D.H.オルソンらの凝集性・適応性・コミュニケーションの三次元からなる『家族機能測定尺度(FACESV)』
家族機能は外部の第三者が確認しづらい機能であるが、『現実の家族機能+理想の家族機能』を測定する尺度として、D.H.オルソン(D.H.Olson)らの研究・開発した家族機能測定尺度の『FACESV(1985)』がある。
家族関係は家族メンバー一人一人の性格・感情が複雑に絡み合う『相互作用』を通して形成されるので、家族ではない第三者からはその実際の様子や感情は分かりにくい。また家族関係・家庭生活は極めて『プライベート』なものなので、家族以外の第三者に明らかにしづらいような事情・経営・秘密があることも多く、家族関係・家族療法の研究には一定の限界があることも一面の事実であった。
1980年代に臨床心理学者のD.H.オルソンは、家族の心理臨床や家族関係の研究に応用できる『円環モデル』を開発した。このオルソンの円環モデルは、『凝集性・適応性・コミュニケーション』の3次元から構成されているモデルである。
凝集性(cohesion)……家族成員のメンバーが相互に持つ情緒的なつながりの強さ。凝集性は中等度のレベルがもっとも家族機能が適切に働く。凝集性が極端に強すぎても弱すぎても、家族機能は低下したり麻痺したりすることになる。
適応性(adaptability)……家族システムに危機的状況や発達的危機が起こった場合に、『家族システムの今までの力関係・役割関係』などを状況に合わせて柔軟に変化させることのできる能力のことである。適応性も中等度のレベルがもっとも家族機能が適切に働く。適応性(可変性)が極端に高すぎても低すぎても、家族のライフスタイルを通した問題が増えてしまう。
コミュニケーション(communication)……凝集性と適応性の二つの次元が適切に機能するように、家族間の互助的なやり取りを促進する作用を持つ次元である。
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