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2013年01月28日

[アレン・エドワーズ(Allen Louis Edwards)]

アレン・エドワーズ(Allen Louis Edwards)

アレン・エドワーズ(Allen Louis Edwards,1914-1994)はアメリカのテキサス州生まれの心理学者であり、『性格検査(パーソナリティ・テスト)の心理評価尺度』を作成する分野で多くの有益な仕事をした。晩年はワシントン大学の名誉教授でシアトルに拠点を構えていたが、1994年にワシントン州のテキサスで死去した。アレン・エドワーズの妻は日本人女性であった。

ノースウェスタン大学で心理学の“Ph.D.(Doctor of Philosophy,学術博士号)”を取得してから、大学の心理学部で教職員として働くようになり、アクロン大学とメリーランド大学を経てワシントン大学で教授として心理学を教えた。20世紀半ばのアメリカ心理学界の重鎮として知られ、米国西部地区心理学会の会長やPsychometric Societyの会長、APA(アメリカ心理学会)の心理評価尺度作成部会(Evaluation and Measurement)の会長などの役職を歴任している。

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2012年10月16日

[文章完成法・SCT(Sentence Completion Test)]

文章完成法・SCT(Sentence Completion Test)

SCT(Sentence Completion Test)と呼ばれる文章完成法は、クライアントの無意識的な心理内容や認知傾向を調べるための心理検査(心理テスト)の一種である。精神分析理論と心理アセスメント理論の対応では、『無意識領域』の心理内容を調べるのがロールシャッハテストやTAT(主題統覚検査)に代表される投影検査(projective method)だが、SCT(文章完成法)は投影検査よりもやや浅い心理領域(=前意識領域)の認知傾向を調べるのに適した心理テストとされている。

SCT(文章完成法)とはその名前の通り、与えられた未完成の文章を完成させることによって、その人の潜在意識にある認知傾向やトラウマ、感情・情緒の反応を分析しようとするものである。SCTも投影検査の一種と見なされるが、ロールシャッハテストのような被検者の解釈の自由度はないので、半投影検査という形で分類されることもある。SCTの開発当初は言語能力や知的水準を調査する『知能検査』としての意味合いが大きかったのだが、現在では投影法の原理を用いた性格検査(パーソナリティテスト)の位置づけになっている。

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2006年11月20日

[エンプティ・スクリーン(empty screen):精神分析における自由連想・禁欲原則・分析者の中立性]

エンプティ・スクリーン(empty screen):精神分析における自由連想・禁欲原則・分析者の中立性

S.フロイトが創始した精神分析療法の基本原則には、心に思い浮かんだ事は何でも自由に遠慮なく話すという『自由連想法』と自己顕示欲の強さとわがままな依存性に象徴される神経症的パーソナリティに疾病利得(逆転移の欲求充足)を与えないようにする『禁欲原則』とがある。エンプティ・スクリーン(empty screen)とは『空白のスクリーン』を意味する言葉で、精神分析家(カウンセラー)が心理面接に臨む際の『分析者の中立性』を示している。

心に自然に浮かび上がってくる過去の人間関係の記憶や情景、イメージなどをありのままに話し続ける『自由連想法(free association)』は、潜在夢の持つ無意識的な意味を解釈する『夢分析』と並ぶ精神分析療法の中心的技法とされていた。禁欲原則というのは、精神分析の面接場面でクライエント(患者)が訴え出てくる要求や願望を安易に満たしてはならないとする原則で、クライエントの逆転移(counter-transference)への基本的な対処法である。

フロイトの持っていた精神分析家としての倫理感覚は、論文『ドストエフスキーと原父殺害』に象徴的に示されている。ドストエフスキーの強迫神経症的なパーソナリティを題材にしたこの論文においてフロイトは、『内面心理に生起する誘惑(欲望)を意識化していながらも、それを現実世界の中で行動化しない人間』こそが倫理的に正しいと主張している。禁欲原則に基づく倫理感覚とは、結局のところ、『本能的欲求(エス)を断念して、環境適応性を高める技術』のことを意味している。

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2006年11月14日

[L.ビンスワンガーの現存在分析:エレン・ウェストの症例]

L.ビンスワンガーの現存在分析とM.ハイデガーの実存哲学:エレン・ウェストの症例

ルートヴィッヒ・ビンスワンガー(Ludwig Binswanger, 1881〜1966)は、S.フロイトの精神分析学の影響を強く受けたスイスの精神科医で、集合無意識を重視する分析心理学を確立したC.G.ユングとも学術的な交流があった。L.ビンスワンガーは独自の実存哲学的な精神療法として『現存在分析』を創始したが、精神分裂病(Schizophrenia)の診断基準と症状記述に関わる病理学研究に寄与したオイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler, 1857-1939)が院長を務めるブルクヘルツリ病院にも勤務した経験がある。

19世紀後半に、精神医療の名門として知られたチューリッヒ大学精神科のブルクヘルツリ病院では、アカデミックな実験精神医学研究を意欲的に進めるオイゲン・ブロイラー教授の下に、C.G.ユングやメダルト・ボス、ルートヴィッヒ・ビンスワンガー、ミンコフスキー、カール・ヤスパースなど優れた資質・能力を持つ俊英が集まった。『現存在分析』という思索的な精神療法と哲学的な考察を展開したルートヴィッヒ・ビンスワンガーとメダルト・ボス(Medard Boss, 1903-1990)は、人間学的精神医学の学派に分類される。彼らは、フロイトの深層心理学(無意識中心の精神分析)とマルティン・ハイデガー(Martin Heidegger, 1889-1976)の実存哲学(『存在と時間』)、エドムンド・フッサールの現象学の思想の影響を強く受けている。

“現存在(Dasein)”とは、簡潔に説明すれば、あらゆる“存在者(Seiendes)”の中で特別な位置づけを持つ“人間(human)”の存在様式のことである。世界のあらゆる存在者の中で、人間だけが存在のあり方や意味を意識的に考察できるという意味で特別であり、『自己の存在』がいずれ消滅するという“有限性(死)の概念”を持っているという意味でも特別なのである。ハイデガーは、現存在(人間)という主体的な認識者を通して、人間を含むあらゆる存在者を存在させている存在(あるということ)そのものを分析しようとした実存主義に分類される哲学者であり、現存在の本来的な性質とは、『死を志向する有限の存在であること(存在者の中で唯一、時間性を帯びていること』であると考えていた。

L.ビンスワンガーが創始した現存在分析とは、実存分析と精神分析の統合を目的とした精神医学的探求であると考えることができ、現存在である人間の存在様式や存在の意義(価値)について考察する分析的な技法・理論である。科学的な精神病理学では精神疾患の発症・経過・予後の病態について、基礎医学や神経心理学、脳科学、生理心理学などの知見を元に診断や治療を判断していく。一方、現存在分析では、エビデンス・ベースドな薬物療法や精神療法ではカバーし切れない『人間存在の意味』や『精神病者の生きる価値』といった実存主義的な側面から患者の臨床にアプローチしていくのである。

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ラベル:精神医学 哲学
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2006年11月11日

[エンカウンター(encounter)とエンカウンターグループ(encounter group)]

エンカウンター(encounter)とエンカウンターグループ(encounter group):ゲゼルシャフトの社会で求められる人間性の回復

エンカウンター(encounter)とは、他者との有意義な『出会い体験』であり、具体的には、建前でない『本音と本音のぶつかり合い(自己開示)』や表層的ではない『心と心の交流』を意味する。エンカウンターとしての貴重な出会いが成立するときには、オーストリアの宗教哲学者・文学者のマルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)が説く『我‐それ(Ich-Es)』関係から『我‐汝(Ich-Du)』関係への実存的な展開が起こる。

マルティン・ブーバーは、著書『我と汝・対話』の中で、世界に存在する根源的対偶として「我‐汝」と「我‐それ」の相互的な関係性を提起して、「我(Ich)」を語り理解する為には「汝(Du)」を語り理解しなければならないと語った。エンカウンターでも自己理解の洞察を深める為に、自己の眼前に現れる他者に対する理解や気づきを深めていくことを重視する。『エンカウンター(出会い)の相手・内容(質)・機会・方法』は様々であるが、エンカウンターとは、『物理的な他者との出会い』を意味するものでは決してなく、『人間的な他者との出会い』を意味するものである。相手をモノ的に取り扱ってモノローグ(独語)する「我‐それ(Ich-Es)」の関係性を、相手を対等な人間と認識してダイアログ(対話)する「我‐汝(Ich-Du)」の関係性へと転換することである。

エンカウンターの起源は、カウンセリングの発祥地であるアメリカで1960年代に沸き起こった『人間性回復運動(human potential movement)』にあるといわれ、小グループによる集団精神療法の技法として洗練と発展を遂げていくことになる。クライエント中心療法(来談者中心療法)を創始したカール・ロジャーズも、研究実践活動の後半では、集団療法としてのエンカウンターを数多く実施してその効果を検証していた。日本のカウンセリング研究者で、エンカウンターグループの形成と実施を精力的に行った人として、1955年にカウンセリング研究討論会を開いた友田不二男、人間的成長を目的とする集団療法としてエンカウンターの研究実践を推進した國分康孝がいる。

カウンセリング効果を期待する集団面接の一環として行われるエンカウンターでは、エンカウンターグループ(encounter group)と言われる小集団が一定期間(数時間から数週間の期間)の間、維持されることになる。広義のエンカウンターグループには、アルコール依存症からの回復と自立を目指すAA(Alcoholics Anonymous)などの自助グループや相互扶助の為の寄り合いも含まれる。

エンカウンターグループは、宿泊施設(セミナー施設)での合宿制や研修制で行われることもあれば、学校の教室や会社の会議室で短時間の集団面接や定期的な面接として行われることもある。エンカウンターはその歴史的変遷から見ると、専門的な心理療法を提供する医療機関ではなく、教育機関や民間企業、地域のセルフヘルプグループ(自助グループ)、教会、結婚・離婚の相談などで正常圏の人たちに実施されてきたものである。自助グループの地域社会支援と関わりが深いという意味では、エンカウンターは公衆精神衛生の向上を目的とするコミュニティ心理学の一分野と見ることもできる。

エンカウンターの目的は、自己肯定感を強めて精神的な成長を促進すること、そして、人生を健康に楽しく生き抜く為に必要な『人間性(humanity)』を本音の人間関係(共感的・受容的な対人コミュニケーション)を経験して回復することにある。エンカウンターで実施する共感的な話し合いやテーマを決めた自己主張などの「実践演習・実践練習」のことを「エクササイズ(exercise)」という。例えば、エンカウンターグループのリーダが、「どういった時に、自分のことを素晴らしいと感じますか?・他人のことを否定したくなるのはどういった場合ですか?」というテーマを与えて、グループの中でそのテーマについて自由闊達に意見を出し合い、それぞれの意見を尊重して対話を進めていくのがエクササイズである。

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2006年11月05日

[LSD(Lysergic Acid Diethylamide, リゼルギン酸ジエチルアミド):精神展開薬の化学合成]

LSD(Lysergic Acid Diethylamide, リゼルギン酸ジエチルアミド):精神展開薬の化学合成

LSD-25とも呼ばれるLSD(Lysergic Acid Diethylamide, リゼルギン酸ジエチルアミド)は、スイスの薬学研究者アルバート・ホフマン(Albert Hofmann)に発見された幻覚薬である。A.ホフマンは、ライムギに寄生する麦角菌に含まれるリゼルギン酸から合成したが、この化学合成に成功する以前から麦角菌は、民間療法的な陣痛促進剤として使用されることがあった。客観的に存在しない事物や対象を感覚器官に知覚させる『幻覚作用(illusion effect)』を持つ物質は、化学合成された向精神薬や薬物以外にも自然界に数多く存在していた。代表的な自然界の幻覚剤としては、ヨーロッパ大陸のマンドレイク(ナス科植物)や中近東地帯のハシシ(クワ科植物)、ロシアのベニテングタケなどが知られており、マジック・マッシュルームと呼ばれる一連の菌類にも幻覚作用が見られる。

現代文明社会に生きていると、薬物を用いて精神に影響を与えたり変性意識状態(トランス状態)を導くことは法律に違反する悪いことであるという認識が強いが、近代社会が成立する以前には、世界各地の未開文明に宗教的な神秘体験(シャーマニズム体験)や精神的な安楽と解放、病気治療の為のリラクセーションを目的としたドラッグカルチャーが息づいていた。自分が生活する国家・社会の規範(法律)に違背してドラッグカルチャーを謳歌することは問題であるが、前近代的な社会には、自然から入手することが可能な植物や香料を利用した独特のドラッグカルチャーが存在していた歴史的事実は興味深い。アメリカでも1960年代の反文明的なヒッピーブームの最中にLSDを用いたカウンターカルチャーが隆盛したが、その後すぐに法規制されることになった。

向精神作用を持つ薬剤や植物を利用することが禁じられやすいのは、多幸感や解放感、爽快感を得られる代わりに、自傷他害の反社会的行や注意力・集中力が低下して各種の事故を起こす恐れが高くなるからである。また、厭世的で無気力な気分を強めて社会生活への適応力が低下したり、労働意欲が低下して内面生活(神秘的な世界)への過度の沈潜(引き篭り)を引き起こすこともあるので、ドラッグ文化が蔓延し過ぎると、社会全体に享楽的で退廃的な雰囲気が漂いやすいという問題が生じてくる。

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ラベル:医学 薬学
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[MBD(Minimal Brain Dysfunction, 微細脳機能障害)と発達障害(ADHD, LD)の研究][ADHDの治療薬リタリン]

MBD(Minimal Brain Dysfunction, 微細脳機能障害)と発達障害(ADHD, LD)

MBD(Minimal Brain Dysfunction, 微細脳機能障害)という脳神経学的な障害概念は、東大医学部の小児科医・鈴木昌樹氏の啓蒙的な発達障害研究によって日本の医学界に浸透した概念である。最近は、発達障害分野(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群・ADHD・LDなど)の医学的・臨床心理学的・教育学的な調査研究の進展により、MBD(minimal brain dysfunction)の神経学的概念が臨床で用いられることは少なくなっているが、 1970年代の日本における鈴木昌樹のMBD研究と啓蒙は画期的で先進的なものであった。

脳神経の微細な損傷であるMBDと発達上の問題や行動上の不適応を結びつけて研究した鈴木昌樹の研究成果の一端は、『小児言語障害の診療』『微細脳障害‐学習障害児の医学‐』の書籍で伺うことができるが現在では著作の殆どが絶版になってしまっている。MBDを起点とする発達障害の理解は現在では古典的な業績になっているが、鈴木昌樹が小児神経医学や障害児教育の分野に果たした功績は大きく、現代におけるADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder, 注意欠陥多動性障害)LD(Learning Dysability, 学習障害)を科学的に理解するための先鞭となるものであった。

ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)という発達障害の分類整理や診断基準が確立する以前には、『不注意・多動・衝動性・学習上の問題(読字・書字・計算・記憶の障害)』の問題は、MBD(微細脳機能障害)という脳神経学的な障害概念で説明されていたのである。1970年代に普及したMBD(微細脳機能障害)の損傷は、出生時外傷や中枢神経系の成熟障害(成長障害)によって起きると考えられていた。

脳神経医学におけるMBDは、心的外傷や愛情不足で学習障害や言語障害、不適応な行動(不注意や衝動的な逸脱行動)が発生するという『精神分析的な心因論』を否定する因果的な推論によって生まれた障害概念である。MBDは合理的な推論ではあるが、CTスキャン(Computerized Tomography scan:コンピューター断層撮影法)やMRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像診断法)、PET(Positron Emission Tomography:陽電子断層撮影法)、脳波計などで観察することが出来ないという意味で実証的にその存在が確認された障害ではない点には注意が必要だろう。

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ラベル:薬学 精神医学
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[MSW(Medical Social Worker, 医療ソーシャルワーカー)とPSW(Psychiatric Social Worker, 精神保健福祉士):社会福祉事業の活動領域の拡大と医療分野との連携]

MSW(Medical Social Worker, 医療ソーシャルワーカー)とPSW(Psychiatric Social Worker, 精神保健福祉士):社会福祉事業の活動領域の拡大と医療分野との連携

ソーシャルワーカー(social worker)とは、教育・保健医療・介護・生活保護・児童福祉・障害者支援・産業福祉・司法矯正などの社会福祉事業に従事する専門家や公務員、事業者の総称である。専門職としてのソーシャルワーカーの学術的基盤には、乳幼児・少年・各種障害者・高齢者・経済的困窮者などの社会的弱者を援助する技術や制度を研究する社会福祉学がある。しかし、現代社会では、社会福祉事業の支援と適用を必要とする分野や人々が増えているので、社会福祉学のみでなく自分がソーシャルワークを実施する活動領域(専門領域)に合わせて、臨床心理学や身体医学、精神医学、介護学、行政政策、法律学などの幅広い教養と理解を持つことが期待されている。

19世紀イギリスの慈善組織協会に起源を持つソーシャルワーカーは、専門的な社会福祉援助技術と社会保障制度の知識を活用して、社会福祉サービスの適用やコンサルティング(コーディネイト, カウンセリング)などの対人援助が必要な社会的弱者(制度的弱者)を支援する社会福祉事業に従事する。活動する専門分野に関わらず、ソーシャルワーカーが実践すべき社会福祉援助技術は、以下のように分類することが出来る。

□直接援助技術
1.ケースワーク……社会福祉制度の政策的な支援(生活環境の改善・経済的な援助)や臨床心理学的な対人援助(カウンセリング・心理療法)を必要とする社会的困窮者の個別事例(ケース)に合わせた直接的な援助。
2.グループワーク……集団精神療法(集団面接)やエンカウンター・グループを用いて行う多人数を対象とした心理学的援助。共同の集団生活(老人養護施設・障害者福祉施設)を前提とする心身障害者などを対象とした集団介護、集団を対象とする福祉レクリエーション、リハビリテーション、デイケア(通院・通所による社会復帰・社会参加のためのリハビリテーション)などの集団援助技術。
3.ケアワーク……要介護の高齢者や心身障害者の介護・ケアを行う直接援助技術。

□間接援助技術
1.社会福祉施設の管理運営(調査・評価・アドバイス)
2.ケアマネジメント(ケアプランの作成・実施・評価・修正のサイクル)
3.コミュニティ援助(高齢者・障害者・子供の健康とケアを増進する人間関係や組織活動の発展とそれに基づいた地域社会の再生支援)
4.社会福祉調査と社会福祉政策の提言(専門領域における統計データの収集と分析。社会状況の現実と人々の福祉サービスのニーズなど客観的根拠を踏まえた社会福祉政策の提言)

福祉事業や社会保障にコミットするソーシャルワークの領域では、専門化と細分化が進行しており、日本では国家資格を有する専門家のソーシャルワーカーと公務員として社会福祉活動に従事するソーシャルワーカーとが存在している。日本国において、国家資格制度と法的な位置づけを持つソーシャルワーカーとしては、社会福祉分野(と保健医療分野)における『社会福祉士(Certified Social Worker)』、精神保健分野における『精神保健福祉士(PSW:Psychiatric Social Worker)』がある。

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2006年11月04日

[MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory, ミネソタ多面人格目録)のパーソナリティ検査]

MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory, ミネソタ多面人格目録)

クライエントの性格特性や問題状況などを全人的に理解するために実施する心理アセスメント(psychological assessment)の手段には、『面接法(調査的面接, 診断的面接)・観察法(行動観察, 関与的観察)・心理検査(心理テスト)』 などがあり、心理検査は更に性格検査(personality test)と知能検査(intelligent test)に分けられる。

面談室でクライエントと対面して、クライエントの主訴(精神的な症状や悩みの相談内容)と同時に、性格傾向や生活状況などを聴取する心理面接は『調査的面接(探索的面接)』と呼ばれることがある。心理アセスメントの重要な手段の一つである『調査的面接』でクライエントから聴き取る内容には、成育歴や既往歴、家族歴、人間関係、精神症状、認知傾向などを考えることが出来る。心理アセスメントに従事する心理臨床家は守秘義務を守って、カウンセリング(心理療法)の遂行に必要な情報を聴取していかなければならない。

心理アセスメントを通してクライエントの性格特性や精神障害、問題行動、生活環境、対人関係をより正確に理解していくことになるが、心理アセスメントの中心的な手段は『臨床的な目的と必要(クライエントの全人的理解と適切な技法の選択)』に応じて実施される心理検査(心理テスト)である。パーソナリティ特性を把握する人格検査(性格検査)の一つである『MMPI(ミネソタ多面人格目録)』は、1943年にアメリカのミネソタ大学の研究者S.R.ハサウェイ(S.R.Hathaway)J.C.マッキンレー(J.C.Mckinley)によって開発された網羅性と客観性の高い心理テストである。

MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は、ミネソタ州の市民を母集団とする実験群からサンプリングして作成された質問紙法(Questionnaire)の人格検査で、550問の質問項目から構成されていて『はい・いいえ・どちらでもない』の三件法で回答するようになっている。MMPI(ミネソタ多面人格目録)は、網羅的な人格特性の資料(目録)を参照することによる『精神医学的診断の客観化』を目的として開発されているので、クライエントの精神症状や不適応行動、神経症傾向を分析する為の尺度項目(質問項目)が多くなっている。

MMPIは、多数の統計学的調査により信頼性と妥当性が確認されている心理検査だが、精神分析が勢力を誇っていた時代の疾病概念に強く影響されているので、エビデンス・ベースドな最新の科学的精神医学の知見と折り合わない部分もある。しかし、質問項目の多い多面的検査が出来るMMPIは、神経症(各種不安障害・心気症・強迫傾向)や精神病、不適応、精神的ストレスといった『精神病理学的な問題』を総合的に査定できるという効率性(利便性)のメリットがある。MMPIと並んで、統計学的な信頼性と妥当性が高い性格検査には、アイゼンクが作成したMPI(モーズレイ性格検査)やY-G性格検査(矢田部・ギルフォード性格検査)、EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)などがある。

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2006年10月31日

[家族療法の中心的研究機関としてのMRI(Mental Research Institute), グレゴリー・ベイトソンのダブルバインド理論(二重拘束理論)]

家族療法の中心的研究機関としてのMRI(Mental Research Institute), グレゴリー・ベイトソンのダブルバインド理論(二重拘束理論)

家族成員の相互作用(コミュニケーション)を変容させていく家族療法では、家族成員を構成要素とする家族システムを対象として効果的な援助と介入を行っていく。『精神医学は対人関係論である』と主張したハリー・スタック・サリヴァンのコミュニケーション重視の精神療法や「これからどうするのか」という目的志向性を持つアルフレッド・アドラーの個人心理学は、家族療法以前のシステムズ・アプローチとして知られている。

家族療法の確立に決定的な影響を与えたのは、壮大な『精神の生態学』を構想したアメリカの文化人類学者・社会学者・心理学者グレゴリー・ベイトソン(G.Bateson, 1904-1980)が提示した『二重拘束理論(ダブルバインド理論, double bind theory)』である。二重拘束理論(ダブルバインド理論)とは、相互に矛盾(対立)する二つのメッセージを同時に受け取ることによって、強烈な精神的ストレスを感じる葛藤状態が発生するという理論である。二重拘束理論の確立に関係したのは、グレゴリー・ベイトソンだけでなく、MRI(Mental Research Institute)の創設者であるジャクソンやヘイリー、ウィークランドもその理論形成の過程に関わっている。

即ち、親から発せられる『一次的メッセージ(言語的・非言語的メッセージ)』と一次的メッセージの後に発せられる『二次的メッセージ(メタ・メッセージ)』とが食い違っていて対立している場合に、子供はどちらのメッセージが『親の真意(本当の感情や希望)』を表現しているか判断できずに混乱して行動を決定できなくなるのである。親が子供に対して、『テレビゲームをしてもいいよ』と一次的な言語的メッセージを発している場合に、不機嫌な態度や乱暴な動作で『本当はテレビドラマを見るつもりだったのに、ゲームをするなんてイライラする』という二次的な非言語的メッセージを発している状態が『二重拘束状態』である。親の表面的メッセージと深層的メッセージが食い違っていると、子供はゲームをしていいのかしてはいけないのか判断できなくなり強いストレスを感じてしまう。

また、夫婦仲の悪い家庭環境で、二人の親から発せられるメッセージが正反対のものである場合にも二重拘束状態が生起する。母親が『ご飯を食べる前に、学校の宿題を終わらせなさい』という言語的メッセージを発し、父親が『学校の宿題なんて後回しにして、さっさとこっちに来てご飯を食べなさい』という言語的メッセージを発しているような場合には、母親と父親のどちらの指示に従うべきかという葛藤状態が子供に生まれる。

更に、父親(母親)が『母親(父親)の言うことを聞いて、私の指示を無視したら厳しい罰を与えるぞ』という威嚇的な禁止命令を暗黙のメッセージとして発している場合には、より一層深刻なダブルバインド状態が生まれる。こういった二重拘束理論で説明されるダブルバインド状態というのは、お互いに影響力を強めようとしている三者関係や一人の人間の好意や支持を奪い合っている三角関係で頻繁に見られるものであり、簡単に言えば、『お前はどちらの味方なのか?(旗幟を鮮明にせよ)』と問われている状態なのである。どちらの意見(指示)を聞いても、どちらの味方になっても問題が良い方向に解決せず、どちらかの敵意や憎悪を受けてしまうという苦痛なストレス状況がダブルバインド状態である。

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2006年10月30日

[F検定(F-test)とF分布(F-distribution):統計学の仮説検定]

F検定(F-test)とF分布(F-distribution):統計学の仮説検定

統計学的処理によってある仮説(hypothesis)が正しいかどうかを調べたり、ある薬剤や治療法に十分なエビデンス(科学的根拠・統計学的根拠)があるのかを検証する為には、対立仮説帰無仮説(Null hypothesis)を設定して『仮説検定』を行う必要がある。正当性や妥当性を証明しようとしている仮説のことを『対立仮説』といい、その対立仮説の正しさ(確からしさ)を棄却(否定)する仮設のことを『帰無仮説』というが、証明しようとする対立仮説が正しいのであれば帰無仮説のほうが棄却されることになる。

統計学的な有意性は、実験群対照群(統制群)を用いた比較試験などで検証されるが、二つの群の間に見られる差に意味があるのか偶然であるのかは『有意水準(危険率)』を指標にして判断される。有意水準(危険率)とは、帰無仮説を支持する標本(サンプル)が母集団から抽出される確率であり、通常、有意水準α=0.05(5%)、α=0.01(1%)が設定される。

帰無仮説を支持する標本(サンプル)が抽出される確率が、設定されたp(有意水準・危険率)よりも高ければ、対立仮説が間違っている可能性が高くなる。反対に、帰無仮説を支持する標本が出てくる確率が、αよりも小さければ帰無仮説を棄却することができ、証明しようとしている対立仮説が確率論的(統計学的)に確からしい(正しい)と考えることが出来る。統計学的解析による対立仮説の証明は、最終的に、帰無仮説を棄却することを目標とすることになる。

統計学で最も平均的な分布は、ガウス分布とも呼ばれる釣鐘型の正規分布(normal-distribution)であるが、F分布(F-distribution)とは正規分布曲線を描かない分布の一つである。正規分布をする母集団から2つの標本(サンプル)を抽出して、そのばらつき(不偏分散)の分散比Fを測定すると、その分布はF分布になっている。母集団から抽出した2つの標本をb1,b2とする時、分散比Fは自由度(b1-1, b2-1)を持ち、f(F)の関数表記をすることが可能で、F分布はF検定に用いられる。

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ラベル:統計学
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2006年10月23日

[エビングハウスの忘却曲線:人間の記憶機能と復習の有効性]

ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線

創造・計画・思考・判断など人間の高次脳機能を駆動する中心的な精神機能が『記憶』であるが、ドイツの心理学者へルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus, 1850-1909)は『記憶(記銘・保持・再生)』が時間経過によってどのように変化するのかを実験法を用いて忘却曲線という形で記述した。環境条件を統制した客観的な実験的研究を重視したヘルマン・エビングハウスは、エルンスト・ヴェーバー(1795-1878)やグスタフ・テオドール・フェヒナー(1801-1887)といった古典的な精神物理学の心理学者の影響を強く受けていたが、エビングハウスの名を不朽のものとして心理学史に刻んだのは『無意味綴り』を用いた記憶の忘却実験である。

19世紀後半に行われたエビングハウスの忘却実験で使われた無意味綴りの言葉というのは、『jor, nuk, lad』といった『子音・母音・子音』の無意味な音節である。エビングハウスは被験者に、学習経験に影響され難い無意味綴りを記憶(記銘)させて、記憶の保持と忘却のスピード(割合)を再生率を測定して研究した。一般的に無意味綴りを記憶させれば、時間経過と共にその記憶内容は忘れられていくが、エビングハウスは時間経過によってどのくらいの記憶内容が失われるのかを計測してグラフ化した。縦軸に記憶率(忘却率)、横軸に時間を取ってグラフ化された曲線を、一般に『エビングハウスの忘却曲線』と呼んでいる。

無意味綴りを記憶(記銘)させて、その記銘した内容が時間経過によってどのように忘却されていくのかを再生率を確認して測定した『エビングハウスの実験』の結果は以下の通りである。

20分後には42%を忘却し、58%を保持していた。
1時間後には56%を忘却し、44%を保持していた。
1日後には74%を忘却し、26%を保持していた。
1週間後(7日間後)には77%を忘却し、23%を保持していた。
1ヶ月後(30日間後)には79%を忘却し、21%を保持していた。

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ラベル:心理学 学習
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[応用行動分析のABAB計画法(ABABデザイン)]

スキナーの応用行動分析のABAB計画法(ABABデザイン)

各種の行動原理と行動変容の技法を用いる『応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)』は、自閉症やアスペルガー症候群といった自閉症スペクトラムと呼ばれる広汎性発達障害(PDD:Pervasive Developmental Disorder)の治療・教育に幅広く応用される。しかし、応用行動分析は、心身の発達過程や知的能力、行動制御に障害を抱えた人を対象とした障害児教育や特殊支援教育の福祉教育(医療)活動に限定して利用されるものではなく、人間の行動全般をより適応的かつ有効的にする目的に用いられる。

応用行動分析の歴史は、徹底的行動主義を主張したバラス・スキナー(Burrhus Frederick Skinner, 1904-1990)の創始した行動分析に始まるが、スキナーは行動分析の目的を人間や動物の『行動の予測と制御』に置いた。心理(欲求)を分析・解釈するフロイトの精神分析に対して、スキナーの応用行動分析は、行動を客観的に分析して変容させようとする。

応用行動分析は、人間のあらゆる問題行動や不適応行動を改善(解消)する事を目的とするが、行動変容の手段として独立変数である環境要因を操作することになる。つまり、応用行動分析では、内面的な感情や欲求、動機を変化させるのではなく、外部にある環境要因(独立変数)を変化させることで、行動(従属変数)を適応的(効果的)に変容させるのである。

行動分析の実験的研究では、独立変数である環境(強化子・無条件刺激・条件刺激)を様々に変化させながらどのような行動(従属変数)が生起するかを観察し記述していく。『環境の変化』に対する『行動の変容』を繰り返し観察・記述する実験を行うことで、帰納推測的に一般法則としての行動原理を導出するのである。こういった実験的研究を通して発見された人間の最も基本的な行動原理は、パブロフの犬で知られる『レスポンデント条件付け(古典的条件付け)』とスキナー箱の実験で知られる『オペラント条件付け(道具的条件付け)』というシンプルな条件付けの行動メカニズムに集約される。

応用行動分析は、具体的な行動の変容(問題解決)を効率的に導く科学的技法であるが、発達障害の教育福祉活動への適用以外にも、不適応行動の改善や人間関係の葛藤の緩和、社会経済的な行動の合理化(マーケティングや営業販売戦略への応用)に用いることが可能である。レスポンデント条件付けを応用した行動変容では、生得的な生理学的反射や特定の条件刺激に対する条件反射を利用して行動の変容が行われる。障害児教育では、ベルを鳴らしたり絵柄のついたカードを見せたりして、レスポンデント条件付け(古典的条件付け)を行い、その状況や場面にふさわしい効果的な行動が取れるように行動分析を行っていく。

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[T.M.ニューカムのA-B-XモデルとF.ハイダーのP-O-Xモデル]

T.M.ニューカムのA-B-XモデルとF.ハイダーのP-O-Xモデル

オーストリア出身のアメリカの心理学者フリッツ・ハイダー(Fritz Heider, 1896-1988)は、ベルリン大学在学中にヴェルトハイマーやコフカ、ケーラーといったゲシュタルト心理学者の影響を強く受けたが、後に、社会心理学分野の研究に興味を持ち、対人認知(対人評価)やコミュニケーションに関係する認知的バランス理論(認知的均衡理論)や結果の原因を何処に帰属するかによって心的過程(感情・行動)が変化するという帰属理論を提唱した。

社会心理学者としてのフリッツ・ハイダーは、認知的不協和理論で著名なレオン・フェスティンガー(Leon Festinger, 1919-1989年)と共に、認知的斉合性理論(cognitive consistency theories)が構築される過程で大きな貢献をした研究者である。フリッツ・ハイダーの(認知的)バランス理論とは、社会的コミュニケーション場面(二者関係・三者関係)で生じる印象評価(対人評価)を適切に説明する態度理論(attitude theory)である。

認知を構成する二つ以上の要素が矛盾するという『認知的不協和』が起こると心理的(生理的)な不快感が生じるので、人はその認知的不協和を解消(低減)するような認知(解釈・認識)をするようになるというのがフェスティンガーの認知的不協和理論である。例えば、『努力すれば幸福な人生を送れる』という認知と『努力をしても報われないことがある』という認知は矛盾するので認知的不協和が生じるが、一生懸命に努力して資格試験(就職試験)を頑張っている人は前者の認知を肯定するような成功体験や統計情報を信じることで不協和を緩和する。反対に、努力しても生育環境が劣悪であればその努力は無駄だと諦めている人は、後者の認知を肯定するような不条理な失敗談や犯罪統計などを信じることで不協和を解消するのである。認知的不協和は、認知的な不協和の状況や認知を回避する為の認知(行動)を動機付けるので、内発的動機付け(モチベーション)と深い関係があるとされる。

フリッツ・ハイダーの認知的バランス理論も、基本的な理論構成はフェスティンガーと同じであり、複数の認知のバランスが崩れた不均衡状態では、そのバランスを回復させる作用を持つ『対人評価(印象形成・対象評価)の変化』が起こるというものである。ハイダーのバランス理論を簡潔に説明すると、自分の好きな相手が高く評価するものは自分も高く評価しやすく、自分の嫌いな相手が高く評価するものは反対に否定しやすいという『認知的バランスの回復』を示している。バランス理論では、私たちが『対人魅力・事物評価・対人認知』を無意識的に調節する力動を働かせることで、認知のバランス(均衡)を保ってストレス(葛藤)を低減させていることを説明しているのである。

ハイダーの(認知的)バランス理論は、『P-O-Xモデル』を用いて解説されることが多いが、『P=認知の主体者(人), O=他者(関係者), X=事物・対象』を意味している。人(認知者)と他者(関係者)の関係は『情緒関係(センチメント関係)』であり、人と対象(事物)との関係は『単位関係(ユニット関係)』とされるが、認知者は、他者と対象との関係で生じる不均衡の不快感(ストレス)を低減させる『印象・評価・認知のバランス化』を無意識的に行うのである。

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2006年10月20日

[エスリン・インスティチュート(Esalen Institute, エスリン研究所)でのカウンセリング教育研修][クルト・レヴィンのNTL(National Training Laboratory)]

エスリン・インスティチュート(Esalen Institute, エスリン研究所)

アメリカで1950年代から1960年代にかけてカール・ロジャーズやアブラハム・マズローなどのヒューマニスティック心理学(人間性心理学)が隆盛して、クライエント中心療法やエンカウンター・グループ(“出会い”を重視する集団精神療法)を中心とするカウンセリングブームが湧き起こった。カウンセリング技法の普及や対人援助や人間関係に関する心理学のブーム、自己超越的なニューエイジ思想と関係したトランスパーソナル心理学の影響を受けて誕生した一大セミナー研究施設が、『エスリン・インスティチュート(Esalen Institute)』である。エスリン研究所は、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント(人間性回復運動)の国際的な中心地となり、心理学の第三勢力と言われる人間性心理学(humanistic psychology)の学会創立にも貢献している。

エスリン・インスティチュートと呼ばれる巨大な複合セミナー(研究研修)施設は1962年に、サンフランシスコ南部のビッグ・サーに建設されたが、人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)やトランスパーソナル心理学、仏教、瞑想技法など東洋思想の合宿研修が精力的に行われた。数万坪にも上る広大な敷地面積を誇るエスリン研究者には、数十棟の大小様々な研修施設や宿泊施設が建設され、会員の健康維持に役立てるプールや温泉なども完備していた。

カウンセリングの面接場面では、人間の主観的な意識世界や共感的な感情生起を重視するという当時の時代背景もあり、エスリン・インスティチュートでは、現在の心理学研究法の主流となっている客観的データを用いて統計学的解析を行う『量的研究』は殆ど行われなかった。定量的なデータを用いる検証可能な量的研究を行わなかったという意味で、エスリン研究所では、エビデンス・ベースドな科学的心理学は発展しなかったが、その代わりに臨床的有効性や人間性の成長に寄与する各種のカウンセリング技法が発展することになった。

エスリン研究所の研究活動や合宿研修によって発展したカウンセリングの理論・技法には、率直な感情と意見を語り受容し合う集団療法の一つである『グループ・エンカウンター』、身体感覚の変化への気づきと精神状態(認知・情動・思考)の改善を結び付けていく『センサリー・アウェアネスやフォーカシング』、言語的コミュニケーションだけでなく身体の運動を活用して心理状態を安定させる『ボディワーク』、今、ここでの気づきを得る為のロールプレイングを重視する『ゲシュタルト療法』などがあります。それ以外にも、仏教や密教、ヨーガ、瞑想、太極拳など東洋思想の実践と研究も意欲的に行われ、東西文化と思想の融合や調和が試行錯誤されることとなった。

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2006年10月19日

[中山正和のNM法と川喜田二郎のKJ法:創造的発想法(創造性開発技法)]

中山正和のNM法と川喜田二郎のKJ法:創造的発想法(創造性開発技法)

職業上の技能や経験を向上させ、仕事の対人関係や悩みを改善するキャリアカウンセリングの分野の一つに、『創造的発想法』あるいは『創造性開発技法』というものがある。創造性(creativity)とは何であるのかという定義は難しいが、創造性とは一般的に『今までにない何かを新たに生み出す能力・資質・直感』のことであると考えられている。しかし、無から有を作り出すことが原理的に不可能であるように、既存の知識理論や技術体系を無視して創造的に新たな何かを生み出すことは出来ない。

過去の知識・理論・技術・経験の蓄積の中から、未来に向かう新たな創造的発想が生まれ、その創造的な発想に基づく問題解決の方法論や実践が編み出されてくる。画期的な問題解決の方法論を具体的に考えると、『新技術の発明・新たな法則の発見・新規ビジネス・問題状況の解決と前進』などが考えられる。創造的な発想そのものは抽象的で観念的な場合が多いが、それを具体的な形にしていく過程で実用性や応用性が考えられていくことになる。現代文明社会における創造的発想とは、原則的に、実用化(技術化・ビジネス応用)すれば何かの役に立つという『プラグマティズム(実用主義)』に基づくアイデアということが出来る。

上記のように考えると、創造性(creativity)とは、『過去の情報(概念)や知見を自由自在に組み合わせたり、物事を考える視点(立場)を転回させたりして、画期的で有用な組み合わせ(関係づけ)を着想する能力(人間性)』と定義することが出来る。創造的発想は、新規で画期的であるだけでは高く評価されることはなく、問題解決や目的達成に役立ち有用であることによって高く評価されるのである。

創造的発想をする為には、過去の学習行動や人間関係から蓄積した情報や知識を、自由自在かつ効果的に組み合わせる柔軟性と情報処理能力が必要である。効率的な情報処理の為に最も重要な技術となるのが、無秩序で膨大な情報を整理する技術である。無数のデータから問題解決(目的達成)に役立つ有効なアイデアを生み出す発想法に、川喜田二郎(1920-)KJ法がある。KJ法という名称は、ネパールやヒマラヤのフィールドワーク研究などを精力的に行った文化人類学者の川喜田二郎(Kawakita Jiro)のイニシャルから取られている。

帝大時代の京大を卒業した川喜田二郎は、ダーウィンの自然選択説を否定する今西進化論や棲み分け理論を提唱した人類学者であり生物学者でもある今西錦司の後輩に当たり、文化人類学や民族学の分野で多くの成果を上げている梅棹忠夫とも親交があった。1986年に原因不明の失明をした梅棹忠夫も今西錦司の弟子筋に当たり、失明以前の梅棹忠夫は文化人類学のフィールドワークとして世界各地の登山研究にも関心を持っていた。今西錦司・梅棹忠夫・川喜田二郎の3人は文化人類学や地理学・民俗学の調査研究(フィールドワーク)でカロリン諸島や大興安嶺山脈などに登山に赴いたことがある。KJ法の開発は、川喜田二郎のネパールやヒマラヤにおけるフィールドワーク研究と切り離して考えることが出来ない。

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ラベル:経営学 心理学
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2006年10月15日

[統計学の母集団の大きさ(N)とサンプル(標本)の大きさ(n)]

統計学の母集団とサンプル(標本)

統計学の基本概念として、『母集団』『標本(サンプル)』があるが、統計学的調査(分析)の対象とされる集団のデータ全体を『母集団』と呼び、母集団の中の一部のデータを『標本(サンプル)』と呼ぶ。母集団には、データ(要素)の数が有限個である『有限母集団』と、データの数が無限個である『無限母集団』とがある。

有限母集団で、要素(データ)の数が少ない場合には、母集団の要素全てを調査する『全数調査』が可能であるが、有限母集団の要素が膨大な場合や無限母集団である場合には、母集団から一定の数のサンプルを抽出することになる。統計学的調査のためにサンプル(標本)を母集団から抽出することを『サンプリング』といい、サンプリングによって行う統計学的調査(統計学的推測)を『標本調査』と呼ぶ。

新聞やテレビなどマスメディアが行う世論調査や意見調査、監督官庁が行う商品検査は、典型的な標本調査である。また、通常の学術活動の一環として行われる統計学的調査では、時間・労力・経済的コストなどの問題から全数調査を行うことは難しく標本調査を行うことが多い。

最も客観的な調査結果が得られると予測される理想的なサンプリングの方法は、単純無作為抽出法(random sampling, ランダム・サンプリング)であるが、実際には人為的な枠組みを完全に排除してサンプリングをすることは難しいので、系統抽出法や多段抽出法、RDD法などが採用されることが多い。無作為抽出(ランダム・サンプリング)を適切に行うことが出来れば、サンプルを抽出した母集団に関する有効な情報(性質・特性を判断する為の平均値や確率)を得ることができるが、無作為抽出以外の抽出法でもある程度有益な調査結果を得ることは可能である。

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ラベル:統計学
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[構造派家族療法の面接技法:エナクトメント(enactment)とジョイニング]

構造派家族療法の面接技法:エナクトメント(enactment)とジョイニング

家族療法短期療法(ブリーフ・セラピー)では、家族を相互的に作用する個人(要素)が集まった一つのシステムと見なして、家族成員が他の家族成員に影響を与える情緒的行動やコミュニケーションを改善することで家族の問題(家庭の病理)を解決しようとする。家族療法におけるシステムズ・アプローチとは、家族の問題(家庭の病理)の原因を「一人の家族」に押し付けるのではなく、問題行動を生み出している家族システムの異常(障害)を発見して改善することに重点を置く。

家族は『言語・情緒・行動・態度・表情』などを介して言語的・非言語的コミュニケーションを行うことで、絶えず他の家族成員に何らかの影響を与え続けていて、自分自身も他の家族から様々な心理的影響を受け行動を変化させている。システムズ・アプローチ(家族療法)のカウンセリング技法を採用して、家族を社会システムの一つとして見るという事は、『全体(家族内の相互作用の結果)は、部分(個人の行動)の単純な総和ではない』という考えを前提とすることである。

家庭内の問題やコミュニケーションの障害が原因となって、家族の誰かに精神症状や問題行動が発現している場合には、その家族は『IP(Identified Patient, 患者と見なされた者)』であるに過ぎず、精神病者(精神障害者)や社会不適格者ではない。家族システムのマイナスの相互作用が原因となって、個人(家族成員)の問題行動や精神障害が生起し維持されている場合には、家族システム内部で繰り返される『悪循環の円環的な因果』を断ち切るアプローチをしなければならない。

ここでは、構造派家族療法S.ミニューチン(S.Minuchin)の面接技法の概略について簡単に説明するが、S.ミニューチンが家族療法のシステムズ・アプローチにおいて最も重視したのは『ジョイニング(joinning)』である。家族療法におけるジョイニングとは、カール・ロジャーズの来談者中心療法(クライエント中心療法)のラポール(相互的信頼関係)に相応するような概念で、家族システムの一部として治療者(カウンセラー)が積極的に参加(ジョイン)して介入することである。

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2006年10月11日

[精神分析学におけるエディプス・コンプレックス(Oedipus Complex)]

フロイトの精神分析におけるエディプス・コンプレックス(Oedipus Complex)

オーストリアの神経科医・心理学者であったシグムンド・フロイト(Sigmund Freud, 1856-1939)が、『無意識の意識化(無意識の言語化)』を治療機序とする心理療法として確立したのが精神分析(psychoanalysis)である。

精神分析療法で『無意識の意識化』を実現する主要な技法は、リラックスした状態で頭の中に思い浮かんだ事柄を自由に話し続ける『自由連想法』と夢の内容やイメージが表現する無意識的な願望を探求する『夢分析』であるが、フロイト以後の精神分析では『転移・逆転移の解釈』『問題解決的な行動処方』も重要なものとされてきている。

精神分析学のリビドー発達論(性的精神発達理論)における『エディプス・コンプレックス(Oedipus Complex, Oedipal Complex)』については、以前に書いた『阿闍世コンプレックス(Ajase Complex)』の項目の中で比較的詳しく説明したので、ここではその内容を再度簡潔にまとめておきたいと思う。エディプス・コンプレックスの名称の由来は、古代ギリシア最大のポリス・アテネ(アテナイ)で、アイスキュロスとエウリピデスと並ぶ三大悲劇詩人であったソフォクレス(B.C.496-B.C.406)の著述した悲劇『オイディプス王』にちなんだものである。

フロイトの考案したリビドー発達論(性的精神発達理論)では、リビドー(性的欲動・性的エネルギー)が充足(備給)される身体部位が精神の発達と共に変化すると考え、その部位に基づき発達段階を定義している。リビドーとは、生理学的緊張によって経験される性的なエネルギーであると同時に、人間の生そのものを動機付けている『生きるエネルギーの源泉』である。リビドー発達論では、『口唇期(0〜1歳半)→肛門期(2〜3歳)→男根期(4〜6歳)→潜伏期(6歳〜12歳)→性器期(12歳以降)』という発達段階を経て、現実原則に従って適応的な行動が取れる自我・超自我が形成されると考える。

精神分析学の発達論では、『男根期』に分類される4〜5、6歳の時期は、別名『エディプス期(Oedipal phase)』と呼ばれるが、父・母・子という家族内の三者関係の情緒的葛藤であるエディプス・コンプレックスはこの時期に経験されることになる。エディプス・コンプレックスとは、『異性の親(母親)に対する性的関心や愛着』『同性の親(父親)に対するライバル心や憎悪』という相対立する感情が内面に同時に生まれている葛藤状態を意味する。

激しい感情の表出を伴う典型的なエディプス・コンプレックスは4〜6歳頃に経験されるが、このアンビバレンツ(両価的・矛盾的)な情緒的葛藤を上手く克服できずに、男根期(エディプス期)にリビドーが固着すると、各種の神経症(ヒステリー)症状が発生しやすくなり、自己顕示欲や依存性・攻撃性の強い不安定な性格が形成されるという。精神分析の文脈でいう『神経症(ヒステリー)』とは、無意識的な欲求の抑圧や過去のトラウマティックな記憶が原因(心因)となって起こる各種の一時的な心身障害や性格異常のことである。

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2006年10月09日

[エソロジー(動物行動学)の代表的研究者:ニコ・ティンバーゲンとコンラッド・ローレンツ]

エソロジー(動物行動学)の代表的研究者:ニコ・ティンバーゲンとコンラッド・ローレンツ

エソロジーは、動物の行動・生態の観察を比較研究することによって、動物の行動の持つ意味や本質に接近しようとする学問であるが、エソロジーの基本命題は『動物・人間は、なぜ、そのような行動を取るのか?』という疑問に集約することが出来る。エソロジーの研究対象となる動物は、近代的な生物の分類法を考案した博物学者カール・フォン・リンネ(Carl von Linne, 1707-1788)の分類に従うと、動物界に分類されるものの大半であるが、一般的には脊椎動物や節足動物(昆虫)を対象とした研究が多い。

リンネの近代的な生物分類の枠組みは、『界(Kingdom)・門(Phylum/Division)・綱(Class)・目(Order)・科(Family)・属(Genus)・種(Species)』であり、全ての生物をこの枠組みに従って分類することが可能となっている。エソロジー(動物行動学)分野の進歩発展に尽力した代表的な研究者として、オランダのニコ・ティンバーゲンとオーストリアのコンラッド・ローレンツという研究者がいる。ここでは、ティンバーゲンとローレンツの主要な研究内容と代表理論だけを簡潔に説明しておきたいと思う。

ニコ・ティンバーゲン(Nikolaas Tinbergen, 1907-1988)は、著書『本能の研究』の中で『なぜ、動物はそのような行動をするのか?』について、エソロジーには4つの研究アプローチがあると言っている。それは以下の4つの研究アプローチであり、これを『ティンバーゲンの4つの問い』と呼んでいる。

1.どのような生理学的機序(刺激−反応)によって行動が生起するのか?=生理学的アプローチ(至近要因)

2.どのように行動が発達(変化)するのか?=発達論的アプローチ(個体発生要因)

3.その行動にどのような意味(目的)や効果(機能)があるのか?=適応的アプローチ(究極要因)

4.どのような進化過程を経てその行動が形成されたのか?=進化論的アプローチ(系統発生要因)

オランダの動物行動学者ニコ・ティンバーゲンは、1973年に、コンラッド・ローレンツとカール・フォン・フリッシュと共にノーベル医学生理学賞を受賞したが、兄のヤン・ティンバーゲンもノーベル経済学賞の初代受賞者としてその名を知られている。

カール・フォン・フリッシュは、ミツバチが示すコミュニケーション行動である『8の字ダンス』の発見で知られる。ミツバチは餌場の場所の距離をおおまかに仲間に伝達する為に、餌場が近ければ『円形ダンス』を行い、餌場が遠ければ『8の字ダンス』を行っている。ミツバチは意図的に思考して8の字ダンスで餌場の方角を教えているわけではないが、遺伝形質による本能行動として8の字ダンスを行い、『太陽の方向』と『餌場の方向』の角度を仲間のミツバチに効果的に伝達することに成功しているのである。

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