イメージ療法とは、内面世界に湧き上がってくる『視覚的・感覚的・情緒的なイメージ』を利用して心理的なリラクゼーションや無意識的葛藤の気づき(洞察)を得ようとする技法である。
イメージは、言語と同じように人間の精神内界において意味内容をもつ表象(presentation)である。表象(presentation)とは、知覚内容・感情体験・記憶機能に由来して、直観的に心の中に形成される『外的対象の心像』である。
表象とは、『精神内界で何かを表現するもの』であり、対象の形態や意味といったものを包摂している。表象に類似した概念・理念と比べると、主観的な要素が強いのが特長であり、表象は、その場で反射的に形成される心像やイメージとしての意味合いを強く持っている。
大きく分類すると表象にはイメージと言語があり、言語は『意志疎通の為の意味』を包摂している部分が大きく、イメージは『視覚形態・情緒体験』を包摂している部分が大きい。イメージ療法を広義に考えた場合には、ユング心理学(分析心理学)のアクティブ・イマジネーションの技法やナンシー学派以来の催眠療法なども含むことになる。
ユング心理学のイメージに関する技法や理論について知りたい人は、『ユング心理学のアクティブ・イマジネーション(active imagination)』と『ユング心理学のイマーゴ(Imago)』を参照して下さい。
上述したように、イメージ療法は、クライエントの被暗示性を亢進させて実施する催眠療法とも関係があり、催眠誘導の言語的暗示や呼吸調整(心身弛緩)によるリラクセーションによって意識水準(心理的緊張の覚醒水準)を低下させると『記憶・情緒・人間関係と結びついたイメージ』が浮かび上がりやすくなる。
柴田出が創始したイメージ分析療法(Image Analysis Therapy)は、ここまで説明してきたイメージ療法を統合的に体系化したものであり、心身のリラクセーション効果と精神分析による過去の情動記憶の整理を目指すものである。イメージ療法の理論・技法に『自律訓練法の心身弛緩、行動療法の恐怖・不安に対する脱感作、精神分析の無意識の洞察』を付け加えて包括的な作用機序を持つ心理療法にしたものがイメージ分析療法(Image Analysis Therapy)だといえる。
続きを読む