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2017年08月21日

[M.H.デイビスの多次元共感測定尺度]

M.H.デイビスの多次元共感測定尺度

『情動的共感性尺度』の項目では、共感性に他者の気持ちを推測する『認知的側面』と他者の気持ちを擬似体験する『情動的側面』の二つがあることを説明したが、今までの研究では情動的側面が重視されることが多かった。共感性の認知的側面に注目した心理測定尺度(心理テスト)の研究も増えてきているが、その原点としてM.H.デイビス(M.H.Davis)『多次元共感測定尺度(1983)』がある。

M.H.デイビス(M.H.Davis)の『多次元共感測定尺度』は、共感性を四次元(四つの要素)で測定する尺度である。ここでいう共感性の四次元(四つの要素)とは、認知的要素の『視点取得(他者の気持ちの想像・認知)』、情動的要素の『共感的配慮(不幸な他者に対する同情・関心)』『空想(架空の人物への同一化傾向)』『個人的苦悩(緊急事態における不安・動揺)』のことである。

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[『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』と共有経験・共有不全経験で考える共感性の内容]

『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』と共有経験・共有不全経験で考える共感性の内容

『情動的共感性尺度』と合わせて実施されることの多い、過去の共感経験に基づく共感性のタイプを測定するための尺度に、角田豊(1991)の『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』もある。角田は共感性の概念について、他者理解を前提として感情的・認知的なアプローチを統合したものと考え、共感性・共感経験を『能動的または想像的に他者の立場に自分を置くことで、自分とは異なる存在である他者の感情を体験すること』と定義している。

他者理解につながっていく共感が成立するためには、他者と感情を分かち合う『共有機能』と、自他の独立的な個別性の認識がなされる『分離機能』が統合されなければならないとした。

角田の『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』『共有経験』『共有不全経験』の二つの下位尺度から構成されているが、共有不全経験というのは他者の感情を感じ取れなかった過去の経験のことで、人は共有不全経験によって自己と他者の独立した個別性の認識を生じることにもなる。

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[共感性(empathy)の認知的側面と情動的側面:『情動的共感性尺度』]

共感性(empathy)の認知的側面と情動的側面:『情動的共感性尺度』

共感性(empathy)とは他者の感情や思考を推測したり感情移入して汲み取ることで、その他者と類似した情動を体験する性質・特性のことである。

他者の言動や感情、生活、人間関係の共感的な理解はカール・ロジャーズのクライエント中心療法でも重視されているが、臨床心理学やカウンセリングではその場の相手の不遇・不幸を心配して思いやるだけの『同情(sympathy)』と相手の立場に立って相手と類似の感情を感じ取って理解しようとする『共感(empathy)』を定義的に区別している。

共感性は他者の立場・視点に立ったつもりで感情・思考・行動を理解しようとする『認知的側面(認知的共感性)』と、他者の感情(情動)の状態を知覚して自分自身も類似の感情を擬似体験する『情動的側面(情動的共感性)』に分けることができる。

ストットランド(1969)は共感性の情動的側面について、『他人が情動状態を経験しているか、または経験しようとしていると知覚したために、観察者に生じた類似の情動的な反応』と定義している。

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2016年08月21日

[記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解]

記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解

精神分析と重なる分野の力動精神医学(力動心理学)では、クライエントの内的世界にある複数の心理機能(心的装置)の力が相互にせめぎ合っているという考え方を通して、現在のクライエントの精神病理や心理状態のプロセスを理解していくことになる。

精神力動的診断では、クライエント(患者)はマニュアル診断を受ける受動的な対象ではなく、『生物学的・心理的・社会的に統合されたホリスティック(全的)な存在』として定義されており、医師や心理臨床家(精神分析家)はクライエントの人生のプロセスや内面世界の力の葛藤をできるだけ共感的に理解しようと努めるのである。実際の精神医学の診察場面(面接場面)では、どちらか一方だけの診断方法が採用されるのではなく、記述的診断と精神力動的診断が組み合わされて適用されることが多い。

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神疾患・精神障害の診断を実施する主体は精神科医であることが多く、心理臨床家(臨床心理士)は心理テストの結果を分析して参考情報を呈示するなどの補助的役割になることが多い。クライエント(患者)の内面世界や人生のプロセスを、その人の立場に立って全人的に理解しようとする精神力動的診断の手法は、臨床心理学の心理アセスメント(心理検査+調査的面接)とも重なり合う部分が大きいという特徴がある。

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[記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論]

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神医学的な診断方法は大きく分けて、『記述的診断』『精神力動的診断』の二つがある。記述的診断とは、身体疾患を診断・治療する身体医学を参照した『一般医学的な診断のフレームワーク』であり、観察可能な症状を中心にして患者の精神疾患を分類・診断していく。

エミール・クレペリンに始まる『記述精神医学』の診断方法でもある記述的診断は、まず患者が発症している観察可能な症状を特定する。その症状の原因が何であるのかの合理的な推測に基づく精神疾患の見立てをして、精神病理学(異常心理学)の精神疾患の分類に従った診断を行い、治療方針を決めていくのである。

記述的診断の基本は、クライエントの症状を詳しく正確に観察して記述すること、記述された症状を一定のルールや基準に従って分類することであり、『観察と記述・疾病分類』に依拠して診断を行っていく。

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2016年06月04日

[儀礼とイデオロギー:自発的な権威・権力・伝統の尊重と服従]

儀礼とイデオロギー:自発的な権威・権力・伝統の尊重と服従

ドイツ語を語源とするイデオロギー(ideology)とは、非物質的な思想・観念の体系であり、社会集団において人々の価値観・行動・生活様式を根底的に規定しているものである。思想・観念・信条の体系としてのイデオロギーは、人々のマクロな世界観にまつわる思想としての『コスモロジー論(宇宙論)・象徴論』を生み出す母胎でもあるが、社会共同体におけるイデオロギーは儀礼的実践過程を通して段階的に形成される。

クロード・レヴィ=ストロースの文化人類学と主観主義(学者の解釈図式)の克服:2

社会構造の変動や歴史的な価値の変革に合わせるようにして、イデオロギーは儀礼と共に機能・役割を変化させていくという意味では相対的なものである。イデオロギーの動因にもなる儀礼研究は『時代・文化・価値と共に変化する』という意味において、相対的であると同時に動態的(ダイナミック)なものでもある。

構造主義・機能主義という概念に示される人類学は、歴史的な時間に左右されないという点において『静態的(スタティック)』な特徴を持っていて、歴史を軽視したり解消したりする作用も持つ。それに対して、『儀礼研究』は社会共同体の歴史を重視するという点において『動態的(ダイナミック)』であり、静態的な人類学を批判するようなポジションに立っているのである。

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2016年03月15日

[思春期の境界性パーソナリティー障害(BPD)とアパシー症候群・ひきこもりの特徴:2]

思春期の境界性パーソナリティー障害(BPD)とアパシー症候群・ひきこもりの特徴:2

思春期の男性と女性の不適応行動になぜこういった性別による差が生まれやすいのかには諸説あるが、女性は自分の苦しい感情・状況を誰かに向けて吐き出して聴いてもらいたいと思うのに対し、男性は弱っている自分を情けないと感じて他人(社会)から自分の姿を隠したいと思いやすいことが影響していると言われる。思春期に限らず成人期も含めて、男性は一般に『他人からの援助・慰め(他人への甘え)』を求めたり受け容れたりするのが苦手なのである。

思春期の境界性パーソナリティー障害(BPD)とアパシー症候群・ひきこもりの特徴:1

ひきこもりに至るプロセスでは、そのきっかけとして『中学生・高校生時代の登校拒否・いじめ』『受験の失敗・浪人・留年』などがあることが多く、自己評価が下がったり自信を失ったりして『対人不安(社会不安)・他者に対する恥の感覚や劣等コンプレックス・自宅を出られない恐怖感』などの症状が出やすくなってしまう。

不登校からひきこもりに至る非社会的問題行動は長期化しやすいが、ひきこもりは『父性原理の欠落(指示・厳格・規範などの欠落)+母性原理の過剰(甘え・依存・放任などの過剰)』で起こりやすくなる。そのため、ひきこもりの少年・青年は『母・姉・妹』と一緒の時にはよく話すが、『父・兄・弟』と一緒の時にはすぐに自分の部屋に引きこもってしまって何も話さなくなる行動特徴を示すことも多い。

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[思春期の境界性パーソナリティー障害(BPD)とアパシー症候群・ひきこもりの特徴:1]

思春期の境界性パーソナリティー障害(BPD)とアパシー症候群・ひきこもりの特徴:1

『思春期(adolescense)』は乳幼児期から児童期にかけての親子関係・人間関係の心理的・性格的な影響が出てきやすい時期である。特に『親子関係の対象喪失のトラウマ』などが影響して、他者からの否定や拒絶を過度に恐れて狂気的にしがみついたり、感情・気分が極端に不安定になって自傷行為(自殺企図)を繰り返したり、自己アイデンティティーが拡散して虚無感に陥ったりする『境界性パーソナリティー障害(BPD:Borderline Personality Disorder)』が現代では問題になりやすい。

境界性パーソナリティー障害は、現在ではクラスターB(B群)のパーソナリティー障害の一種とされるが、元々は精神分析の歴史の中でJ.マスターソン(J.Masterson)が発見した精神病と神経症の中間的な症状を示す『境界例』が原型であった。

境界例というのは統合失調症の『幻覚・妄想』の陽性症状まで深刻な症状は示さないが、感情的に激しく取り乱したり対人関係で狂気的なしがみつきを見せたり、強烈な見捨てられ不安や自己否定感・虚無感を抱いていたりするケースである。J.マスターソン(J.Masterson)は、この境界例が思春期の発達段階で多く見られやすいということから“思春期境界例(borderline adolescent)”という概念を提起したりもしている。

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2015年11月09日

[小食と拒食症・異食症:乳幼児期の摂食・排泄の障害1]

小食と拒食症・異食症:乳幼児期の摂食・排泄の障害1

乳幼児期・児童期の食欲や食行動は不安定であり、『心理的・生理的な変化』の影響を受けやすいので、心理的な不安や生理的な内的要因でいつもより食が細くなってあまり食べなくなる『小食』が起こることがある。

小食の多くは病気ではないが、『心理的な不安・緊張がストレスになっていないか』や『内科的な疾患(内臓器官の異常)の影響がないか』ということには一定の配慮をする必要がある。

しかし、一過性の生理的な小食を親が不安に思いすぎて、子供に無理に食事を取らせようとして頑張りすぎるのは逆効果であり、基本的には『食べたい時に食べられるようにしておく・食べることを無理矢理に強制せずにお腹が空いた時に食べさせてあげる』というリラックスした心持ちで接した方が、子供の食欲・食行動も回復しやすくなる。

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2015年07月06日

[希死念慮を持つ患者の“対象喪失+陰性転移”と治療者の側の“逆転移”の問題]

希死念慮を持つ患者の“対象喪失+陰性転移”と治療者の側の“逆転移”の問題

自殺問題を抱えた人の精神分析的な心理状態の特徴としては、医師・カウンセラーなどに対して無意識的な嫌悪や憎悪、敵対心を向ける『転移(transference)』が起こりやすいということがある。

希死念慮を生み出す重症のうつ病などを発症した患者は、過去の人生において重要なつながりのあった他者(親・配偶者・恋人など)から見捨てられる『対象喪失の体験』がトラウマ(心的外傷)となって残っていることが多い。そして、そのトラウマが『過去の重要な他者に向けるべき悪感情』を治療者に対して向け変えるという転移の原因になっているのである。

“死にたい・消えてしまいたい”という希死念慮の主訴を持つ患者に対して、どのような態度で傾聴すべきか?

重要な情緒的関係にあった他者から見捨てられるという対象喪失の体験は、『自己評価や自己肯定感の低さ』につながるだけではなく、自分はこの世に存在する価値のない人間だという自殺願望とも関係する『自己嫌悪に裏付けされた自己無価値観』にまで悪化していきやすいのである。

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[“死にたい・消えてしまいたい”という希死念慮の主訴を持つ患者に対して、どのような態度で傾聴すべきか?]

“死にたい・消えてしまいたい”という希死念慮の主訴を持つ患者に対して、どのような態度で傾聴すべきか?

昔の精神医学や心理臨床では、『自殺をすると口に出していう人ほど自殺はしないものだ(口だけの自殺企図の脅しは実際に実行されることは少なくただ心配して欲しいだけだ)』という通俗的な心理解釈が罷り通っていたが、近年の研究では『自殺したい・死にたい・生きているのがつらい』などと言葉に出して訴えている人のほうが、自殺願望について口にしない人よりも自殺率が高いことが分かっている。

自殺リスクの高い人が、『もう死にたい・生きているのが耐えられない』という希死念慮について打ち明ける時には、意識的にせよ無意識的にせよ『心理的に甘えられそうな相手・寄り添って話を聞いてくれそうな相手』を選んでいることが多い。

そういった希死念慮について話された相手は、どのように答えれば良いのか分からずに強いストレスを受けやすく、大半は『みんな大変な中で頑張っているんだからなど適当に励ます・面倒になって話をはぐらかす・何とかなるさの楽観を示す・生命を大切になどの分かりきった注意や説教をする』といったあまり適切とは言えない対応になりやすくなってしまう。

希死念慮について打ち明けて話を聞いてもらおうとしている時には、その人の『本音・本心(内面的な苦しみと絶望感)』が表現されやすい状態になっているので、話を聴く人の対応が適切であればあるほど、実際の自殺企図に及ぶリスクを減らしやすいと考えられている。

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2015年05月21日

[境界性パーソナリティー障害(BPD)とその他のパーソナリティー障害の類似性・違い:BPDの予後を良くする要因]

境界性パーソナリティー障害(BPD)とその他のパーソナリティー障害の類似性・違い:BPDの予後を良くする要因

境界性パーソナリティー障害(BPD)には、他のパーソナリティー障害(人格障害)と類似した特徴や問題が見られることも多いが、人格障害間の鑑別診断には参考とすべきポイントがいくつかある。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に見られる各種の特徴と合併しやすい障害

BPDは強いストレスがかかった時には、クラスターA(A群)の『統合失調型パーソナリティー障害』と類似した“奇妙な妄想・幻覚・自己イメージの異常”の症状が出る時もあるのだが、BPDの場合にはこれらの精神病に似た幻覚・妄想の症状はストレス反応性の一過性のものに過ぎず、そのストレス要因が取り除かれればすぐに回復するという違いがある。

BPDはクラスターC(C群)の依存性パーソナリティー障害と類似した“見捨てられ不安・相手への怒りと要求・空虚感”の症状が出やすいのだが、依存性パーソナリティー障害のほうがBPDの人よりも『相手に対して説得的・妥協的・従属的』であり、自分が相手から受け入れてもらうために自分の側も相手のために尽くしたり、要求を聞き容れたりすることが多い。BPDのほうが対人関係が不安定で依存的であるというだけではなく、『相手の側に一方的に要求や怒りをぶつけて言うことを聞かせようとする傾向』が強いのである。

BPDはクラスターA(A群)の妄想性パーソナリティー障害と類似した“被害妄想・妄想に基づく怒り”が見られることがある。また、同じクラスターB(B群)の自己愛性パーソナリティー障害と同じく“自己愛の過剰・自己愛の傷つきに対する怒り”が見られることもある。しかし、BPDのほうが妄想性パーソナリティー障害や自己愛性パーソナリティー障害よりも、自己アイデンティティが拡散しやすく、人間関係が上手くいかない場合の衝動性・自己破壊性が見られやすいという特徴があり、BPDの人はより『他者の否定的・拒絶的な反応』に振り回されやすいのである。

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[境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に見られる各種の特徴と合併しやすい障害]

境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に見られる各種の特徴と合併しやすい障害

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“女性の多さ・有病率・経過予後”などの特徴

境界性パーソナリティー障害(BPD)の人に見られやすい特徴と合併しやすい障害には以下のようなものがある。

1.上手くいっている人間関係をわざと相手の気持ちを試すような行為(=試し行動)でダメにしたり、順調にできていた仕事を敢えて自己都合で退職したり、卒業を目前に控えた学校を退学してしまったりする。自分で自分の人生の目標や楽しみを台無しにしてダメにしてしまうような『試し行為・自己破壊的衝動』が見られやすい。

2.人間との対人関係よりも、ペット・財物・ぬいぐるみといった『非人間の愛着対象(移行対象)』を異常に大切にして過度に依存してしまうことがある。生身の人間から裏切られたい見捨てられたりする不安があまりに強いために、初めから他者(人間)と必要以上に親しい関係になろうとはせず、情緒的交流を敢えて回避して孤立する傾向が見られることがある。

3.境界性パーソナリティー障害(BPD)が、うつ病(気分障害)や各種の依存症(嗜癖)とオーバラップする時には、自傷行為・自殺企図のリスクが有意に高まり、『平均寿命に対する早すぎる死(若死に)』の原因にもなる。自傷行為はクライシス・コールのための脅しや見せかけのものだけではなく、深刻な自己否定感や見捨てられ感、無価値感がある時には、その後の生活に支障を来すほどの身体的な後遺症(神経損傷・知覚麻痺など)を引き起こしてしまうこともある。

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[境界性パーソナリティー障害(BPD)の“女性の多さ・有病率・経過予後”などの特徴]

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“女性の多さ・有病率・経過予後”などの特徴

境界性パーソナリティー障害(BPD)で見られる『感情・気分の不安定さ,実存的な存在意義の葛藤やジレンマ,性的指向や性的アイデンティティの葛藤,職業選択の迷いや不安』などは、青年期の自己アイデンティティ確立にまつわって生じる各種の精神的な不安定さと混同されることもある。BPDは一般的に男性よりも女性に多いパーソナリティー障害であり、BPD全体の約75%が女性だという統計的推測もある。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“依存症との重複・自己破壊性”

BPDの生涯有病率は一般に人口の約2%とされているが、アメリカなどでは約10%に近いとする精神科医もいるが、自己愛や孤独感、対人的な依存性・不安感が強まりやすい現代では特に増加しやすいパーソナリティー障害の一種だと考えられている。インターネットや専門書の情報に触れたことで、自分やパートナーが境界性パーソナリティー障害なのではないかと思い込んでしまう人も相当に多く、『気分・感情・人間関係・自己アイデンティティの不安定さと他者・物質への依存性』はストレスに弱いタイプで孤独感・虚無感を感じやすい現代人にとっては、典型的な性格特徴の一つになっているのだろう。

パーソナリティー障害全体の約30%以上、精神科の外来患者の約10%、入院患者の約20%がBPDの患者であるという推測もなされていて、現代のパーソナリティー障害の中ではもっともポピュラーであり、もっとも苦悩・対人トラブルの原因になりやすいものでもある。

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[境界性パーソナリティー障害(BPD)の“依存症との重複・自己破壊性”]

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“依存症との重複・自己破壊性”

境界性パーソナリティー障害(BPD)の人の自己像(自己イメージ)は低く、自己評価もネガティブなものなのだが、『表層的・依存的な近しい相手との人間関係』が上手くいっている限り(=自分の甘えや依存を受け容れてもらえるような人間関係がある限り)において、精神的な安定や愛されている自分という自己アイデンティティの一時的な確立が見られることが多い特徴を持っている。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“理想化・こきおろし”に見る対人関係の不安定さ

境界性パーソナリティー障害(BPD)の分かりやすい特徴として、各種の『依存症(嗜癖)』とオーバーラップ(重複)しやすいということがある。分かりやすい依存症(嗜癖)の例としては『浪費(買い物依存)・ギャンブル(ギャンブル依存)・過食や拒食(摂食障害)・薬物(薬物依存)』などがあり、『危険運転(暴走行為)・性依存(恋愛や性愛への対人的な依存)』などが合わせて見られることもある。

BPDの人は『慢性的な空虚感・虚無感』に悩まされているため、その苦痛な虚しさや無意味さの実感を離れるために、特定の刺激的な物質・行為・関係性に過度に依存してしまい、自分で自分の人生や生活を持ち崩して破滅的状況に陥ってしまうことも少なくない。極端な急性ストレスがかかった時には、一過性の妄想・幻覚や解離症状(離人症)が発生してしまうこともある。

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[境界性パーソナリティー障害(BPD)の“理想化・こきおろし”に見る対人関係の不安定さ]

境界性パーソナリティー障害(BPD)の“理想化・こきおろし”に見る対人関係の不安定さ

恋人や家族といった親密な他者から見捨てられること(無関心になられること)を避けようとする異常で狂気的な努力は、時に自分を見捨てれば私は自分で自分を傷つける(自分で自分の存在を消してしまう)という『自傷行為・自殺企図の脅迫的行為』となってしまうこともある。

境界性パーソナリティー障害(BPD)のDSM-Wの診断基準と人間関係・気分の不安定さの特徴

BPDの人は、自分を愛してくれそうな人や自分の精神・生活の世話(ケア)をしてくれそうな人を見極めて、急速に接近して関係を深めていきその相手を過度に理想化する傾向がある。しかし、BPDの対人関係は非常に不安定で激変しやすいものであり、特に自分が思っていたような愛情・保護・世話(ケア)を相手が与えてくれない時には、激怒したり罵倒のこきおろしをしたりしやすくなる。

この対人関係や対人評価の極端な変化はBPDの典型的な特徴の一つとされており、『理想化とこきおろし(理想化と幻滅)』『賞賛と罵倒』のようなキーワードでその対人評価の急激な転換(=良い人から悪い人への評価の変化や手のひら返しの態度)が説明されている。恋人や家族を手放しで賞賛して褒めちぎっていたかと思えば、少しでも自分の思い通りにならない相手の一面が見つかると急に態度を豹変させて、同じ相手を口汚く罵ったり人格・生き方・価値観を完全に否定したりするのである。

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[境界性パーソナリティー障害(BPD)のDSM-Wの診断基準と人間関係・気分の不安定さの特徴]

境界性パーソナリティー障害(BPD)のDSM-Wの診断基準と人間関係・気分の不安定さの特徴

境界性パーソナリティー障害(BPD:Borderline Personality Disorder)は、精神分析の病理学研究の歴史においては『精神病(統合失調症)と神経症の中間的領域にある人格構造・病的状態』とされていた。しかし、現在の国際標準となっているDSMの分類では、クラスターB(B群)に属する“自己愛・衝動性・依存性・情緒の不安定さ”が過剰なパーソナリティー障害(人格障害)とされている。

DSM‐Wでは境界性パーソナリティー障害(BPD)の診断基準は以下のようになっている。

DSM-Wにおける境界性人格障害(BPD)の診断基準

1.現実あるいは想像上の『見捨てられ』を回避しようとする狂気的な異常な努力。

2.極端な『理想化(価値承認)』と『こきおろし(脱価値化)』の急速な交代を特徴とする不安定で緊張した(インテンシヴな)対人関係のパターン。

3.自己イメージあるいは自己の感覚の顕著で恒常的な不安定さによる『自我アイデンティティの障害』。

4.自己を傷つけてしまう潜在的なリスクを伴う衝動性が、『浪費・セックス・薬物依存・無謀運転・摂食障害』などの症状として二つ以上見られる。

5.自殺企図や自殺のそぶりを繰り返し示したり、自殺をほのめかすことで周囲を繰り返し脅す。あるいは、自傷行為を反復的に繰り返す。

6.外的刺激に対する気分の反応性が顕著であることによる感情の不安定さ(エピソード的な強い抑うつ感・イライラ・不安など)

7.慢性的な虚無感・空虚感・無価値感。

8.不適切で激しい怒り、あるいは、怒りのコントロール困難(頻繁な癇癪・恒常的な怒りの状態・喧嘩の繰り返し)

9.ストレスに関連した一過性の妄想的な考え、もしくは、重篤な解離性症状。

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2015年05月13日

[強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis):2]

強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis):2

自分が思い浮かべたくない無意味で馬鹿げた思考や信念、イメージが無理やりに浮かんできたり、本来であればやる必要のない行為を何回も繰り返さなければ気が済まなかったりする強迫性の症状は、本人にとって非常に心理的に苦痛であるだけでなく、実際の社会生活や職業活動、人間関係が障害されやすい。更に、無意味な強迫観念・強迫観念への対応に囚われてしまって、時間的な損失がかなり大きくなったりする弊害もある。

強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis):1

強迫神経症の“強迫観念”は『自我違和的な思考・イメージ』のことであり、強迫観念の症状の特徴には以下のようなものがある。

何度でも確実かつ完全に確認しなければならないという思考

科学的根拠とは無関係な迷信的な思考(祟り・呪い・怨念など)やスピリチュアルな思い込み

魔術的思考や幼児的全能感にも似た自分の願望が必ず実現するという過度の思い込み

頭に自然に浮かんできた良くない考えや不幸になるイメージが必ず実際に起こるという予言の自己成就にも似たネガティブ思考

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[強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis):1]

強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis):1

強迫神経症(obsessive-compulsive neurosis)は、現在のDSM‐5(DSM-W-TR)の統計学的なマニュアル診断では“強迫性障害(obsessive-compulsive)”として再定義されている。

ジークムント・フロイトは強迫神経症の症状形成機序として性的精神発達理論における『肛門期』への固着・退行を想定して、『完全主義・頑固・吝嗇(ケチ)・融通が効かない・秩序志向性(細かい規則や行動パターンへのこだわり)』などの肛門期性格の特徴の病的な過剰や逸脱によって強迫神経症が発症すると考えていた。

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2015年02月15日

[北山修の『DPP三角』をチーム医療で機能させるための問題点・注意点:3]

北山修の『DPP三角』をチーム医療で機能させるための問題点・注意点:3

精神科医・北山修はDPP三角で構成される精神医療の治療構造が、基本的憶測に基づくグループになってしまわないように、以下のような問題点・注意点を指摘している。

小此木啓吾の『A-Tスプリット』と臨床心理士の役割:1

北山修の『DPP三角』と小此木啓吾の『A-Tスプリット』:2

1.心理療法家(P)と患者(P)とが心理療法の中で話した『患者の私的・心理的な秘密』に関しては、患者の同意・許可がない限りは、医師にさえも話さないというルールを締結して、『患者の内面世界・過去のトラウマ的な記憶や感情』を話しやすい治療場面を整える。ただし、自傷他害の危険性や精神症状の悪化、自殺企図の恐れがある場合には、治療全体の責任者である医師にも『秘密の情報』を伝える可能性があることは患者に伝えておかなければならない。

2.患者の病態水準や事例(ケース)の深刻度に応じた『医師・心理療法家の役割分担と責任権限』をあらかじめ話し合って決めておき、治療上で『必要な情報交換』がいつでもスムーズかつ効率的に行えるようにしておかなければならない。

3.医師(D)の薬物療法と心理療法家(P)の心理療法を競争させたりお互いに嫉妬させたりしようとするような患者(P)の語りかけに影響されずに、『治療上のパートナーである医師(心理療法家)の方法論』については中立的な態度で患者に話すように努めること。患者の医師に対する不平不満に軽い共感を示すくらいは良いが、患者と一緒になって心理臨床家が『医師の治療法・薬物療法』に真正面から反対するのは治療的パードナーシップの崩壊にもつながる。

4.心理療法家(P)は患者が語る『薬物療法の感想・副作用の悩み・精神症状の経過』などについても共感的に傾聴することを心がけ、『投薬内容の変化に対する不安・恐怖・心細さ』などについても積極的にフォローすること。薬物療法について肯定的に語ることによる暗示効果についても配慮する。精神医療のチーム医療に参加している立場からは、薬物療法の全面否定のような極端な意見に傾かないようにすること。

5.薬物療法や医学的対処については、心理療法家(P)は『非専門家の立場』を貫くようにして、患者の質問・疑問に対して自分が直接答えないようにしなければならない。患者が薬や医療行為について疑問・不安を持っているような場合には、まず『担当の医師に相談したり質問したりしてください』といった回答をするようにして、心理療法家は心理社会的な側面における相談に従事するようにすること。

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posted by ESDV Words Labo at 16:11 | TrackBack(0) | き:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする