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2017年08月12日

[心理テストの全体尺度と下位尺度]

心理テストの全体尺度と下位尺度

心理測定尺度(心理テスト)で測定しようとする『概念・特性』が、複数の側面(要素)から構成されていることも多い。その場合には、『全体尺度』と全体尺度の概念を構成する複数の側面(要素)である『下位尺度』に分けてから、心理測定尺度を作成していくことになる。

下位尺度の側面ごとに『得点』を算出して解釈していくが、下位尺度の各点数を合計するかどうかは、それぞれの心理測定尺度(心理テスト)によって異なってくる。心理測定尺度(心理テスト)によって、下位尺度をそれぞれ独立したものと見なして点数を合計しないこともあるし、下位尺度の点数を合計することによって全体尺度の概念を判定することもあるのである。

例えば、ヒルが作成した『対人志向性尺度(親和動機測定尺度,1987)』には、『情緒的支持(Emotional support)・ポジティブな刺激(Positive stimulation)・社会的比較(Social comparison)・注目(Attention)』の4つの下位尺度があるが、これらの下位尺度は独立したものと見なされているため、4つの下位尺度の点数を合計するようなことはしないのである。

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2017年07月17日

[自我の持つ欲動のコントロール機能と思春期・青年期における精神疾患の発症]

自我の持つ欲動のコントロール機能と思春期・青年期における精神疾患の発症

自我の重要な機能の一つに『欲動のコントロール機能』があり、自分の欲動を適応的にコントロールできないことが、思春期・青年期の精神疾患やパーソナリティー障害の原因になってしまうことがある。

特に思春期の女性が自分の欲動のコントロールができなくなってしまった時には、食欲に異常がでる『摂食障害(神経性無食欲症・神経性大食症)』や見捨てられ不安を伴う自己否定・情緒不安定が目立つ『境界性パーソナリティー障害(BPD)』を発症しやすくなるとされる。

生理的な欲動が強くなりすぎて衝動をコントロールできなくなる人もいれば、精神分析でいう超自我(スーパーエゴ)が強くなりすぎて欲動を過剰に抑制してヒステリー症状(神経症の身体化症状)が出てしまうような人もいる。幼少期の親子関係によって形成されるエディプス・コンプレックスを克服できなかったり(母親にリビドーを向けて固着する依存的な心理が長く残ったり)、父権的な超自我による過剰な抑圧があったりすると、精神発達が未熟な段階に留まって、自発的に何かをしようとする欲動そのものが未発達になってしまうこともある。

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2017年06月19日

[K.S.ラーセンとH.J.マーチンの『承認欲求尺度(MLAM:Martin-Larsen Approval Motivation Scale)』、『日本版MLAM承認欲求尺度』]

K.S.ラーセンとH.J.マーチンの『承認欲求尺度(MLAM:Martin-Larsen Approval Motivation Scale)』、『日本版MLAM承認欲求尺度』

『承認欲求(Approval Motivation)』を測定する代表的な心理測定尺度(心理テスト)に、K.S.ラーセンら(1976)が開発してH.J.マーチン(1984)によって修正が行われた『承認欲求尺度(MLAM:Martin-Larsen Approval Motivation Scale)』がある。

K.S.ラーセンとH.J.マーチン以前の時代にも、クラウンとマーロウ(1960)が作成した『社会的望ましさ尺度(MCSD:Marlowe-Crowne Social Desirability Scale)』というものがあり、社会的な価値・規範・常識に沿って人がどれくらい自分の言動を変えるかということが測定されていた。『承認欲求』と『社会的望ましさ』は厳密には異なる概念であるが、『他者から良く思われたい・他者から悪く思われたくないという欲求』自体は共通している。

承認欲求というのは『人から肯定的に評価されたい欲求+人から否定的に評価されたくない欲求』であり、他者(仲間)から自分の存在や居場所、価値などを認められたい『社会的な動物』である人間にとって、承認欲求は一般的かつ自己実現的な欲求でもある。他者と関わって仕事をしたり家庭を築いたり学業をしたりする上で『承認欲求の充足』は動機づけ(モチベーション)と達成感に対して重要な役割を果たしている。

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2017年06月02日

[『競争的達成動機』と『自己充実的達成動機』の達成欲求の心理テスト:社会・関係と個人内部の動機づけの欲求]

『競争的達成動機』と『自己充実的達成動機』の達成欲求の心理テスト:社会・関係と個人内部の動機づけの欲求

困難な仕事や課題に立ち向かって成功させたいという二次的欲求として『達成動機・達成欲求』があるが、日本では堀野・森らによって『達成動機測定尺度(1987、1991)』が作成されている。達成欲求は大きく、社会的・文化的に価値のあることを達成したいという『社会的達成欲求』と人から肯定的に評価されなくても自分自身にとって価値のあることを達成したいという『個人的達成欲求』に分けることができる。

堀野らは社会的達成欲求を『競争的達成動機』へ、個人的達成欲求を『自己充実的達成動機』へと概念的に整理発展させる功績を残しているが、こういった達成欲求・達成動機の分類は分析心理学のカール・グスタフ・ユングの『外向性性格・内向性性格の動機づけの違い』とも一致する要素がある。

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[人間の欲求と動機づけ(モチベーション)の心理学:M.ツッカーマンの『刺激作用の最適水準』]

人間の欲求と動機づけ(モチベーション)の心理学:M.ツッカーマンの『刺激作用の最適水準』

人間が何か行動を起こす時の大きな原因は『欲求(need)』であり、何かを求めようとする欲求が状況・他者の要因と結びつくことによって『行動(behavior)』が生起することになる。欲求と環境・他者の反応などが絡む行動の生起過程や行動形成メカニズムのことを『動機づけ(モチベーション)』と呼んでいる。

欲求のすべてが行動に直接的に結びつくわけではないが、欲求を前提とする必要性・希求性が強いほど行動が起こりやすくなる。食欲・性欲・睡眠欲などの生存維持・生殖に不可欠な本能的欲求を『一次的欲求』、それ以外の後天的・学習的な欲求を『二次的欲求』として分類しているが、一次的欲求は『生きるための欲求』であり二次的欲求は『より良く(より楽しく)生きるための欲求』である。

心理学で研究される欲求(need)の多くは、後天的な経験や学習、環境、人間関係によって生み出される『二次的欲求』でありその種類は非常に多い。退屈さや単調さを嫌って、新しい体験やスリルを求める二次的欲求として『刺激欲求』があり、W.ヘロンの感覚遮断実験などで明らかにされたように人はあまりに刺激が少なすぎる状況に置かれると、どうにかして刺激を求めるようになる(あるいは自分自身で声を出したり体に触れたりして自己刺激を作り出すようになる)。

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[M.ツッカーマン(M.Zuckerman)の『刺激作用の最適水準(Optimal Level of Stimulation)』に関する心理テスト:W.ヘロンの感覚遮断実験とちょうどいいストレス]

M.ツッカーマン(M.Zuckerman)の『刺激作用の最適水準(Optimal Level of Stimulation)』に関する心理テスト:W.ヘロンの感覚遮断実験とちょうどいいストレス

『感覚遮断実験』では、人間は外界からの刺激が全くない状態には耐えることができず、正常な精神状態や身体感覚、判断能力を維持することができないことが分かっている。W.ヘロンが1957年に行った『感覚遮断実験』がよく知られているが、人間は外界から適度な刺激を受けたり、外的な刺激に対応して自発的な行動・発言をすることによって正常な精神状態を維持している。

W.ヘロンの感覚遮断実験の被験者は、目隠しをされ耳栓をつけられ、手に大きな筒をはめられて物に触ることができない状態にされた。五感の感覚を遮断された被験者は、食事とトイレ以外は柔らかいベッドの上で寝ていなければならないという指示を受けた。初めはただ寝ていればいい楽な課題に思われたが、被験者は次第に落ち着かない精神状態に追いやられていき、五感で何かを見たり聞いたり触ったりしたいという欲求を非常に強く感じるようになっていった。

何もしない感覚遮断の状態が2〜3日も続くと思考に乱れが生じてまとまらなくなり、身体的に落ち着かない違和感や異常な感覚が起こってくる。外的な刺激を全く感じられない状態に退屈を越えた苦痛を感じるようになる。そして自分で自分に刺激を与える行為として、独り言を言ったり口笛を吹く頻度が多くなり、インターフォンを通した実験者とのコミュニケーションを強く求めるようになる。

それ以上の長期間にわたって感覚遮断を続けると、精神病(統合失調症)の陽性症状に近い『幻覚・妄想』が発現しやすくなって、正常な精神状態を維持できなくなるのである。W.ヘロンの感覚遮断実験から分かったことは、強い刺激は人間にとって不快なストレスになるが、逆に全く刺激やストレスがない状態にも人間は耐えられないということである。そして、人が健全な心身の機能・状態を維持するためには『適度な刺激・ストレス』と『適度な刺激に対する自発的な行動・反応』が必要になるということである。

短時間の感覚遮断には心身の疲労やストレスを癒してくれるリラクセーション効果があるので、人工的に感覚遮断状態を作り出せる治療装置(あるいは感覚心理学的な実験装置)として『アイソレーション・タンク』と呼ばれるものもある。

ストレスを生み出す外的な刺激のちょうどいいレベルのことを『刺激作用の最適水準(Optimal Level of Stimulation)』というが、この刺激作用の最適水準は非常に個人差が大きく、『スリリングなドキドキする強い刺激』をちょうど良くて楽しいと感じる人もいれば、緊張感や不安感で気分・体調が悪くなってしまうような人もいるわけである。

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2017年04月20日

[対人魅力(interpersonal attraction)の心理学:『好意・愛情』の心理測定尺度の研究の歴史]

対人魅力(interpersonal attraction)の心理学:『好意・愛情』の心理測定尺度の研究の歴史

『対人魅力(interpersonal attraction)』とは、個人が他者に対して抱く肯定的あるいは否定的な評価(認知・感情)のことである。他者に対して抱く肯定的な感情の代表として『好意・愛情・安心・友好・美感』などがあり、否定的な感情の代表として『嫌悪・侮蔑・不安・不快・憎悪』などがある。

他者を見る時や他者と接したり対話する時には、対人魅力とも関係した好悪の感情を感じやすい。近年の研究では『対人魅力の認知的側面』よりも『対人魅力の感情的側面』に焦点を当てたものが多く、『親密な人間関係(close relationships)』にまつわるシンプルな意識調査形式の研究が増えている傾向がある。

個人が他者に対して抱く肯定的な感情の代表である『好意・愛情』については、『人が好意・愛情をどのように捉えているかの態度』『個人が特定の他者に向けて抱いている実際的な態度』を区別して考えることになり、『好意と愛情の質的差異』に着目した心理測定尺度の研究も多い。

グロス(1944)は恋愛における『ロマンティックな態度』『現実的な態度』を区別した古典的な『ロマンティシズム尺度』の80項目を作成したが、ホバートはこれを12項目の尺度に短縮し、ノックスとスポラコフスキー(1968)は85項目からなるロマンティシズム尺度を新たに作って、恋愛には『ロマンティックな態度』と『現実的な態度』の区別があることを再び確認している。

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[ウェブ・コミュニケーションにおける印象評価尺度(心理テスト)]

ウェブ・コミュニケーションにおける印象評価尺度(心理テスト)

対人コミュニケーションには、相手と直接会って顔を見ながらやり取りする『対面コミュニケーション』と相手と会わずにインターネット(ウェブ)・電話・手紙などでやり取りする『非対面コミュニケーション』がある。現代では特に、インターネット(ウェブ)でSNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)を介した非対面コミュニケーションをする頻度が急速に増えている。

インターネットのコミュニケーション(ウェブ・コミュニケーション)

代表的なSNSには、facebookやtwitter、Line、mixiなどがあるが、同じSNSを使ったウェブ・コミュニケーションでも、既に知り合いである友人知人とのコミュニケーションと実際には会ったことがないウェブ上だけの知り合いとのコミュニケーション(あるいはその場だけの匿名者同士のやり取り)ではまた意味合いが異なってはくる。

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[パーソナリティー特性(人格特徴の特性形容詞)の心理測定尺度(心理テスト)]

パーソナリティー特性(人格特徴の特性形容詞)の心理測定尺度(心理テスト)

他者のパーソナリティー(人格特性)を認知する時に用いる判断のフレームワークのことを『対人認知構造』という。対人認知構造の基本次元には『親しみやすさ』『社会的望ましさ』『活動性』の3つがあるが、人間のパーソナリティーの特性・特徴の多くは『形容詞(二項対立的な形容詞)』で表されることが多い。

パーソナリティー特性を形容詞で表現する心理測定尺度は、『相手がどの次元のパーソナリティー特性を強く表出しているか』や『自分が相手のどの次元のパーソナリティー特性に重みづけをして見ているか』などを知ることができる。

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2017年01月04日

[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4

精神分析の『自由連想・夢分析』といった技法では、その『初期の欲動』が何だったのかを明らかにし、その欲動・願望の存在を本人に受け容れさせることで神経症の症状が和らいでいく(欲動を無理に症状に置き換える必要がなくなっていく)のである。精神分析の『欲動(drive)』には、さまざまな形態・表象・内容に変形することのできる特徴とその変形の心的プロセスがある。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

フロイトが創始した精神分析というのは『欲動の変形の心的プロセスの意識化・言語化』を治療機序にしているといえるだろう。精神分析というのは精神症状・夢・空想(白昼夢)の意味を読み取る臨床的な理論・技法であり、その治療機序(治療メカニズム)は『抑圧・変形されている初期の欲動や願望』を明確化していき、本人が道徳的・常識的に認めたくなかった初期の欲動の存在を受け容れさせることである。道徳的・社会的に禁圧されていた欲動・願望を自分が持っていたと認めることによって、症状が治癒する可能性が高まるというのが精神分析の基本的な考え方になっている。

精神分析的な診断的面接では自我の欲動のコントロール機能を判定していくが、道徳的・社会的に認められない欲望の満足を空想する時に、どのような『罪悪感・羞恥心・道徳的批判・周囲からの非難などに対する葛藤』が体験されているかを丁寧に傾聴していくことになる。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

精神分析(力動心理学)を前提とする力動精神医学の診断的面接では、患者(クライエント)の自我による『欲動コントロールのレベル』について判定していく。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2

精神分析(力動心理学)では、『欲求(want)』を心理的・意思的に欲するものとし、『欲動(drive)』をより生理的・本能的なもの、『欲望(desire)』をジャック・ラカンのいう他者の欲望を欲望するもの(他者から求められたいと思うもの)として区別している。

欲動コントロールのレベルは、自我が欲動を満足させる行為をどのくらい延長できるか、フラストレーション(欲求不満)にどこまで耐えられるかということである。自我の健康度が高いほど、欲動の制御をより柔軟に行うことができるようになり、現実的な条件やハードルに応じて調節することもできる。自我による欲動のコントロールのレベルは『随意的・自律的なコントロールの程度』によって規定され、自我機能の全体的評価の一部を形成している。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2

近年は、男性と女性の『ジェンダーレス化・中性化』が進んでいて、若年層の男性では自分がイケメンかどうかなどの格好良さ・綺麗さの美醜(見た目)に女性同等にこだわる人も増えている。そのため、思春期の男性では、外見や肥満のコンプレックスから摂食障害や適応障害、境界性パーソナリティー障害、社会不安障害(対人恐怖症)といったかつては思春期の女性に多かった症例も少なからず見られるようになっている。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1

狂気的な見捨てられ不安やしがみつき(過度の依存性)が強まると、それまで親身になって心配してくれていた親友・恋人なども手に負えなくなって途中で逃げ出してしまうことが多い。そうなると更に境界性パーソナリティー障害の人の悲しみ・孤独感・怒りが強まっていき、もっと他者にしがみつこう(自分のすべてを受け容れてもらって助けて欲しい)として敬遠されるという悪循環が繰り返される。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の問題の中心には、『自分の感情・気分(欲動が根底にある感情)のセルフコントロールの低さや不全』があり、境界性パーソナリティー障害の人は上記したように自傷行為や口論などで他者を無理やりに巻き込んで、他者とのトラブルを通して自分の気分・感情を処理しようとするところがある。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1

自我は現実適応(社会適応)の機能として『欲動(リビドー)のコントロール能力』を持っているが、異性への欲求や自己イメージ(能力・美醜)への囚われ、社会的選択(進学・就職)の不安が強まる『思春期・青年期』にはそのコントロール機能が低下しやすい。

特に自分の異性としての評価や他者と比べた美貌の程度を気にしやすくなる思春期の女性は、美しいか美しくないか(可愛いか可愛くないか)、痩せているか太っているかといった『自己イメージ・外見の相対評価』に囚われやすくなることで、摂食障害(神経性拒食症・神経性大食症)や境界性パーソナリティー障害(BPD)のリスクが高くなりやすい。

自分の他者に対する魅力・需要が低いのではないか、見た目やコミュニケーションの取り方が悪いのではないかといった劣等コンプレックスは、思春期・青年期に特に深刻化しやすいコンプレックスではある。また年代・性別を問わず自分と他者を比較して自分はダメだという劣等コンプレックスを持ちやすい人は、うつ病・摂食障害・適応障害・社会不安障害などの精神疾患の発症リスクが高くなりやすい。自己愛・承認欲求・強迫性・回避性・被害妄想などが絡んだパーソナリティー障害(人格障害)を発症するリスクも上がりやすくなる。

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2016年12月05日

[自我の思考過程の障害と統合失調症:2]

自我の思考過程の障害と統合失調症:2

強迫性障害の思考過程の障害では『迷信・ジンクス・儀式・慣習』に大きな影響を受けやすくなり、現実原則に反した『魔術的な思考・幼児的な全能感』に支配されたかのような不合理な観念・行動を繰り返して反復してしまうことになる。

自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1

統合失調症(Schizophrenia)に典型的に見られる思考過程の障害としては、『観念連合の障害や弛緩・無意識の一次過程の内容の意識領域への侵入(幻覚妄想の原因となる)・現在と過去の記憶内容の混乱や誤認』があり、言葉のサラダと呼ばれる支離滅裂な言語や新語造作、音韻連合などの形で『無意識過程の言語化・表面化』が起こりやすくなるのである。

統合失調症の初期症状や発病前の状態でも、投影法であるロールシャッハ・テストや精神分析の自由連想法を用いることで、上記したような『思考過程の障害』を確認できることがある。

他者に対する興味を失ったり、現実検討能力が低下したりする統合失調質パーソナリティー障害(シゾイド・パーソナリティー)では、夢・白日夢などの空想世界に没頭して、周囲の人々との現実的な交流から遠ざかり、日常生活もひきこもりがちになってしまう。

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[自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1]

自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1

自我機能の代表的なものとして『思考過程(思考プロセス)』があり、思考過程の能力・発達はスイスの心理学者ジャン・ピアジェ(Jean Piaget, 1896-1980)『思考発達理論(認知発達理論)』とも関係している。

自我の思考過程(思考プロセス)とは『外部の知覚』『内的な感覚・記憶・観念・表象』を一定の意味や形態を持ったイメージ・思考(言語)に構成していく心的過程(心的プロセス)のことである。この思考過程を客観的現実と照合する機能が、自我の現実検討能力(現実吟味能力)である。

思考過程の正常性と異常性を診断する時には、知能検査(知能テスト)で知的能力がどの程度あるかを測定した上で、『概念化の能力・具体的思考(具象的思考)・抽象的思考』がどのくらいまで状況や問題に即応して働いているかを見ていくことになる。

現実適応した正常な思考過程(思考プロセス)は、『論理性』が保たれているという特徴もあり、非論理的な一貫性のない主張(独断的・妄想的な論理性のない主張)を繰り返したり、具体的根拠のない支離滅裂な言動が見られたりする場合には、精神疾患を発症しているリスクが高まる。

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2016年12月04日

[自我機能としての外界と自己に対する現実感(sense of reality)2:解離性障害とトラウマ(PTSD)]

自我機能としての外界と自己に対する現実感(sense of reality)2:解離性障害とトラウマ(PTSD)

自己や身体に関する現実感(リアリティー)が失われるもっとも典型的な精神疾患は『離人症・離人症性障害(解離性障害の一種)』『摂食障害(嗜癖・依存症の一種)』であり、時に統合失調症で深刻な幻覚・妄想に襲われてしまうこともある。不適応行動としては『ひきこもり・出社拒否・他者拒絶(人間関係やコミュニケーションの断絶)』が起こりやすくなる。

自我機能としての外界と自己に対する現実感(sense of reality)1:自己アイデンティティの連続性・一貫性

解離性障害(解離性同一性障害=多重人格障害)や離人症を引き起こす原因となるものに『深刻なトラウマ(心的外傷)』があり、重篤な解離性障害の患者の一定の割合には背景に『PTSD(心的外傷後ストレス障害)』があることが多い。特に殺人事件(死亡事故)に巻き込まれた家族を目前にしてショックを受けたトラウマ、家族の誰かが自殺している場面を目撃してしまったトラウマなどが、自我意識が解体して別人格が形成されるほど深刻な『解離性同一性障害(多重人格障害)』の原因になるとも言われている。

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[自我機能としての外界と自己に対する現実感(sense of reality)1:自己アイデンティティの連続性・一貫性]

自我機能としての外界と自己に対する現実感(sense of reality)1:自己アイデンティティの連続性・一貫性

人間の精神の正常性や健康度は『自我の現実認識機能(現実検討機能)』に支えられていて、自我の現実認識機能が障害されると統合失調症や解離性障害(離人症など)を発症することにもなる。自我の現実認識機能の中心にある感覚が、外界と自己に関する『現実感(sense of reality)』であり、現実感は一般的に『リアリティー』と呼ばれるものである。

外界、他者、自己、身体に適切な現実感を抱くことによって、精神・行動の正常性(健康度)が保たれているのだが、良好な精神状態であれば『外界が生き生きしている臨場感のある感じ』や『外界に親しみや馴染みがあって落ち着ける感じ』を味わうことができる。更に健康な精神状態では、自己と外界・他者を区別して認識する『自他の境界線(boundary)』が明瞭でしっかりしているが、境界性パーソナリティー障害などではこの自他の境界線が障害されて、『他者との適切な距離感』が分からなくなってしまう。

自我の現実認識と自他の境界線によって、『心身のリラックスした融合感』『自分らしさを保った自己感』を主観的に体験して維持することができるのである。『現実感(sense of reality)』が低下したり病理化すると、外界に対する疎隔感が生じて、自己と身体の実在感・所在感が失われ、自意識の連続性・一貫性(自己アイデンティティ)が障害されてしまうのである。

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2016年11月16日

[自我の現実検討(reality testing)とカウンセリング・双極性障害:3]

自我の現実検討(reality testing)とカウンセリング・双極性障害:3

自我の現実検討能力の高低というのは、心理療法(カウンセリング)の技法の適用にも関わってくる。一般的に人間の現実検討能力は『構造化された状況』で高くなりやすく、『非構造的な状況』では低くなりやすいが、精神状態が病的になればなるほど非構造的な状況に対する適応能力は低くなり、現実と空想(想像)の区別が曖昧になりやすいのである。

自我の現実検討(reality testing)と内省・観察自我・直面化:2

精神分析的な心理療法では、クライエントの現実検討能力の判定において、特に投影法の『ロールシャッハ・テスト』の結果を重視する傾向がある。

現実検討能力とも相関する自我の機能として単純な知能レベルの高低もあり、これは『自我の判断能力・予測能力』と呼ばれることもある。自我の判断能力・予測能力とは、自分が行う行動の結果について適切な予測と状況判断ができて、自分の発言・行動をコントロールできる能力のことである。

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[自我の現実検討(reality testing)と内省・観察自我・直面化:2]

自我の現実検討(reality testing)と内省・観察自我・直面化:2

自我防衛機制に、自分の内面にある感情・思考を外部(他者)に投げかけてそれを現実と思い込む『投影(projection)』という防衛機制があるが、この投影によっても現実検討能力は低下することがある。すなわち、『自分の内的な情動・妄想・不安』を外部の世界・他者に投影することで、実際には現実ではないものを現実だとして思い込んでしまう(自分の持っている感情を相手が持っているように思い込んでしまう)というわけである。

自我の現実検討(reality testing)と外的・内的リアリティーの判断:1

現実検討の能力は、『内省・自己観察(観察自我)』を基盤とする自己表現や説明能力、関係・状況の理解力とも関係しているが、『自分が認めたくない現実やコンプレックス』に対して特に自己防衛的に現実検討能力が低下することがある。

例えば、自分がその相手から嫌われていたり軽蔑されていたりする現実は、往々にして否認や抑圧をされがちであり、お互いに現実検討能力を低下させて『お互いが嫌いな現実』を否認していたものが、ある時に限界を迎えて激しい行動化(暴力・暴言による問題解決)に至ってしまうこともある。

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[自我の現実検討(reality testing)と外的・内的リアリティーの判断:1]

自我の現実検討(reality testing)と外的・内的リアリティーの判断:1

自我の現実検討(reality testing)の能力とは、『現実』と『空想(想像)』を区別して適応的な反応ができる能力のことである。特に精神病である『統合失調症』において現実検討の能力が障害されて、実際にはないものを知覚したり根拠のない思い込みにはまり込む『幻覚・妄想などの陽性症状』が出現することが知られている。

現実検討の能力は『現実吟味・現実判断』と呼ばれることもある。人間は自分の主観の中で現実(対象)についての表象・知覚・空想を持っていて、それを客観的な現実と参照することによって、それが現実であるか空想(想像)であるかの現実検討を行っているが、この自我の現実検討能力が障害された時に統合失調症などの精神疾患(精神病)が発症することになる。

自我の持つ現実検討能力は大きく『外的リアリティーに関するもの』『内的リアリティーに関するもの』に分けられる。外的リアリティーというのは、外部の客観的な世界・社会・人物(他者)に関する現実味のことである。内的リアリティーというのは、自分の内面や記憶、感情と関連した現実味のことで、過去の記憶や現在の自分の欲求・感情・葛藤などの現実適応度などがそれに含まれている。

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