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2017年01月27日

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

1943年に、オーストリア・ハンガリー帝国生まれのアメリカの精神科医レオ・カナー(Leo Kanner,1894-1981)が、社会性(対人関係)やコミュニケーション(言語能力)が強く障害されて社会生活が困難になる『カナー型自閉症(知的障害を伴う低機能自閉症)』について論文で発表している。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

翌1944年、ハンス・アスペルガーは現在のアスペルガー障害に該当する発達障害の一群のことを『自閉的精神病質』という疾病概念で紹介している。自閉的精神病質の特徴は『共感能力の欠如(人の気持ちや態度が分からない)・友人関係を作る能力の欠如・一方的に話し続ける会話(心の理論の障害)・特定の興味関心への極めて強い集中(固執)・ぎこちない動作』などであった。レオ・カナーの自閉症と比較すると、自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)には『知的障害・言語障害(言語発達の遅れ)がない』という違いが見られた。

自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)の症例について書かれたH.アスペルガーの小児精神医学の論文(1944年)は長きにわたって多くの人々に知られることはなかったが、イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)が1981年に、H.アスペルガーのドイツ語で書かれた論文の内容を英語圏に翻訳して紹介したことから英米の研究者・人々にも広く知られるようになっていった。

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2016年05月12日

[ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』3:野郎ども(不良)はなぜ自発的に肉体労働をしたのか?]

ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』3:野郎どもはなぜ自発的に肉体労働をするのか?

野郎どもは基本的に仲間との連帯や分配を大切にする『集団主義者』であり、地道な勉強・学歴によって自分だけが優位な地位や高い収入を得ようとする(過去の仲間集団から出世して離れていこうとする)『個人主義的な努力』を抜けがけや利己主義(エゴイストのやり方)として嫌う傾向がある。

自分一人だけ孤独に出世していくような生き方を否定し、いつも仲間と一緒に群れていることで認め合って安心できる労働者階級の一員なのだと開き直ることになる。学校教育は『勉強すれば将来の道が開ける』と言って、みんなを同じ競争原理の条件に従わせようとするが、その中で成功できる人間はごく一部に過ぎないのだから、学校教育は頑張っても勉強の能力が相対的に劣る人間を切り捨てる欺瞞ではないかと批判する。学校教育の勉強・学歴は『仲間と一緒にやる行為』ではないから、自分だけ良ければよい利己主義のやり方に過ぎないと野郎どもは考えるのである。

ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』2:労働者階級・反学校教育の文化的な類似点

学校文化に反抗する野郎どものカウンターカルチャーは、知性・知識を主体的に活用する『精神的行為一般』の否定へとつながっていき、肉体労働以外の精神労働(頭脳労働)には従事できない自意識を確固なものにしていく。家父長制の性別役割分担や男尊女卑の価値観によって、野郎どもはより一層わかりやすい肉体酷使の“男らしさ”を示す肉体労働へと自発的にコミットしていくことになる。かくして、半ば自発的に労働者階級は反学校文化に後押しされる形で再生産されるのである。

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[ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』2:労働者階級・反学校教育の文化的な類似点]

ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』2:労働者階級・反学校教育の文化的な類似点

“野郎ども”と呼ばれるハマータウンの不良たちは、偉そうに学業・生活を指導して説教してくる『教師』に強い反感・敵意を持っており、『学校教育』が象徴する序列(順番)のある社会構造や権威主義に必死に抵抗しようとしている。だが、その『反学校文化・反権威主義のカウンターカルチャー』が、逆説的におちこぼれを(勉強とは関係のない)男性的な肉体労働の世界に自発的に入らせていくことになる。

ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』1:イギリスの階級社会のフィールドワーク

ハマータウンの不良たちは、サラリーマンの中流階層を目指す『パブリックな学校教育・学力競争』ではなく、プライベートな領域である『学校外の家庭・街・おちこぼれの先輩や仲間』から強い影響を受けて、反学校文化的な価値観や生き方を内面化していく。

反学校文化の特徴は、『学業成績(成績証明書)による序列の価値』や『中流階層のサラリーマンを目指す学業・学歴取得の努力の価値』を認めないということである。俺たちは勉強だけしている“今”を楽しんでいないガリ勉ではなく、実際の世の中の仕事・遊び・関係に慣れて通じているのだという『早熟な自負心』が野郎どもを支えている。その自負心はコツコツ勉強して良い高校・大学などに行くよりも、できるだけ早く『男らしい仕事』で働いて収入を得るほうがマシで充実しているという、『労働者階級のライフスタイルや信念体系』へと自然に接続していく。

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[ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』1:イギリスの階級社会のフィールドワーク]

ポール・ウィリス(Paul E. Willis)『ハマータウンの野郎ども』1:イギリスの階級社会のフィールドワーク

イギリスの社会学者ポール・ウィリス(Paul E. Willis,1950〜)は、1970〜1980年代のイギリスで学校教育からドロップアウトした『不良学生・労働者階級・暴走族』の生活様式や文化・価値を、エスノグラフィー(ethnography,民族誌)の手法で研究した。

ポール・ウィリスのいう『労働者階級』とは、中流階級を構成する企業のサラリーマン(一定の学歴を得てから主にスーツを着て仕事するホワイトカラー)や専門職の従事者ではない、工場・土木などの現場で肉体労働を提供するブルーカラーのことである。

このブルーカラーで構成される労働者階級は、従来、学校教育の学力競争に適応できずに仕方なく労働者階級になると考えられていた。だが、ウィリスの社会教育学ではむしろ彼らが学校教育や中流階級(上昇志向)の価値観と敢えて対立することで、半ば自発的に意図せざる結果として労働者階級を再生産することが明らかにされていく。

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2015年09月26日

[D.W.ウィニコットの『ほぼ良い母親(good enough mother)』と母親のホールディングの役割]

D.W.ウィニコットの『ほぼ良い母親(good enough mother)』と母親のホールディングの役割

D.W.ウィニコットの乳幼児精神医学や発達心理学の分野における最大の前提は、母親と乳児(子供)を別々の個人とは考えない『母子一対のペア』としての認識であり、子供のメンタルヘルスや順調な発育にとってもっとも好ましい影響を与える母親のイメージについて『ほぼ良い母親(good enough mother)』という新たな概念を提唱した。

M.マーラーの正常な共生期とD.W.ウィニコットの母親の原初的没頭

ほぼ良い母親のイメージは、『母性の完璧主義(過度の無償性・潔癖性・慈愛)』へのこだわりを否定することによって、ほどほどに子供に愛情・保護を与えてまずまずの世話や関わりができていればそれで十分ですよ(超人的な頑張りや女神のような無償の愛などはまったく必要ないのですよ)という『母親のリラックス感・罪悪感(育児の不十分感)の軽減』に配慮した概念になっている。

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2015年08月12日

[H.H.ウィエックの通過症状群と一般身体疾患の影響による譫妄・気分障害]

H.H.ウィエックの通過症状群と一般身体疾患の影響による譫妄・気分障害

症状精神病の意識障害の発症前あるいは回復後に見られやすい『意識障害以外の可逆的な症状(回復しやすい症状)』のことを、精神科医のH.H.ウィエック(H.H.Wieck)『通過症状群』として定義したりもしている。

症状精神病で見られる各種の意識障害

DSM-W‐TRでは症状精神病は、『病歴・身体診察・臨床検査所見』から、その障害が一般身体疾患の直接の生理学的結果による引き起こされたという証拠があるケースとしてまとめられている。

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2015年07月06日

[うつ病・自殺問題の心理学的剖検2:自殺企図と精神疾患の相関関係]

うつ病・自殺問題の心理学的剖検2:自殺企図と精神疾患の相関関係

うつ病の精神症状とも重複するところのある、人間の『自己否定・絶望感(将来の悲観)・自殺リスク』といったものは、『貧困・不健康・孤独や疎外・愛情(思いやり)の欠損』によって悪化しやすいという特徴を持っている。

うつ病・自殺問題の心理学的剖検1:同意を得た上での関係者へのリサーチ

自殺に対する『心理学的剖検』では、ある地域で自殺が発生した時にリサーチや心理分析の能力・経験を持つ専門家チームを派遣して、家族・関係者の同意を得た上で『自殺者の生活状況・心理状態・性格行動・人間関係・思想や価値観などに対するインタビュー形式の調査』を行っていく。

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[うつ病・自殺問題の心理学的剖検1:同意を得た上での関係者へのリサーチ]

うつ病・自殺問題の心理学的剖検1:同意を得た上での関係者へのリサーチ

うつ病(気分障害)は、抑うつや自己否定の程度が軽くてストレス反応性のある『軽症うつ病』の場合には、『希死念慮・自殺企図』のような生命の喪失に関わる重大な問題は起こりにくいが、重症になると自殺リスクが有意に高まってしまう。

一般的な自殺の原因となる出来事は統計学的な研究では、『健康や病気の問題・経済や仕事の問題・人間関係や対象喪失(離婚・失恋)の問題・思想や虚無感(自己アイデンティティ喪失)の問題』などに類型化されていて、自殺する人の大半はそのいずれかに当てはまることが多い。

自殺の原因と対処法を、『精神医学・心理学・精神分析・本人の生活歴と内面心理と人間関係の調査・関係者へのインタビュー』などを用いて本質的に解明しようとする学術的リサーチの分野やその方法論を『心理学的剖検(しんりがくてきぼうけん)』という。心理学的剖検を前提にした自殺行動の研究と著書・論文の執筆は、日本では高橋祥友(たかはしよしとも)などが精力的に行っている。

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2015年06月23日

[うつ病(気分障害)とうつ状態(ストレス反応)の違い]

うつ病(気分障害)とうつ状態(ストレス反応)の違い

自分で気分・感情をコントロールできなくなり、深刻な抑うつ感・無気力・自己否定・罪悪感などに苦しめられる『うつ病(depression)』は、重症度の高い精神病(精神疾患)であるが、何かつらくて悲しい出来事や精神的ストレスを感じる人間関係があった時に、一時的に気分が落ち込んでやる気がでないとか不安感に襲われるとかいうだけではうつ病とは言えない。

うつ病(気分障害)の症状の特徴と他の病気との鑑別・仮面うつ病

精神病理であるうつ病とは区別して、憂鬱感・気力の低下・落ち込みを中心とする一般的な心理状態像のことを『うつ状態(抑うつ状態)』と呼んでいる。『うつ状態』はうつ病以外の精神科・心療内科の疾患や一般的な身体疾患だけではなく、一時的なストレス反応や性格傾向(パーソナリティー特性)の現れとしても見られることがある。

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[うつ病(気分障害)の症状の特徴と他の病気との鑑別・仮面うつ病]

うつ病(気分障害)の症状の特徴と他の病気との鑑別・仮面うつ病

躁うつ病とも呼ばれる双極性障害は『躁病相』と『うつ病相』を交互に周期的に繰り返すつらい精神病であるが、躁病相の見られないうつ病そうだけのうつ病(気分障害)のほうは『単極性のうつ病・気分障害』と呼ばれることもある。

うつ病と類似した『憂鬱感・抑うつ感・気分の落ち込み』といった精神状態の不調は、ホルモン分泌障害の甲状腺機能低下症や脳の器質的疾患でも見られることがある。更に、『統合失調症・認知症(アルツハイマー病)・アルコール依存症・全般性不安障害』などのその他の精神疾患でもうつ状態は一般的な精神症状として起こりやすいので、効果的な治療法方針の見立てを得ていく上でも、うつ病なのかそれ以外の身体疾患・精神疾患なのかの鑑別診断が必要になってくる。

うつ病(気分障害)の症状の特徴と治療法

抑うつ感や無気力、絶望感、希死念慮などの精神症状が前面に出て来ることがなく、心身症的な体調の悪さとしての『身体疾患』だけが見られるようなタイプのうつ病のことを『仮面うつ病』と呼んでいる。仮面うつ病の人は表面的に見られる表情・動作・態度などからは精神の不調を窺い知ることが難しく、いつもニコニコと笑顔を浮かべて精神的なつらさを抑圧している状態像から“smiling depression”と言われることもある。

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[うつ病(気分障害)の症状の特徴と治療法]

うつ病(気分障害)の症状の特徴と治療法

うつ病(depression)気分障害(mood disorder)とも呼ばれ、憂鬱感・気分の落ち込み・不安感・焦燥感・思考力の低下・無気力・希死念慮などを中心とした精神症状を示す精神疾患で、その生涯有病率は“約10%以上”である。

うつ病は統合失調症・てんかんといった精神病と比較すると、環境要因(ストレス強度)の変化によって誰もが発症するリスクのある精神病の一つとされ、現在の精神科・心療内科に通院する患者にもかなり多い。

うつ病の特徴の一つは、自分が病気であるという『病識』が持ちづらく、かなり重症の『憂鬱感・意欲減退・生理的症状(睡眠障害・食欲低下)・焦燥感・思考力の低下』などが発生していても、『これは病気の症状ではなく不調・疲労・気力低下(やる気の低下)のせい』という風に考えてしまいやすく、なかなか治療の動機づけにつながらない。

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2015年02月25日

[失語症の言語障害とウェルニッケ・リヒトハイムの図式]

失語症の言語障害とウェルニッケ・リヒトハイムの図式

連合主義的な図式(ダイアグラム)が積極的に作成されたことから、19〜20世紀初頭の神経心理学の時代を『ダイアグラム・メイカー(diagram maker)の時代』と呼ぶこともある。最も有名な失語図式は、『ウェルニッケ・リヒトハイムの図式』であり、ウェルニッケ・リヒトハイムの図式は以下のような脳の各部位の中枢の相関関係によって失語症の発症・維持・経過を説明している。

聴覚言語中枢(A,ウェルニッケ中枢)

運動言語中枢(M,ブローカー中枢)

概念中枢(B)

神経心理学の機能局在説と全体説(非局在説):ブローカーとウェルニッケの失語症

この連合主義的なウェルニッケ・リヒトハイムの図式では、聴覚言語中枢、運動言語中枢、概念中枢をそれぞれ結ぶ連絡網が想定されており、『中枢・連絡網の障害の場所』から失語型を分類することができるという考え方に依拠している。

言語の理解のプロセスは“a(相手から話された言葉の刺激)→A→Bの経路”、言語の表出(発話)のプロセスは“B→M→m(自分が話した実際の言葉)の経路”“B→A→M→m(自分が話した実際の言葉)の経路”によって成立することになる。言語の表出(発話)においては、自分の言葉(音声言語)を自分で聴きながら発音を調整する必要もあるので、『Aの聴覚言語中枢(ウェルニッケ中枢)』も間接的に関係しているだろう。

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2013年01月19日

[マックス・ヴェーバー(Max Weber):4]

マックス・ヴェーバー(Max Weber):4

プロテスタンティズムの倫理とは、天職にひたすら励む『勤勉(義務・専念)』、贅沢や奢侈をしてはいけないという『禁欲(清貧・倹約)』、勤勉と清貧の必然的な結果(真面目に働いてもそのお金をできるだけ使わずつつましい生活をする結果)としての『富(資本)の蓄積』によって支えられており、マックス・ヴェーバーはこの禁欲的で義務的な『プロテスタンティズムの倫理』が、逆説的に欲望を増殖させ資本を蓄積させる『資本主義の精神』を準備したと考えたのである。

世俗的な欲望や階層的な身分を認めるカトリック教会のカトリシズムよりも、それらの世俗的な欲望や上昇志向を認めないプロテスタントの禁欲主義のほうが、資本主義的な資本蓄積や精神と親和性があるというのは面白いユニークな視点である。『貪欲』よりも『禁欲』が資本主義を生み出したというのだから、それまでの資本主義的な価値観の見方をコペルニクス的にひっくり返してしまったのである。

現在の社会学・経済学では、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の実証主義的な価値は余り評価されていないが、カトリックとプロテスタントの価値判断の差異を捉えながら近代資本主義成立の精神的なプロセスを合理的に解説した『プロ倫』は現代でも読んでおくべき歴史的著作の一つだろう。

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[マックス・ヴェーバー(Max Weber):3]

マックス・ヴェーバー(Max Weber):3

代表著作である『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(1905年)』も、比較宗教社会学の研究成果を応用した著作であり、近代西洋社会において資本主義が発生した原動力を『プロテスタントの宗教的な生活倫理(贅沢の禁圧と勤勉の奨励)・経済観念(貯蓄の促進と消費の抑圧)』に求めているのである。

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(プロ倫)』は、ドイツのマルティン・ルターと並ぶスイスの聖書原理主義の宗教改革者であるジャン・カルヴァンのカルヴィニズム(予定説)の思想の影響を受けている。予定説を信じるプロテスタントたちは来るべき『最後の審判』で天国に行くために、『神の人間を評価する基準』を満たす行動をしようとするが、人間の知恵や認識、価値観では推し量れない絶対者である神が人間の言動の何を実際に評価してくれるかは不明である。そして、神の基準が不明であるが故に、人間は必死に善行を積む努力をしてでも神の愛に縋ろうとする。

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[マックス・ヴェーバー(Max Weber):2]

マックス・ヴェーバー(Max Weber):2

M.ヴェーバーは客観科学であるべき社会科学(社会学)から、『主観的・政治的な価値判断の要素』をできるだけ排除すべきだと考え、社会科学領域における『価値自由の原則』を掲げた。

H.リッケルトは価値判断に基づく認識論(その成果としての価値哲学)を提唱して、ドイツ歴史学の哲学的な基礎づけと歴史科学への橋渡しを行ったが、M.ヴェーバーはリッケルトの研究成果を因果関係を合理的に推測する『理念型』の思惟的構成概念にまとめ上げたのである。

マックス・ヴェーバーは以下のような4つの理念型を提唱している。

1.目的合理的行為 (zweckrational)…合理的目的を実現するための合理的な手段となる行為。

2.価値合理的行為 (wertrational)……不合理な目的を実現するための合理的な手段となる行為。

3.感情的行為 (affektual)……合理的には理解できない感情によって生成する行為。

4.伝統的行為 (traditional)……伝統的な因習・慣習・決まりごとによって生成する行為。

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[マックス・ヴェーバー(Max Weber):1]

マックス・ヴェーバー(Max Weber):1

ドイツの社会学者のマックス・ヴェーバー(Max Weber)は、近代社会学の確立に貢献した人物の一人であり、カール・マルクスやエミール・デュルケームゲオルグ・ジンメルらと並ぶ社会学初期の重鎮である。

マックス・ヴェーバーは法制史・経済史・宗教史の研究でも多くの業績を残しており、人口に最も膾炙した主要著書に経済学における資本主義誕生の心理的要因を解き明かした『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(1905)』 がある。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は略して『プロ倫』と呼ばれる。

マックス・ヴェーバーの弟は社会学者・経済学者のアルフレート・ヴェーバーである。M.ヴェーバーは父が政治家、母は上流階級出身という敬虔なプロテスタントの富裕階層の長男として生まれるが、1898年には政治家である実父との心理的・職業的な確執があり神経症を発症してしまい、フライブルク大学を休職してサナトリウムで静養したことがある。M.ヴェーバーの学歴は、王立王妃アウグスタ・ギムナジウムで初等中等教育を受けた後に、1882年にハイデルベルク大学に進学してその後はベルリン大学でも法律学・経済史・宗教学などを学んでいる。

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2013年01月07日

[ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)と行動療法・系統的脱感作法]

ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)と行動療法・系統的脱感作法

南アフリカ共和国の精神科医であるジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe, 1915-1998)は、行動主義心理学において精力的に『行動療法(behavioural therapy)』を実践したサイコセラピストとして知られている。ジョセフ・ウォルピは薬物療法を前提とする精神科医からそのキャリアを歩き始めたが、その途中で精神分析の創始者であるジークムント・フロイト『無意識の意識化の理論・対話を用いた神経症の治療法』に強い感銘を受けて精神分析家を志した。

第二次世界大戦の最中の1944年、J.ウォルピは軍医としてイギリス軍に従軍したが、ウォルピはその戦場で残酷な戦いや砲撃のショック、死の恐怖、殺傷の罪悪感で『神経症症状(麻痺・けいれん・激しい恐怖・大量発汗・睡眠障害・心因性の失語や失明)』を発症した兵士たちを多く見ることになる。これらの戦争のトラウマ(心理的なショック・恐怖・罪悪感)によって発症する神経症を当時は『戦争神経症』と呼んだ。ジョセフ・ウォルピは戦争神経症の診察と治療を経験する中で、S.フロイトの精神分析の効果に疑問を持つようになり、より確固とした効果と理論を持つ心理療法を追い求める事になる。

戦争に軍医として従軍していたウォルピは、文化人類学者のB.K.マリノフスキーや心理学者のC.W.ヴァレンタイン『乳幼児期の心理学』などに理論的な影響を受けるようになる。次第に、I.P.パヴロフの科学的実験を伴う『レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)』に引きつけられるようになり、刺激に対する反応という『S-R結合』を応用したC.L.ハルやB.F.スキナーの行動療法を実施するようになっていった。

無意識やリビドー、エス、超自我、防衛機制などをはじめとする精神分析の理論的概念の多くは、客観的に観察することができない『想像・仮定された操作的概念』に過ぎないとの思いが、ジョセフ・ウォルピを精神分析から引き離していくことになった。J.ウォルピが戦争神経症の治療経験を通して追い求めるようになったのは、『客観的実体・科学的根拠・臨床的有効性のある心理療法(カウンセリング技法)』であり、ウォルピが最終的に行き着いたのが客観的に観察可能な『行動の経過・変容』を取り扱う行動療法(behavioural therapy)だったのである。

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[エドムンド・ウィリアムソン(Edmund Griffith Williamson)と特性因子理論]

エドムンド・ウィリアムソン(Edmund Griffith Williamson)と特性因子理論

エドムンド・ウィリアムソン(Edmund Griffith Williamson,1900-1979) は日本における知名度やその理論の有名さでは、カール・ロジャースに遠く及ばないが、20世紀のアメリカのカウンセリング心理学の確立に大きな貢献をした心理学者である。特に、思春期・学生期にあるクライアントの『発達心理学的な問題・進路選択上の悩み』などに関心を持っており、当時のアメリカでも殆ど馴染みがなかった『学校カウンセリング・学生心理相談』の分野を発展・普及させた。

C.ロジャーズは『徹底的な傾聴・共感的な理解・無条件の肯定的尊重』をベースにした非指示的カウンセリングを実践して、クライアントの潜在的な実現傾向を促進しようとしたが、それと比較するとエドムンド・ウィリアムソンはより科学的(客観的)あるいは医学的(診断学的)なシステムに準拠したカウンセリングを目指していたとも言われる。性格心理学におけるパーソナリティ研究(人格構造・性格傾向の研究)にも取り組んでおり、『特性因子理論的な立場』に立った統計的根拠のある分析的かつ診断的なカウンセリングの可能性を追究したのである。

エドムンド・ウィリアムソンの理想とした客観的な基準や統計的な根拠のあるカウンセリングとは、『心理テスト・心理アセスメントの結果を用いたカウンセリング』のことであり、心理テストを実施する必要は乏しいとしたカール・ロジャーズとはその点でも対照的である。E.ウィリアムソンが依拠した特性因子理論とは、個人のパーソナリティを『知能・感情・興味・態度・価値観・性格傾向・対人関係』といった複数の特性が束になったものと考える理論である。E.ウィリアムソンは心理テストで得られた客観的データによって、クライエントの大まかなパーソナリティと適切な問題解決の方法が分かるとした。

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2012年12月13日

[レフ・ヴィゴツキー(Lev Semenovich Vygotsky):3]

レフ・ヴィゴツキー(Lev Semenovich Vygotsky):3

L.ヴィゴツキーの知識や興味関心は心理学の分野だけに留まるものではなく、モスクワ大学で法学を専攻して学びながら、同時並行でシャニャフスキー人民大学において歴史・哲学・社会科学・文学芸術などを学んだとされる。

近代ヨーロッパの百科全書学派のような広範多岐の知見を身につけたヴィゴツキーは、1917年のロシア革命の発生後にモスクワ大学法学科とシャニャフスキー人民大学歴史・哲学科を同時に卒業した。そして、晩年に近づくにつれて心理学・言語学をはじめとする自分の学術的な課題を、マルクス主義的な『史的唯物論・弁証法的方法論』と結びつけていったようである。

1918年には、生まれ育ったホメリの地に帰ってきて、師範学校で文学・心理学を教える教師として働き始め、演劇学校でも美学・美術史を担当して精力的に講義を行っている。ゴメルスキー国民教育部の演劇課では主任を務めており、心理学を教えていた師範学校では科学的・実験的に人間の心理を解明することを目指して『心理学実験室』を設置している。

ホメリの師範学校では学生の効果的な教育方法や心理学的な根拠のある学習法などについても講義しており、こういった一連の講義の内容は『教育心理学(1926年)』という著作によってまとめられる事になった。

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[レフ・ヴィゴツキー(Lev Semenovich Vygotsky):2]

レフ・ヴィゴツキー(Lev Semenovich Vygotsky):2

短命の天才的な心理学者だったが、アレクサンドル・ルリヤやアレクセイ・レオンチェフなどの後進の心理学者の教育・育成にも尽力しており、ソ連心理学会の一つの盛期を作った人物でもある。L.ヴィゴツキーの“外言(外語)・内言(内語)”の概念を用いた言語発達理論(言語獲得理論)が、発達心理学と教育心理学の分野に与えた歴史的影響は非常に大きい。

『外言(外語)』とは外に向かって声(言葉)を出して話す言語のことであり、『内言(内語)』とは内に向けて声(言葉)を出さずに独り言として話す言語のことである。『外言(外語)』は他者とのコミュニケーションツールとしての言語であり、『内言(内語)』は自分自身の内面で物事を思考するための言語である。L.ヴィゴツキーはJ.ピアジェとは逆の発想で、幼児は独り言のような『外言』から次第に思考の道具としての『内言』を獲得していくという言語・思考の発達プロセスを考えた。

ジャン・ピアジェの思考発達理論(認知発達理論)では、未熟な乳幼児は『感覚的→具体的→抽象的・論理的という次元の思考能力』をはじめに発達させてから、他者とのコミュニケーション能力を発達させるという順番を考える。

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