ウェブとブログの検索

カスタム検索





2015年02月26日

[N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)の離断症候群]

N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)の離断症候群

脳の局在説を補強する理論としては、N.ゲシュヴィント(N.Geschwind)『離断症候群理論』があり、ゲシュヴィントは一定の心身機能を担当している中枢の間を結んでいる“連絡網”が障害・離断(切断)することによって、様々な精神医学的・神経心理学的な症状が発生するということを立証した。

P.マリー(P.Marie)とH.ヘッド(H.Head)の神経心理学的な非局在説(全体説)

最も分かりやすい離断症候群としては、脳の左半球(左脳)と右半球(右脳)をつないでいる脳梁(のうりょう)が切断された『分割脳(スペリー&ガザニガの分割脳実験)』のような状態で起こる神経心理学的症状(左手で触っている物の名前や特徴について言語化することができない)がある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:49 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月07日

[ケースワークを構成するヘレン・ハリス・パールマンの『四つのP』]

ケースワークを構成するヘレン・ハリス・パールマンの『四つのP』

ケースワーカーで社会福祉家のヘレン・ハリス・パールマン(H.H.Perlman)は、1957年に社会的弱者(心身障害者)や経済的困窮者を対人的あるいは制度的に救済するケースワーク(casework)について解説した『ソーシャル・ケースワーク 問題解決の過程』という代表的な著書を発行した。

ケースワークとは社会福祉的な対人的・制度的・経済的な援助を必要としている社会経済的な弱者及び困窮者を、個別のケースに合わせて支援していく活動の総称である。ケースワークとソーシャルワークは、社会的弱者を支援する社会福祉的活動というほぼ同じような意味合いを持っており、ケースワーカーとソーシャルワーカーとの違いも明確なものではないが、ソーシャルワーク(ソーシャルワーカー)のほうが国際的に共通する上位の社会福祉的概念である。“ケースワーカー”という場合には、市役所や医療機関などの公的機関に所属していて、社会福祉活動の現場業務(実際に要支援者と接する業務)に従事する職員を指すことが多い。

ケースワークの多くは『各人の能力・各ケースの状況に合った社会的経済的な自立』を目指しているが、自立が困難な疾患(障害)・怪我・状況があるケースでは『自立・自律』よりも『公的扶助・可能な範囲での能力の向上・生存と生計の維持』のほうが優先されなければならない。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 17:13 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月07日

[G.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner)と労作教育]

G.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner)と労作教育

ドイツの教育学者であるG.M.ケルシェンシュタイナー(G.M.Kerschensteiner,1854-1932)は、ミュンヘン市を拠点として教育行政分野で活躍した人物であり、ミュンヘン市視学官・ミュンヘン大学教授を歴任した。ケルシェンシュタイナーは『公民』を養成するための教育改革に熱心に取り組み、従来の知識中心の受動的・主知主義的な教育を批判して、手工業的な作業を中心とした『労作教育』の必要性を唱えた。

ケルシェンシュタイナーは、ギムナジウムの教師として十数年間にわたり働いた後に、その経験を評価されて1895年から1919年まで生誕地のミュンヘン市で視学官という教育行政官僚を勤めた。実業補習学校(職業学校の前身)の改革を行って、ドイツ固有の職業教育制度の基礎を構築し、集団的作業を通した『労作教育』が公民としての人格形成や社会貢献、集団適応に役立つという持論を展開した。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 11:36 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[エレン・ケイ(Ellen K.S.Key)]

エレン・ケイ(Ellen K.S.Key)

スウェーデンの女性評論家・教育思想家(教師)として知られるエレン・ケイ(Ellen K.S.Key,1849-1926)は、国家権力や学校の教師が子どもに『正解・勉強・規範』を無理矢理に強制するタイプの教育を批判して、児童の興味関心・創造性・貢献意識を重要視する『児童中心主義』に基づく新教育運動を主導した。

エレン・ケイは、フランスの啓蒙思想家ジャン・ジャック・ルソーが自然主義・消極主義の教育論を開示した『エミール』から強い影響を受けており、子どもには生得的な可能性や適応能力が備わっているのだから、大人(教育者)はその可能性を伸長させるような教育の働きかけをしなければならないとした。

旧来の教育方法として見られた『強制・体罰・脅迫』などは、恐怖心を植えつけられた子どもの可能性や向学心、意欲を逆に萎縮させるだけで、子どもの能力を高めたり創意工夫を促したりする効果はないので原則やめるべきだと主張した。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 07:02 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月08日

[ゲシュタルト療法のホットシート(hot seat)]

ゲシュタルト療法のホットシート(hot seat)

フリッツ・パールズとローラ・パールズの夫妻が創始したゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、『想像上の他者(過去に関わりのあった重要な人物)』『もう一人の自分(人格構造の一部分)』をイメージしたロールプレイング(役割演技)が積極的に実施されている。ホットシート(hot seat)はゲシュタルト療法におけるロールプレイング法の一種であり、またクライエントが座る空間的な場所のことを直接指すこともある。

『対話ゲーム』という実践的なエクササイズにおいてホットシートが用いられることが多いが、対話ゲームはそれを見守ってくれる参加者がいるという集団療法的(グループセラピー的)な環境で行われることが多い。ホットシートと呼ばれる席に自分が座って、それに向き合う席の位置に『自分が対話したい(対話すべき)相手』のイメージを想像して座らせて、あたかもそこに実際のその相手が座っているかのようにして対話を展開するのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 23:56 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月20日

[幻想(fantasy)と精神分析の無意識:M.クラインとC.G.ユング]

幻想(fantasy)と精神分析の無意識:M.クラインとC.G.ユング

ファンタジー(fantasy)とは『幻想・夢想・想像の産物』のことであるが、ファンタジーがどこから現れてくるのかファンタジーの起源は何なのかについては、『経験主義の仮説』『無意識の仮説(精神分析的な仮説)』とがある。経験主義の仮説では『過去に経験した事柄や人間関係』がファンタジーの内容を形作る材料になっており、そのファンタジーの来歴や意味は『過去の想起(思い起こし)』によって説明が可能である。

精神分析的な無意識の仮説では、対象関係論(英国独立学派)の創始者である女性分析家のメラニー・クラインが仮定した『無意識的幻想』のように、本人の過去の経験とは無関係にファンタジーが生成すると考える。

M.クラインのいう無意識的幻想というファンタジーの概念は、『早期発達理論(乳幼児期の発達理論)』『原始的防衛機制(分裂)』と深いつながりがあり、分裂した『悪い対象』を攻撃して破壊しようとする衝動が無意識的幻想の現れとされている。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 12:56 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月07日

[ゲシュタルト療法の秘密探究ゲーム(I have a secret)]

ゲシュタルト療法の秘密探究ゲーム(I have a secret)

心理療法の一つであるゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、『今・ここの時点』で感じている感情・気分・考えに自分で気づいて体験する技法が重視されているが、そういった治療的意義を持つ感情・考えの意味を洞察するために『ゲーム』というロールプレイングが行われる。今・ここの原則を前提としてゲシュタルト療法で実施されるゲームには、『ホットシート(投影ゲーム)・トップドッグとアンダードッグ・スプリット法・未完の行為』などさまざまなものがあるが、秘密探究ゲームというのもゲシュタルト療法で行われるゲームの一つである。

カウンセリングや心理療法の面接場面では、『シャイネス(恥ずかしさ,羞恥心)・罪悪感・自己評価の低下・自尊感情の傷つき』などの感情を実際に体験することがあるが、人は往々にしてそういったネガティブな感情を、カウンセラーに対してさえも隠して秘密にしようとする。しかし、ネガティブな感情・気分を隠して『秘密』にすることは、問題解決を遅らせたり心理的問題の本質から目を逸らしたりする副作用・弊害も大きいので、ゲシュタルト療法ではその秘密内容を自己探求してカミングアウト(告白)するような『秘密探究ゲーム(I have a secret)』のロールプレイングが行われることがある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 10:59 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月16日

[ゲシュタルト療法の反転(reversal)とスプリット法]

ゲシュタルト療法の反転(reversal)とスプリット法

フリッツ・パールズとローラ・パールズの夫妻が開発したゲシュタルト療法(Gestalt therapy)では、実際にはそこにいない人や自分のもう一つの人格を想定した『ロールプレイング』が技法として重視されている。ゲシュタルト療法では、自分と自分が苦手だった父親を想像したロールプレイングを行ったり、自分と自分が憧れていた先生をイメージしたロールプレイングを行ったりするが、F.パールズが治療法として最も有効と考えていたロールプレイングは『対話ゲーム(スプリット法)』であると言われている。

『対話ゲーム』とは自分と自分に関係する誰かの対話、あるいは自分のパーソナリティの一部と他の部分との対話、自分に関係した他人同士の会話などを、イマジネーションを駆使してリアルに演技しながら再現するロールプレイングのことである。『スプリット法』というのは、ポジティブな私とネガティブな私、よく話す私と余り話せない私、攻撃的で批判的な自分と防衛的で相手に合わせてしまう自分など、“正反対・両極端な自分の性格傾向(特徴)”を二つ想像してから、その二つの特徴の間で対話をさせていくロールプレイングである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 21:00 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月20日

[ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』]

ゲシュタルト療法の『連続的な気づき(continuous awareness)』

フリッツ・パールズ(F.S.Perls)ローラ・パールズの夫妻が考案した『ゲシュタルト療法(gestalt therapy)』では、現実の人間関係を再現する“ロールプレイング”や感情と結びついた“身体感覚”を用いて『今・ここにおける気づき』を促進していく。ゲシュタルト療法は『現在の時点における体験型の技法』であり、S.フロイトの精神分析療法などとは違って、『過去の記憶・感情(わだかまり)・葛藤』などを話題にしたり分析したりすることはまず無い。

ゲシュタルト療法の基本理念として『自分自身であることを忘れずに、自分自身の人生を生きよ』というゲシュタルトの祈りがあるが、この技法ではありのままの自分の存在や感情を受け容れながら、身体と精神の調和が取れたバランスの良い自己を作り上げていくことが目標になる。ゲシュタルト療法はロールプレイング(役割演技)や感情表現を中心とした体験療法としての色彩を濃く持っている。『今・ここ』にいる自分の身体感覚や認知傾向に対する気づきを得ることで、環境適応性を高めていきながら苦痛な心理状態を回復させていくのである。

今までに気づくことができなかった感覚や認知、現実状況に気づくこと、これがゲシュタルト療法の治療機序(治療メカニズム)になっており、この『効果的な気づき(effective awareness)』が連続的に起こってくることを『連続的な気づき(continuous awareness)』と呼んでいる。クライアントの心理状態が本格的に回復してくる時や、問題状況(対人関係)が急速に改善してくる時には、ゲシュタルト療法でいう連続的な気づきが起こっていることが多い。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 22:24 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月27日

[ゲシュタルト療法の「未完の行為」と「誇張法」]

ゲシュタルト療法の「未完の行為」と「誇張法」

ゲシュタルト療法では、過去に十分にやり遂げられなかった課題や自己表現できなかった感情的内容を「未完の行為」と呼んでいる。未完の行為が存在していると内面心理に何かをやり残してしまった感覚や不快感を伴う未練の思いを感じたりする。過去の人間関係の中で受けたトラウマなど精神的な問題を解決するためには「未完の行為」を自己洞察して気づくことがまず重要になる。

空椅子技法や役割交換法(ロールプレイング)などゲシュタルト療法の各技法には、現時点において「未完の行為をもう一度実行する」という意味合いを持っている。過去の記憶を想起したり現在の人間関係を内省しているだけで、自分の心のしこりとなっている「未完の行為」に気づくこともあるが、なかなか気づけない場合には「誇張法(exaggeration)」という援助技法を用いることになる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 06:45 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

[見当識障害・失見当識(disorientation)]

見当識障害・失見当識(disorientation)

人間の脳器官の構造は、大きく『脳幹・大脳辺縁系・大脳皮質』の3つの領域に分けることができ、脳幹は「呼吸・脈拍・血圧・体温」といった生命維持機能を担い、大脳辺縁系は「闘争‐逃走反応」を中心とする情動的(動物的)な価値判断を担っている。脳幹は魚類や両生類にも見られる最も原始的な脳の構造であり、本能的情動を司る大脳辺縁系も爬虫類の進化の段階で形成された比較的古い脳であり「古皮質(爬虫類脳)」と言われることもある。

脳の外側を広く覆っている大脳皮質は「大脳新皮質」と呼ばれることもあるように、小型哺乳類の進化の過程で獲得した新しい脳の構造であり、「人間らしい精神機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)」を実現するために必要不可欠な部位である。大脳皮質は、人間固有の高次脳機能(理性的思考・学習・記憶・計画・判断・共感)を発現する部位であり、問題なく日常生活を送るために欠かせない「見当識(orientation)」もヒトの高次脳機能の一つである。その為、大脳皮質が物理的に損傷したり、病理的な異常が見られたりすると、見当識にさまざまな障害が見られることがある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 07:00 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[C.W.ミルズのパワーエリート(権力エリート, power elite)]

C.W.ミルズのパワーエリート(権力エリート, power elite)

社会学者C.W.ミルズ(C.W.Mills, 1916-1962)は、20世紀初頭、アメリカ合衆国の大衆社会の権力構造を解明するために「パワーエリート」(1956)を出版した。「パワーエリート(権力エリート)」とは、他者を従属させる各分野の権力を独占する少数のエリート支配階層のことである。C.W.ミルズは自由と平等を基調とするアメリカのような民主主義社会においても「少数指導体制(寡頭体制)」によって政治・経済・軍事が動かされていることを批判的に指摘した。自由で平等な個人という建前がある民主主義社会でなぜ、権力・財力・軍事力が「一部のパワーエリート集団」に独占されてしまうのだろうかという批判的な問題意識がC.W.ミルズにはあった。

インターネット(ウェブ)が普及した現代では、情報・知識・ノウハウをアカデミズムやマスメディアが独占するというようなパワーエリートのシステムは崩れかけているが、未だ政治権力や経済的な富は「財界・官界・政界のパワーエリート」に独占され「無数の大衆が持つパワー」は相対的に小さくなっている。C.W.ミルズが著述活動を行っていた時代は、アメリカの大衆文化が普及し労働者を中核とする大衆社会が肥大した時代である。そのため、ミルズは政治や経済の中枢から切り離された大衆社会の形成が、パワーエリートへの権力と財力の「寡頭的な集中」をもたらしたと考え、アメリカ社会を「頂点階層(パワーエリート)・中間階層・底辺階層」のヒエラルキー構造として認識している。

ヒエラルキー構造(序列階層構造)のトップに君臨して「政治的・経済的・軍事的な権力」を少数集団で独占しているのがパワーエリートである。政治経済的な問題に無関心で、安価な娯楽と遊興で満足している「大衆層(中間・底辺)」は、パワーエリート階層との流動性がほとんどなく、アメリカ民主主義社会においてもある種の階級社会が形成されていることにミルズは気づいた。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 05:44 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[統計学的な仮説検定(test)と帰無仮説・対立仮説]

統計学的な仮説検定(test)と帰無仮説・対立仮説

「サンプリング調査(標本調査)における無作為抽出法(random sampling)と有意抽出法」では、統計学のサンプリング(標本抽出)の基礎について解説したが、サンプリングは各種の統計学的な「検定(test)」のために実施されるものである。検定(test)は“Hypothesis testing”とも呼ばれるように、ある仮説が真であるか偽であるかを確認するための数理的な方法のことである。比較対照試験では、A群とB群といった複数の集団の間に「有意差」があるかないかを検定するが、有意差の基準として“p”“α”などの記号で示される「危険率(有意水準)」が通常用いられている。

仮説の真偽を検証する「仮説検定(hypothesis testing)」では、実験研究(experiment study)や調査研究(research study)によって集めたデータから作り上げた「対立仮説(alternative hypothesis)」の正しさを証明することをとりあえずの目的とする。その目的を達成するために、対立仮説の正当性を否定する「帰無仮説(null hypothesis)」を立てて、帰無仮説(きむかせつ)を棄却することで対立仮説の正しさを統計学的に証明するのである。故に、統計学的検定の直接的な対象となるのは帰無仮説であり、危険率(有意水準)として設定される“α=0.05(5%)”“偶発的な誤差の範囲”が収まっていれば、「対立仮説は統計学的に有意である」といってよい。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 04:33 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月23日

[W.グラッサーの現実療法(reality therapy)]

W.グラッサーの現実療法(reality therapy)

精神分析学では、人間の行動を規定する基本原則として『快楽原則(pleasure principle)』『現実原則(reality principle)』を仮定しているが、過去に書いた『精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)の記事』では心的現実性の内部と外部を区別する自我機能の重要性について解説した。快楽原則とは、発達早期に見られる『快の刺激』を追い求めて『不快の刺激』を回避しようとする行動原則であるが、現実原則に従う『青年期・成人期』へと心身が発達しても、快楽原則は人間の行動の大きなモチベーションとなっている。

即物的で動物的な『快楽原則』に従ってばかりだと、『他者との利害の衝突』『社会からの法的な制裁』によって実際的な不利益を受けることが多くなるので、大多数の人は他者との関係や社会的な状況を考慮した『現実原則』に従いながら遠回りして合理的(合法的)に『快の報酬』を手に入れようとする。

快楽原則とは『自己中心的・感情優位的・自由志向的な原則』であり、現実原則とは『他者配慮的・理性優位的・規範主義的な原則』であるが、『現実社会への適応性が高い健常者』は快楽原則と現実原則のバランスを上手くとって、自分らしい欲求の充足方法とストレスの少ない人間関係を見つけているのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:32 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

[現象学的社会学(phenomenological sociology)とエスノメソドロジー(ethnomethodology)]

現象学的社会学(phenomenological sociology)とエスノメソドロジー(ethnomethodology)

「G.W.F.ヘーゲルの精神現象学」E.フッサールの超越論的現象学について解説したが、普遍的・根本的な現象の認識を追究する現象学の影響を受けた社会学(sociology)を現象学的社会学(phenomenological sociology)と呼んでいる。E.フッサールは『日常的な当たり前の世界(現象界)』は個別的・偶然的・特殊的なものに過ぎないと考え、一般的・必然的・普遍的な『現象の本質』を認識するためには、固定観念や既成概念(先入観)を排除する『現象学的還元(先験的還元)』を行わなければならないと考えた。

超越論的現象学とは『個別的(個人的)な経験・知覚に基づく偏見・錯誤』を排除するエポケー(判断停止)によって、『事象そのものの本質』に接近しようとする哲学分野である。エポケー(判断停止)によって、事象そのものを直接的に見ることが出来る『純粋意識』が形成されるとフッサールは考えたが、現象学を社会学に応用する場合には『個別的な日常生活』を構成する『日常性・自明性・常識観念』も観察対象に含めることになる。

現象学的社会学(phenomenological sociology)では、ありふれた日常生活を認識する意識の働きである『自然的態度』に基づいて構成主義的に『社会』を観察するのだが、社会を『客観的現実(外的現実性)』『主観的現実(心的現実性)』の両面から研究するのが特徴である。主観的現実(心的現実性)から社会を眺めると、『意識を有する人間の数』だけ現実社会が存在することになり、現象学的に把握される社会とは一般的に『多元的社会(multiple societies),多元的現実(multiple realities)』のことを意味している。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 23:35 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[現象学(phenomenology):E.フッサールの超越論的現象学]

現象学(phenomenology):E.フッサールの超越論的現象学

哲学史においてE.フッサール(Edmund Gustav Albrecht Husserl, 1859-1938)は、客観的な観察・実験によって事実の有無(理論の正否)を確認する自然科学を『精密学』と呼び、主観的な意識・直感によって事実の本質(事象の根源)に確実にアプローチしようとする現象学を『厳密学』と呼んだ。フッサールの哲学の課題は、現象学を『存在するもの(“ある”もの)の本質』を普遍的・一般的に認識することができる『厳密学』として確立することであったが、フッサールはその手段として先入観や既成概念を排除した『純粋な認識(直観)』を用いようとした。

E.フッサールは、客観世界を経験的に認識することでは『現象の本質』を認識することは出来ず、本質直観によって『経験的な不純物』を排除(エポケー)した先験的な認識によって『現象の本質』にアプローチできると考えた。『客観世界の本質(実在)』を後天的な経験や知識に捉われずに、メタ次元(超越論的な次元)から先験的に直観しようとするE.フッサールの現象学は『超越論的現象学』と呼ばれている。

超越論的とは『自己の有限性・限界性・相対性』を認識した上で、その自己の限界をメタ次元から超越しようとする試みのことであり、具体的に説明すると『現実世界の自己の立場や属性』を考えずに『一般的・普遍的・根本的な思想的態度』を取ることを意味している。簡単にまとめれば、『自分だけにしか通用しない個別的な事情・立場・属性』といった経験的な事柄に左右されずに、『誰にでも通用する一般的・普遍的・絶対的な立場』に立って物事を考えようとする態度のことを『超越論的』と言うのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 21:27 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

現象学(phenomenology):G.W.ヘーゲルの精神現象学

現象学(phenomenology):G.W.ヘーゲルの精神現象学

19世紀に発生した哲学の特殊な認識論的立場である現象学(phenomenology)は、G.W.F.ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1770-1831)エドムンド・フッサール(Edmund Gustav Albrecht Husserl, 1859-1938)によって創始された分野である。現象学は、固定観念(先入観)や時代精神(社会通念)に惑わされずに、明証性と普遍性の高い『現象の本質』を認識しようとする哲学であり、ルネ・デカルトの自我(主観)中心の独我論的な認識世界を更に体系化したものである。

古代ギリシア哲学では、プラトンが現象界(知覚世界)から独立した『真・善・美の原型(イデア)』が存在するイデア界(本質的な背後世界)を仮定したが、哲学では伝統的に『知覚(感覚)では、実在(本質)の世界を認識することが出来ない』という基本的信念が存在していた。G.W.F.ヘーゲルやE.フッサールは、イデア界(背後世界)を仮定するプラトニズムとは異なる意識論的なアプローチで『世界の現象の本質(実在)』を認識しようとしたが、現象学とは『事象そのもの』へと立ち返ることで普遍的・絶対的な認識(知識)を獲得しようとする立場である。

近代哲学の完成者と言われるG.W.F.ヘーゲルは、単純な意識(感覚的確信)が『正(テーゼ)・反(アンチテーゼ)・合(ジンテーゼ)』の弁証法的発展によって段階的に『絶対知』へ到達するという精神現象学を唱えた。ヘーゲルは、精神(意識)こそが絶対者(無限の実在)であるという信念を持ち、弁証法的思索によって『一つの事象に内在する矛盾・対立が発展の契機となる』と考えていた。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 21:21 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月09日

[現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)]

現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)

精神分析学を創始したS.フロイトの精神病理学における最大の功績は、『神経症(neurosis)の発見』である。『神経症(ヒステリー)とは何なのか?』という定義を厳密に進めていくと、神経症とは『精神的原因によって発症するさまざまな心身症状』であり単一の疾患として定義できるものではない。古典的な精神医学では、精神疾患のスペクトラムを、ヒステリー・不安神経症・恐怖症・強迫神経症・抑うつ神経症などの『神経症水準』と幻覚や興奮・錯乱を伴う統合失調症などの『精神病水準』に分類していたが、神経症水準と精神病水準の違いは『病態の重症度』『現実吟味能力の有無』にあった。

精神分析療法の適応症である古典的な神経症は『不安・緊張・興奮を主軸とする精神疾患』であり、一般的に難治の傾向があり慢性の経過を取ることが多い。現在のDSM‐Wの診断マニュアルでいえば『全般性不安障害・社会不安障害・強迫性障害・うつ病性障害・解離性障害・各種の心身症・演技性人格障害・境界性人格障害・自己愛性人格障害』などを包括する非常に範囲の広い疾患概念である。つまり、古典的な神経症とは、器質的障害(脳・身体の物理的な障害)がないのに発症する『心因性の精神疾患全般』を意味する病理概念であり、クラスターB(B群)の人格障害や心身症の特徴まで含んでいるのである。

S.フロイトは『精神症状のブラックボックス』であり『非適応的な人格特徴の集積』であるこの神経症を、『現実神経症(actual neurosis)・精神神経症(psychic neurosis)・性格神経症(characteral neurosis)』という3つの神経症に分類した。この3つの神経症の分類は、病因論の観点に基づいている。フロイトは外的現実性によって生起する不安を『現実不安(realistic anxiety)』と呼んだが、この現実不安の精神的ストレスによって発症する神経症のことを『現実神経症』と呼んでいる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 10:18 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)と現実原則(reality principle)]

精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)と現実原則(reality principle)

S.フロイトの性的精神発達論(リビドー発達論)では、自他未分離な乳児期(口愛期)の発達段階では『快楽原則(pleasure principle)』に従い、自己と他者が区別できるようになって現実的な環境世界や対人関係を理解できるようになると『現実原則(reality principle)』に従う方向に発達すると考えている。精神分析学では人間の生きる原動力を『快楽への意志』と考えるが、単純に快楽(喜び)を求めて不快(苦痛)を避ける『快楽原則』は、周囲の状況や社会的な条件を考えずに直接的に快楽への意志を満たそうとする原則である。

しかし、様々な制約や条件、限界のある現実社会では、無思慮な『快楽原則』に従って行動していると、『他者との衝突(対決)』に陥ったり『社会からの懲罰(制裁)』を受けたりする皮肉な結果となる。現実的な条件や他者の気持ちを考えずに『快楽への意志』を即時的に満たそうとすると、快楽を求めているのに不利益を得ることが多いというのを学習することになる。そこで、即時的な『快楽原則』ではなく合理的な『現実原則』に従うモチベーション(動機づけ)が生まれることになる。

『現実原則』とは、『快楽への意志』を現実世界の条件や対人関係の状況に合わせて満たす原則であり、迂遠な遠回りをしても確実かつ安全に欲望を満たそうとする原則である。例えば、手持ちのお金で買えない『高額な商品』があっても、快楽原則に従って強盗をすれば逮捕されて結果として不利益を受けてしまうので、大多数の人は、その場で買えない場合には『働いてお金を貯めてから買う』という現実原則を採用して行動するのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 09:27 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月12日

[言語聴覚士・言語療法士(ST)の言語聴覚療法(speech therapy or language therapy)]

言語聴覚士・言語療法士(ST)の言語聴覚療法(speech therapy or language therapy)

前回の記事で、国家資格である言語聴覚士の受験資格と職業領域(仕事内容)についての概略を解説したが、言語聴覚士という職業を簡潔に表現するならば、リハビリテーションやアセスメント(臨床評価)を的確に実施できる言語療法士(ST)のことである。言語療法士はその名称の通り、さまざまな理由や経緯によって『音声障害・言語障害・聴覚障害』を持つようになったクライアント(患者)の臨床的な評価及び治療を行う。

言語療法士(言語聴覚士)は、総合病院や耳鼻咽喉科、リハビリテーション科などの医療機関において言語障害者・聴覚障害者の機能回復や障害軽減を目的とするリハビリテーションや治療的働きかけを行い、言語障害特殊学級などの教育機関では、子供達の言語的コミュニケーションを改善するために、効果的な教育プログラムを立てて指導助言を行っていくことになる。

病気や怪我、脳損傷などによって障害されたコミュニケーション能力を改善する為に、『患者本人・本人の周囲にいる関係者・病院や学校などの環境要因』に系統的に働きかけていくのも言語聴覚士の仕事であり、そういった言葉を用いたコミュニケーション機能や言語を司る高次脳機能の回復・改善を目的とする専門的アプローチを総称して『言語療法・言語聴覚療法』と呼んでいる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 05:35 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする