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2016年11月15日

[自我の支配・達成(mastery-competence)とウェブ時代の新たな社会適応の選択:2]

自我の支配・達成(mastery-competence)とウェブ時代の新たな社会適応の選択:2

パーソナリティー障害や双極性障害(躁うつ病)などを持つアーティストや芸能人、作家、クリエイター、経営者、ウェブ事業者は少なからずいて、その精神病理や性格構造による独特な創造能力・発想力・行動理念が『その人の長所・成果の適応力』に結びつくこともあるのである。

自我の支配・達成(mastery-competence)と自己アイデンティティの確立・拡散:1

境界性パーソナリティー障害の適応度は『年齢要因』の影響も受けやすく、中年期以降は一般に適応度は上がりやすいが、特にこの『自我の支配・達成の能力』が保たれているほどに回復しやすくなるとされている。

特にウェブ社会(ネット社会)とも言われる現代では、知能や技術力が高かったりビジネスモデルを組み立てるアイデアがあったりすれば、今までの社会適応の必要条件であった『集団・組織(会社)・対人交渉への適応』を飛ばしてしまって、起業・自由業・ウェブ事業(フリーライター・サイト運営を通したウェブ広告業など)をして何とか経済生活に適応できてしまうような人も増えている。

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[自我の支配・達成(mastery-competence)と自己アイデンティティの確立・拡散:1]

自我の支配・達成(mastery-competence)と自己アイデンティティの確立・拡散:1

青年期の発達課題は『自己アイデンティティの確立』であり、その確立に失敗すれば『自己アイデンティティの拡散による不適応・境界性パーソナリティー障害』などの問題が起こってくる。

自己アイデンティティの確立には『社会的選択としての職業選択・異性選択(就職・結婚)』が関係してくることが多いが、社会適応して経済生活と精神状態の安定を得なければ通常は自己アイデンティティが拡散しやすくなってしまうのである。

一般的な社会適応に絡んでくる職業選択・異性選択(就職・結婚)を順調にやり遂げていくための自我機能(自我の能力)のことを、『自我の支配・達成(mastery-competence)』と呼んでいる。この自我の支配・達成は、DSM-W-TRにおける社会適応の機能全体を0〜100点で相対評価する『GAF(Global Assessment of Functioning,全体的評定尺度)』によって測定されることもある。

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2016年10月18日

[自我の統合機能と自己アイデンティティー:境界性パーソナリティー障害の問題]

自我の統合機能と自己アイデンティティー:境界性パーソナリティー障害の問題

健全なパーソナリティー(人格構造)は『一貫性・連続性・自己アイデンティティ』が保たれている。このパーソナリティーの一貫性や連続性を維持して、他者との継続的なコミュニケーション(関係性)や安定した職業生活・社会生活を可能にするのが、『自我の統合機能』と呼ばれるものである。

精神医学の心理面接・精神療法(カウンセリング)においても、自我の統合機能が高い患者(クライエント)の方が、自己規定や会話内容の一貫性が保たれているので『円滑なコミュニケーション』が成り立ちやすく、精神療法の効果も期待しやすくなる。逆に心理面接で語られる話の内容、人間関係、時系列、感情・情緒に秩序だった一貫性や内容のまとまりがなくて、決められた時間の面接の中で『矛盾した考え・感情・価値観』を語っているような場合には、その患者(クライエント)の自我の統合機能は低下しているということになる。

自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論

自我の統合機能の測定・評価の方法としては、そのクライエントが過去・現在・未来における人格(自意識)や感情、記憶の連続性・一貫性を保っているかどうかの『自己アイデンティティーの確立・拡散の度合い』を見ていく方法がある。自己アイデンティティーの安定した確立は『会社・職場・人間関係に対する適応度』とも相関しており、それぞれの環境や関係において自分の存在・役割が認められていて『一貫性のある自己規定』が成り立っているかを見ていくことになる。

自我の統合機能が高い人は、安定した自己アイデンティティーが確立している人でもあるが、それは自分の内面に安定した自分らしさや自分の果たすべき役割があり、周囲の環境や人間関係にもリラックスして前向きに適応できている状況と対応しているのである。パーソナリティーや自意識の連続性・一貫性・統合性が極端に障害されて低下すると、『解離性障害(解離性遁走・解離性健忘・解離性同一性障害・離人症)』が発症することもある。

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[自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論]

自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論

強迫観念・強迫行為に囚われる強迫性障害、各種のパーソナリティー障害によって、この『自我の弾力性』が障害されてしまうことがある。強迫性障害や強迫性パーソナリティー障害では、馬鹿げた観念や不合理な行動に過剰に囚われてしまうことで、思考・行動パターンががちがちに一貫して固定されて(毎日儀式的・規則的な行動しかできなくなって退行的な遊びや娯楽をするどころではなくなり)、自我の弾力性を失ってしまうケースが多い。

自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論

妄想性パーソナリティー障害や統合失調性パーソナリティー障害(シゾイド・パーソナリティー)では、中心的症状としてある『被害妄想』が邪魔をして、退行による遊びや快感原則による気晴らしを楽しむような気分にはなれず、無防備に退行・快感原則の中に入ってしまうと他者から弱みを握られて脅迫や侵害・干渉を受けるのではないかという猜疑心が強くなりやすい。

回避性パーソナリティー障害の人も、退行的な遊び・楽しみを満喫すると後になって『重い責任・負担』がのしかかってくるのではないかという不安や構えがあるので、自我の弾力性は一般的に低くなりやすい特徴を持っている。

人間の社会生活や精神活動に『不安・緊張・恐怖・葛藤』はつきものであるが、そういった一時的(暫時的)な精神の乱れに遭遇したとしても、自我の弾力性(ARISE)が適切に機能している限りは、自我を楽しませたり休ませたり、想像的な物語の世界を活用したりすることによって『回復・再適応』をすることができるのである。

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[自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論]

自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論

『自我の弾力性(ARISE:Adaptive Regression in the Service of Ego)』という自我機能は、パーソナリティー(人格構造)の感受性・豊かさ・創造性と関係している。『自我の弾力性』は『自我の硬直性』の対義語であり、自我が特定の自己規定や機能性にがちがちに固定されて硬直しているよりも、シチュエーションや必要性に応じて自我の特徴・機能を弾力的・柔軟に変化させられるほうが、結果的に『環境適応・現実適応』が良くなるということである。

自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準

自我の弾力性というのは、具体的にいうと一時的あるいは部分的に自我防衛機制の『退行(regression)』を起こすことによって、疲れたり緊張したりした自我を休養させて回復させることのできる機能であり、直接的には『子供心に一時的に返って無邪気に楽しめる機能』ということもできるだろう。あくまで一時的あるいは部分的な退行であって、退行して楽しんだり癒されたりした後には現実に戻ってきて再適応ができるということでもある。

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[自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準]

自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準

自我の自律性によって人間は『仕事をする・考える・会話をする・勉強する(読み書きする)・歩く・食べる・眠る・排泄する・性行為をする』などを自然に安定して実行することができるのであり、自我の自立性が大幅に低下したり麻痺してしまうと、通常の日常生活や社会活動を続けることが著しく困難になってしまうのである。

自分の願望・欲求とせめぎ合う『葛藤』があったり、強い『不安・緊張』があったりすると、自我の自律性が障害されて当たり前にできるはずの『日常生活・仕事や勉強・社交や対話・人間関係』などができなくなり、遂には病理的な精神疾患を発症してしまうこともあるということである。

自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準

『葛藤・不安・緊張・恐怖』などが生み出す自我の自律性の障害というのは例えば、仕事や勉強が今まで通りにできなくなる、神経症的な失声・失立、摂食障害(拒食症・過食症)、睡眠障害、書痙(しょけい,字を書く時に手が振るえる)、頻尿、下痢(過敏性腸症候群)、性機能障害などである。不安感や緊張感が高まると、自律神経が乱れて頻尿・下痢になる人は多いし、眠れなくなったり食べられなくなったり(逆に食べ過ぎたり)といった病的な症状も出やすくなる。

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[自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準]

自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準

精神医学の診断的面接や心理アセスメントでは治療方針の適切な選択のために、クライエントの情報や体験談(エピソード)を集めて整理していく。クライエントの心理アセスメントで最も重要な情報の一つとして、『パーソナリティー(人格構造)の機能と水準』があり、このパーソナリティーに関する知識と情報は力動的精神医学(精神分析)の心理評価にもつながっている。

現実適応や対人関係と相関するパーソナリティー(人格構造)の機能水準を測定する際には、精神分析家L.ベラック(L.Bellak)などが開発した『自我機能の評価尺度』が用いられることが多い。自我機能の評価尺度は総合的なものであり、対面式の診断的面接だけではなく、SCT(文章完成法)やロールシャッハテストなどの投影法を含めた『テストバッテリー』を組んで実施していくことになる。

心理テスト(心理検査)にもパーソナリティー検査(人格検査)の区分はあるが、パーソナリティーの機能水準を測定する場合には『パーソナリティーの健康度・適応性・豊かさ』などが主要な問題になってくる。パーソナリティーの健康度や正常性の分かりやすい指標として『自我の自律性(autonomy)』があるが、この自我の自律性によって心理療法(カウンセリング)の効果を高める作業同盟(治療同盟)も結びやすくなる。

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2016年02月28日

[親子関係の変化と思春期モーニング2:反抗期の子供の反抗・自立にどう向き合うか?]

親子関係の変化と思春期モーニング2:反抗期の子供の反抗・自立にどう向き合うか?

思春期というのは親の権威・強制を認めずに反抗しやすくなる『反抗期(第二次反抗期)』であるが、思春期の少年少女に見られやすい反論・非難・拒絶・暴力・軽蔑などによって示される『広義の反抗』は、『親離れ・精神的自立のための葛藤』を伴うものと考えられている。思春期における反抗というのは、親への依存・愛着に頼らずに自分で自立的に生きていこうとする『思春期モーニング(adolescent mourning)の心的過程』の一部でもあるのである。

親子関係の変化と思春期モーニング1:精神的な安全基地・内的な拠り所の必要性

そういった思春期の子供の広義の反抗と自立心に対して、親がどのように対応・応答するかが重要になってくるが、これは思春期モーニングでは単純に親から切り離せば良いというのではなく、『親がある程度のホールディング(保護的な抱え込み)をしながら緩やかに離していく』という精神的な安全基地を完全にはなくさないような心的プロセスが必要になってくるということである。

子供が反抗・自立心を見せた時に、親が子離れできずに過剰反応して騒げば、子供は親から離れて自立するのは悪いことなのだと思い、『分離不安・喪失感の苦痛』を感じて、自立心が弱められてしまう。親が過度に非合理的な批判・干渉をしたり、子供の私的領域(プライバシー)に力づくで侵入したりすると、親子間の信頼関係が決定的に壊れてしまって、子供が非行に走ったり家出をしたりするリスクが高まってしまう。

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[親子関係の変化と思春期モーニング1:精神的な安全基地・内的な拠り所の必要性]

親子関係の変化と思春期モーニング1:精神的な安全基地・内的な拠り所の必要性

自分にとって重要な対象(父母対象表象)を失うという『思春期の対象喪失』の体験は、ジョン・ボウルビィの定義した『精神的な安全基地』『安心できる関係的な居場所』がないと、深刻な精神的危機を招いてしまうこともある。

父母対象表象の代わりとなる『新たな代理対象』や『馴染み深い生活環境・人間関係』をはじめとする『内面的な心の拠り所』が求められることになるわけだが、その拠り所というのは所謂(いわゆる)『対象恒常性』とも相関している。

それらの拠り所が『精神的な安全基地(secure base)』として機能することによって、対象喪失の経験の前と後の心的な連続性・安定感が保たれやすくなるのである。対象喪失をそれ単独で経験することに“精神発達上の価値・意義”があるのではなく、対象喪失を『精神的な安全基地(secure base)』を前提とした喪の仕事(モーニング・ワーク)の中で経験することに精神発達上の価値や人格形成上の成熟の進展があるのである。

対象喪失というのは父母表象に代表される『自分にとって大切な他者の対象表象』を失うことであり、それは依存・愛着の対象を喪失することによって一時的に悲哀やパニック、絶望、孤独といったネガティブな感情体験をすることも意味している。そして、『精神的な安全基地(secure base)』が対象恒常性として機能することによって、依存・愛着の対象が失われても深刻な精神的危機(精神病理の発症)を回避して、順調な精神発達過程を促進していくことができるのである。

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[思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング3:自己愛的な同一化と代理対象の獲得]

思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング3:自己愛的な同一化と代理対象の獲得

自己愛の高まりや自己肯定感への欲求は『父母表象の対象喪失の悲哀に対する防衛機制』として機能したり、『自己愛的な他者への同一化による新しい対象の獲得』をもたらしたりする。

自分自身と同じような存在として他者を認識して、自己と他者を一体化させる(あるいは自己像を他者に投影する)のが『自己愛的な同一化』の心理機制であるが、その同一化の心理機制によって『同性の友人・同世代の集団(コミュニティ)・親密な異性・尊敬できる先輩』などに対して新しい対象関係を獲得する心的プロセスが進むのである。

思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング2:同世代の子供だけの世界の必要性

自己愛的な自己像を他者(友人・恋人・先輩)や同世代の集団(コミュニティ)に投影することによって、自己愛が更に高まるのと同時に、自己愛を投影した『自己対象』のことを好きになったり同一化していくことになる。『自我理想』のように認識されている先輩・師匠・異性・集団に対しても、自己愛的な同一化の心的過程が進む。だが、この自我理想は必ずしも実在する人物・集団に限るものではなく、『内的な想像・理念・思想(イデオロギー)』として形成されている自我理想的な観念に対しても自己愛的な同一化が起こることもあるのである。

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[思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング2:同世代の子供だけの世界の必要性]

思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング2:同世代の子供だけの世界の必要性

親と子との間の境界線が引かれるということは、思春期の子供が大人になるために精神的自立を進めていくということであり、『子供だけの社会・世界・活動・関係(親・大人が無神経に踏み込んでいくことのできない子供だけの了解事項がある社会・世界)』を構築して深めていくということでもある。

思春期の少年少女にとっての発達課題には『恋愛感情への対処・男女関係の変化への対応』といったものもあり、そこには小学生時代にはなかった『異性への恋愛欲求・性的関心』『異性と親密に付き合うことの難しさ(好意を伝える恥ずかしさ・好意を受け容れてもらうことの難しさ)』なども含まれている。

思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング1:新たな代理対象の発見・獲得

思春期の子供たちは、大人が容易には入れない『自分たち同世代だけの社会・世界』を作る傾向があり、そこで『親友・仲間集団・恋人(彼氏彼女)』を求めて、様々な人間関係や正負の感情、成功・失敗を体験して精神的(人間的)に成長していくのである。

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[思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング1:新たな代理対象の発見・獲得]

思春期の親離れ(子離れ)と思春期モーニング1:新たな代理対象の発見・獲得

思春期・青年期の『親離れによる精神的自立』は、父母対象表象を喪失した悲しみを克服するための“喪の仕事”である『思春期モーニング(adolescent mourning)』を引き起こす。

思春期モーニングの心的過程では、今まで依存していた父母対象表象に対してリビドー(心的エネルギー)が向けられなくなり、『対象喪失の悲哀・不安』が生まれてくるが、この悲哀・不安の克服にあたっては『代理対象の獲得』が重要になってくる。

思春期・青年期の発達段階では、父母から精神的自立を遂げるに従って、父母以外の他者・集団の『代理対象』に興味関心を抱くようになり、親しくコミュニケーションを取って特別な関係を築いたり、持続的な帰属感(所属感)を持ったりする。思春期モーニングによる不安定な心理状態を緩和・改善してくれる代理対象になりやすいものとしては、『同性の友人(親友)・信頼できる先輩・異性の恋人・学校のクラス・家族代理となるピアグループ(仲間集団)』などがある。

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2016年02月13日

[思春期・青年期の精神発達と精神分析学3:親への幻滅と親子の境界線の確立・自立]

思春期・青年期の精神発達と精神分析学3:親への幻滅と親子の境界線の確立・自立

内的(無意識的)な対象喪失の心的プロセスである『思春期モーニング(adolescent mourning)』は、思春期早期から青年期まで連続的に一貫して続く心的プロセスだと考えられており、子供時代の依存的・愛着的な親子関係から離脱することによって、子供は大人に向かう精神的自立・成熟のとっかかりを得ることができるのである。

思春期・青年期の精神発達と精神分析学2:親離れと子の自立

思春期モーニングの重要性については、精神分析家のF.パイン(F.Pinne)も指摘しており、『対象喪失の悲哀・不安』に耐える心的能力を獲得することによって、人間は自律的かつ責任主体的な人生を営めるように成長していくことになるのである。

内的(無意識的)な体験としての思春期モーニングが進展するプロセスとしては、まず幼児期に形成された理想的な親イメージが崩れて幻滅を感じる『脱錯覚(disillusionment)』がある。過去の乳幼児期において万能の存在として自分を保護してくれていた両親も『ただの当たり前の一人の人間(強さだけではなく弱さも多く持っている一人の人間)』だということを心から深く実感することによって、それまでの幻想的な錯覚が解除される脱錯覚が起こるのである。

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[思春期・青年期の精神発達と精神分析学2:親離れと子の自立]

思春期・青年期の精神発達と精神分析学2:親離れと子の自立

思春期・青年期の子供は『自分のパーソナルスペース+プライベート領域』を大人(親含む)から土足で侵犯されることを神経質なまでに嫌うことが多く、ただ掃除をするためだけに母親が部屋に入っても機嫌を悪くしたり、『友人関係・異性関係・学校生活』についてあれこれ質問されるようなことも嫌うところがある。

思春期・青年期の精神発達と精神分析学1:思春期モーニング(adolescent mourning)

精神的な親離れ(依存心の弱化)が進むにつれて、精神的な自立と共に親とは別の『自分のパーソナルスペース+プライベート領域』が拡大してくるからだが、この自立性を高める精神発達プロセスを通して幼少期から抱いてきた親のイメージが変質して、『依存していた父母像』を喪失する『思春期モーニング(adolescent mourning)』の体験が起こるのである。

思春期モーニングというのは『内在的かつ無意識的な対象喪失体験』であるが、それとは別に親の死去、父母の離婚、別居、児童虐待などの『偶発的(外在的)かつ意識的な対象喪失体験』が起こることもある。そして、内在的な対象喪失と偶発的な出来事による対象喪失が重なって起こると、思春期にある子供は精神的危機(トラウマの要因)や不適応状態に陥りやすくなってしまう。

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[思春期・青年期の精神発達と精神分析学1:思春期モーニング(adolescent mourning)]

思春期・青年期の精神発達と精神分析学1:思春期モーニング(adolescent mourning)

思春期・青年期の発達課題には『親子関係の成熟』が含まれているが、それは『親離れ・子の精神的自立』とほぼ同義のものである。幼少期に形成された親に対する『愛着・依存・甘えの心理』が緩やかに薄まっていき、子が自分の人生を『自分の能力と責任・社会参加・対人関係』の元で選択して自立していくプロセスが思春期・青年期の発達課題の達成につながっていく。

精神科医・精神分析家の小此木啓吾(おこのぎけいご,1930-2003)は、思春期・青年期の精神発達過程においてそれまでの親密で依存的な親子関係から離れていくことで『内的な対象喪失・喪の仕事(モーニング,mourning work)』が行われるという仮説を提起した。

“親”は精神分析の対象関係論では、自分と同じくらいに大切な対象であるという意味で“自己対象”と呼ばれたりもする。『親離れ・子の自立』というのは、『潜在的な愛着・依存の対象(親)』が自分が自立することで失われるという『対象喪失(object loss)』の体験としての一面を持っており、小此木啓吾はこの思春期・青年期の対象喪失を特に『思春期モーニング(adolescent mourning)』と呼んだのである。

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2015年11月22日

[児童虐待(child abuse)の問題と虐待による精神疾患の後遺症]

児童虐待(child abuse)の問題と虐待による精神疾患の後遺症

児童虐待の被害を受ける子供には、小学生の児童も多いが、それよりも身体的・精神的に圧倒的に未熟で無力な『幼児期・乳児期』の発達段階にある子供が虐待を受けやすいという統計がある。性的虐待に限っては、第二次性徴期を迎える小学校高学年から中学生以上の女子児童・生徒が被害に遭うケースが多く、実親だけでなく連れ子のいる再婚家庭で問題が起こってしまう事もある。

児童虐待(child abuse)の分類・問題と児童虐待防止法の施行(2000年)

性的虐待の後遺症として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や適応障害、解離性障害(多重人格障害)、パニック障害、社交恐怖障害などの精神疾患が起こることもあるが、性的虐待を受けている子供は思春期以降に『家出・性的逸脱(性非行)・性や恋愛の拒絶(異性とまともな関係を作れない)』などの問題行動が目立ってくることも多い。

乳幼児期の子供は、身体の発育も未熟であり骨もまだ脆いため、大人としては力を抜いた軽い殴打(軽く持ち上げて落とすなど)のつもりでも、その虐待行為が悲惨な死亡事故の結果(刑事上の傷害致死事件・殺人事件に相当)を招いてしまうことも少なくない。

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[児童虐待(child abuse)の分類・問題と児童虐待防止法の施行(2000年)]

児童虐待(child abuse)の分類・問題と児童虐待防止法の施行(2000年)

両親にパーソナリティー構造・性格傾向の問題があったり、育児をするために必要な生活環境・経済状態が整えられていなかったり、育児不安が過度に強くて育児ノイローゼになっていたりすると『児童虐待(child abuse)』のリスクが格段に高くなってしまう。

『児童虐待』というのは、子供を保護して愛情を注ぎながら養育すべき養育者(親)が、子供を『身体的・精神的・性的』に虐待したり搾取したりすることであり、日本では1990年代以降に社会に周知されるようになった比較的新しい家族病理の概念・問題である。児童虐待には主に以下のような分類がある。

身体的虐待……殴られたり蹴られたりつねられたり落とされたり、火傷をさせられたりなど、身体的に暴力を加えられる型の虐待である。

精神的虐待……暴言を吐かれたり存在価値を否定されたり、度を越えた揶揄(からかい)・侮辱をされたり、常に親が不機嫌で怒っていて精神的に萎縮させられたりなど、精神的に暴力を加えられる型の虐待である。

性的虐待……実親だけではなく養親・親族・近隣住民などによって行われる場合もあるが、通常の親子間のスキンシップの範囲を越えて、性的な欲求を持って身体・性器に触れたり自分を触らせたりするなど、性的に搾取・利用する型の虐待である。厳密には、幼児期・児童期の子供だけではなく、中学生・高校生の子供に対して性的行為を強要することなども性的虐待の範疇に入ってくる。

ネグレクト(養育放棄)……『子供の健康・安全・成長』のために必要な最低限の養育義務(各種の世話・監護などの義務)を果たさずに、養育者が子供を無視したり放置したりする型の虐待である。

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2015年10月03日

[Zero to Threeにおける“乳幼児期の精神保健・発達障害”の診断基準]

Zero to Threeにおける“乳幼児期の精神保健・発達障害”の診断基準

アメリカの乳幼児精神保健(infant mental health)の学会である“Zero to Three”では、乳幼児期の精神保健と発達障害の診断のために、DSMと類似した『第1軸〜第5軸までの多軸診断システム』が採用されている。

第1軸:主要診断(primary diagnosis)……精神医学・臨床心理学などの専門的知見や評価尺度を応用した主要な精神疾患・問題行動の診断軸

第2軸:関係性障害分類(relationship disorder classification)……親(養育者)と子供との情緒的・機能的な関係性

第3軸:医学上・発達上の障害と状態(medical and developmental disorders and conditions)……医学的な身体疾患や臨床発達心理学的な発達障害の診断とその具体的な状態。

第4軸:心理社会的ストレッサー(psychosocial stressors)……家庭・保育園・幼稚園・学校などでの適応状態と心理社会的ストレスの強度

第5軸:機能的情緒的発達水準(functional emotional developmental level)……精神機能や情緒機能の発達水準と標準的な発達プロセスと比較した場合のズレ・偏り

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2015年08月12日

[症状精神病と各種の身体疾患との相関関係:内分泌疾患などによる精神障害の発症]

症状精神病と各種の身体疾患との相関関係:内分泌疾患などによる精神障害の発症

症状精神病は『各種の身体疾患(基礎疾患)』に付随する形で発症・経過する精神疾患であるが、そういった狭義の症状精神病を引き起こしやすい身体疾患には以下のようなものがある。

H.H.ウィエックの通過症状群と一般身体疾患の影響による譫妄・気分障害

1.糖尿病……インシュリン注射療法で、過剰投与による低血糖が起こると『欲求と関心の消失・傾眠による意識水準低下・譫妄・もうろう状態』といった精神症状が起こり、悪化すると昏睡になってしまうリスクもある。糖尿病に伴う一般的な精神症状としては、『不安感・抑うつ感・意欲低下・心気症(ヒポコンドリー)』などがある。

2.尿毒症(腎不全)……透析治療が必要となる腎不全による尿毒症では、『疲労感・倦怠感・抑うつ感・不安感・睡眠障害』などの精神症状が見られ、悪化すると嗜眠(しみん)・昏睡になってしまうリスクもある。尿毒症の経過では、『譫妄・錯乱・緊張病(外的刺激に対する反応が乏しい状態)』といった症状精神病の症状が出てくることもある。

透析治療のプロセスにおいて、血液と中枢神経系の間で血液内の物質の濃度差ができる症状を『透析不均衡症候群』というが、この透析不均衡症候群が発症すると『脱力感・疲労感・不安感・頭痛・譫妄・錯乱・昏睡』の症状精神病の問題が出てくることがある。長期間に及ぶ透析治療は、脳への器質的ダメージや病的変化を引き起こすリスクがあるが、その場合には『脳器質精神症候群』と呼ばれる人格変化・知能低下などの症状が出てくることもある。

3.心疾患……心臓疾患は致命的疾患にもなり得るため、『死の強い恐怖』に襲われやすく、『不安感・恐怖感・抑うつ感・軽躁状態・イライラ』などの精神症状がでやすい。心不全の発作が起こる時にも、『注意力低下・集中困難・記憶力低下・睡眠障害・譫妄』などの症状がでやすい。

4.肺疾患……長期喫煙者に発症しやすい『COPD(慢性閉塞性肺疾患)』の患者は、慢性的に息苦しさを感じる『呼吸不全症状』があるので、その影響で『不安感・イライラ(不機嫌)・傾眠・軽躁』などの精神症状がでやすく、悪化すると『譫妄・昏迷・昏睡』などに至りやすい。

5.肝疾患……肝疾患による肝機能障害に伴って、『抑制欠如(衝動性の抑制困難)・抑うつ感・多幸感』などの症状精神病の精神症状が出やすくなる。肝疾患が重症化すると『譫妄・もうろう状態』といった幻覚・妄想を伴うタイプの意識障害も見られやすくなり、肝臓がんの末期などでは外的刺激に全く反応を示さなくなる『肝性昏睡』に至る。

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[症状精神病で見られる各種の意識障害]

症状精神病で見られる各種の意識障害

統合失調症の『一級症状』を分類整理したことで知られるドイツの精神科医クルト・シュナイダー(Kurt Schneider, 1887-1967)は、症状精神病のことを『身体的基礎のある精神病』と呼んでいた。

症状精神病と器質性精神病・中毒性精神病の違い

『外因性精神病の問題について』の著作のあるドイツの精神科医K.ボンヘッファーは、各種の症状精神病に共通する症状の概念として『外因反応型』を提唱している。K.ボンヘッファーの外因反応型の概念はすべての症状精神病に当てはまるものであり、症状精神病の原因となる基礎疾患はさまざまであっても、それらに共通する精神症状に一定のパターンがあることを示唆している。

症状精神病の症状は可逆的であり、その本体が『薬物・外科手術が効きやすい身体疾患』であることから、『器質性精神病・内因性精神病・中毒性精神病』よりも治癒する可能性が高いとされる。症状精神病は、身体疾患の経過と並行するような形で症状が経過していき、身体疾患がすっかり治癒してしまえば、症状精神病も治癒することが殆どである。

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