを『多重比較検定』と呼ぶ。

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[アニミズム(animism)と一神教の宗教観の対立][7歳以前の子どものアニミズム的な世界認識]

アニミズム(animism)

アニミズム(animism)『精霊崇拝・汎霊説・物活説』と訳される原初的な宗教感情で、生物(生命活動を行う有機物)と非生物(無機物)の全てに霊魂や神性、感情を認める思想である。

アニミズムという用語は文化人類学の宗教研究のテクニカル・ターム(専門用語)として使われるようになり、19世紀に、イギリスの人類学者E.B.タイラーが現在使用される汎霊説(全てのものに霊性を認める思想)の意味でアニミズムを用いてそれが一般に普及したとされる。アニミズムとは、自然界にある森羅万象の全てを擬人化して、生命体以外の物質にも霊魂や精神の存在を認める宗教的感性のことである。動かないもの、意思表示しないもの、目に見えないものにも生命や感情があるとする自然観を前提としている。

一神教のキリスト教の影響を強く受けるようになる4世紀以降の西欧世界では、霊的・精神的なものは、物質的・肉体的なものから区別され、霊性によって『物質である肉体』に生命の尊厳と機能が吹き込まれると考えられるようになった。16世紀に生きた哲学者ルネ・デカルトも、延長(物質)と精神からなる心身二元論によって世界の基本構造を認識し、非生物である物質(延長)に生命体特有の精神や霊性は宿らないと考えた。

アニミズムに基づく自然崇拝的な感情は、『非生物である自然・物質』を客体化(モノ化)してしまう機械論的自然観によって次第に薄れていった。また、キリスト教やユダヤ教、イスラム教など一神教の世界観は、アニミズムが提起する多神教や汎神論の世界観と真っ向から対立するものである。キリスト教では、全知全能の神がこの世界にある全てのモノ(森羅万象)を創造したという世界観が前提にあり、巨岩や大木、清流などに神聖性を認めるアニミズムの宗教観は無知な蛮族が持つような異教的感性であるとして排斥されるようになる。

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