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2011年05月02日

[クルト・レヴィンの『場の理論(field theory)』]

クルト・レヴィンの『場の理論(field theory)』

ゲシュタルト心理学者のクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)は、『接近‐接近・接近‐回避・回避‐回避』の葛藤(conflict)の類型論(3つのパターン)を提起したが、レヴィンは人間がある対象に接近したいと思うか回避したいと思うかの違いは、『誘発性(valence)』によって生まれると考えた。

ある対象や状況が人間を引きつけて接近させようとする時には『正の誘発性』が生じているのであり、反対にある対象や状況が人間を引き離して回避させようとする時には『負の誘発性』が生じているというわけである。そして、この誘発性が二重に矛盾する形で発生する場合に、人間はどちらにしようか、どう行動すれば良いのかと悩む『葛藤(conflict)』を感じる事になるのである。

K.レヴィンは、人間の行動形成を『主体である人の認知』『誘発性を持つ対象・相手・状況』との双方向の力学的な場として想定しており、この力学的な葛藤を伴う場に基づく人間行動の理論を『場の理論(field theory)』と呼んでいる。人間が特定の対象や相手に対して欲望(目的)を抱く時には、その欲望(目的)が簡単には達成できず、その実現を妨げる障害があることが少なからずある。そして、そういった状況下では、緊張感や欲求不満を伴う葛藤が高まりやすくなるが、人間は『欲望の充足・目標の達成=接近』か『欲望の断念・目標の引き下げ=回避』によって葛藤を解消して安定した平衡状態を回復しようとするのである。

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2007年07月09日

[訓育的カウンセリング(disciplinary counseling)と共感的カウンセリング]

訓育的カウンセリング(disciplinary counseling)と共感的カウンセリング

カール・ロジャーズ来談者中心療法(クライアント中心療法)をはじめとする一般的なカウンセリングでは、『共感的な理解・徹底的な傾聴・中立的な態度・無条件の肯定的受容・純粋性(本心と言動が一致する真実性)』が重視される。ロジャーズのような支持的カウンセリングでは、共感的にクライアントの心情と生活状況を理解して支持していくことで、クライアントの精神状態が安定して問題が解決しやすくなると考える。

ロジャーズの来談者中心療法に代表される支持的療法は、『〜すべきだ・〜しなくてはいけない・〜したほうが良くなる』というような意図的な指示や権威的な指導をすることがないが、それは、クライアントの自律的な成長可能性を信頼しているからである。カール・ロジャーズは、人間には生来的に『成長・回復・適応・健康へと向かう肯定的な特性』が備わっていると考え、この人間の生得的な方向性(傾向)のことを『実現傾向』と呼んでいた。

『健康的な生活環境』と『支持的で受容的な人間関係』『共感的な他者の理解』があれば、人間は成長や回復へと向かう『実現傾向』を発揮することが出来るので、特別な指示や命令を与える必要はないというのが支持的カウンセリングの前提である。共感的カウンセリングは、『〜をしなさい・〜すべきだ』という指示・指導をしないという意味で『非指示的カウンセリング』と呼ばれ、カール・ロジャーズのカウンセリングも非指示的カウンセリングに分類されている。非指示的カウンセリングとしての特徴を持つロジャーズの来談者中心療法(クライアント中心療法)は、初め、『生徒の学校生活への適応や親子関係(教師‐生徒関係)の改善』を目指す学校臨床分野(学校教育分野)で用いられた。

学校臨床や学校教育の分野で非指示的カウンセリングを実施する場合には、『校則や法律を破る生徒に指導しなくても良いのか?クラスメートにいじめや嫌がらせをする生徒を注意しなくても良いのか?』という『指示性・指導性・規範性の有無』が問題になってくる。従来、心理カウンセリングを実践するカウンセラーは『価値観の中立性・中立的な態度』を守るという立場を取ってきたので、『既存社会(学校教育含む)の側に立って、生徒を権威的に注意・指導することはない』という主張をしてきた。

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2007年04月14日

[グループ・アプローチとヤコブ・レヴィ・モレノのサイコドラマ(心理劇)]

グループ・アプローチとヤコブ・レヴィ・モレノのサイコドラマ(心理劇)

集団精神療法を含むエンカウンター・グループ(グループ・カウンセリング)は、精神分析を起点とする力動的心理学(力動精神医学)の影響を受けており、個人と個人が相互的にコミュニケーションや葛藤をしながら成長(回復)するモデルを持っている。エンカウンター・グループの果たす最大の役割の一つが、鏡映的な他者(参加者)を通した『自己理解の深化・自己洞察の進展・問題解決能力の向上』である。

多様性のある複数の個人から構成される集団のダイナミズム(力動)と力動による変容過程、集団特有の雰囲気(特性)を利用した心理学的アプローチを『グループ・アプローチ(group approach)』という。グループ・アプローチは集団の力動と機能を応用したカウンセリングであり心理療法だが、『個人の成長・回復・教育・治療』などを目的として実施されるものである。一対一で面談(相談面接)を行う個人カウンセリング(個人精神療法)の対義語が、複数の個人でセッション(自己表現・対話)を行うグループ・アプローチである。

グループ・アプローチとは、グループ・カウンセリングとグループ・サイコセラピーの総称であり、産業カウンセリング分野におけるTグループやヤコブ・レヴィ・モレノサイコドラマ(心理劇)、サイコドラマを含む集団ロールプレイングもグループ・アプローチに含まれる。ルーマニア出身のモレノが考案したサイコドラマ(心理劇)とは、個人の自発性や情動的な創造性、対人関係への適応力、コミュニケーションのスキル向上を実現するために行う『役割分担がなされたロールプレイング』のことである。

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2007年04月13日

[心理学的な集団とグループ・エンカウンター(group encounter)]

心理学的な集団とグループ・エンカウンター(group encounter)

心理学でいうグループ(group, 集団)とは、複数の人間から構成される集合体のことであるが、同一集団に所属する個人は相互にコミュニケーションを行って相互作用を及ぼしあっている。つまり、双方向的な人間関係やコミュニケーションが全く存在しないバラバラの個人の無秩序な集まりは、心理学的なグループ(集団)ではない。

社員が利潤を追求する企業や生徒が学習活動を行う学校のように共通の目的(目標)や課題を持ち、集団内に役割規範(役割分担・階層秩序)のある集まりが典型的なグループである。国家や民族、宗教のように『集団への帰属感(一体感・連帯感)』『過去の歴史時間の共有』『共通の世界認識』が問題となるグループもあるが、心理学的な集団は一般的に『全体は部分(個人)の集合以上の独自の機能(特性)』を発揮する。

心理学的な集団(グループ)は、行動・発言・価値観が可変的な個人によって構成されるので、グループ構成員ひとりひとりの変化によって集団全体の性質や機能は絶えず変化している。臨床心理学やカウンセリングでは、それぞれ『感情・記憶・認識』を共有してお互いをより良く理解できるグループ(集団)の特徴を利用して集団精神療法(グループ・カウンセリング)が実施されることがある。

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2007年03月12日

[対象喪失の悲哀とグリーフ・カウンセリング(grief counseling)]

対象喪失の悲哀とグリーフ・カウンセリング(grief counseling)

グリーフ(grief)とは、『悲しみ(悲哀)』のことであるが、特に、自分の愛する他者や大切なモノを失う『対象喪失(Object Loss)』に付随して起こる悲哀のことをグリーフということがある。愛情や信頼を抱いていた対象(object)を失う代表的な人生の出来事(ライフイベント)としては『失恋・別離(絶縁)・離婚・死別』があり、『対象への愛着(依存性)』が強く『自律的な孤独耐性』が弱いほど、対象喪失のグリーフ(悲哀)による抑うつ感や無力感、絶望感が強くなりやすい。

最も強い対象喪失の悲哀(グリーフ)は、長年協力し合いながら連れ添ってきた『配偶者(夫・妻)との死別』であり、長い期間にわたって親密な交際を続けてきた『恋人との離別(失恋)』である。性愛の対象とならない『同性の親友(長年の付き合いがある友人)との離別(絶縁)』も、対象喪失の強い不安を引き起こす可能性はあるが、配偶者や恋人との離別(失恋・死別)に比べると病的な抑うつ状態や無気力、意欲の減退を生じることは少ない。

自分にとって大切なもの(対象)や愛着のあるもの(対象)を失う対象喪失には、『愛情や信頼を向ける人間との別れ(死別・生別)』だけでなく『愛着があり慣れ親しんだ環境・役割の喪失(転勤・昇進・左遷・引越し・転校・海外赴任)』もある。対象喪失によって生じる悲哀や悲嘆を和らげて安定した心理状態を取り戻していく心的過程(心理的な作業)のことを『喪の仕事(mourning work)』『悲嘆作業』と呼び、その悲嘆からの回復過程を援助するカウンセリングのことを『グリーフ・カウンセリング(grief counseling)』と呼ぶこともある。

配偶者(恋人)に対して、自己の理想や欲求、甘えを『投影(projection)』しながらお互いを『独立した個人』と認識して愛し合っていた人は、『自律的な孤独耐性(対象喪失に対するストレス耐性)』があると考えられるので、対象喪失によって抑うつ症状を中核とする精神疾患を発症するリスクは低い。強烈な愛情や欲求を向けていたかけがえのない対象(配偶者・恋人・親)の喪失は、心因性の精神疾患特にうつ病(気分障害・感情障害)のリスクファクターである。

自分にとって非常に重要な相手を失う対象喪失によってうつ病を発症しやすい人というのは、自己と対象(配偶者・恋人)とを完全に『同一化(identification)』して、対象を自己の内部に『取り入れ』している人である。その場合には、『自己の存在』『対象の存在』との距離感が消失して自己と相手の境界線が曖昧化しているため、『自己の存在価値』『対象の存在』に全面的に依拠(依存)してしまっている。

その為、この上なく大切に思い深く愛している相手(対象)を失ってしまうと、『自分には生きる価値がない・世界には生きる意味がない・未来には生きる希望がない』というベックの悲観的な3大認知にはまりこんでしまうのである。

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[クリニカル・ソーシャルワーク(clinical social work)と社会福祉活動]

クリニカル・ソーシャルワーク(clinical social work)と社会福祉活動

カウンセリング(counseling)とは、言語的アプローチあるいは非言語的アプローチを双方向で行い、共感的なコミュニケーションを構築しながら、問題(悩み)を抱えているクライエントの行動・情動・認知・人格を変容させようとする対人援助技術である。ソーシャル・ワーク(social work)というのは、精神保健福祉士や保健婦、児童福祉司、行政の福祉担当課が行う『具体的で現実的な環境調整(経済支援)を伴う制度的援助(公的扶助)』のことであり、知識基盤としては社会的弱者を経済的・精神的に援助する技術や制度を研究する社会福祉学がある。

保健医療分野を専門とするアメリカの医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)は、病院(クリニック)と経済的困窮者を連携する医療福祉支援をメインに行っているが、それ以外にも、福祉制度の対象者に対して、コンサルティング(専門知識や必要な福祉サービスの情報提供)コーディネイト(専門家間の紹介連携・斡旋業務)といった業務を行っている。

MSW(医療ソーシャルワーカー)CSW(臨床ソーシャルワーカー)は日本の国家資格には存在しないが、日本ではPSW(精神保健福祉士:Psychiatric Social Worker)CSW(社会福祉士:Certified Social Worker)ソーシャル・ワークの実務を担っている。ケースワーク(case work)とは、医療・行政・学校・司法などの領域における社会福祉活動の全体を包括する言葉であり、ソーシャルワーカーの果たすべき『仕事・職務の概念』である。

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[アメリカのクリニカル・サイコロジスト(clinical psychologist)と日本の臨床心理士]

アメリカのクリニカル・サイコロジスト(clinical psychologist)と日本の臨床心理士

日本の臨床心理士に該当するアメリカの心理学専門家にクリニカル・サイコロジスト(clinical psychologist)がある。日本の臨床心理士の活動領域は『病院臨床・産業心理・教育心理(スクールカウンセリング)・精神保健福祉・司法矯正・心理相談』など多分野に及ぶが、アメリカのクリニカル・サイコロジスト(CP)は基本的に『精神病理を持つ患者の診断・治療・教育』に活動領域が特化しており、公的な証明能力のある心理アセスメントと精神療法に従事する専門家としての色彩が濃い。

日本の臨床心理士資格は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格に留まっているので、公的な認知度と専門家としての権威性を高めるために国家資格化が論議されている状況もある。しかし、独立採算制のある病院臨床の業務独占については、医療心理師という新国家資格へと移管される可能性もあると言われている。

『人間の悩みを聴いて、問題の解決(改善)を支援する』という広義の心理臨床(カウンセリング)には、人生相談や育児相談、職業キャリアカウンセリング、自己啓発セミナー、恋愛相談みたいなものも包括されるので、臨床心理学の専門家は市場における業務独占ができず名称独占に留まることになる。カウンセリングや心理療法が『人の悩みや不安を解消する目的』を持つという意味では、宗教や占い、啓発セミナー、自助活動グループとの境界線が明瞭ではない問題がある。

臨床心理学やその他の応用心理学の専門知を生かした業務独占をする為には、『病院・クリニック・官庁・学校・福祉施設』などに業務独占の専門家として採用される必要条件として専門資格を位置づけることになる。その為、臨床心理士という民間資格を国家資格化する議論は、病院臨床領域の専門家資格を制定する議論へと移行する様相を示しており、病院で心理士として勤務する為の国家資格として医療心理師の新設も議論されている。

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ラベル:臨床心理学 資格
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2007年02月28日

[脳卒中(脳血管障害)とくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)]

脳卒中(脳血管障害)とくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)

頭蓋骨に覆われた人間の脳は、外側から『硬膜・くも膜・軟膜』の三層の膜によって保護されている。くも膜と軟膜の間の空間(くも膜と脳器官の間の空間)を「くも膜下」と呼ぶが、くも膜下には脳に酸素と栄養を送るための比較的太い血管(栄養血管)が多く走っている。脳の栄養血管に病的な変化が起きて、何らかの障害や症状が発生する病気をまとめて『脳卒中』というが、『脳卒中・悪性新生物(がん)・心疾患』は日本人の三大死因疾患としてよく知られている。

脳血管障害である脳卒中に分類される疾患には『くも膜下出血・脳梗塞・脳内出血』があるが、エビデンス(科学的根拠)のある脳卒中のリスクファクター(危険因子)としては『高血圧症・高脂血症・糖尿病・過度の喫煙や飲酒・心臓疾患・動脈硬化』が知られているが、特に高血圧との因果関係が深い。くも膜下出血とは文字通り、くも膜下にある栄養血管が損傷して切れる病気であるが、脳内部の血管が切れる脳内出血よりも運動・感覚系の障害がでにくい。

くも膜下出血の発症の特徴は、『典型的な脳卒中の発作』を示すことであり、今まで体験したことのないような極度の激しい頭痛に襲われることが多い。激しい頭痛を訴えて頭を抱え込んだり、そのまま意識が遠のいて失神してしまうケースなども見られるが、これは、くも膜に痛覚に対応した知覚神経が通っているからである。

くも膜下出血は、多くの場合、くも膜下に存在する『脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)』という脳栄養血管の分岐点にできた瘤(りゅう=こぶ)が破裂することによって発症する。くも膜下出血が起こると、くも膜下を満たす脳脊髄液に血液が混入するので、CTスキャンで分かり難い軽微な症状の場合には、腰部への注射によって脳脊髄液を採取し『血液の混入の有無』を確認する。

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ラベル:医学
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2007年02月23日

[グノーシス主義(Gnosticism)と二元論のプラトニズム]

グノーシス主義(Gnosticism)と二元論のプラトニズム

紀元前後に地中海沿岸で誕生した宗教的な神秘思想(オカルティズム)であるグノーシス主義(Gnosticism)は、3〜4世紀の地中海世界で全盛期を迎え『正しい知識・認識によって神に到達できる』とする知性優位主義を唱導した。物質と精神(霊性)の二元論を説くグノーシス主義の影響は、古代ギリシア世界やローマ世界、小アジア(トルコ)、北アフリカ沿岸部といった地中海世界だけに留まらず、現在のイランやイラクに相当するメソポタミア世界や中国大陸にまで伝播していった。

グノーシスとは古代ギリシア語で『知識・認識』を意味する言葉であり、『認識による神との合一』を説く神秘思想としてのグノーシス主義は、初期キリスト教会の神学者から異端として取り扱われた。グノーシス主義をキリスト教とは別のオリエント(東方世界)独自の神秘思想(秘儀宗教)と解釈する神学者もいるが、グノーシス主義が初期のキリスト教信仰に与えた影響は計り知れないものがあり、イエスの死後間もない時期の原始キリスト教では、グノーシス的な教義解釈も正統なものとして受け容れられていた可能性が高い。

知性優位の神秘思想であるグノーシス主義の世界観は、『肉体と霊性(精神)の二元論』『反宇宙的二元論(Anti-cosmic dualism)』である。反宇宙的とは、不完全で不道徳な現実の宇宙(世界)を『悪(evil)』であると認識し、この『悪の宇宙』と悪の宇宙を創造した『悪い神』を決して受け容れないという姿勢である。現実の物理的な宇宙を支配している『否定的・反倫理的な秩序(法則)』をグノーシス主義は否定し、感覚器官で認識可能な宇宙(世界)は『悪しき神が創った悪しき世界』であると考える。

しかし、悪の属性を持つ『物理的な宇宙(世界)』とは異なる善の属性を持つ『イデアの宇宙(世界)』があるとグノーシス主義では考える。正しい知識を踏まえた認識(観想)によって『イデアの宇宙』やそれを創造した『善の神』に到達できるとする神秘思想を持っているのである。グノーシス主義の反宇宙的二元論とは、現実世界(物理世界)や現実世界を創った神を『悪』と定義し、物理世界の背後にあるイデア世界やイデア世界を創った神を『善』とする反宇宙的(反現世的)な二元論である。

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ラベル:宗教 哲学
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[グッドイナフ人物画知能検査(Goodenough draw-a-man intelligence test)]

グッドイナフ人物画知能検査(Goodenough draw-a-man intelligence test)

心理アセスメントの有用な手段である心理検査(心理テスト)には、知能検査と性格検査があるが、グッドイナフ人物画知能検査(Goodenough draw-a-man intelligence test)とは標準化された描画法の知能検査である。コッホのバウムテストやJ.N.バックのHTPテスト(家屋‐樹木‐人物画テスト)のような描画法(絵画を用いた投影法)は、幼児にも成人にも実施されることがあるが、『〜の絵を描いて下さい』という教示を被検者に与えて書かせると、個性(心理状態・記憶内容・親子関係・生活環境)を反映した実にさまざまな絵画が出来上がってくる。無意識的な心理内容を投影させられるのが描画法(投影法)の魅力であるが、被検者が描く絵画には非常な多様性と個別性があるので、その絵が何を意味しているのかを特定して標準化する作業は極めて困難である。

被検者が描いた絵画がどういった心理状態や家族関係を反映しているのかを分かりやすくするために『描画法の標準化』が行われるが、「投影法の標準化」は「質問紙法の標準化」に比べると一般的に信頼性と妥当性は低くなる。その為、グッドイナフ人物画知能検査に限らず、投影法では『標準化された採点法・評価法』に準拠しつつも、教条主義に陥ることなく、被検者の個別の性格傾向や生活環境にも一定の配慮が必要になることが多い。

つまり、投影法で精神疾患の発症や発達障害の存在を疑わせる採点結果がでても、実際にはその障害を持っていないケースもあるので、投影法と観察法・質問紙法などを組み合わせてより厳密で的確な心理アセスメントを心がけることが重要となる。

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2007年02月04日

[カウンセリングにおけるコンサルティング的な具申(consultation for management)]

カウンセリングにおけるコンサルティング的な具申(consultation for management)

カウンセリング(counseling)よりも、広義(高次)の相談業務概念としてコンサルティング(consulting)がある。コンサルティングとは『専門知識や実務経験を活かして、依頼者(企業・個人)の目標達成や問題解決を支援する相談業務』であり、カウンセリングとは、『言語的あるいは非言語的コミュニケーションを通して、クライエント(個人)の適応的変容を促進する人間関係』のことである。

コンサルティングとカウンセリングの最大の違いは、コンサルティングが『数値データなどで示される客観的な目標の達成』を目的としているのに対して、カウンセリング『個人的な感情体験や人間関係で実感される主観的な問題の解決』を目的としていることである。更に、コンサルティングでは、主に、企業の経営状態の改善や売上げの上昇、機能的な組織改革などが相談内容(目標設定)として取り上げられることが多く、カウンセリングでは、主に、心理的な問題や対人関係の葛藤、社会環境への不適応などが相談内容(主訴)として取り上げられる。

自分が対応可能な専門領域についての専門知識と問題意識を持ったコンサルタント(consultant)は、企業経営や職場環境について必要な調査(リサーチ)を行って、問題状況を客観的に把握することから相談業務を開始する。的確な科学的リサーチを行った上で、複数の対応策や改善手法を考え、その中から最も効果的と思われる解決策をクライエントに提案するのである。

一般的に専門的なコンサルティングは、『コンサルティングの目標の特定→必要な市場調査→調査結果の分析→目標達成の為の対応策の立案→対応策の選択と提示→対応策実施に関する具体的なアドバイス(情報提供)→対応策の効果を測定→測定された結果をフィードバック』といった手順を踏んで行われる。この手順そのものは、心理アセスメントの手続きを踏んで実施するカウンセリング(心理療法)に似ている部分もある。

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