クルト・レヴィンの『場の理論(field theory)』
ゲシュタルト心理学者のクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)は、『接近‐接近・接近‐回避・回避‐回避』の葛藤(conflict)の類型論(3つのパターン)を提起したが、レヴィンは人間がある対象に接近したいと思うか回避したいと思うかの違いは、『誘発性(valence)』によって生まれると考えた。
ある対象や状況が人間を引きつけて接近させようとする時には『正の誘発性』が生じているのであり、反対にある対象や状況が人間を引き離して回避させようとする時には『負の誘発性』が生じているというわけである。そして、この誘発性が二重に矛盾する形で発生する場合に、人間はどちらにしようか、どう行動すれば良いのかと悩む『葛藤(conflict)』を感じる事になるのである。
K.レヴィンは、人間の行動形成を『主体である人の認知』と『誘発性を持つ対象・相手・状況』との双方向の力学的な場として想定しており、この力学的な葛藤を伴う場に基づく人間行動の理論を『場の理論(field theory)』と呼んでいる。人間が特定の対象や相手に対して欲望(目的)を抱く時には、その欲望(目的)が簡単には達成できず、その実現を妨げる障害があることが少なからずある。そして、そういった状況下では、緊張感や欲求不満を伴う葛藤が高まりやすくなるが、人間は『欲望の充足・目標の達成=接近』か『欲望の断念・目標の引き下げ=回避』によって葛藤を解消して安定した平衡状態を回復しようとするのである。
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