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2015年05月06日

[神経症の分類とDSMの精神障害名との対応:フロイトの不安神経症の分類と理論]

神経症の分類とDSMの精神障害名との対応:フロイトの不安神経症の分類と理論

現代の精神医学における診断基準の国際標準となっているDSMでは、DSM‐Wから神経症という病名を用いなくなっているが、それぞれの神経症の病型に対応するDSMの精神疾患の名称は以下のようになっている。

不安神経症――全般性不安障害、パニック障害

恐怖症・対人恐怖症――特定の恐怖症、広場恐怖症、社会不安障害・社交不安障害

強迫神経症――強迫性障害

心気症――身体表現性障害(心気症)

ヒステリー――身体表現性障害(転換性障害),解離性障害(解離性健忘、解離性遁走)

離人神経症――離人性障害、解離性同一性障害(多重人格障害)

抑うつ神経症――気分障害(大うつ病性障害、気分変調性障害)

神経症(neurosis)の古典的定義と神経症の病名の衰退

神経症の歴史を遡ると、神経症(neurosis)という言葉そのものを初めて用いたのは、18世紀のスコットランドの医師W・カレン(W.Cullen)であるが、近現代の精神医学・精神分析で用いられることになった神経症という病理学的概念の確立をしたのはジャン・マルタン・シャルコーやピエール・ジャネ、 ジークムント・フロイトといった精神科・神経科の医師たちであった。

S.フロイトは特に神経症の『機能障害』『心因性(過去のトラウマの抑圧や影響)』に注目しながら、神経症の発症・経過・予後の『心理機制(自我防衛機制)』の仕組みを解明して、その神経症理論の臨床経験と知識基盤に基づいた『神経症の定義・分類整理』を推し進めたという功績を残しているのである。

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[神経症(neurosis)の古典的定義と神経症の病名の衰退]

神経症(neurosis)の古典的定義と神経症の病名の衰退

ジークムント・フロイトの精神分析が主な研究・治療の対象としていた『神経症(neurosis)』とは、心理的原因によって発症する心身の機能障害(けいれん・手足の振戦や麻痺・失声や失明・強い恐怖感や不安感・抑うつ感など)のことであった。

器質的・身体的な原因が見つからない『心因性の機能障害』が神経症であり、S.フロイトやC.G.ユングといった精神分析家だけではなく、P.ジャネやJ.M.シャルコーといった神経科医の権威もその診断・治療を研究していた。

古典的な神経症の定義は以下のようなものである。

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2015年02月25日

[J.H.ジャクソン(John Hugh-lings Jackson)の非局在説のジャクソニスム:進化と解体の理論]

J.H.ジャクソン(John Hugh-lings Jackson)の非局在説のジャクソニスム:進化と解体の理論

19世紀に隆盛した『古典的局在論』に反対したイギリスの神経学者・心理学者に、J.H.ジャクソン(John Hugh-lings Jackson, 1835-1911)がいる。J.H.ジャクソンは機能局在説に対抗する全体説を提唱した初期の神経学者であるが、ジャクソンの神経学は『進化(evolution)と解体(dessolution)の理論』に裏付けられたもので20世紀の精神医学にも大きな影響力を振るったものである。

失語症の言語障害とウェルニッケ・リヒトハイムの図式

J.H.ジャクソンは、神経系はよく組織化されていて自動的に作動する“下位中枢”から、組織化されておらず随意的(意識的)に動かすことのできる“上位中枢”へと“進化(evolution)”に応じた階層秩序を形成していると考えた。何らかの疾患・病気による“解体(dessolution)”は進化のプロセスの逆行であり、上位中枢の機能から下位中枢の機能へと退行するとした。

統合失調症のような精神病の“陰性症状(無為・無気力・感情鈍麻など)”は侵襲による上位機能の喪失の結果であり、“陽性症状(幻覚・妄想・錯乱など)”は残存した下位機能の解放の結果であるとした。

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[神経心理学の機能局在説と全体説(非局在説):ブローカーとウェルニッケの失語症]

神経心理学の機能局在説と全体説(非局在説):ブローカーとウェルニッケの失語症

神経心理学(neuropsychology)の理論的な前提には、脳の各部位がそれぞれの精神機能(機能障害)に対応しているという『機能局在説』と、機能局在説を否定してそれぞれの精神機能(精神障害)の発生は脳の各部位の働きに還元することはできないという『全体説(非局在説)』とがある。

1861年に、フランスの解剖学者・外科医のピエール・ポール・ブローカー(Pierre Paul Broca,1824-1880)が、言葉を聴いて理解する能力はあるのに言葉を話すことができない症例を発見してその症状を“アフェミー”と名づけたが、その後に『ブローカー失語症』と呼ばれるようになった。剖検によって、言葉を理解して話す中枢である『運動性言語中枢』が前頭葉後下部にあることが分かり、この文節言語の発話の中枢を『ブローカー野』と呼んだ。

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2015年02月24日

[神経心理学(neuropsychology)の研究分野と研究対象]

神経心理学(neuropsychology)の研究分野と研究対象

神経心理学(neuropsychology)は、“中枢神経系の脳の働き”と“各精神機能(心理機能)”との間にある相関関係を調べて解明するための応用心理学の分野である。1960年代に神経心理学(neuropsychology)という分野の名称が定着するまでは、大脳病理学(Gehirnpathologie)という名前で呼ばれることもあったが、神経心理学は脳の各部位がそれぞれの精神機能に対応しているという『機能局在説』を前提にしている。

神経心理学の研究の歴史は、脳神経外科などにおける『脳損傷(限局性の脳損傷)の患者の精神症状・機能的障害の研究』と深いつながりがあるが、近年ではMRIやPET、fMRIなど脳内の神経活動をモニターする画像診断法が進歩したことで、『脳機能と精神疾患との相関関係』についての研究も積極的に行われるようになってきている。

特に、二大精神病と呼ばれてきた『統合失調症』と『双極性障害(躁うつ病,うつ病も含め)』についての神経心理学的な研究が行われている。脳内の神経活動・血流動態をモニターする画像診断の結果を、何とか精神疾患の病名診断に補助的に役立てられないかという実践的な研究も行われている。

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2015年01月15日

[心理臨床家(カウンセラー)の仕事の難しさ:間主観的世界と客観化の世界のバランス]

心理臨床家(カウンセラー)の仕事の難しさ:間主観的世界と客観化の世界のバランス

心理臨床家(カウンセラー)は、クライエントの心と率直に向き合う心理面接のカウンセリングを実施しながらも、自分とクライエントの人間関係が今どのような特徴を持っていて、どの方向に変化しているのかを『関与観察・自己観察(セルフモニタリング)』しなければならない。

心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:1

心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:2

心理臨床家(カウンセラー)の仕事の難しさは、『リアルタイムのカウンセリングの実践者』であると同時に『メタレベルのカウンセリングの観察者』でもいなければならないことである。カウンセラーはクライエントの心・訴えと率直かつ共感的に向き合いながらも、その関係性や転移感情に呑み込まれてしまわないだけの『クールな理性・メタレベルの観察者の視点』を維持できなければ務まらないのである。

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[心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:2]

心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:2

カウンセリングの神様と呼ばれたカール・ロジャーズは、カウンセラーが習得すべき基本的態度として『徹底的な傾聴・共感的な理解・純粋性(自己一致)・無条件の肯定的受容(積極的尊重)』を上げたが、これらの要因もカウンセラーとクライエントとの間のラポール(相互的な信頼関係・親和感情)と密接なつながりを持っているのである。

心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:1

境界性パーソナリティー障害(旧・境界例と重なる部分の多い人格障害)を代表として、カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの人間関係における適度な距離感が調整できなくなってしまうケースもある。

早期発達段階への心理状態の固着・退行が見られる境界性パーソナリティー障害では、『人間関係における依存性・執着性・見捨てられ不安』が見られ、『接近・賞賛』『回避・こきおろし(否定)』のアンビバレンツ(両価的)な行動パターンを繰り返して疲弊しきってしまうのである。

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[心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:1]

心理臨床家のカウンセリングの仕事とラポールの関係性:1

心理臨床家(臨床心理士)のカウンセリングや心理療法は、『言語的アプローチあるいは非言語的アプローチを用いてクライエントの認知・行動を効果的に変容させること』を目的にしている。

クライエントの認知(悲観的な物事の捉え方)や行動(不適応な行動パターン)を変容させることによって、『クライエントの問題解決・人格的成長・物語性の構築・自己(歴史性)の再体験』を促進していくというのがヒューマニスティック心理学を前提としたカウンセリングの高次元の目標でもある。

カウンセリングや心理療法は、『理論の理解度・技術の習熟度』だけによってクライエントの問題や悩みを解消できるわけではなく、それ以上に重要になってくるのが『相互に信頼・関心を寄せ合う人間関係』である。

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2015年01月14日

[心理臨床家(臨床心理士)の心理療法と求められている役割:2]

心理臨床家(臨床心理士)の心理療法と求められている役割:2

何かを創作したり作業をしたりする表現療法・作業療法としては、『遊戯療法・絵画療法・芸術療法・音楽療法・箱庭療法』などを考えることができる。それ以外にも、系統的脱感作を用いる行動療法、一気に強い不安・恐怖の刺激を体験させようとする曝露療法(フラッディング,エクスポージャー)、精神分析的療法(力動的心理学)、イメージ療法、ゲシュタルト療法、フォーカシング、集団療法(エンカウンターグループ)などの心理療法の技法がある。

心理臨床家(臨床心理士)の心理アセスメントと心理療法:1

心理臨床家は心理アセスメントと心理療法を基軸にしながら、実に多様な仕事をこなしていると言えるが、心理アセスメントでは『意識的な自己報告+投影的な無意識の分析』が行われ、心理療法では『言語的コミュニケーション+非言語的コミュニケーション』によってクライエントの問題解決・認知と行動の変容が目指されることが多い。

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[心理臨床家(臨床心理士)の心理アセスメントと心理療法:1]

心理臨床家(臨床心理士)の心理アセスメントと心理療法:1

臨床心理士などの心理臨床家の主要な役割は、『心理アセスメント(心理テストによる人格・病態・知能・状態の査定)』『心理療法(各種の技法の適用)』である。

“カウンセリング”“心理療法”よりも健康なパーソナリティー構造を持ったクライエントを対象にしているが、形式的には精神科医の実施する“精神療法”というのも、臨床心理士が実施する“心理療法”よりも精神疾患の病態水準が重い患者を対象にしている。実際の心理臨床では、精神療法と心理療法の技法上の違いはほとんどなく、精神科医が実施するケースを精神療法と呼んでいるだけの事が多い。

臨床心理士は『病院(精神科・心療内科)・学校・産業・開業』など様々な領域で仕事を行っているが、個人療法だけではなく集団療法を担当したり、家族面接を通した家族療法を実施したりもする。心理的問題や精神疾患を抱えたクライエント個人だけを対象にして心理面接(心理療法)をするだけではなく、学校の教師・家族・会社の上司・関係者を交えた合同面接(合同コンサルテーション)を行うこともある。

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2014年12月08日

[ピエール・ジャネのヒステリー研究:『心理自動症』と『解離』の精神病理学]

ピエール・ジャネのヒステリー研究:『心理自動症』と『解離』の精神病理学

フランス・パリの精神科医ピエール・ジャネ(Pierre Janet, 1859-1947)は、ヒステリーや霊媒・心霊の行為における『幻想的あるいは暗示的な心理状態』をできるだけ科学的・医学的に理解するためのモデルを考えて、『解離(dissociation)』という新たな精神状態の概念を提唱した。

フルールノアとエレーヌ・スミスのヒステリー研究1:霊媒師・心霊術師のトランス状態

フルールノアとエレーヌ・スミスのヒステリー研究2:ヒステリー(失神・妄想)と幻想的な願望充足

現代の精神医学でも解離はトラウマ(心的外傷)によって生じることのある病的な心理状態として注目されているが、解離(dissociation)というのは『統合・統一されている機能的(適応的)な心理状態』がバラバラに解体されたり機能できない程度に障害されている状態のことである。

心理的な諸機能を統合・統一することによって、より高次の適応行動が可能になるというのがピエール・ジャネの心理構造のモデルである。解離というのはそういった心理的諸機能が障害されている状態であり、意識的人格の適応性が障害されている状態のことでもある。

P.ジャネは心理的諸機能を統合して適応行動を取る創造的な働きを『高次の心理機能』と仮定し、保存(記憶)している過去の定型的な行動を繰り返すだけの働きを『低次の心理機能』と仮定した。その上で、心理的諸機能を統合するための『心的緊張力(精神の活動性・適応性の根底にあるべき緊張性)』が低下した時に、人間は人格機能が低下したり心身症状が出現したりするヒステリーを発症するのだと主張した。

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2014年01月14日

[アーネスト・ジョーンズ(Ernest Alfred Jones)]

アーネスト・ジョーンズ(Ernest Alfred Jones)

イギリスの精神分析家のアーネスト・ジョーンズ(Ernest Alfred Jones,1879-1958)は、ロンドン大学医学部を卒業して神経科医になった後に、S.フロイトと知り合って師事することになった人物である。精神分析を創始したジークムント・フロイトは、肛門期性格に近い強迫神経症的な傾向や融通の効かない頑固さ、反対意見を受け容れない自己主張の強さがあったと言われており、次々に自分の弟子たちと理論的・人間的な対立を繰り返して訣別していった。

権威主義的で頑固なS.フロイトと対立して離れた著名な高弟としては、一時期、フロイトの後継者の最有力者と目されていたカール・グスタフ・ユングがいる。C.G.ユングはフロイトの正統派精神分析から離脱して、汎性欲説やリビドー発達論を否定する独自の『分析心理学(ユング心理学)』を確立したことでも知られる。

C.G.ユング以外にも、『個人心理学(後のアドラー心理学)』を構築したアルフレッド・アドラーや出産外傷説による神経症の発症を訴えたオットー・ランクらが、S.フロイトとの間で理論的・性格的な衝突を起こして訣別している。

C.G.ユングをはじめとする精神分析の中核を支えた高弟たちが、次々と正統派精神分析から離脱していく中で、アーネスト・ジョーンズは最後までフロイトの門弟として師事していた人物であり、国際精神分析学会において『教育分析』を制度化するという貢献をしたりした。ジョーンズ自身は、先輩に当たるサンドラ・フェレンツィから精神分析の教育を受けたが、フェレンツィもまた後年には理論的な不一致を理由としてフロイトの元を去ってしまっているのである。

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[J.H.シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)と自律訓練法(autogenic training)]

J.H.シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)と自律訓練法(autogenic training)

ヨハネス・ハインリヒ・シュルツ(Johannes Heinrich Schultz,1884-1970)は、ベルリン出身の精神科医でイエーナ大学で医学部教授を務めた。J.H.シュルツは日本では、心身医学的な自己催眠療法の一種である『自律訓練法』の創始者として知られており、日本の精神科医の成瀬悟策(なるせごさく)との共著で『自律訓練法(1963)』という本も上梓している。

シュルツは精神病理学の分野においては、『当時の神経症(neurosis)の分類・整理』で貢献しており、神経症を病因論に基づいて『外因性異神経症・生物学因性辺神経症・心理因性層神経症・性格因性核神経症』などに細かく分類し定義していた。現代風にシュルツの病因論を解釈すれば、『環境や外傷の要因・生物学的要因・心理的要因・性格的要因』に分類していたことになる。

J.H.シュルツは人間存在を『心身一如(心理と身体が相互作用しているあり方)』と定義することで、精神的要因が疾病・症状に与える影響を考える現代の『心身医学』の基礎を築いた人物でもある。

自律訓練法ではリラックスした心理状態と弛緩させた筋肉の状態を利用して、自分自身を催眠誘導していくが、シュルツが目指したのは『不随意的な自律神経系のコントロール』であり、筋弛緩法と同時に行う自己暗示によって『脳幹機能・自律神経系のコントロール(自己暗示による心身の完全なリラックス状態と緊張・不安やストレスの軽減)』を実現しようとしたのである。

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2013年12月20日

[S.M.ジュラード(S.M.Jourard)]

S.M.ジュラード(S.M.Jourard)

S.M.ジュラード(S.M.Jourard,1926-1974)は、カール・ロジャーズアブラハム・マズローフリッツ・パールズと並んで、初期のヒューマニスティック心理学(人間性心理学)の発展に貢献した心理学者である。

ヒューマニスティック心理学(人間性心理学)の大きな特徴の一つは、精神病理学(異常心理学)のネガティブな人間観に囚われずに、『健康的かつ成長的な志向性を持つ人間観』に依拠してパーソナリティやカウンセリングの人間関係を考えているということである。

S.M.ジュラードも精神疾患や人格障害などの病的で不適応なパーソナリティには余り関心を示さず、健康なパーソナリティの特徴・成長・可能性を探求しようとして、そのために『自己開示(アサーティブ)の必要性』を強く訴えた。

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2013年10月12日

[E.ジェイコブソン(Edith Jacobson)]

E.ジェイコブソン(Edith Jacobson)

E.ジェイコブソン(Edith Jacobson, 1897-1978)はドイツ生まれの精神分析家で、 日本では特に“内向化した怒り・不満の抑圧”がうつ病を発症させるという『うつ病の精神分析的な病因論』で知られる。うつ病以外にも現在の解離性障害(離人症)に当たる、現実感(リアリティ)を喪失するタイプの精神疾患のメカニズムを考察する研究を行った。

E.ジェイコブソンのうつ病の精神分析的研究の成果は、邦訳でも『うつ病の精神分析 (1983年,牛島定信訳)』が岩崎学術出版社の現代精神分析双書(第2期 第11巻)のシリーズから刊行されている。

ジェイコブソンは『夜と霧』を書いて実存療法を創始したV.E.フランクルと同じく、ナチスドイツの強制収容所に収監されたという極限状況の体験を持っている。そのつらくて絶望的な体験が、その後のジェイコブソンの精神分析理論や人間観に与えた影響は大きいとされる。

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[霜田静志(しもだ・せいし)]

霜田静志(しもだ・せいし)

霜田静志(しもだ・せいし,1890-1973)は、美術教育から精神分析に興味を持ったという異色のキャリアを持つ日本の精神分析家である。正統派精神分析のジークムント・フロイトではなく、イギリスの教育学者・教育実践家として著名だったA.S.ニイルから薫陶を受けている。

1890(明治23)年7月9日に埼玉県に生まれた霜田静志は、東京美術師範学校(現在の東京芸術大学)を卒業した後に、教職に就いたのだが体調を崩して暫くの療養生活に入った。西欧美術の最新技法を紹介する教育者として活躍し、マンセルの色彩表やチゼックの美術教育論を初めて日本に導入したのも霜田静志であった。

1921(大正10)年には、進取の気性に富む沢柳政太郎(さわやなぎ・まさたろう)が創設した私立の成城中学校へと就職して、西欧流の新しい美術教育の空気を日本に持ち込み、『大正デモクラシー』の自由な気風を謳歌した。成城中学校では親友のエリック・S・ベルと校長の沢柳政太郎から勧められたこともあって、イギリスの教育家のA・S・ニイルの研究に取り組むようになり、近代初期の規律訓練型・強制型の学校教育に反対する『自由主義教育(自由教育)』に賛同の意思を示した。

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2011年10月06日

[心理テストの標準化(standardization)]

心理テストの標準化(standardization)

心理評価尺度としての心理テストには、『知能検査・性格検査(パーソナリティ検査)・作業検査』などがあり、それらのテストは所与の質問項目に答えていく一般的な『質問紙法』とロールシャッハテストや描画法のようにクライアントの内面心理(無意識的内容)を作品(曖昧図形)に投影させる『投影法』とに分けられる。

心理テストを作成するに当たっては、どんなクライアントがテストを受けても、その結果を的確に評価するための集団基準(母集団の中での相対的位置づけを明らかにする基準)が必要となるが、この集団基準を作成するための作業を『標準化(standardization)』と呼んでいる。

心理テストの作成に必要な標準化の作業はやや複雑であるが、カウンセリング・心理療法の心理アセスメントで用いられる事のある代表的な心理テストはすべて標準化の作業を受けた『標準検査』である。標準化された標準検査では、心理テストを受けたクライアントが母集団の中でどのような位置づけにあるのかを推測することができ、標準よりも優れているのか劣っているのか、正常に近いのか病的な状態に近いのかなどを知ることができる。また、こういった標準的状態との偏倚(ズレ)を知ることも、心理テストを実施する主要な目的の一つなのである。

心理テストや各種のテストを標準化するという時には、以下のような作業が行われることになる。

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2010年06月10日

[自己同一性(自己アイデンティティ)の確立とアイデンティティ拡散の要因]

自己同一性(自己アイデンティティ)の確立と拡散

エリク・エリクソン(E.H.Erikson, 1902-1994)は発達段階と発達課題を定義した社会的精神発達論(発達漸成図式)の中で、青年期の発達課題を『自己アイデンティティ(自我同一性)の確立』とした。自己アイデンティティとは『自分とは何者であるのかという問い』に対する自己定義であり、『自分は自分以外の何者でもない』という連続的な一貫性を持った自己意識のことである。

E.H.エリクソンは自己アイデンティティの特徴として“私とは○○である,私は○○に帰属している”という自己意識(自己同一性)の『連続性・一貫性・統合性』を上げている。

自己アイデンティティの連続性とは『過去の私』と『現在の私』が断絶せずに継続しているという感覚であり、一貫性とは『自分の行動・自覚』と『自分の実際の状況』が合理的につながっていない混乱していない状態のことである。統合性とは『自分という意識』がバラバラに分裂したり細分化しておらず、『全体としての自我の統一性』を保っているということである。

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2009年10月21日

[心理臨床家(カウンセラー)の失錯・失敗を生みやすい要因]

心理臨床家(カウンセラー)の失錯・失敗を生みやすい要因

カウンセリング(counseling)では、言語的コミュニケーションや非言語的コミュニケーションを通して、クライアントの心理的問題の解決や精神状態の回復を促進する。心理療法(psychotherapy)では、クライアントの『精神病理の側面』に焦点を当てて、言語的コミュニケーションや各種の技法の適用を行いながら、クライアントの精神症状を改善することを目指す。

便宜的な定義では、カウンセリングは『健常なパーソナリティ』を持つクライアントの問題を対象にした対人援助技術であり、心理療法は『病的なパーソナリティ・精神障害』を持つクライアントの問題(症状)を対象にした治療的な技術となる。

カウンセリングや心理療法を実践する時には、カウンセラー(セラピスト)が犯しやすい典型的な誤り・失錯というものがあるが、それは以下のような項目にまとめることができる。以下のすべてが問題や失敗になるわけではないが、心理臨床家(カウンセラー)が果たすべき役割や実施すべき心理面接からズレてしまう恐れを持っている。

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2009年01月10日

[少年鑑別所・少年院(juvenile training school)・少年刑務所(juvenile prison)]

少年鑑別所・少年院(juvenile training school)・少年刑務所(juvenile prison)

[少年法の規定と家庭裁判所における少年審判]については前回の記事で説明した。家庭裁判所に送られた14歳以上20歳未満の非行少年は『不処分・少年院以外の保護措置・児童相談所送致』にならなければ、保護措置として『少年院』に送致されたり、少年法17条を根拠とする観護措置として『少年鑑別所』で詳細な調査・診断が行われたりする。少年鑑別所は法務省所管の施設であり、各都道府県庁所在地などに全国で52ヶ所(分所1ヶ所を含む)に設置されている。最大で8週間、非行少年を少年審判・処遇判定に必要となる鑑別調査を目的にして収容することができる。

少年鑑別所は刑務所のような刑事処分のための拘禁施設ではなく、『少年の資質(性格・生活歴・非行歴・家族関係・友人関係など)』をできるだけ科学的・客観的に鑑別してその後の処遇に役立てるための施設である。少年鑑別所では、少年が非行・犯罪に走るようになった原因や背景を綿密に調査するだけでなく、非行少年の更正教育や健全育成にとってどのような処遇が好ましいのかの指針となる調査書を作成する。少年鑑別所の調査は、医学、心理学、教育学、社会学その他の諸科学の専門知識に基づいて行われ、非行少年の保護更正にとって『最適な処遇』を決めるための基礎資料(参考資料)が作られるのである。鑑別の結果は『鑑別結果通知書』として家庭裁判所に送付されることになり、少年審判の参考資料にされたり少年院・保護観察所における指導方法や援助技術に応用されている。

少年鑑別所における調査診断は、『面接法(非行に至るまでの経緯や非行の要因の聴取)・心理検査(心理評価尺度)・行動観察・医学的検査・探索処遇(作業検査)』などによって行われ、鑑別結果通知書では少年の資質と非行との関連性や、現在の少年の問題点・心理状態、今後の処遇のあり方の方針が記述される。

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