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2008年09月30日

[宗教(religion)と宗教学(science of religion)]

宗教(religion)と宗教学(science of religion)

宗教(religion)宗教学(science of religion)とは言葉は似ているが全く異なるものであるとされる。宗教とは絶対的な教義や神秘的な対象を『信仰』する体験であり、宗教学とは宗教の教義・歴史・思想(世界観)・役割などをメタな立場から『研究』する学術的営為のことであるが、宗教学を研究する宗教学者が研究対象にしていた宗教そのものに傾倒することも多い。

そのため、宗教と宗教学との境界線は曖昧になることも少なくないが、原則的には、宗教とは主体的な信仰活動であり宗教学とは客観的な学術研究である。科学的方法論を採用する『宗教学』は、形而上学的な哲学的思索を重視して宗教教義を補強する『神学』とは異なるものであり、宗教学では『経験主義・実証主義・現象学・批判精神』に基づいて研究が進められる。

英語で宗教を意味する“religion”という言葉には、『神・キリストとの再結合(re+ligon)』という意味があり、ラテン語のreligioにまで遡るreligionという言葉は元々キリスト教に代表される『一神教』を指示する言葉であった。現在では“religion”という言葉は宗教全般を指示する単語になっているが、日本語の“宗教”という名詞は幕末期にreligionの訳語として考え出されたもので、当初は宗教以外にも『宗門・宗旨・法教』などの翻訳の案が出されていたという。日本人が宗教一般を指し示す言葉として『宗教』という言葉を使い始めたのは明治時代中期以降のこととされているが、1884年(明治17年)に出版された井上哲次郎が編纂した『改定増補哲学字彙』という辞書に『宗教』という言葉が採用された影響が大きい。

多神教的な仏教の歴史と切り離して考えることができない。日本の伝統的宗教には、アニミズムの要素を持つ『神道』、多神教的な要素を持つ『仏教』、政治思想的な要素を持つ『儒教(儒学)』がある。日本の伝統宗教は、キリスト教やイスラム教のような一神教と比較すると『生活規範(戒律)の強制度』が弱く、『近代的な政教分離原則』が行き届いているという特徴がある。

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2008年09月18日

[ジャンクフード症候群(junk food syndrome)]

ジャンクフード症候群(junk food syndrome)

ジャンクフード(junk food)とは、エネルギー(カロリー)は高いが、必須栄養素の『ビタミン・ミネラル・食物繊維』がほとんど含まれない食品のことで、一般に糖分や人工添加物が多く含まれたもののことを言う。ジャンクフードとは栄養学的な『ガラクタ食品』という意味であり、継続的かつ大量に栄養の偏ったジャンクフードを摂取し続けると心身の健康に良くないとされている。

その一方で、アメリカを発祥の地とするジャンクフードは、現代的な大衆文化を代表するファストフード(手軽にスピーディに摂取できる食品)であり、モノと食品が溢れている『大量消費文明の豊かさ』を如実に象徴するものでもある。産業システムによる大量生産が可能なファストフードは、良くも悪くも人間を『飢餓の不安』から解き放ち『飽食の時代』へと誘うことになった。

具体的なジャンクフードには、『ハンバーガー・フライドポテト・ドーナツ・ポップコーン・スナック菓子・カップラーメン・清涼飲料水(コーラなど炭酸飲料)』などがあり、それらの特徴は『高カロリー・高脂肪・糖分と塩分が多い・手軽に食べられる・味が濃くて満腹感を得やすい』ということであり、忙しい現代人は多かれ少なかれファストフードとしてジャンクフードを食べる機会を持つことになる。ジャンクフードには野菜・果物・海産物が不足しがちなので、『ビタミン・ミネラル・食物繊維』を別の食品で補わないと栄養学的に偏った状態に陥りやすい。味付けの濃いジャンクフードは『食べる喜び・快感』を得やすい食品が多いので、注意しないと過食傾向になって肥満の原因にもなることがある。

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[遮断療法(deprivation therapy)][就学相談(guidance for schooling)]

遮断療法(deprivation therapy)

遮断療法(deprivation therapy)とは、『自然治癒力・自己回復力』を最大限に活用して精神症状や心理的苦悩を解消しようとするものであり、身体疾患に対して用いられる安静療法に類似したものである。身体の器官が疾患になったり、身体の一部を怪我したときには、特別な治療やケアをしなくても安静にして休んでいるだけで自然治癒することが多いのは誰もが経験的に知っていることである。病院で処方される風邪薬(解熱鎮痛剤)にしても、細菌・ウイルスの感染症である風邪そのものを治療するものではなく、風邪の症状である発熱・頭痛・炎症などを抑えて患者の自然回復力を促進するものでしかない。

医療行為においても心理臨床(カウンセリング)においても、『自然治癒力・自己回復力・免疫力』を強化することはすべての治療法・技法の基本であり、特別な外科手術や薬物治療が必要な病気・怪我でなければ安静療法が有力な選択肢となる。心理臨床における遮断療法とは『外界の刺激・変化』を大幅に遮断することで精神症状を回復させ、心理的問題の解決を早めようとするものであり、人工的に安静にできる生活環境と対人状況を整備するものである。遮断療法では外界の刺激や状況の変化は、クライエントの心理状態を不安定にする『精神的ストレス』として認識されており、できる限りクライエントを外界の刺激から遮断することで『心の平静・安定』が得られると考えるのである。

遮断療法の精神病理学的な基礎は、『刺激に対する反応』として精神症状を捉える行動主義(行動科学)にあるが、遮断療法の『外界との遮断』を重視するコンセプトは森田療法・内観療法・催眠療法などにも応用されている。極端に厳格な環境調整をする遮断療法では、『指示・助言・説教・訓戒』など精神的ストレスになりやすい他者の行動を禁止するだけではなく、『娯楽・遊び・趣味』などクライエントが楽しみにしている行為まで禁止して安静にさせることがある。クライエントの精神状態が回復して環境適応能力が向上してきた時には、遮断療法に加えてカウンセリングや対人スキル訓練、認知療法などを行っていくと、より効果的な心理学的援助を実施することができる。

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[社会療法(social therapy)と医療活動・コミュニティ援助・社会福祉]

社会療法(social therapy)と医療活動・コミュニティ援助・社会福祉

社会療法(social therapy)とは、社会福祉的なソーシャル・ワークに近い心理学的アプローチで、『クライエントの心理・行動』ではなく『クライエントの生活環境・人間関係』に働きかけようとするものである。一般的なカウンセリングや心理療法では、『クライエントの心理社会的要因』に着目して心理面接のセッションを行ったり心理アセスメントによる心理状態の査定(見立て)を行ったりするが、社会療法では『クライエントの環境的要因』を重視して環境調整を行っていくことになる。

社会療法では、カウンセリングのような『言語的アプローチ』ではなくて、社会福祉制度(社会保障制度)や相互扶助的なコミュニティに代表される『社会資源・対人的リソースの有効活用』によってクライエントが抱える問題を解決しようとする。心理的な苦悩や社会環境への不適応を持つクライエントに対して、社会療法は『環境調整・治療的コミュニティの組織化・社会的リソースの有効活用』によって対処しようとするが、社会療法ではカウンセリングよりも経済的・対人的コストが大きくなりやすいという問題がある。現代社会における社会療法の多くは、『病院・福祉施設・児童相談所・学校』など公共性の高い機関で実施されることが多く、『社会療法の実践』は社会福祉や医療活動、学校教育の枠組みの一部に取り込まれているといってよい。

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2008年09月16日

[社会学の社会変動(social change)と社会変動理論]

社会学の社会変動(social change)と社会変動理論

社会変動(social change)とは社会構造の変化のことであり、『定常型経済(農業経済)』の伝統社会では社会変動は起こりにくいが、『成長型経済(資本主義)』の近代社会では社会変動が起こりやすくなりそのスピードも速くなる。マクロレベルの社会変動には、『社会組織・社会制度・社会規範(道徳規範)・経済活動(産業構造)・文化潮流・家族制度』などの変化が含まれる。日本では、近世の終わりを告げる『明治維新』と戦時体制の終焉となった『戦後民主主義』において非常に大きな社会変動の波を経験することになった。

社会学の分野において『社会変動』は研究されているが、その理論的な起源になったのは社会構造の変化を定式化しようとしたフランスの社会主義者サン・シモン(1760-1825)と社会学者オーギュスト・コント(1798-1857)『観念の段階論』である。実証的な社会学の始祖とされるオーギュスト・コントは、サン・シモン学派の重鎮の一人であったが、『社会の富の増大』を目標とする社会主義者のサン・シモンは『計画経済』『産業階級(資本家・労働者)』を重視した。サン・シモンは『財産権』を最も重要な市民の権利と考え、生産活動を行わない王侯貴族(支配階級)やカトリックの僧侶(聖職者階級)よりも産業階級(資本家・労働者)のほうが価値があるという主張を展開した。

サン・シモンは、一般的なマルクス主義者のように『階級対立(資本家階級と労働者階級の対立)』を説くことはなく、晩年はキリスト教的な博愛主義の道徳を崇敬して、人類は『兄弟愛』に基づく相互扶助の義務を負うと語るようになった。富裕層は貧困層を救済する道徳的な義務があるとする『人道主義』を唱えるようになったサン・シモンは、社会主義経済とキリスト教的人道主義が結びついたユートピアニズムの思想を抱くようになった。サン・シモンとオーギュスト・コントの『観念の段階論』では、学術活動は『神学→形而上学→実証主義』へと発達し、社会構造は『軍事的段階→法律的段階→産業的段階』へと変化すると考えられていた。

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2008年08月18日

[社会病理学(social pathology)・精神病質(psychopath)・社会病質(sociopath)]

社会病理学(social pathology)

身体医学の領域には、生理学をベースにして身体疾患のメカニズム(発症・原因・経過・予後)や治療法を研究する『病理学』があり、精神医学の領域にも精神疾患のメカニズムや治療法を研究する『精神病理学』がある。社会科学・社会学の領域でも、正常に機能している社会システムや経済構造の元では見られない病的な社会現象のことを『社会病理』と呼ぶが、この社会病理のメカニズムと解決方法を研究する学術分野のことを『社会病理学(social pathology)』という。19世紀末に社会病理学という分類を初めて提起したのは、P・フォン・リリエンフェルト(P. von Lilienfeld)だとされる。

社会現象の正常性と異常性の判定は非常に難しく、個々人の価値観(善悪感)や理想の世界観にも関係してくる問題だが、一般的に『個人に苦悩・病気・荒廃・破滅をもたらす社会現象』『社会に混乱・退廃・治安悪化・不安をもたらす社会現象』を合わせて社会病理と呼んでいる。社会病理であるか否かは社会全体の標準的価値観や個人の権利(安全)の侵害の程度、社会治安への影響などによって規定されるが、社会生活に適応できない個人の行動の一部も社会病理として見なされていることがあり、個人の不適応と社会の病理との境界線は必ずしも明瞭なものではない。

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[社会的ネットワーク療法(social network therapy)・社会的問題解決スキル(social problem-solving skills)]

社会的ネットワーク療法(social network therapy)

ロス・スペック(Ross Speck)が開発した集団精神療法(グループカウンセリングが『社会的ネットワーク療法(social network therapy)』であり、社会的ネットワーク療法は家族療法と社会福祉的なケースワークの両方の特徴を持っている。心理的問題や生活上の悩みを抱えたクライエントに対して、クライアントの知り合いで構成する『援助集団(helping members)』を準備することになるが、この援助集団はクライアントと情緒的・役割的・社会的なつながりを持ったメンバーによって成り立っている。

クライアントの家族関係や対人関係のネットワークとして『治療的な援助集団』が用意されるわけだが、この社会的ネットワーク療法の基本理念は『現実の人間関係のネットワークの中でクライアントを支える・真摯に話し合って問題解決につなげる』ということであり、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)の理念とも類似した部分がある。援助集団は数人〜数百人といった規模まで広がりがあり、具体的なメンバーとしては『親・兄弟姉妹・配偶者・友人・恋人・知人・同僚・福祉関係者・教育関係者』などを想定することができるが、クライアントが会いたいと希望するメンバーで援助集団を構成することが原則である。

カウンセラー(心理臨床家)はクライアントの心理状態や問題状況に合わせて、援助集団のメンバーを招集して『クライエントに必要なかかわり方・話し合い』を教示するが、社会的ネットワークを適切に調整したり効果的に機能させることが重要となる。しかし、各メンバーのライフスタイルや勤務時間、人間関係、体調・用事などの条件によって援助集団が集まることができないことも多く、実際の心理臨床場面において社会的ネットワーク療法を実施するのはかなり難しい。

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[社会的性格(social character), 社会的勢力(social power)]

社会的性格(social character)

『特定の社会集団』を構成する人の大多数に共通して見られる性格行動パターンのことを『社会的性格(social character)』と呼ぶが、文化結合的な社会的性格は両親の養育態度や帰属社会の慣習・役割規範などによって作られていく。社会的性格とは、社会適応的あるいは文化結合的な性格構造のことであり、社会的性格に特徴的に見られる『認知・行動様式』はその個人が帰属する社会集団の『文化様式・社会規範』から切り離して考えることはできない。社会的性格とは一般に、その社会集団や共同体の仕組みに適応するために身に付けられた学習的な性格構造であり、政治・社会・経済のシステムが大幅に変革されるとそれに合わせて社会的性格の特徴も変化するのである。

社会的性格の構成要素には『民族性(日本人らしさ)・国民性(アメリカ国民らしさ)・社会的性差(ジェンダー)・階級性(上流階級としての所作・大衆文化)・職業意識(医師や技術者としてのアイデンティティ)・年齢(大人らしさ)』があるが、基本的には『社会一般がその個人に求めてくる属性・態度』を内面化したものが社会的性格である。

社会規範や他者の要求を内面化することによって社会的性格が形成されていくが、精神分析的な社会学者であるエーリッヒ・フロムは、『個人の社会適応の促進』によってリビドー(精神的エネルギー)が社会的役割や機能的行動(生産活動)に振り向けられると語った。学校の教育や両親のしつけによって、『社会規範・道徳原則』が内面化していくが、その内面化によって『役割期待の受容・社会的義務や生産活動の遂行』が可能になってくる。

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[社会的決定理論(social decision theory)と社会的行為(social action)]

社会的決定理論(social decision theory)と社会的行為(social action)

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、『人間はポリス的動物である(人間は社会的動物である)』と述べたが、人間は共同体的な社会構造の中で他者と相互作用しながら生きる存在としての側面を強く持つ。人間は他者の行動や社会の規範(行為規範)からの影響を受けて行動するが、『一人の時の行動』には見られない『集団内(人間関係)における行動』のことを社会的行動(social behavior)という。

社会的行動とは他者や社会の影響を受けた行動のことであるが、自分の行動や意見に同調する他者の数が多い時には人間の行動は過激な強化を受けやすく、これが『集団ヒステリー』や『社会的手抜き(責任意識の希薄化)』の原因となる。所属する社会集団(共同体)の行為規範や役割意識、倫理観によっても個人の社会的行動は大きな影響を受けるので、集団の利益や規範に従って『自分が悪いと思っている行動』を罪悪感を感じずにやってしまうこともある。集団主義的な価値観や数の論理による同調圧力は、社会的行動の発現や抑制と深い関係を持っている。

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2008年08月10日

[ジョハリの窓(Johari's window)]

ジョハリの窓(Johari's window)

ジョハリの窓(Johari's window)とは性格心理学やコミュニケーション心理学、エンカウンター(集団カウンセリング)で用いられる『4つの窓』で区切られた表のことであり、『自己理解・自己開示の程度』を自己と他者の両方の視点から理解できるというものである。ジョハリの窓は、アメリカの心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)ハリー・イングラム(Harry Ingram)が共同で開発したものであり、ジョセフとハリーという名前から『ジョハリの窓』という命名が為された。ジョハリの窓とは以下のようなものである。

ジョハリの窓
  自分の知っている自分自分の知らない自分
他者の知っている自分A.明るい窓(開放された窓,自分も他人も知っているアサーティブでオープンマインドな領域)B.盲目の窓(自覚できていないが他人は気づいているという自己盲点の領域)
他者の知らない自分C.隠された窓(他人に隠している秘密の領域)D.未知の窓(自分にも他人にも分からない無意識の領域)

ジョハリの窓では、『自分が自分のことをどれくらい良く知っているか?』という自己理解と『他人が自分のことをどのように見ているのか?』という他者評価とのバランスを知ることができる。隠し事が少なく自己開示的でオープンな『A.明るい窓の領域』を大きくしていくことで他者と良好な人間関係を築きやすくなっていき、反対に『D.未知の窓』が大きくなるほど自分が何ものなのかがよく分からなくなり混乱したり事故アイデンティティが拡散したりする。

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[A.バンデューラの社会的学習理論(social learning theory)]

A.バンデューラの社会的学習理論(social learning theory)

カナダの心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura, 1925-)が提起した社会的学習理論(social learning theory)とは、行動主義的な連合学習(ロールプレイと強化子による学習)とは異なる『モデリング(他者の行動の観察)による学習』のことである。学習心理学・行動科学(行動主義心理学)における社会的学習(social learning)という概念には、『社会的環境における学習』という意味と『社会的行動の学習』という意味とがある。A.バンデューラが社会的学習という場合には、他者の行動や態度を観察する社会的環境(場面)での学習という意味が含意されている。

行動主義心理学(行動科学)では、学習行動は『個人の実際の経験(行動)』『連合的過程(刺激に対する反応の学習)』とによって成り立つと考えられていた。つまり、行動主義では『獲得したい行動・知識』を実際に経験して行動してみないと学習できないと考えられていたのであり、学習の基本原理として『レスポンデント条件づけ』『オペラント条件づけ』が想定されていたのである。

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[社会体系(social system)と社会体制(social system)]

社会体系(social system)と社会体制(social system)

『社会体系(social system)』『社会体制(social system or social constructure)』とは類似した印象を与える社会概念であるが、厳密には異なる意味を指し示す概念である。社会体系とは『政治制度・経済制度・社会慣習・行為規範・常識概念・道徳的価値観・文化様式』など社会の構成要素のひとつひとつがそれぞれに相互依存しながら、全体的なまとまりをもって構造化している状態のことである。社会体系とは私たちが生活して活動している社会環境と社会構造の全体的なまとまりであり、各構成要素が機能的に統合された社会的構造物のことを意味している。

社会学分野において『社会体系』というテクニカルターム(専門用語)を定義したのは、機能主義社会学の代表的人物であるタルコット・パーソンズである。タルコット・パーソンズは社会構造・社会システムを『機能』と『構造』とに分離して考え、社会体系は社会の機能的要件(政治・経済・治安・国防・教育・医療などの必要最低限の要件)を満たすように構造化されるとした。それらの機能的要件を満たせないようになると、社会体系は自律的・自然的に新しい機能的な秩序を再構築するように変化していき、その時に大きな時代潮流の変化や学術分野のパラダイムシフトが起こるのである。

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[社会心理学(social psychology)と社会精神医学(social psychiatry)]

社会心理学(social psychology)と社会精神医学(social psychiatry)

社会心理学(social psychology)とは、『社会事象・社会風潮』『個人と集団の相互作用』を研究対象にする応用心理学であり、他者の行動や性格、選好(好き嫌い)、集団行動、社会的な現象の予測なども目的にしている。多くの心理学分野は多かれ少なかれ『社会的要因・社会的環境・社会的風潮』の影響を受けているので、社会心理学は他の応用心理学や心理臨床の分野とも密接に関係している。社会行動(他者との相互的影響)や社会環境に影響されない『個体(個人)としての心理』を生理学的・実験的に研究する分野として生理心理学や実験心理学があるが、社会心理学は社会行動や他者との相互作用によって影響を受ける『集団社会・人間関係の中の個人の心理』を研究対象にしている。

社会心理学では、『個人(個体)の行動・心理』とは異なる『社会的状況(集団関係)における個人の行動・心理』を取り扱うが、対人関係における好意や評価、魅力など身近なテーマだけではなく、災害時の群衆心理(集団ヒステリー)や政治的な組織論・リーダーシップ論など社会全体の社会的関係(相互的な人間関係)の解明も課題にしている。『複数の個人』が集まる社会的な状況下では、『一人の個人』とは違う心理状態や状況判断が行われるが、そういった個人と個人の相互作用や集団と集団の相互干渉、集団組織の形成プロセスとリーダーシップなどのメカニズムを実証的な研究手法で法則化することが社会心理学の目標である。

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2008年08月02日

[社会学(sociology)]

社会学(sociology)

社会学(sociology)は社会科学の一分野であるが、あらゆる社会現象や社会関係を研究対象にできるという性格を持つので、社会科学と社会学との方法論上の境界線は必ずしも明快ではないという意見もある。社会学は『社会現象・社会構造・社会関係・社会変動』など社会的な共同生活に関係するありとあらゆるものを研究対象にしているが、個別科学としての独立性を強化するために一つの研究論文の中では、特定の対象と方法論を定めるということを重視している。古典的な社会学では『同時代の社会事象を的確に認識するための概念・理論の創出』を目的にしていたが、現在では仮説演繹法(分析)と帰納推測法(総合)を駆使しながら、客観データ(統計学的根拠)に基づく社会科学としての社会学の構築が求められている。

社会学は社会現象の実態や推移を分析し、社会現象や社会関係のメカニズム(因果関係)を解明するという意味では『実証科学』としての性格を持つが、それと同時に秩序志向的な社会規範を探求するという『規範科学』としての側面も併せ持っている。

社会学では『個人の行動・個人間の相互作用・家族のダイナミズム』といったミクロ・レベルの研究だけではなく、『社会共同体・社会構造・社会変動・社会規範』といったマクロ・レベルの研究も行うが、社会学の主要な役割は『社会事象のメカニズムの解明』『社会現象の変化の予測(未来における社会変動の予見)』に集約することができる。

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[個人の社会化(socialization)と家庭機能の社会化:精神的自立と社会適応性の獲得]

個人の社会化(socialization)と教育機能の社会化:精神的自立と社会適応性の獲得

個人は『両親のしつけ・学校の教育・知識の学習・友人関係などの経験』を通して社会化(socialization)していくが、社会化とは所属社会(帰属コミュニティ)の一員になるために必要な『倫理(善悪判断)・知識・技能・儀礼(マナー)』を習得して社会に適応することである。社会化のプロセスは精神発達のプロセスとも密接に関係しており、エディプス期に父性的な権威によって『幼児的な全能感・幻想的な万能感』が去勢されることで、子どもの社会化が促進されるという側面もある。

乳幼児は、母親の手厚い保護と世話によって『すべてが自分の思い通りになる世界』に住んでいるが、エディプス・コンプレックスの経験によってその幼児的な全能感が去勢されると、『自分の思い通りにいかない社会のルール(自分と対等な他者の存在)』を自覚するようになってくる。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは人間を『社会的な動物』と呼んだが、この『社会性の獲得』こそが人間の社会化にとって極めて重要な要素となる。社会化のプロセスには、帰属社会の規範や常識・マナーをどれくらい遵守できているのかという『社会性』と他者にどれくらい積極的に関わろうとしているのかという『社交性』が関係してくる。社会性と社交性のバランスの取れた発達によって、個人は真の成熟した社会化を遂げることができる。

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[L.カナーの自閉症(autism)・自閉症スペクトラム・アスペルガー障害]

L.カナーの自閉症(autism)・自閉症スペクトラム・アスペルガー障害

自閉症(autism)とは、先天的な脳の機能的・器質的障害を原因とする発達障害(developmental disorder)であり、対人コミュニケーションや言語発達、知覚機能、社会性(他者への関心)などに障害が発生する。1943年に、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の児童精神科医レオ・カナー(Leo Kanner, 1894-1981)が、他者との感情的なコミュニケーションや言語的な機能に障害が見られる『早期幼児自閉症』を発見したのが自閉症の歴史の始まりである。

『自閉(オーティズム)』とは統合失調症の症状の一つであり、自己の内面世界に閉じこもって外部世界や他者の反応に関心を示さないことであるが、レオ・カナーが観察した初期の自閉症事例に、自閉的な『他者への関心の欠如・同じことを繰り返す常同行動』が見られたために『自閉』という用語が採用された。

現在の精神医学・発達臨床医学では、自閉症は広汎性発達障害(PDD:pervasive developmental disorder)あるいは自閉症スペクトラムの下位分類とされており、自閉症は対人行動様式に関連する発達障害の一種と定義できる。日本における自閉症の発生率は約0.1〜0.3%程度とされており、自閉症の男女比は4:1で圧倒的に男児に多い発達障害である。

他者(母親)への自発的な注意・関心が見られない自閉症は、通常、幼児期にある3歳児の頃までに診断されることが多い。思春期以降に診断が下される自閉症の多くは、高機能自閉症と呼ばれる『アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)』であり、知的障害や言葉の遅れが見られない軽度のアスペルガー症候群では健常者(非アスペルガー障害)との境界線が曖昧になってくる。自閉症スペクトラムでは、『自閉の程度(他者への関心の強弱・コミュニケーション能力の高低)』『知能指数の高低』によって自閉症を分類しており、知能指数が低い群を『低機能自閉症(カナー型自閉症・カナー症候群)』と呼び、知能指数(IQ)が正常な群を『高機能自閉症(アスペルガー障害・アスペルガー症候群)』としている。

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2008年07月27日

[Z得点(Z-score,偏差値・標準得点)][同胞葛藤(シブリング・ライバルリー, sibling rivalry)]

Z得点(Z-score,偏差値・標準得点)

学年の平均点が40点のテストで60点を取ることと、平均点が80点のテストで60点を取ることの意味合いは異なるが、それはテストの『平均(平均得点)』『分散(点数のばらつき)』が異なるためである。テストの平均点が低ければ各個人の点数は低い点数の付近に分布していることになるが、テストの平均点が高ければ各個人の点数は高い点数の付近に分布していることになり、単純に『点数の高低』を比較するだけではどちらが良い成績を上げているのかは判定することができない。

テストの得点の相対的な高低(上下)を明らかにするのに役立つのが統計学的な『Z得点(Z-Score)』であり、Z得点は一般的には『偏差値(標準得点)』と呼ばれることも多い。Z得点は標準偏差を同じ比率(10)にすることで求めることができ、テストの平均点を取れば『50』になるように設定されている。偏差値としてのZ得点は、“Z=50+10×(取った得点-平均点)/標準偏差(SD)”の公式で計算することができる。通常は偏差値を比較しやすいように50をプラスするが、50をプラスしない場合には平均値が0、標準偏差が1である正規分布曲線になる。

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[S.フロイトの“死の本能(death instinct)”とC.G.ユングの“死と再生の元型”]

S.フロイトの“死の本能(death instinct)”とC.G.ユングの“死と再生の元型”

ジークムンド・フロイト(1856-1939)は、“生の本能(エロス)”に対置する“死の本能(タナトス)”が存在すると仮定したが、この死の本能の実在性については懐疑的な精神分析家も多い。フロイトの本能論における『死の本能(death instinct, Todestrieb)』とは、有機的化合物である生命体が自然世界に存在する無機物へと回帰しようとする本能的な方向性のことであり、あらゆる生物がいずれは死んで消滅するという性質を持っている以上、人間も動物も死の本能の制約性(有限性)を超えられないとする。

『死の本能(タナトス)』とは、物理学的なエントロピー(複雑性)の増大であり、生物学的な生命の秩序と精神的な安定性を破壊しようとする本能である。人間の生命や文明社会、文化的な成果を根底から破壊して『無』に帰そうとする戦争も死の本能の反映であり、人類の集合的な精神活動も絶えず生の本能と死の本能の葛藤にさらされている。

死の本能が生の本能を圧倒すると、自分を破壊しようとする衝動や他者を攻撃しようとする欲求が強まってくるが、通常は、自我構造における超自我(倫理規範)や経験的に獲得する現実原則によって死の本能は適応的に抑制されることになる。自己保存欲求(生存欲求・繁殖欲求)は『生の本能(エロス)』によって駆動されるが、エロスはリビドー(性的欲動)をエネルギー源とする本能であり、リビドーの適応的な充足によって自我は成長し安定することになる。リビドーを充足させるエロス(生の本能)とは、自我を成長させ環境に適応させる本能であり、精神構造の統合性を高めて長期にわたって存続させるという働きを持っている。

自己愛(ナルシシズム)を実現するリビドー(libido)を『自我リビドー(ego libido)』と呼び、対象愛(他者に対する愛情)を実現するリビドーを『対象リビドー(object libido)』と呼ぶが、精神分析の病理学ではリビドーの過剰な充足や抑圧が精神疾患(神経症)の原因になると考えた。精神分析ではリビドーを物理学的な数量的エネルギーとして捉えており、人間個人の所有するリビドーは常に一定で、自我リビドーに費やすリビドーが多くなると、対象リビドーに費やせるリビドーは減少すると認識していた。

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2008年07月17日

[交流分析の人生脚本とアダルトチルドレン]

交流分析の人生脚本とアダルトチルドレン

エリック・バーン(1910-1970)が考案した交流分析には『人生脚本(life script)』という概念があるが、人生脚本とは『自分がどういった人間であり、自分がどのような人生を生きていくのか』という大まかな自己認知と人生計画の内容である。誰もが自分の経験や信念(考え方)によって書かれる『人生脚本』を内面に持っており、人生脚本の内容は未来の自分の生活や行動を無意識的に決定してしまうほどの大きな力を持っているのである。

『自分は無能でダメな人間である・自分には人並みな幸せや喜びは得られない・自分は誰からも愛されずずっと孤独なままである』というような過度に悲観的な人生脚本を持っていると、実際の人生もその人生脚本に従った苦痛や不満の多い人生になる確率が高くなる。反対に『自分には一定以上の能力とやる気がある・これから先の未来には多くの幸福な出来事や楽しい事柄が待っている・自分には魅力的な他者や面白い人物との出会いがあるだろう』というように楽観的な人生脚本を持っていると、実際の人生もその人生脚本に近い楽しくて幸福なものになる確率が高くなる。

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2008年06月28日

[児童精神医学(child psychiatry)と児童分析(child analysis)]

児童精神医学(child psychiatry)と児童分析(child analysis)

子ども時代の発達プロセスと行動形成・環境要因を研究する『児童心理学』については前回の記事で解説したが、子ども(乳幼児〜児童)を対象とする精神医学のことを児童精神医学(child psychiatry)と呼ぶ。精神医学には発達段階に応じて、『児童精神医学・思春期精神医学(青年期精神医学)・老年期精神医学』などを区分することがあるが、それらは生涯発達論に基づいて相互に連関しており完全に別個の精神医学領域というわけでは当然ない。

児童精神医学では基本的に思春期以前の子どもの心理的問題の全般を取り扱うが、その中でも特に重要になってくるのが幼児期・児童期に好発する『不適応問題(適応障害)・嗜癖(習癖)に代表される精神疾患・発達障害・早期母子関係・虐待問題』である。不適応問題の代表的なものとしては、学校生活・友人関係への適応困難により発生する『不登校・いじめ・引きこもり』などがあり、思春期になると自分の存在意義や社会的役割が分からなくなって混乱する『自己アイデンティティの拡散』の問題も多くなってくる。

子どもに発症しやすい精神疾患としては、家庭での愛情欠損(保護的環境の欠如)による習癖(爪かみ・夜尿・チック・夜驚)や心身症的な症状(頭痛・腹痛・下痢)があるが、最近は児童期頃に抑うつ感や意欲減退を感じる小児うつ病の症例も増えてきている。乳幼児期における早期母子関係(安心できる保護的環境)の重要性は、ホスピタリズム(施設病)M.マーラーの乳幼児発達理論(分離‐個体化理論)で既に検証されている。

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