横断的研究法(cross-sectional method)・縦断的研究法(longitudinal method)・コホート法(世代差分析)
統計学的調査・解析を伴う科学的な量的研究法には、その調査対象と調査を実施する時間軸の違いによって、『横断的研究法(cross-sectional method)』と『縦断的研究法(longitudinal method)』がある。今まで、心理学分野で統計学的調査を行う場合に、縦断的であるか横断的であるかを考慮して研究することが多いのは発達心理学の分野であった。
しかし、受精の瞬間から死に至る時間過程の発達を研究対象とする発達心理学以外にも、教育心理学や臨床心理学、社会心理学など広範な分野において統計学的操作を行う量的研究が重要視されるようになっている。『時間経過による変化の調査』や『集団間の比較調査』といった心理学研究の目的を達成する為に、縦断的・横断的な統計調査が行われるようになっている。
横断的研究を簡単に説明すると、研究対象の時間経過による変化や発達を意識せずに、その時点における『複数の研究対象の状態(特徴・能力・病態)』を横断的に比較調査する研究方法である。それに対して、縦断的研究というのは、『単一の研究対象』の時間経過による変化や発達を調べる為に行うもので、『同一の実験群(調査対象者)』を縦断的(継続的)に追跡調査する研究方法である。
横断的研究という名称から漠然とイメージできるように、『横断的(cross-sectional)』というのは『複数の調査対象者(実験群)』を横に広がって同時に調査していく研究方法である。縦断的研究もその名称から何となくイメージできるように、『縦断的(longitudinal)』というのは『単一の調査対象者(実験群)』を縦の時間軸に沿って継続的に調査していく研究方法と言える。
横断的研究法(cross-sectional method)とは、文化人類学や言語学の研究法でいう『共時法』であり、“ある時点”における“複数の実験群”を調査して、それぞれの実験群の特徴(実態)を把握し、実験群間の類似点や相違点を明らかにするという目的に適している。発達心理学の調査法でいえば、年齢の異なる複数の実験群に、同時に質問紙(アンケート)や調査面接を行って、各年齢層の実態や状態を一度に調べてしまおうという方法論に当たる。
横断的研究法の長所は、『発達過程の一般的傾向・統計的内容』を簡単に調べることができ、大量の統計データを一回(ある時点)の調査で短時間のうちに収集できることである。反対に、横断的研究法の短所は、実験群に対する継続的な調査を行わないので、その後、その実験群の人の状態や特徴(態度)がどのように変化したのかを明らかに出来ないことである。更に、横断的研究では、ある時点における比較調査や相関関係は調べることが出来るが、時間経過による変化を考慮した因果関係については言及することが出来ない。
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posted by ESDV Words Labo at 07:21
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