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2017年09月01日

[非婚化の原因としての『恋愛結婚の自由市場化・恋愛格差・モテ格差』:非婚者の4類型]

非婚化の原因としての『恋愛結婚の自由市場化・恋愛格差・モテ格差』:非婚者の4類型

現代の未婚率上昇の原因として、『出会いがない+異性の選り好み(高望み)』というのも大きい。これは恋愛・性が自由化してマスメディアで『(全体では数の少ない)イケメン・美人』が持て囃され、競争原理が働くようになったことで、男女共に恋人・配偶者に求める基準が高くなり、自分以上の魅力を持つ異性ばかりを求めるために『男女のミスマッチ(男女双方の高望みによる妥当で適切な相手とのすれ違い)』が起こりやすくなったということである。

現代日本における非婚化の要因3:結婚による制限・束縛の増加をメリットと感じづらくなった

1980年代以前の皆婚時代の『義務的な結婚』は、そもそも、異性として好きでたまらない魅力的な相手とばかり皆が結婚していたわけではない。『生活維持(妻子の扶養)・子供を持つ・世間体・親世代の結婚圧力』を中心にした条件面をすり合わせる結婚のほうが多かったため、大多数の人は多少異性としての魅力がない相手であっても、適齢期にお見合いや周囲のすすめ、自分を求めてくれる相手に従って次々に結婚していったものである。

しかし現代の『選択的な結婚・幸福追求の結婚』では、『自分が異性として好きになれて、経済生活・子育ても十分に成り立つような高い基準を満たす相手』とでないと無理をしてまで結婚する必要がないという人が増えたため、かつてのように適齢期に焦って相手の細かい部分にこだわらずに結婚する人は激減してしまった。妥協してまで世間体に合わせてまで、そこまで好きになれない相手(積極的に一緒にいたいわけではない相手)と生活・子供のために結婚したくないという人の割合が過去より格段に増えた結果とも言える。

本当に好きな異性が早くからいて早くから実家を出ている人(低学歴・肉体労働などで結婚のコストやデメリットなどをあれこれ思慮しない人)は『早婚』になることもあるが、婚前からの『恋愛経験・性経験』が増えて『芸能界・メディアの影響による魅力的な異性像』を基準化しやすい現代人は、ますます日常的に出会う凡庸な異性に惹かれづらくなり(誰もが良いと感じる魅力的な異性は自分よりも魅力のある別の同性から先に取られやすく)、一生を連れ添う契約である結婚を出来なくなっているのである。

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[現代日本における非婚化の要因3:結婚による制限・束縛の増加をメリットと感じづらくなった]

現代日本における非婚化の要因3:結婚による制限・束縛の増加をメリットと感じづらくなった

現代人が結婚しづらくなっているもう一つの理由として、『各種の制限の増加』も挙げることができる。結婚すれば行動の範囲や人間関係・異性関係の自由が大幅に制限されやすくなる。結婚後に夫婦関係が冷え込んで、他の人を好きになり恋愛や性的な行動に実際に移せば『不倫(貞操義務違反)』となる。不倫をした場合には、自分が有責となって『慰謝料・養育費』などを支払わなければならない離婚原因ともなる。

現代日本における非婚化の要因2:結婚のコスト増加と結婚の夢・希望のイメージの弱さ

生活状況の変化や刺激・誘惑の多い現代社会では、人や環境にもよるが、『数十年以上にわたる期間(結婚後の生涯)をただ一人の配偶者だけを愛してその人以外と異性関係を一切持たずに過ごすこと』が難しくなっていることも、『情熱的な恋愛の勢いや運命の感覚がなくなったカップル』の結婚の決断を鈍らせやすくする。

結婚すれば、仕事が終わったら早く帰らなければならない、相手によっては行動や携帯電話をチェックされる恐れもある、下心なしで異性と食事などに行っても問題視されるなど、『生活リズム・人間関係の制限』は独身と比べてかなり多くなり(子供がいればなおさらに)責任・義務も増えてくる。

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[現代日本における非婚化の要因2:結婚のコスト増加と結婚の夢・希望のイメージの弱さ]

現代日本における非婚化の要因2:結婚のコスト増加と結婚の夢・希望のイメージの弱さ

結婚率と経済力が男性で相関しやすく、女性でそれほど経済力が重要ではないのは、男女の平均所得の格差もあるが、男性によっては自分が納得できる性的魅力と優しい世話・ケア(家事育児の役割遂行)があれば、妻となる女性はそんなに仕事で頑張らなくても良いとする価値観の人が今でも少なからずいるからである。

現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル

逆に、高学歴で大企業・官庁・専門職などに就職してキャリアアップしてきたような女性だと、『男性は仕事・女性は家事育児(女性はそんなに外で稼いでこなくて良い)』とする伝統的ジェンダーの価値観(妻子の扶養の役割意識)を持つ男性は、自分の自己実現や地位上昇(所得上昇)を妨害する存在と感じられて、結婚相手としては好ましくないと思われる可能性もある。

女性の社会進出が進み、キャリア志向で一生懸命に働く人が増えるにつれて、『結婚して出産すれば今までと同じようには仕事ができなくなるという慣習・現実(相手の仕事と収入に大幅に依存することの不安感・不満感)』が、高学歴で正規雇用の仕事に励んできた女性が結婚を躊躇する一因になっている。

現代で未婚率が上昇している原因の一つとして、『パラサイト・シングル』と呼ばれる実家暮らし・低所得の未婚の男女の比率が高まったことがあるが、これは新卒採用で大手のキャリアコースに乗れなかった平均所得前後を稼げる(数十万円以上の高額ボーナスを支給される)当てのない男女にとって、『結婚のコスト上昇』となり結婚の動機づけを下げているのである。

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[現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル]

現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル

現代で20〜30代前半の男女の結婚が過去に比べて大きく減少している要因の一つが、『出会いがない+異性の選り好み(高望み)』『経済的に結婚が難しい+結婚のコスト上昇』である。かつては『一人口は食えぬが二人口は食える』という言い回しがあったように、男一人(女一人)で暮らすよりも男女二人が一緒に暮らした方が生活費が安くなるという考え方があったが、現在ではその『結婚による生活費削減』の考え方は、未婚者のかなりの割合の人に通用しなくなっている。

男性の未婚者には年収200〜300万以下の非正規雇用(派遣社員・臨時職員・期間社員・アルバイトなど)で働く相対的な低所得者が多く、女性の未婚者も男性より年収が低い非正規雇用が多い。しかし、現代の未婚者は低所得でも『実家暮らし・両親との関係も悪くない(中には親子関係が険悪な家もあるにせよ)』の割合が高くなっているため、自立的な結婚をして実家をでなければそれなりの生活水準が成り立つというケースが増えているのである。

結婚による生活費削減という結婚を後押しした要因が、現代では社会学者の山田昌弘(やまだまさひろ)が著書『パラサイト・シングルの時代』で指摘した『実家暮らしの低賃金の独身男女の増加(家賃・食費・家事コストなどの一定以上の部分を実家に負担して貰える独身男女)』によって、通用しづらくなっているというわけである。

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2017年08月23日

[男性・女性にとっての結婚のメリットとデメリット(コスト):なぜ現代人はなかなか結婚しないのか?]

男性・女性にとっての結婚のメリットとデメリット(コスト):なぜ現代人はなかなか結婚しないのか?

男性と女性に分けて『結婚のメリット・デメリット(コスト)』をまとめてみると、以下のような感じになってきます。これらのメリット・デメリット(コスト)には、古典的なジェンダーによる性別役割分担に依拠するものも含まれていますが、現代では『フルタイムの共働き世帯』が増えることによって、ジェンダーに依拠しない夫婦の平等な役割分担や女性の家計収入への貢献度も上がってきています。

結婚の一般的なメリットとデメリット

男性にとっての結婚のメリット

○妻の家事労働や身の回りの世話、家計の節約などのメリット。

○性的・恋愛的な満足、他人から承認される満足。特に美しくて魅力的な(自分が異性として好きになった)妻である場合。

○夫・父・一家の主としてのアイデンティティー獲得。権力・優越感・支配欲・父親性などによる満足。特に従順な妻や可愛い子供がいる場合。

○結婚による生活・関係の安定に基づく精神的な安定・安らぎ。一人前と思われる社会的信用・世間体の獲得。特に恋愛市場でモテない男性、恋愛のしづらい中年以上(30〜40代以上)の年齢を重ねた男性には有利となる。

○子供を持つことによる満足・安心。子育ての楽しみ、老後の相対的な安心感、財産を相続させられる子供など。

○結婚による人間関係・交友関係の広がり。親戚が増えたり学校・地域の知り合いが増えたりして、独身よりも社交的に社会参加する場が増えてくる。

○妻が地位・権威的職業・高所得・財産を持っている場合には、結婚による社会経済階層の上昇もある。

○結婚・子育て世帯に対する政治的な優遇策。税の控除・社会保険の充実・社会保障・住宅優遇・会社によっては家族手当ての賃金増加など。

○性別役割意識の満足度。特に男らしさ・父親らしさを満たしたい人にはメリットになり得る。

○大きな家に引っ越したり、家事を任せたりするなど、結婚によって空間・時間の自由度(相手には負担だが)が上がることもある。

男性にとっての結婚のデメリット

○妻の家事労働への不満、妻が節約できないなど家計負担の増大。

○妻以外の女性と恋愛・性行為ができない不自由、特に妻による性的満足を得られない場合には不満が大きくなる。

○将来のより良い相手との恋愛可能性を失ってしまう。特にモテる男性には不利になるが、誰しも年齢を重ねると純粋に良いと感じる相手との恋愛は難しくなっていく。離婚の難しさと離婚による慰謝料・養育費などのコスト。

○夫・父・一家の主としての自己アイデンティティーを得る代わりに、家族を扶養したり守ったりする義務と責任が重くなりプレッシャーがかかる。

○子育てに必要な労力と経済的負担、子供に一日の多くを縛られてしまうデメリット。

○結婚によって生じる親戚づきあいや地域行事・学校行事への参加の煩わしさ。社交性やボランティア意識の弱い人にとっては特にコストになる。

○妻の地位の低さ・職業や収入がないことによる社会経済階層の低下。

○独身者(単身世帯)に対する優遇政策や社会保障強化。

○男女平等意識・男性(父親)の権威否定に対する不満。特に働いてもあまり感謝しない妻、給与額への不満が多く(自分もパートで働いているからと)何の世話もしてくれない妻などへの不満。

○結婚によって失う自由の程度。

○家事労働を代替してくれる安価な製品・サービスの増加。

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[結婚の一般的なメリットとデメリット]

結婚の一般的なメリットとデメリット

結婚が一定の年齢でみんながするという『義務的な結婚』であれば『結婚のメリット・デメリット』を深刻に考える必要はあまりなかったのですが、現代の未婚化・晩婚化の社会では、結婚は自分が本当にしたい(してもよい)と思った相手としたほうがいいという『選択的な結婚』になっているので、余計に『結婚のメリット・デメリット』を考えすぎて躊躇してしまう人が増えたのです。

現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大

一般的な『結婚のメリット』としては、以下のようなものがあると考えることができます。必ずこれらの結婚のメリットを得られるわけではないですが、夫婦がお互いに努力して経済的に破綻せず、性格や生き方の相性も良ければ得やすいものではあります。

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[現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大]

現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大

現代の日本をはじめとする先進国は『少子化・未婚化(非婚化)・晩婚化』が進んでいて、『人口減少・少子高齢化(支え手の減る社会保障コスト増大)・経済縮小(労働力不足・消費減退)』といった社会問題の原因にもなっています。少子化が起こる原因もまた、日本の適齢期の若者がなかなか結婚しなくなったことですが、30代以下の若者を中心になぜ結婚しない人や結婚できない人が増えたのでしょうか。

1970年代くらいまでの近代日本は『皆婚社会』で、女性は遅くとも30歳くらいまでには結婚しないと働き口がなくて人生設計・経済生活が成り立たなくなる恐れがあったので、大多数の人は恋愛結婚ができなければお見合い結婚をしてでも一定の年齢までに結婚することが普通でした。

極論すれば、1980年代くらいまでは結婚することが人として当たり前(正常)であり、結婚しないことは何か特別な問題・欠陥があるのではないかと勘繰られる偏見が強かったので、そういった偏見のある世間体に負けて消極的に結婚するという人も多かったのです。

経済成長期で一億総中流社会に近づいていたことも『皆婚の傾向(正規雇用の男性が妻子を扶養する形の結婚)』を後押ししていましたが、2000年代と比べると『結婚後に結婚生活・出産育児が経済的に成り立つか(男性がきちんと仕事をして安定した収入を得ているか)』に重点が置かれていて、今のような『異性としての魅力・容姿での選り好み』があまり無かったことも皆婚に影響しています。

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2015年02月26日

[N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)の離断症候群]

N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)の離断症候群

脳の局在説を補強する理論としては、N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)『離断症候群理論』があり、ゲシュヴィントは一定の心身機能を担当している中枢の間を結んでいる“連絡網”が障害・離断(切断)することによって、様々な精神医学的・神経心理学的な症状が発生するということを立証した。

P.マリー(P.Marie)とH.ヘッド(H.Head)の神経心理学的な非局在説(全体説)

最も分かりやすい離断症候群としては、脳の左半球(左脳)と右半球(右脳)をつないでいる脳梁(のうりょう)が切断された『分割脳(スペリー&ガザニガの分割脳実験)』のような状態で起こる神経心理学的症状(左手で触っている物の名前や特徴について言語化することができない)がある。

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2013年12月07日

[ケースワークを構成するヘレン・ハリス・パールマンの『四つのP』]

ケースワークを構成するヘレン・ハリス・パールマンの『四つのP』

ケースワーカーで社会福祉家のヘレン・ハリス・パールマン(H.H.Perlman)は、1957年に社会的弱者(心身障害者)や経済的困窮者を対人的あるいは制度的に救済するケースワーク(casework)について解説した『ソーシャル・ケースワーク 問題解決の過程』という代表的な著書を発行した。

ケースワークとは社会福祉的な対人的・制度的・経済的な援助を必要としている社会経済的な弱者及び困窮者を、個別のケースに合わせて支援していく活動の総称である。ケースワークとソーシャルワークは、社会的弱者を支援する社会福祉的活動というほぼ同じような意味合いを持っており、ケースワーカーとソーシャルワーカーとの違いも明確なものではないが、ソーシャルワーク(ソーシャルワーカー)のほうが国際的に共通する上位の社会福祉的概念である。“ケースワーカー”という場合には、市役所や医療機関などの公的機関に所属していて、社会福祉活動の現場業務(実際に要支援者と接する業務)に従事する職員を指すことが多い。

ケースワークの多くは『各人の能力・各ケースの状況に合った社会的経済的な自立』を目指しているが、自立が困難な疾患(障害)・怪我・状況があるケースでは『自立・自律』よりも『公的扶助・可能な範囲での能力の向上・生存と生計の維持』のほうが優先されなければならない。

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2013年07月07日

[G.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner)と労作教育]

G.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner)と労作教育

ドイツの教育学者であるG.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner,1854-1932)は、ミュンヘン市を拠点として教育行政分野で活躍した人物であり、ミュンヘン市視学官・ミュンヘン大学教授を歴任した。ケルシェンシュタイナーは『公民』を養成するための教育改革に熱心に取り組み、従来の知識中心の受動的・主知主義的な教育を批判して、手工業的な作業を中心とした『労作教育』の必要性を唱えた。

ケルシェンシュタイナーは、ギムナジウムの教師として十数年間にわたり働いた後に、その経験を評価されて1895年から1919年まで生誕地のミュンヘン市で視学官という教育行政官僚を勤めた。実業補習学校(職業学校の前身)の改革を行って、ドイツ固有の職業教育制度の基礎を構築し、集団的作業を通した『労作教育』が公民としての人格形成や社会貢献、集団適応に役立つという持論を展開した。

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[エレン・ケイ(Ellen K.S.Key)]

エレン・ケイ(Ellen K.S.Key)

スウェーデンの女性評論家・教育思想家(教師)として知られるエレン・ケイ(Ellen K.S.Key,1849-1926)は、国家権力や学校の教師が子どもに『正解・勉強・規範』を無理矢理に強制するタイプの教育を批判して、児童の興味関心・創造性・貢献意識を重要視する『児童中心主義』に基づく新教育運動を主導した。

エレン・ケイは、フランスの啓蒙思想家ジャン・ジャック・ルソーが自然主義・消極主義の教育論を開示した『エミール』から強い影響を受けており、子どもには生得的な可能性や適応能力が備わっているのだから、大人(教育者)はその可能性を伸長させるような教育の働きかけをしなければならないとした。

旧来の教育方法として見られた『強制・体罰・脅迫』などは、恐怖心を植えつけられた子どもの可能性や向学心、意欲を逆に萎縮させるだけで、子どもの能力を高めたり創意工夫を促したりする効果はないので原則やめるべきだと主張した。

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2013年05月08日

[ゲシュタルト療法のホットシート(hot seat)]

ゲシュタルト療法のホットシート(hot seat)

フリッツ・パールズとローラ・パールズの夫妻が創始したゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、『想像上の他者(過去に関わりのあった重要な人物)』『もう一人の自分(人格構造の一部分)』をイメージしたロールプレイング(役割演技)が積極的に実施されている。ホットシート(hot seat)はゲシュタルト療法におけるロールプレイング法の一種であり、またクライエントが座る空間的な場所のことを直接指すこともある。

『対話ゲーム』という実践的なエクササイズにおいてホットシートが用いられることが多いが、対話ゲームはそれを見守ってくれる参加者がいるという集団療法的(グループセラピー的)な環境で行われることが多い。ホットシートと呼ばれる席に自分が座って、それに向き合う席の位置に『自分が対話したい(対話すべき)相手』のイメージを想像して座らせて、あたかもそこに実際のその相手が座っているかのようにして対話を展開するのである。

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2012年01月20日

[幻想(fantasy)と精神分析の無意識:M.クラインとC.G.ユング]

幻想(fantasy)と精神分析の無意識:M.クラインとC.G.ユング

ファンタジー(fantasy)とは『幻想・夢想・想像の産物』のことであるが、ファンタジーがどこから現れてくるのかファンタジーの起源は何なのかについては、『経験主義の仮説』『無意識の仮説(精神分析的な仮説)』とがある。経験主義の仮説では『過去に経験した事柄や人間関係』がファンタジーの内容を形作る材料になっており、そのファンタジーの来歴や意味は『過去の想起(思い起こし)』によって説明が可能である。

精神分析的な無意識の仮説では、対象関係論(英国独立学派)の創始者である女性分析家のメラニー・クラインが仮定した『無意識的幻想』のように、本人の過去の経験とは無関係にファンタジーが生成すると考える。

M.クラインのいう無意識的幻想というファンタジーの概念は、『早期発達理論(乳幼児期の発達理論)』『原始的防衛機制(分裂)』と深いつながりがあり、分裂した『悪い対象』を攻撃して破壊しようとする衝動が無意識的幻想の現れとされている。

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2011年09月07日

[ゲシュタルト療法の秘密探究ゲーム(I have a secret)]

ゲシュタルト療法の秘密探究ゲーム(I have a secret)

心理療法の一つであるゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、『今・ここの時点』で感じている感情・気分・考えに自分で気づいて体験する技法が重視されているが、そういった治療的意義を持つ感情・考えの意味を洞察するために『ゲーム』というロールプレイングが行われる。今・ここの原則を前提としてゲシュタルト療法で実施されるゲームには、『ホットシート(投影ゲーム)・トップドッグとアンダードッグ・スプリット法・未完の行為』などさまざまなものがあるが、秘密探究ゲームというのもゲシュタルト療法で行われるゲームの一つである。

カウンセリングや心理療法の面接場面では、『シャイネス(恥ずかしさ,羞恥心)・罪悪感・自己評価の低下・自尊感情の傷つき』などの感情を実際に体験することがあるが、人は往々にしてそういったネガティブな感情を、カウンセラーに対してさえも隠して秘密にしようとする。しかし、ネガティブな感情・気分を隠して『秘密』にすることは、問題解決を遅らせたり心理的問題の本質から目を逸らしたりする副作用・弊害も大きいので、ゲシュタルト療法ではその秘密内容を自己探求してカミングアウト(告白)するような『秘密探究ゲーム(I have a secret)』のロールプレイングが行われることがある。

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2011年06月16日

[ゲシュタルト療法の反転(reversal)とスプリット法]

ゲシュタルト療法の反転(reversal)とスプリット法

フリッツ・パールズとローラ・パールズの夫妻が開発したゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、実際にはそこにいない人や自分のもう一つの人格を想定した『ロールプレイング』が技法として重視されている。ゲシュタルト療法では、自分と自分が苦手だった父親を想像したロールプレイングを行ったり、自分と自分が憧れていた先生をイメージしたロールプレイングを行ったりするが、F.パールズが治療法として最も有効と考えていたロールプレイングは『対話ゲーム(スプリット法)』であると言われている。

『対話ゲーム』とは自分と自分に関係する誰かの対話、あるいは自分のパーソナリティの一部と他の部分との対話、自分に関係した他人同士の会話などを、イマジネーションを駆使してリアルに演技しながら再現するロールプレイングのことである。『スプリット法』というのは、ポジティブな私とネガティブな私、よく話す私と余り話せない私、攻撃的で批判的な自分と防衛的で相手に合わせてしまう自分など、“正反対・両極端な自分の性格傾向(特徴)”を二つ想像してから、その二つの特徴の間で対話をさせていくロールプレイングである。

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2009年11月20日

[ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』]

ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』

フリッツ・パールズ(F.S.Perls)ローラ・パールズの夫妻が考案した『ゲシュタルト療法(gestalt therapy)』では、現実の人間関係を再現する“ロールプレイング”や感情と結びついた“身体感覚”を用いて『今・ここにおける気づき』を促進していく。ゲシュタルト療法は『現在の時点における体験型の技法』であり、S.フロイトの精神分析療法などとは違って、『過去の記憶・感情(わだかまり)・葛藤』などを話題にしたり分析したりすることはまず無い。

ゲシュタルト療法の基本理念として『自分自身であることを忘れずに、自分自身の人生を生きよ』というゲシュタルトの祈りがあるが、この技法ではありのままの自分の存在や感情を受け容れながら、身体と精神の調和が取れたバランスの良い自己を作り上げていくことが目標になる。ゲシュタルト療法はロールプレイング(役割演技)や感情表現を中心とした体験療法としての色彩を濃く持っている。『今・ここ』にいる自分の身体感覚や認知傾向に対する気づきを得ることで、環境適応性を高めていきながら苦痛な心理状態を回復させていくのである。

今までに気づくことができなかった感覚や認知、現実状況に気づくこと、これがゲシュタルト療法の治療機序(治療メカニズム)になっており、この『効果的な気づき(effective awareness)』が連続的に起こってくることを『連続的な気づき(continuous awareness)』と呼んでいる。クライアントの心理状態が本格的に回復してくる時や、問題状況(対人関係)が急速に改善してくる時には、ゲシュタルト療法でいう連続的な気づきが起こっていることが多い。

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2007年12月27日

[ゲシュタルト療法の「未完の行為」と「誇張法」]

ゲシュタルト療法の「未完の行為」と「誇張法」

ゲシュタルト療法では、過去に十分にやり遂げられなかった課題や自己表現できなかった感情的内容を「未完の行為」と呼んでいる。未完の行為が存在していると内面心理に何かをやり残してしまった感覚や不快感を伴う未練の思いを感じたりする。過去の人間関係の中で受けたトラウマなど精神的な問題を解決するためには「未完の行為」を自己洞察して気づくことがまず重要になる。

空椅子技法や役割交換法(ロールプレイング)などゲシュタルト療法の各技法には、現時点において「未完の行為をもう一度実行する」という意味合いを持っている。過去の記憶を想起したり現在の人間関係を内省しているだけで、自分の心のしこりとなっている「未完の行為」に気づくこともあるが、なかなか気づけない場合には「誇張法(exaggeration)」という援助技法を用いることになる。

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2007年08月10日

[見当識障害・失見当識(disorientation)]

見当識障害・失見当識(disorientation)

人間の脳器官の構造は、大きく『脳幹・大脳辺縁系・大脳皮質』の3つの領域に分けることができ、脳幹は「呼吸・脈拍・血圧・体温」といった生命維持機能を担い、大脳辺縁系は「闘争‐逃走反応」を中心とする情動的(動物的)な価値判断を担っている。脳幹は魚類や両生類にも見られる最も原始的な脳の構造であり、本能的情動を司る大脳辺縁系も爬虫類の進化の段階で形成された比較的古い脳であり「古皮質(爬虫類脳)」と言われることもある。

脳の外側を広く覆っている大脳皮質は「大脳新皮質」と呼ばれることもあるように、小型哺乳類の進化の過程で獲得した新しい脳の構造であり、「人間らしい精神機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)」を実現するために必要不可欠な部位である。大脳皮質は、人間固有の高次脳機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)を発現する部位であり、問題なく日常生活を送るために欠かせない「見当識(orientation)」もヒトの高次脳機能の一つである。その為、大脳皮質が物理的に損傷したり、病理的な異常が見られたりすると、見当識にさまざまな障害が見られることがある。

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[C.W.ミルズのパワーエリート(権力エリート, power elite)]

C.W.ミルズのパワーエリート(権力エリート, power elite)

社会学者C.W.ミルズ(C.W.Mills, 1916-1962)は、20世紀初頭、アメリカ合衆国の大衆社会の権力構造を解明するために「パワーエリート」(1956)を出版した。「パワーエリート(権力エリート)」とは、他者を従属させる各分野の権力を独占する少数のエリート支配階層のことである。C.W.ミルズは自由と平等を基調とするアメリカのような民主主義社会においても「少数指導体制(寡頭体制)」によって政治・経済・軍事が動かされていることを批判的に指摘した。自由で平等な個人という建前がある民主主義社会でなぜ、権力・財力・軍事力が「一部のパワーエリート集団」に独占されてしまうのだろうかという批判的な問題意識がC.W.ミルズにはあった。

インターネット(ウェブ)が普及した現代では、情報・知識・ノウハウをアカデミズムやマスメディアが独占するというようなパワーエリートのシステムは崩れかけているが、未だ政治権力や経済的な富は「財界・官界・政界のパワーエリート」に独占され「無数の大衆が持つパワー」は相対的に小さくなっている。C.W.ミルズが著述活動を行っていた時代は、アメリカの大衆文化が普及し労働者を中核とする大衆社会が肥大した時代である。そのため、ミルズは政治や経済の中枢から切り離された大衆社会の形成が、パワーエリートへの権力と財力の「寡頭的な集中」をもたらしたと考え、アメリカ社会を「頂点階層(パワーエリート)・中間階層・底辺階層」のヒエラルキー構造として認識している。

ヒエラルキー構造(序列階層構造)のトップに君臨して「政治的・経済的・軍事的な権力」を少数集団で独占しているのがパワーエリートである。政治経済的な問題に無関心で、安価な娯楽と遊興で満足している「大衆層(中間・底辺)」は、パワーエリート階層との流動性がほとんどなく、アメリカ民主主義社会においてもある種の階級社会が形成されていることにミルズは気づいた。

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ラベル:政治学 社会学
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[統計学的な仮説検定(test)と帰無仮説・対立仮説]

統計学的な仮説検定(test)と帰無仮説・対立仮説

「サンプリング調査(標本調査)における無作為抽出法(random sampling)と有意抽出法」では、統計学のサンプリング(標本抽出)の基礎について解説したが、サンプリングは各種の統計学的な「検定(test)」のために実施されるものである。検定(test)は“Hypothesis testing”とも呼ばれるように、ある仮説が真であるか偽であるかを確認するための数理的な方法のことである。比較対照試験では、A群とB群といった複数の集団の間に「有意差」があるかないかを検定するが、有意差の基準として“p”“α”などの記号で示される「危険率(有意水準)」が通常用いられている。

仮説の真偽を検証する「仮説検定(hypothesis testing)」では、実験研究(experiment study)や調査研究(research study)によって集めたデータから作り上げた「対立仮説(alternative hypothesis)」の正しさを証明することをとりあえずの目的とする。その目的を達成するために、対立仮説の正当性を否定する「帰無仮説(null hypothesis)」を立てて、帰無仮説(きむかせつ)を棄却することで対立仮説の正しさを統計学的に証明するのである。故に、統計学的検定の直接的な対象となるのは帰無仮説であり、危険率(有意水準)として設定される“α=0.05(5%)”“偶発的な誤差の範囲”が収まっていれば、「対立仮説は統計学的に有意である」といってよい。

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posted by ESDV Words Labo at 04:33 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする