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2017年10月12日

[D.H.オルソンらの凝集性・適応性・コミュニケーションの三次元からなる『家族機能測定尺度(FACESV)』]

D.H.オルソンらの凝集性・適応性・コミュニケーションの三次元からなる『家族機能測定尺度(FACESV)』

家族機能は外部の第三者が確認しづらい機能であるが、『現実の家族機能+理想の家族機能』を測定する尺度として、D.H.オルソン(D.H.Olson)らの研究・開発した家族機能測定尺度の『FACESV(1985)』がある。

家族関係は家族メンバー一人一人の性格・感情が複雑に絡み合う『相互作用』を通して形成されるので、家族ではない第三者からはその実際の様子や感情は分かりにくい。また家族関係・家庭生活は極めて『プライベート』なものなので、家族以外の第三者に明らかにしづらいような事情・経営・秘密があることも多く、家族関係・家族療法の研究には一定の限界があることも一面の事実であった。

1980年代に臨床心理学者のD.H.オルソンは、家族の心理臨床や家族関係の研究に応用できる『円環モデル』を開発した。このオルソンの円環モデルは、『凝集性・適応性・コミュニケーション』の3次元から構成されているモデルである。

凝集性(cohesion)……家族成員のメンバーが相互に持つ情緒的なつながりの強さ。凝集性は中等度のレベルがもっとも家族機能が適切に働く。凝集性が極端に強すぎても弱すぎても、家族機能は低下したり麻痺したりすることになる。

適応性(adaptability)……家族システムに危機的状況や発達的危機が起こった場合に、『家族システムの今までの力関係・役割関係』などを状況に合わせて柔軟に変化させることのできる能力のことである。適応性も中等度のレベルがもっとも家族機能が適切に働く。適応性(可変性)が極端に高すぎても低すぎても、家族のライフスタイルを通した問題が増えてしまう。

コミュニケーション(communication)……凝集性と適応性の二つの次元が適切に機能するように、家族間の互助的なやり取りを促進する作用を持つ次元である。

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2015年11月09日

[選択的緘黙(場面緘黙)と新しい環境・他者への適応:乳幼児期の不安関連の障害2]

選択的緘黙(場面緘黙)と新しい環境・他者への適応:乳幼児期の不安関連の障害2

器質的な言語障害がないにも関わらず、しゃべることができない(発話が見られない)状態のことを『緘黙(かんもく)』という。緘黙にはどんな状況でもどんな相手でも話さない『全緘黙』と、特定の状況や相手に対してだけ話すことがない『選択的緘黙(selective mutism)・場面緘黙』がある。

分離不安障害と母子関係:乳幼児期の不安関連の障害1

幼児期・児童期の緘黙のきっかけとなるのは『新しい環境への適応』『馴れない他者とのコミュニケーション』である。そのため、『幼稚園・保育園への入園,小学校への入学』によって授業中に声を出して答えられないとか、友達と上手くおしゃべりができないとかいった『選択的緘黙(場面緘黙)』の症状が出やすくなるのである。

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2015年09月26日

[乳幼児の心理臨床的な治療法の分類と母子合同(親子合同)カウンセリングの基本]

乳幼児の心理臨床的な治療法の分類と母子合同(親子合同)カウンセリングの基本

乳幼児期の子供が精神症状や問題行動(不適応行動)を見せている時の治療法は、原則として、母親(養育者)と乳幼児(子供)をペアとして取り扱う『母子合同カウンセリング(母子合同の治療)』が採用されることになる。

母子合同カウンセリングにおいては、乳幼児は自分の意見・感情・苦痛を言葉にして話すことはできないが、表情を変えたり泣いたり怒ったり、うつむきがちになったり抑うつ的になったりなどして『非言語的コミュニケーション』によって、自分の感情・気分・問題の存在を訴えかけてくることが多い。

親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』の問題:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復

母子合同の心理臨床的(精神医学的)な治療法は、大きく分けて以下の3つがある。これらの3つの治療法は、乳幼児の正常な発達と能力獲得を促進すること、乳幼児の二次障害の発生を予防すること、親(養育者)の心の健康を回復して適切な親子関係を持てるようにすることをその目的にしている。

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2015年05月29日

[オットー・カーンバーグのパーソナリティー構造論の4つの利点と狩野力八郎の人格水準測定のための5つの尺度]

オットー・カーンバーグのパーソナリティー構造論の4つの利点と狩野力八郎の人格水準測定のための5つの尺度

力動精神医学の観点から、精神科・心療内科に来院する患者を診断する場合には、『神経症的パーソナリティー構造(NPO)→境界性パーソナリティー構造(BPO)→精神病的パーソナリティー構造(PPO)』の順番で病態水準が深刻で重いと判断する。

パーソナリティーの機能水準では、神経症的パーソナリティー構造(NPO)が最も人格水準が高く、精神病的パーソナリティー構造(PPO)が最も人格水準が低いという指標になる。

オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と機能性の違い

精神分析家オットー・カーンバーグは、パーソナリティー構造の機能と病態の水準を分類整理して重症度を分ける利点として以下のようなポイントを指摘している。

1.薬物療法かどの心理療法かといった、人格水準に見合った治療方法の選択が行いやすくなるということ。

2.心理療法のプロセスや影響によって、医師(分析家)と患者の間にどういった治療関係を構築できるかが予測しやすくなること。

3.各種精神疾患に対する長期予防や治療計画(治療がどのくらいの期間かかってどれくらいまで回復するのかの見立て)が立てやすくなること。

4.各パーソナリティー構造の性格傾向や機能水準を理解することによって、一人の個人(人間)としての患者の理解が深まること。

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[オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と機能性の違い]

オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と機能性の違い

マーガレット・マーラーの乳幼児の『分離‐個体化』をベースにした早期発達理論では、母親から一定期間離れるための練習をする『練習期(practicing subphase:9〜14ヶ月)』を経験した後に、再び母親がいないことに対する寂しさや孤独感が強まって母親に接近していく『再接近期(reapproaching subphase:15〜24ヶ月)』が起こるとされている。

オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と原始的防衛機制

幼児期や児童期の子供は、常に母親を『情緒的な安全基地(セキュリティ・ベース)』として活用しているところがあるのだが、この『再接近期』の時期に子供は不安感や孤独感が強まりやすいので、特に適切に情緒的応答(愛情表現・スキンシップ)を返してくれる『母親(自己対象)の存在』が必要になると考えられている。

再接近期の時期に、甘えたり頼ったりできる母親(自己対象)が不在だと、子供の意識は『乳幼児期の不安・依存の強い段階(精神分析でいう肛門期・男根期)』に固着しやすくなり、成長して青年や大人になってからもこの固着のある発達早期の段階に意識・感情・考えが退行しやすくなるのである。

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[オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と原始的防衛機制]

オットー・カーンバーグの人格構造の3つの水準と原始的防衛機制

アメリカの精神分析家オットー・カーンバーグ(Otto F. Kernberg,1928-)は、オーストリアのウィーン出身の理論家肌の精神分析家である。

O.カーンバーグは、人格構造(パーソナリティー構造)の機能水準を『精神病的人格構造(PPO)・境界性人格構造(BPO)・神経症的人格構造(NPO)』の3つの段階に分類した研究成果で知られているが、現在でも精神疾患の病態水準が重いという意味で『精神病水準(精神病的人格構造:PPO)』という概念が用いられることがある。

境界性人格構造(境界性パーソナリティー構造:BPO)は、『重篤な精神病的人格構造(PBO)と軽度の神経症的人格構造(NPO)の中間領域にあるとされる人格水準・病理水準』であり、その大きな特徴の一つとして対象関係論のメラニー・クラインが指摘した各種の原始的防衛機制を頻繁に用いるということがある。

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2013年04月09日

[オットー・カーンバーグ(Otto F. Kernberg)]

オットー・カーンバーグ(Otto F. Kernberg)

ウィーン出身のアメリカの精神分析家であるオットー・カーンバーグ(Otto F. Kernberg,1928-)は、臨床経験と人格構造論に基づく『境界例(borderline case)』の研究で多くの功績を残した人物である。O.F.カーンバーグの精神分析理論は、『対象関係論的な自我心理学』に分類されており、正統派精神分析と同じく精神分析の治療目標を『安定した自我機能の強化』に置いている。

オットー・カーンバーグは、アメリカ合衆国における精神分析の臨床活動の拠点であるメニンガー・クリニックで院長を勤めながら、境界例(ボーダーライン・ケース)に特徴的に見られる『境界性人格構造(BPO:Borderline Personality Organization)』の形成と病理を整理した。『境界例(ボーダーライン・ケース)』という診断名(病名)はアメリカ精神医学会が編集するDSMから削除されていることもあり近年では殆ど使われていないが、『精神病(統合失調症)と神経症(ヒステリー)の中間的な症状を呈する精神障害』という比較的重症度の高い精神障害を指していた。

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2013年03月31日

[カウンセリングの保証(reassurance)]

カウンセリングの保証(reassurance)

カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの間の信頼関係を強めて、問題や悩みに対する不安感を弱める基本的な技法として『保証(reassurance)』がある。

人間は成功するか失敗するか分からないこと、未来がどのように変わるか分からない状況(今よりもっと悪い状態になるのではないかという予測)、自分の体調・気分の好ましくない変化に対して強い『不安感』を抱く。しかし、信頼したり尊敬したりする他者から、『それで大丈夫だよ・あなたは間違っていないと思うよ』と言われると、その不安感が和らいで自信が持てるようになる。

『信頼する他者』から共感されたり肯定されたりすると、不安感(自己不確実感)が和らぐという心理メカニズムを応用したカウンセリング技法が『保証(reassurance)』である。

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2013年03月17日

[ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)]

ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)

イギリスの精神分析家ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)は、メラニー・クラインが創設した英国対象関係学派に分類される臨床家であり、その理論構成はW.R.D.フェアバーンD.W.ウィニコットの影響を強く受けている。

W.R.D.フェアバーンの『スキゾイド(統合失調質・分裂病質)』の研究に影響を受けたH.ガントリップは、対象関係論(object relation theory)のスキーマと概念設定を用いて、スキゾイド(現在の統合失調症)の人の内的世界や病理形成の力動を解明しようとする仕事を行った。ガントリップの精神分析も、M.クラインと同様に発達早期の母子関係とその性格形成への影響を重視するものであった。特に、乳児が外的対象を自分の全能感が創り出したものだと思い込む『錯覚(illusion)』の心理機制と錯覚が持つ精神病理との関係について精力的な考察をしている。

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2013年03月01日

[ドーラ・カルフ(Dora M. Kalff)]

ドーラ・カルフ(Dora M. Kalff)

スイスの女性心理療法家であるドーラ・カルフ(Dora M. Kalff,1904-1990)は、精神分析の無意識領域と関係するとされる遊戯療法の『箱庭療法(Sandplay Therapy)』を開発したことで知られる。ドーラ・カルフは早くに夫を亡くしてしまい、未亡人のシングルマザーとして二人の息子を懸命に育てたが、父親のいない家庭における子育ての不安・悩みを解消するために何か参考になる知識はないかと心理学・精神分析を学び始めたのがその最初だという。

ユング心理学(分析心理学)を日本に広めた河合隼雄(かわいはやお,1928-2007)が、1965年にカルフの砂箱を用いたこの技法を『箱庭療法』と命名したこともあり、現在でも普遍的無意識・事物からの想像力を重視するユング派のセラピストが好んで用いることが多い遊戯療法である。箱庭療法自体はD.カルフの独創によるものではなく、カルフがその教えを受けたイギリスの児童精神分析医マーガレット・ローウェンフェルト(M.Lowenfeld)が、子どもの内面を遊びを通して表現させるために開発した『世界技法(The World Technique)』がその原型になっている。

世界技法というのも、子どもが玩具を思い通りに配置することで、子どもの内面世界を砂場に再現しようとするものであったが、D.カルフの考案した『箱庭療法』はそのローウェンフェルトの世界技法に、『ユング心理学の元型(アーキタイプ)や普遍的無意識』に基づく象徴的解釈を導入して改良した。残されているローウェンフェルドとカルフの往復書簡では、箱庭療法(世界技法)で表現された『馬』を巡って、ローウェンフェルドはそれを正統派精神分析の解釈で『男根的な力強さ・男性性』の象徴だと解釈したが、カルフのほうは馬を『優しさ・聡明さ・女性性』の象徴だという風に違った解釈をしている。

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[レオ・カナー(Leo Kanner):2]

レオ・カナー(Leo Kanner):2

レオ・カナーも自閉症児を育てている母親の性格傾向や愛情不足(冷たい接し方)に問題があるという『冷蔵庫マザー説』を間接的に支持するような発言をしていたが、1969年の『アメリカ自閉症協会』の年次大会において、『冷蔵庫マザー説を自分は初めから支持していなかった(自閉症の原因は先天的要因だと言い続けてきた)』と釈明している。

当時は早期発達理論における精神分析の影響が非常に強かったため、L.カナーに限らず『乳幼児期から思春期までの子どもの精神発達・人格形成に対する母親の影響力』が実際以上に非常に大きなものと考えられていた。すべての乳幼児・児童の精神疾患や青年の非行問題の原因が、『母親の育て方の間違い・母の子に対する愛情不足(子どもの孤独感と寂しさ)』に求められがちであった。

母親の愛情不足や冷淡な拒絶、母子間の愛着形成の障害が自閉症の原因であるとする間違った仮説は、カナーだけではなくシカゴ大学教授の精神分析家ブルーノ・ベッテルハイム (Bruno Bettelheim)によっても強く主張されていた。特にブルーノ・ベッテルハイムの著書『うつろな砦−小児自閉症と自己の起源("The Empty Fortress: Infantile Autism and the Birth of the Self")』は、自閉症の子どもには母子関係の愛着障害や母親の冷たい子育ての態度があるという心理的原因を広める結果につながってしまった。

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[レオ・カナー(Leo Kanner):1]

レオ・カナー(Leo Kanner):1

オーストリア・ハンガリー帝国生まれのアメリカの精神科医レオ・カナー(Leo Kanner,1894-1981)は、アンナ・フロイトやメラニー・クラインらの精神分析とは異なる科学的アプローチで、児童の精神的・発達的な諸問題を統合する『児童精神医学(Child Psychiatry, 1948)』を提唱した人物である。レオ・カナーはアメリカの精神医学会で初めて『児童精神科医』を自称したが、カナーは各発達段階に専門的に対応した『精神医学の観察・診断・治療』の臨床行為が必要であると考えていた。

1913年にドイツのベルリン大学に入学したカナーは、第一次世界大戦中にはオーストリア軍に従軍したことで学業の中断を余儀なくされたが、1921年に医師免許を取得して精神科医としての活動を始めた。1924年にアメリカのサウスダコタ州ヤンクトン郡の州立大学(現在は閉校)で医科助手として働き始めることになり、アメリカ合衆国への移住を決めた。1930年には、ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学病院で小児科の創設者として働き、1933年には、小児科学の助教授に就任して児童精神医学分野への興味・影響力を高めた。

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[ロバート・R・カーカフ(Robert R. Carkhuff)]

ロバート・R・カーカフ(Robert R. Carkhuff)

ロバート・R・カーカフ(Robert R. Carkhuff,1934-)は、アレン・アイビィの『マイクロカウンセリング』と並ぶ代表的なカウンセリングの折衷技法である『ヘルピング法』を開発した臨床心理学者(カウンセリング心理学者)である。ロバート・カーカフのヘルピング法はクライアントの内的・人間的な成長を支援するというカール・ロジャーズに影響を受けた『内面的成長技法』である。

ロバート・カーカフがカウンセリング技法として開発した折衷的なヘルピングは、クライエントの話題や訴えにまず共感・傾聴しながら、自分の内面に関心を向けるように促していく。その共感的な傾聴のプロセスで、『問題内容・問題が持つ意味・カウンセリングの目標などの意識化(明確化)』を行っていくことに主眼がある。

その上で、クライエントの人間的・内面的な成長を段階的に進めるアプローチを工夫しながら、クライエントの抱えている『現実的・具体的な問題』の解決をカウンセラーと共に目指していくという折衷技法である。ヘルピングを通したクライエントの内面的成長は、『自己探索→自己理解→行動化』のプロセスを通して具体的な問題解決と一緒に実現されることになる。

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2012年04月13日

カウンセリングにおける服従への意志(will-to-surrender)と力への意志(will-to-power)

カウンセリングにおける服従への意志(will-to-surrender)と力への意志(will-to-power)

カウンセリングには問題解決や感情浄化(カタルシス)、自己洞察(気づき)、心理的成長などの各種の『カウンセリング効果』が期待されているが、その効果を十分に引き出すためには『ラポール』というカウンセラーとクライエントの間の相互的な信頼関係が必要となる。カウンセラーとクライエントの人間関係の相性やコミュニケーションの円滑さ、相互理解を深めようとする態度が、そのカウンセリングのセッションの意義や効果をかなり左右してくるという事である。

クライエントは、カウンセラーに対して過去の重要な人間関係(親子関係)で抱いていた強い感情を向けてくることがあり、精神分析ではこの心的現象(自我防衛機制)を『感情転移(transference)』と呼んでいる。過去の激しい感情を再現する感情転移には、愛情や好意、尊敬など肯定的(ポジティブ)な感情を向ける『陽性感情転移』と、嫌悪や憎悪、軽蔑など否定的(ネガティブ)な感情を向ける『陰性感情転移』とがある。この転移感情を分析・解釈することで治療的な応用をすることもできるが、カウンセラーが『逆転移(counter-transference)』という転移感情を持つこともあり、自己理解を深めてクライエントとの関係性を見つめなおすためにも『転移分析』は重要な意義を持っている。

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2012年03月29日

[核家族・直系家族・複合家族(joint family)の家族形態]

核家族・直系家族・複合家族(joint family)の家族形態

現代日本をはじめとする先進国の家族形態は、夫婦とその子どもだけから為る『核家族化』が進んでおり、配偶者を失った高齢者を中心に『単身世帯化(一人だけの世帯化)』も進行している。若年層では男性所得の減少や男女のミスマッチ、女性の社会進出、人生観(価値観)の多様化などによって『晩婚化・未婚化』も進んでおり、『少子高齢化・離婚増加』の問題とも合わせて、将来的には更に単身世帯で暮らす人が増えそうな流れである。

人類・民族の歴史的な発展段階を見ると、経済活動や文化・文明が発展して豊かになり、教育水準・医療水準が高くなればなるほど(個人の自我意識が強くなり病気での乳児死亡率が下がるほど)、『産まれる子どもの数』が減少して『家族の規模』が小さくなる傾向が見られる。未開文明の部族社会や貨幣経済が発達していない地域の家族では、子どもを多く産む『多産』の傾向が強いだけではなく、親夫婦と複数の子ども夫婦が同居して農業・牧畜で協働するような『大家族』の形態が見られやすい。

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2011年12月14日

[過活動膀胱(OAB:overactive bladder)の症状・治療]

過活動膀胱(OAB:overactive bladder)の症状・治療

過活動膀胱(OAB:overactive bladder)は、過去には単純に『頻尿・尿意切迫・失禁』などの用語で説明されていた排尿に関する生理学的症状だったが、2002年にパリで開催された国際尿禁制学会(ICS)で『過活動膀胱』が正式な疾患名として採用された。頻尿(尿意頻数)1日に10回以上などの頻繁な排尿の状態を言っていたが、過活動膀胱(OAB)においては概ね『昼間8回以上あるいは夜間3回以上』が頻尿症状の基準とされているが、OABの主要症状には以下のようなものがある。

尿意切迫感……強い尿意を感じて小便をしたくなり漏らしそうになってしまう。

頻尿(夜間頻尿)……昼間に8回以上、夜間に3回以上で排尿の回数が異常に多い。

切迫性尿失禁……突発的な尿意の高まりがありトイレまで我慢することができずに失禁してしまうことがある。

日本に過活動膀胱の潜在的な患者は約830万人いると推定されているが、実際には『特別な病気ではないと考える・高齢なので仕方ないと思い込む・病院で頻尿や失禁の相談をするのは恥ずかしいと感じる』などの理由で泌尿器科を受診する人は相当に少ない。統計的には、40歳以上の12%に当たる8人に1人が過活動膀胱を発症すると予測されているが、基本的に『加齢・老化』が危険因子(リスクファクター)であり、高齢者になるほど排尿関連の悩みや困難を抱えやすくなる。過活動膀胱は特に60〜70代以上の男性に多く見られる疾患である。

一般的に健康な成人であれば、“約400〜500ml”の尿を膀胱に貯め込むことができるが、過活動膀胱の患者では“100ml程度”の尿が貯まってくると、膀胱が収縮して自動的に尿意を催して我慢することが難しくなる。膀胱の容量については、失禁を避けるためにトイレに早めに頻繁に行く習慣をつけることによって、余計に膀胱の内腔が縮小してしまい、平均的な尿の容量(400〜500ml前後)を貯めることが出来にくくなる。そのため、排尿は細切れに頻繁にするのではなく、ある程度の時間を掛けて膀胱に十分な尿が貯まってからするようにしたほうが良い。

過活動膀胱では、膀胱の容量が小さくなったり収縮しやすくなったりすることで、尿がいっぱいになる前に膀胱が不随意的に勝手に収縮して、尿失禁を起こしやすくなるという泌尿器系の病気である。切迫性尿失禁そのものは、脳の疾患(脳梗塞・脳出血・パーキンソン病など)や脊髄の疾患(脊髄損傷・脊髄梗塞など)、前立腺肥大症、高齢要因でも発生するので、他の身体疾患との鑑別診断も大切になる。

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2011年08月18日

[PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とカネミ油症事件]

PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とカネミ油症事件

PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とは『ポリ塩化ビフェニル・ポリクロロビフェニル』の略称であり、耐熱性や電気絶縁性、耐薬品性といった優れた性質を持つ有機塩素化合物のことである。ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称であり、置換塩素の位置によって計209種もの異性体が生成される。PCBはその優れた化学特性を活かす形で、加熱用・冷却用の熱媒体、変圧器、コンデンサなど電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤などに用いられ、その毒性・危険性が周知されるまでは非常に利便性の高い有機塩素化合物として利用されていたのである。

PCBは1881年にドイツで初めて化学合成されて、1929年からは米国での工業生産が開始された。日本でも1954年から製造がスタートしたが、1968年に福岡県でPCBの体内汚染による大勢の被害者を出す『カネミ油症事件』が発生して、1972年(昭和47年)にPCBの生産・使用の中止を勧告する行政指導が行われた。翌1973年に、『化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律』が国会で制定され、1975年に発効してPCBの製造・輸入・使用が原則的に禁止されることになった。カネミ油症だけでなく、東京湾・瀬戸内海など日本近海の魚介類がPCBによって汚染される問題も起こった。1979年にはカネミ油症と同等の問題が、台湾で台湾油症事件として発生している。

PCBの最大の問題は、生物(生体)に対する毒性が極めて強いということであり、体内に摂取してしまうと脂肪組織に蓄積するので、完全に解毒・排除することが出来なくなってしまう。PCBには強い発癌性のリスクが認められており、経口摂取することで皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常などの各種症状を引き起こしてしまう。各国の法律でPCB使用が禁止されてからも、それ以前に作られた製品の回収対策は取られなかったので、2000年頃には世界でPCBを含む電化製品や蛍光灯の安定器からPCBを含む汚染された廃液が漏れる事故が続発して大きな公害問題となった。

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2011年05月19日

[カウンセリングの場面構成(structuring)]

カウンセリングの場面構成(structuring)

カウンセリングの『日時・実施方法・料金などの条件・目標目的』をあらかじめ設定することを、広義の場面構成という。来談者中心療法(クライエント中心療法)を創始したC.R.ロジャーズが、カウンセラーとクライエント(来談者)との間で、カウンセリングの基本条件や実施要綱について同意する話し合いを行ったのが『場面構成(structuring)』の始まりとされている。

カウンセリングなどの相談面接の初期に実施される『受理面接(インテーク面接)』で、この場面構成の説明と同意が行われることが多いが、ロジャーズはこの場面構成における納得感・安心感がラポール(相互的な信頼感)を促進する要因になると考えたようである。カウンセリングの場面構成を実施することによる利点としては、『カウンセリングの諸条件や実施手順についてクライエントの同意を得られること(不安を減らせること)』や『カウンセラーとクライアントの事前の話し合いや質疑応答によってラポールが形成されやすいこと』などを挙げることができる。

カウンセリング・心理療法といった調査的・治療的面接は、『構造化面接(structured interview)』『非構造化面接(anti-structured interview)』に分類されることがあるが、これは場面構成とは異なる概念である。『構造化面接』というのは、心理面接(心理アセスメント含む)を実施する具体的手順やクライアントに質問する項目、精神症状・問題事項に対するアプローチの仕方などが、事前に構造化されて決まっている面接のことをいう。

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2007年06月27日

[核家族(nuclear family)と家族構成の変化][家族境界(family boundary)と家族神経症(family neurosis)]

核家族(nuclear family)と家族構成の変化

欧米では産業革命以後に農村部から都市部への大規模な人口移動が起き、産業構造が農林水産業から重化学工業へと大きくシフトし農業従事者や工場労働者へと転換していった。戦後の日本でも、こういった産業構造の変化による『都市部への人口移動』『大家族の解体』による核家族化が進行することになった。農林水産業から製造業(工業)・サービス業への産業構造の変化が、『農村部から都市部への就職による人口移動』を引き起こし、祖父母や両親と子ども夫婦が同居する『大家族制度』が緩やかに解体する流れが生まれたのである。

核家族(nuclear family)は、夫婦と未婚の子どもだけから構成される家族のことであり、「両親・祖父母・既婚の子ども」と同居しない家族形態のことを意味する。核家族(nuclear)という用語は、文化人類学者のG.P.マードック(G.P.Murdock)が考案したものであり、1949年に書いた『社会構造論』の中で核家族の用語を用いている。核家族という用語が社会一般に普及する以前には、夫婦と未婚の子どもだけから構成される家族は『夫婦家族』と呼ばれていた。しかし、日本では『国勢調査』においても核家族世帯という用語が用いられており、正式な行政の用語でも『核家族』が標準的な単語として用いられている状況がある。核家族と反対の意味を持つ対義語は『直系家族』『複合家族』であり、直系家族と複合家族をまとめて言う場合に『大家族』という言葉が使われている。

直系家族とは、夫婦と一人の既婚の子ども、子どもの配偶者、その二人の間の子ども(孫)というような形で、父系(母系)の直系の子ども(長男・長女)夫婦と一緒に暮らす家族形態のことである。複合家族は、直系家族の構成が更に複雑になったもので、夫婦と複数の既婚の子ども、複数の子ども夫婦の間に産まれた子ども(複数の孫)というような形で構成される大家族的な家族形態のことである。

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[家族心理学(family psychology)と家族危機への心理学的介入(family crisis intervention)]

家族心理学(family psychology)と家族危機への心理学的介入(family crisis intervention)

家族心理学(family psychology)は臨床心理学や社会心理学との機能的関係が深い応用心理学であり、「行動科学的な研究法」と「心理臨床的な介入法」を用いて家族関係(家庭生活・結婚生活・育児過程)の心理学的現象を明らかにしようとする学問である。簡単に言えば、家族・親子・結婚にまつわるあらゆる心理学的問題と人間関係を取り扱う心理学分野であり、家族心理学の成果は家族間の問題や葛藤の解決を支援する家族カウンセリング(家族療法)に応用されることになる。また、学問の発生順序から考えると、家族心理学よりも家族カウンセリングや家族療法の技法と実践が先に発達した。システムズ・アプローチ(家族システム論)に基づくカウンセリング(家族療法)の成果を踏まえて、家族心理学の目的や課題、要請が生まれてきたのである。

家族内の人間関係は『親子関係・夫婦関係・兄弟姉妹関係・嫁姑(舅)関係・祖父母‐孫関係』に分類することができ、家族心理学では『家族関係の特徴・変化・相互作用・援助方法』などを研究課題にして調査と考察を進めていくことになる。現時点における『共時的な家族関係』だけではなく、時間と共に段階的に変化していく『通時的な家族関係』も家族心理学の研究内容となっており、通時的な家族関係の変化である『家族の形成・発達・変容・崩壊・(再生)』のことをファミリー・プロセス(家族過程)と呼ぶことがある。恋愛関係が結婚関係へと発展していく個人の心的過程やアイデンティティの確立も取り扱うし、結婚・離婚・再婚に関係する心理社会的な要因の分析というのも家族心理学の研究範囲に含まれている。

家族心理学の基本的な家族観(家族認識)は、システム論(システムズ・アプローチ)に基づく円環的な家族観であり、家族成員の相互作用(相互的コミュニケーション)によって問題や成長、変化が現れると考えている。『円環的な家族観』に対立するのが『線形的な家族観』であり、円環的な家族観では問題の原因を「誰か一人の問題行動(精神病理)」に求めることがないが、線形的な家族観では「精神病理や性格の偏りを持つ個人」を特定してその人に問題の原因があると考える。

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