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2007年07月23日

[W.グラッサーの現実療法(reality therapy)]

W.グラッサーの現実療法(reality therapy)

精神分析学では、人間の行動を規定する基本原則として『快楽原則(pleasure principle)』『現実原則(reality principle)』を仮定しているが、過去に書いた『精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)の記事』では心的現実性の内部と外部を区別する自我機能の重要性について解説した。快楽原則とは、発達早期に見られる『快の刺激』を追い求めて『不快の刺激』を回避しようとする行動原則であるが、現実原則に従う『青年期・成人期』へと心身が発達しても、快楽原則は人間の行動の大きなモチベーションとなっている。

即物的で動物的な『快楽原則』に従ってばかりだと、『他者との利害の衝突』『社会からの法的な制裁』によって実際的な不利益を受けることが多くなるので、大多数の人は他者との関係や社会的な状況を考慮した『現実原則』に従いながら遠回りして合理的(合法的)に『快の報酬』を手に入れようとする。

快楽原則とは『自己中心的・感情優位的・自由志向的な原則』であり、現実原則とは『他者配慮的・理性優位的・規範主義的な原則』であるが、『現実社会への適応性が高い健常者』は快楽原則と現実原則のバランスを上手くとって、自分らしい欲求の充足方法とストレスの少ない人間関係を見つけているのである。

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2007年07月22日

[現象学的社会学(phenomenological sociology)とエスノメソドロジー(ethnomethodology)]

現象学的社会学(phenomenological sociology)とエスノメソドロジー(ethnomethodology)

「G.W.F.ヘーゲルの精神現象学」E.フッサールの超越論的現象学について解説したが、普遍的・根本的な現象の認識を追究する現象学の影響を受けた社会学(sociology)を現象学的社会学(phenomenological sociology)と呼んでいる。E.フッサールは『日常的な当たり前の世界(現象界)』は個別的・偶然的・特殊的なものに過ぎないと考え、一般的・必然的・普遍的な『現象の本質』を認識するためには、固定観念や既成概念(先入観)を排除する『現象学的還元(先験的還元)』を行わなければならないと考えた。

超越論的現象学とは『個別的(個人的)な経験・知覚に基づく偏見・錯誤』を排除するエポケー(判断停止)によって、『事象そのものの本質』に接近しようとする哲学分野である。エポケー(判断停止)によって、事象そのものを直接的に見ることが出来る『純粋意識』が形成されるとフッサールは考えたが、現象学を社会学に応用する場合には『個別的な日常生活』を構成する『日常性・自明性・常識観念』も観察対象に含めることになる。

現象学的社会学(phenomenological sociology)では、ありふれた日常生活を認識する意識の働きである『自然的態度』に基づいて構成主義的に『社会』を観察するのだが、社会を『客観的現実(外的現実性)』『主観的現実(心的現実性)』の両面から研究するのが特徴である。主観的現実(心的現実性)から社会を眺めると、『意識を有する人間の数』だけ現実社会が存在することになり、現象学的に把握される社会とは一般的に『多元的社会(multiple societies),多元的現実(multiple realities)』のことを意味している。

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[現象学(phenomenology):E.フッサールの超越論的現象学]

現象学(phenomenology):E.フッサールの超越論的現象学

哲学史においてE.フッサール(Edmund Gustav Albrecht Husserl, 1859-1938)は、客観的な観察・実験によって事実の有無(理論の正否)を確認する自然科学を『精密学』と呼び、主観的な意識・直感によって事実の本質(事象の根源)に確実にアプローチしようとする現象学を『厳密学』と呼んだ。フッサールの哲学の課題は、現象学を『存在するもの(“ある”もの)の本質』を普遍的・一般的に認識することができる『厳密学』として確立することであったが、フッサールはその手段として先入観や既成概念を排除した『純粋な認識(直観)』を用いようとした。

E.フッサールは、客観世界を経験的に認識することでは『現象の本質』を認識することは出来ず、本質直観によって『経験的な不純物』を排除(エポケー)した先験的な認識によって『現象の本質』にアプローチできると考えた。『客観世界の本質(実在)』を後天的な経験や知識に捉われずに、メタ次元(超越論的な次元)から先験的に直観しようとするE.フッサールの現象学は『超越論的現象学』と呼ばれている。

超越論的とは『自己の有限性・限界性・相対性』を認識した上で、その自己の限界をメタ次元から超越しようとする試みのことであり、具体的に説明すると『現実世界の自己の立場や属性』を考えずに『一般的・普遍的・根本的な思想的態度』を取ることを意味している。簡単にまとめれば、『自分だけにしか通用しない個別的な事情・立場・属性』といった経験的な事柄に左右されずに、『誰にでも通用する一般的・普遍的・絶対的な立場』に立って物事を考えようとする態度のことを『超越論的』と言うのである。

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現象学(phenomenology):G.W.ヘーゲルの精神現象学

現象学(phenomenology):G.W.ヘーゲルの精神現象学

19世紀に発生した哲学の特殊な認識論的立場である現象学(phenomenology)は、G.W.F.ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1770-1831)エドムンド・フッサール(Edmund Gustav Albrecht Husserl, 1859-1938)によって創始された分野である。現象学は、固定観念(先入観)や時代精神(社会通念)に惑わされずに、明証性と普遍性の高い『現象の本質』を認識しようとする哲学であり、ルネ・デカルトの自我(主観)中心の独我論的な認識世界を更に体系化したものである。

古代ギリシア哲学では、プラトンが現象界(知覚世界)から独立した『真・善・美の原型(イデア)』が存在するイデア界(本質的な背後世界)を仮定したが、哲学では伝統的に『知覚(感覚)では、実在(本質)の世界を認識することが出来ない』という基本的信念が存在していた。G.W.F.ヘーゲルやE.フッサールは、イデア界(背後世界)を仮定するプラトニズムとは異なる意識論的なアプローチで『世界の現象の本質(実在)』を認識しようとしたが、現象学とは『事象そのもの』へと立ち返ることで普遍的・絶対的な認識(知識)を獲得しようとする立場である。

近代哲学の完成者と言われるG.W.F.ヘーゲルは、単純な意識(感覚的確信)が『正(テーゼ)・反(アンチテーゼ)・合(ジンテーゼ)』の弁証法的発展によって段階的に『絶対知』へ到達するという精神現象学を唱えた。ヘーゲルは、精神(意識)こそが絶対者(無限の実在)であるという信念を持ち、弁証法的思索によって『一つの事象に内在する矛盾・対立が発展の契機となる』と考えていた。

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2007年07月09日

[現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)]

現実神経症(actual neurosis)と精神神経症(psychic neurosis)

精神分析学を創始したS.フロイトの精神病理学における最大の功績は、『神経症(neurosis)の発見』である。『神経症(ヒステリー)とは何なのか?』という定義を厳密に進めていくと、神経症とは『精神的原因によって発症するさまざまな心身症状』であり単一の疾患として定義できるものではない。古典的な精神医学では、精神疾患のスペクトラムを、ヒステリー・不安神経症・恐怖症・強迫神経症・抑うつ神経症などの『神経症水準』と幻覚や興奮・錯乱を伴う統合失調症などの『精神病水準』に分類していたが、神経症水準と精神病水準の違いは『病態の重症度』『現実吟味能力の有無』にあった。

精神分析療法の適応症である古典的な神経症は『不安・緊張・興奮を主軸とする精神疾患』であり、一般的に難治の傾向があり慢性の経過を取ることが多い。現在のDSM‐Wの診断マニュアルでいえば『全般性不安障害・社会不安障害・強迫性障害・うつ病性障害・解離性障害・各種の心身症・演技性人格障害・境界性人格障害・自己愛性人格障害』などを包括する非常に範囲の広い疾患概念である。つまり、古典的な神経症とは、器質的障害(脳・身体の物理的な障害)がないのに発症する『心因性の精神疾患全般』を意味する病理概念であり、クラスターB(B群)の人格障害や心身症の特徴まで含んでいるのである。

S.フロイトは『精神症状のブラックボックス』であり『非適応的な人格特徴の集積』であるこの神経症を、『現実神経症(actual neurosis)・精神神経症(psychic neurosis)・性格神経症(characteral neurosis)』という3つの神経症に分類した。この3つの神経症の分類は、病因論の観点に基づいている。フロイトは外的現実性によって生起する不安を『現実不安(realistic anxiety)』と呼んだが、この現実不安の精神的ストレスによって発症する神経症のことを『現実神経症』と呼んでいる。

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[精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)と現実原則(reality principle)]

精神分析理論の現実吟味能力(reality-testing)と現実原則(reality principle)

S.フロイトの性的精神発達論(リビドー発達論)では、自他未分離な乳児期(口愛期)の発達段階では『快楽原則(pleasure principle)』に従い、自己と他者が区別できるようになって現実的な環境世界や対人関係を理解できるようになると『現実原則(reality principle)』に従う方向に発達すると考えている。精神分析学では人間の生きる原動力を『快楽への意志』と考えるが、単純に快楽(喜び)を求めて不快(苦痛)を避ける『快楽原則』は、周囲の状況や社会的な条件を考えずに直接的に快楽への意志を満たそうとする原則である。

しかし、様々な制約や条件、限界のある現実社会では、無思慮な『快楽原則』に従って行動していると、『他者との衝突(対決)』に陥ったり『社会からの懲罰(制裁)』を受けたりする皮肉な結果となる。現実的な条件や他者の気持ちを考えずに『快楽への意志』を即時的に満たそうとすると、快楽を求めているのに不利益を得ることが多いというのを学習することになる。そこで、即時的な『快楽原則』ではなく合理的な『現実原則』に従うモチベーション(動機づけ)が生まれることになる。

『現実原則』とは、『快楽への意志』を現実世界の条件や対人関係の状況に合わせて満たす原則であり、迂遠な遠回りをしても確実かつ安全に欲望を満たそうとする原則である。例えば、手持ちのお金で買えない『高額な商品』があっても、快楽原則に従って強盗をすれば逮捕されて結果として不利益を受けてしまうので、大多数の人は、その場で買えない場合には『働いてお金を貯めてから買う』という現実原則を採用して行動するのである。

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2007年06月12日

[言語聴覚士・言語療法士(ST)の言語聴覚療法(speech therapy or language therapy)]

言語聴覚士・言語療法士(ST)の言語聴覚療法(speech therapy or language therapy)

前回の記事で、国家資格である言語聴覚士の受験資格と職業領域(仕事内容)についての概略を解説したが、言語聴覚士という職業を簡潔に表現するならば、リハビリテーションやアセスメント(臨床評価)を的確に実施できる言語療法士(ST)のことである。言語療法士はその名称の通り、さまざまな理由や経緯によって『音声障害・言語障害・聴覚障害』を持つようになったクライアント(患者)の臨床的な評価及び治療を行う。

言語療法士(言語聴覚士)は、総合病院や耳鼻咽喉科、リハビリテーション科などの医療機関において言語障害者・聴覚障害者の機能回復や障害軽減を目的とするリハビリテーションや治療的働きかけを行い、言語障害特殊学級などの教育機関では、子供達の言語的コミュニケーションを改善するために、効果的な教育プログラムを立てて指導助言を行っていくことになる。

病気や怪我、脳損傷などによって障害されたコミュニケーション能力を改善する為に、『患者本人・本人の周囲にいる関係者・病院や学校などの環境要因』に系統的に働きかけていくのも言語聴覚士の仕事であり、そういった言葉を用いたコミュニケーション機能や言語を司る高次脳機能の回復・改善を目的とする専門的アプローチを総称して『言語療法・言語聴覚療法』と呼んでいる。

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[言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist)・言語療法士(Speech Therapist:ST)]

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist)・言語療法士(Speech Therapist:ST)

言語機能・聴覚機能の何らかの障害のために他者とのコミュニケーションに問題が起こっている人を、専門的に評価(アセスメント)・治療(訓練)・支援(指導)するのが言語療法士(Speech Therapist:ST)であり、現在では言語療法士の国家資格として言語聴覚士の資格が設けられている。1997年12月に言語聴覚士法が制定されて言語聴覚士が国家資格化されたが、それ以前には各業界団体(資格認定の民間団体)が言語療法士(ST)の資格を発行していて、臨床言語士・聴能言語士・言語聴覚療法士・医療言語聴覚士など様々な資格が存在した。

現在は、言語障害・聴覚障害の評価(検査)や治療・リハビリテーション(機能改善)を行う専門職として、国家資格化された言語聴覚士が名称独占の資格となっている。言語聴覚士は業務独占資格ではないが、作業療法士(OT)・理学療法士(PT)・視能訓練士(ORT)・看護師などのコ・メディカルの資格と比較しても合格率が低く、国家試験は比較的難関の試験に分類される。昭和30年代に医療分野におけるリハビリテーションの専門職として、作業療法士・理学療法士・視能訓練士が相次いで名称独占の国家資格となったが、言語聴覚士だけは言語障害のリハビリに当たる専門家育成のカリキュラムが充実しておらず、専門的な業務内容の特定が曖昧だったために公的資格化が見送られた。

その後、言語障害や音声障害、後天性(脳血管疾患など)の難聴の問題を抱えた患者が急速に増え、高齢化社会において認知症(アルツハイマー脳症)や老年性難聴によるコミュニケーション障害の問題も深刻化してきた。言語障害や聴覚障害の人たちのアセスメント(査定)と治療・リハビリの需要が増大した結果、それに対応する専門職を整備する必要に迫られ言語聴覚士の専門家養成課程を見直して、平成9年(1997年)に国家資格としての言語聴覚士が誕生したのである。言語聴覚士の資格取得要件は以下のようになっている。

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ラベル:医学 言語学
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[言語心理学(psychology of language)]

言語心理学(psychology of language)

言語心理学(psychology of language)とは、人間(言語機能を持つ高等動物)の言語的な現象全般について心理学的なアプローチで研究する学問であり、言語的コミュニケーションや言語獲得の発達過程(発達心理)など言語学と心理学の中間領域のテーマを取り扱う応用心理学の分野である。言語心理学において研究対象となる問題は、『言語の機能・発達・音韻・形態・意味・文法規則・歴史・言語障害・脳機能と言語機能の相関』などであるが、言語現象の心理学的側面に着目すると『言語の機能・コミュニケーション・人間の言語行動・言語発達過程(言語獲得のメカニズム)・言語の意味論・言語障害・言語教育(言語療法)』などが主要な研究領域となる。

言語心理学が研究考察の対象とする『人間の言語行動』とは、端的には、読み書き(リテラシー)とコミュニケーション(言葉を話すこと・言葉を聞くこと)のことを意味しているが、言語行動から個人の性格類型(特徴的な行動パターン)を解釈するような性格心理学との架橋領域もある。言語心理学は、古典的な精神分析を基盤とする心理療法の研究などと比較すると科学的な研究方法を重視する分野であり、『客観的に検証可能な実験・観察・調査』によって研究が進められている。

脳器官の中で言語機能を担当するウェルニッケ野(聴覚性言語中枢=言葉を聴いて理解する中枢)とブローカー野(運動性言語中枢=言葉を理解して話す中枢)の研究によって言語障害(失語症)の理解が深まったように、20世紀以降、脳科学(脳神経科学)と言語学(言語心理学)との相互交流も活発に行われている。

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ラベル:言語学 心理学
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[健康心理学(health psychology)][カウンセリングにおける言語条件づけ(verbal conditioning)]

健康心理学(health psychology)

健康心理学(health psychology)とは、『心身の健康の維持・増進・回復・治癒』を目的とする応用心理学であり、健康状態の拡大発展と共に病理状態(病態)の縮小除去を目指そうとするものである。健康(health)という概念には、『元気であること、健やかであること、病気や怪我をしていないこと』という苦痛や不快がない状態が含意されているが、健康心理学では健常者と病者(患者)の両方を対象として『病気や怪我の苦痛(緩和)を緩和し、未然に病気や怪我を防ぐこと』も重要な課題となっている。

上記の解説で分かるように、臨床的な応用心理学である健康心理学は、臨床医学・予防医学臨床心理学を架橋する心理学分野であり、病気(怪我)による強烈な痛みや苦悩を和らげるという観点では、終末期患者をケアする『ホスピスにおける末期医療(ターミナル・ケア)』との関連性も深いものである。臨床心理学と健康心理学の関連性に着目してみると、精神疾患に罹患した患者の精神症状(恐怖・不安・パニック・抑うつ・自殺念慮・葛藤による苦悩)による苦痛や不安を軽減することが健康心理学の役割となる。その為、心身の健康を維持回復する「健康心理学」と心理療法を行う「臨床心理学」との境界線はかなり曖昧な部分があるが、日本では専門的な活動領域が確定しないという意味で健康心理学はマイナーな分野でもある。

アメリカでは、健康心理学は心理学の第38分野に位置づけられる応用心理学である。1978年にアメリカで正式に発足した心理学分野なのでその歴史は短いが、最近では国際的な感染症の予防や予防医学的なキャンペーンなどに参加する動きもある。心身の健康増進や各種の疾病予防など医学的啓蒙の分野での貢献が期待されているようである。日本では、1988年に本明寛を理事長とする日本健康心理学が発足しており、臨床心理学と健康心理学との共同研究に基づく相互的発展などの可能性が模索されている。

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ラベル:医学 心理学
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2007年05月30日

[行動療法における嫌悪療法(aversion therapy)][精神分析理論の原光景(primal scene)]

行動療法における嫌悪療法(aversion therapy)

行動療法(behavioural therapy)では、「適応的な行動」の発生頻度を増加させ「不適応な行動」の発生頻度を低減させることを心理療法(カウンセリング)の目標とする。古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)オペラント条件づけの行動原理を用いて、特定の行動の発生頻度を効果的(改善的)に増減させることを「強化(reinforcement)」と呼ぶが、不適切な好ましくない行動の発生を減らす場合には「消去(elimination)」<と呼ばれることもある。

適応的で効果的な行動の発生頻度を増加させる「行動強化法」と不適応的で病的(逸脱的)な行動の発生頻度を減少させる「行動消去法」は、行動療法の基本である。広場恐怖を伴うパニック障害や単一恐怖症、社会不安障害(対人恐怖症)などに用いられるエクスポージャー法(exposure method)も、古典的条件づけに基づく行動療法の一種である。急進的(徹底的)行動主義のB.F.スキナー(B.F.Skinner, 1904-1990)は、スキナー箱を用いたネズミの実験からオペラント条件づけ(道具的条件づけ)の行動原理を理論化したが、「飴(報酬)と鞭(罰則)の効果」で行動をコントロールしようとする行動強化法が現在の行動療法の中心である。

オペラント条件づけの行動強化法において、行動の生起頻度を増加させる報酬の効果を持つ刺激のことを「正の強化子」といい、行動の頻度を減少させる罰則の効果を持つ刺激のことを「負の強化子」というが、嫌悪療法(aversion therapy)では「負の強化子」を用いて不適応的な行動や病理的な症状を改善しようとする。嫌悪療法では、問題行動や病的症状を軽減させるために、不快・苦痛・嫌悪などを感じる「負の強化子」を用いるが、最終的な治療目標としては、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)によって条件反射的に問題行動(病的症状)が消去されることを目指していく。子どもの夜尿症に対して、尿を漏らした時に軽微な電気刺激を与える「バイオフィードバック療法」や夜尿をセンサーで感知してアラームを鳴らす「夜尿アラーム療法」は嫌悪療法の一種と言える。

夜尿症以外にも、アルコール依存症に対する禁酒薬(酒を飲むと吐き気を感じる薬)を用いた治療や薬物中毒・喫煙行動に対するイメージ療法(薬物・煙草を摂取した場合の耐え難い苦痛や混乱をイメージする技法)も嫌悪療法に該当する。フェティシズムや窃視症(覗き見趣味)、服装倒錯(Transvestite)などで異常性欲(性嗜好障害)の改善を希望するクライエントにも、苦痛や不快を伴うイメージを応用した嫌悪療法が実施されることがあるが、脳の性分化など生物学的要因が大きく介在する性同一性障害(トランスジェンダー)には、嫌悪療法をはじめとする心理療法はほとんど有効性がない。

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[病的体験(統合失調症の陽性症状)としての幻覚(hallucination)・妄想(delusion)]

病的体験(統合失調症の陽性症状)としての幻覚(hallucination)・妄想(delusion)

幻覚(hallucination)は「客観的な現実世界には存在しない対象・事物」を知覚する異常な精神状態であり、通常、精神医学において「幻覚」という場合には精神病的な症状のことを言い、現実世界を他者と同じように客観的に認知できない状態のことである。目・耳・鼻・口・皮膚の感覚器官に対応する幻覚として「幻視・幻聴・幻嗅・幻味・幻触」があり、統合失調症の急性期に見られる陽性症状で多い幻覚は幻聴と幻視である。

幻聴とは、実際には誰も話していないのに自分に話しかける声や自分に命令する声が聴こえる病的体験であり、特に、「被害妄想に基づく自傷他害」の危険性がある精神病症状として「作為体験(誰かに自殺企図や反社会的な他害行為を命令される幻聴体験)」がある。統合失調症の陽性症状(健康な正常者には見られない精神状態)では、実際には存在しない対象を知覚する「幻覚(hallucination)」と具体的根拠がないことを現実と信じて訂正できない「妄想(delusion)」がセットになって現れることが多い。

特に、誰かから嫌がらせや攻撃を受けているという「被害妄想」の内容で多いのは、ストーカー集団(嫌がらせをする集団組織)から24時間体制で監視されているとか、政府機関の謀略で生命を付け狙われていて、テレビやラジオでも自分の誹謗中傷を絶えずばら撒いているとかいった妄想である。誰かに嫌がらせを受けているという被害妄想は、本来無関係なものに関連性を見出していく「関連妄想」と同時に発症することが多い。具体的には、テレビに出演している芸能人やニュースキャスターの発言を無根拠に「自分の生活・行動・秘密」と結びつけて考えたりとか、街中の他人が話している言葉全てが「自分に対する悪口・侮辱・罵倒」であるように感じたりして、外出困難になったり他人とコミュニケーションをすることが出来なくなる。

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2007年05月15日

[交流分析の裏面交流とゲーム分析(game analysis)]

交流分析の裏面交流とゲーム分析(game analysis)

交流分析のエゴグラム(egogram)を踏まえたコミュニケーション理論では、『相補交流・交差交流・裏面交流』を分類してコミュニケーションの問題点や改善点を考えていく。交流分析では、エゴグラムの自我状態を考慮しながら、二者間のコミュニケーションを合理的に分析する作業を「やりとり分析」と呼ぶこともある。お互いの欲求や感情を満たし合う形の適応的なコミュニケーションの代表が『相補交流』であり、お互いの欲求や感情がすれ違って対立する形の不適応なコミュニケーションの代表が『交差交流』である。『裏面交流』は、相手を自分の思い通りにコントロールしようとする欲求に動機付けられたコミュニケーションで、「建前(タテマエ)の言動」「本音(ホンネ)の感情」が食い違った状態で行われることが多い。

以下に、「相補交流・交差交流・裏面交流」の特徴と問題を記しておきます。やりとり分析を理解するためには、「J.M.デュセイのエゴグラム」の項目も参照してみて下さい。

相補交流……エゴグラムのNP(保護的な親)とFC(自由な子ども)の間、あるいは、CP(批判的な親)とAC(適応的な子ども)の間で相互にやりとりされるような「噛み合った有意義なコミュニケーション(お互いの要求を満たせるコミュニケーション)」のことである。「今日は学校で友達と喧嘩したんだ(FC)」に対して、「大丈夫?怪我しなかった?どうして友達と喧嘩してしまったのか話してちょうだい(NP)」と返すようなコミュニケーション。「明日から毎日2時間、家で学校の勉強を復習しなさい(CP)」という父親に対して、「うん、分かった、毎日コツコツやるほうがテストの時に役立つしね(AC)」と返すようなコミュニケーション。

交差交流……エゴグラムにおいて、CP(批判的な親)からAC(適応的な子ども)への発言に対して相手もCPからACへの発言を返してくるような「噛み合わない対立的なコミュニケーション(お互いの要求を無視するコミュニケーション)」のことである。上司の「明日までに、この企画をレポートにまとめてきて下さい(CP)」という発言に対して、「はい、分かりました。頑張ってレポートを作成しようと思います(AC)」と相補的に返せば適応的なコミュニケーションが成立するが、「レポートをまとめるよりも優先すべき問題があるのではないですか?(A)」と交差的に返せば相手との葛藤や対立が深まってしまう恐れがある。

裏面交流……ゲーム(心理ゲーム)とも呼ばれる「定型的なパターン化したコミュニケーション」のことで、いつも決まりきった結末や感情に行き着いてしまうという特徴を持つ。裏面交流では、「表面的な言動(タテマエの言葉)」と「本当の気持ち(ホンネの感情)」が分離しているので、決まりきったゲームのやり取りをした後には「イヤ〜な感じ」が残ることが多い。

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2007年05月14日

[結婚カウンセリング(marriage counseling)と夫婦関係・家族関係の問題]

結婚カウンセリング(marriage counseling)と夫婦関係・家族関係の問題

この項目は、結婚心理学と結婚モラトリアムと関係している項目です。

二人の男女が結婚して作り上げる結婚生活では、今まで自分が育った「実家(成育家庭)」とは違う「新世帯(二人の家庭・夫婦と子の家庭)」で生活をする事になるので、今まで二人が持っていた「家庭生活の常識やルール(決まりごと)」が通用しない場面が多く出てくる。人間の性格傾向や行動様式(価値観)は、自分が生まれ育った家庭環境(生活環境)や両親(学校)の教育内容の影響を受けるので、生活時間を長く共有する結婚生活では「夫婦の常識感覚や価値観の違い」が浮き彫りになりやすいのである。「実家での生活」から「夫婦での新生活」に適応する際に、「実家での生活に満足していた人」と「実家での生活に不満を感じていた人」では新しい結婚生活への適応戦略が大きく変わってくる。

過去の重要な人物に向けていた感情を現在の新たな人間関係の中で再現しようとする自我防衛機制を「転移(transference)」というが、実家の生活で抱いていた感情(幸福感・満足感・不幸感・不全感)は、新しい結婚生活にも何らかの形で転移されやすいと考えられている。以下に、実家での人間関係やコミュニケーションの「転移」によって生じる「理想の家庭像(家庭に求める条件)」の違いについて記しておく。

安定した家族関係の中で両親を尊敬し幸福や喜びを多く感じていた人は、『過去の理想的な家庭(実家)』と同じような家庭を『新しい家庭(夫婦関係)』で再現しようとするが、これは『原型再現タイプ』と呼ばれる。反対に、不安定な家族関係の中で両親を嫌悪(軽蔑)し不幸や不満を多く感じていた人は、『過去の問題の多い家庭(実家)』を否定してそれとは正反対の『新しい家庭(夫婦関係)』を作ろうとするが、これは『反動形成(理想化)タイプ』と呼ばれる。

『過去の家族関係(実家)』にある程度の不足や欠如を抱えていて、『新しい家庭(夫婦関係)』によって過去の不足や欠如を埋め合わせようとするタイプを『欠如補償タイプ』と呼ぶこともある。新たな結婚生活や夫婦関係への適応が難しいタイプとして、『過去の実家』で受けた心的外傷(トラウマ)や抑圧感情を『新しい家庭(夫婦関係)』で爆発させて八つ当たりする『内圧タイプ(DV親和型の性格類型)』がある。一般的には、過去の家庭環境や基本的な家族観が似たタイプの夫婦のほうが結婚生活が上手くいきやすいが、家庭環境や価値観が違っていても相互理解や相手の心理的受容を進めていくことで円滑な家族関係を実現できることも多い。

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[結婚心理学(marriage psychology)と結婚モラトリアム(marriage moratorium)]

結婚心理学(marriage psychology)と結婚モラトリアム(marriage moratorium)

価値観の多様性とライフスタイルの個別化が進む現代社会では、結婚(婚姻)というライフイベントの持つ意味づけが大きく変化し、結婚したいというモチベーションの強弱に個人差が見られるようになってきた。戦後間もなくから高度経済成長期頃までの日本では、20代〜30代の結婚適齢期には結婚に対するモチベーションを持つのが当たり前であり、大多数の人は「社会的信用を得るための必然的な通過儀礼(イニシエーション)」として結婚することを選択してきた。伝統的な権威(イエ制度)や社会的な慣習(結婚に対する世間体)が生きていた時代には、学校を卒業すれば正社員として就職し結婚して子どもを持つことがある種の社会規範として機能していたので、多くの人には結婚をしないという選択肢を想定することが出来なかったといっても良い。

個人の価値観やライフスタイルを理由にして「結婚をしない・婚期を遅らせる・子どもを作らない・同性愛を選ぶ」という選択が出来るようになったのはここ10数年の話であるが、結婚をするかしないかの選択の自由が確保されたことで結婚心理学はより複雑な発展と経過を辿ることになった。「結婚の選択の自由」が拡大するにつれて、個別的な結婚観や人生哲学、セクシャリティの内容をより丁寧に考慮する必要が強く意識されるようになったのである。

現在の結婚心理学(marriage psychology)では、「結婚の主体的な選択」と「価値観・ライフスタイル・性的指向性(セクシャリティ)の多様性」が前提されており、結婚前の生活状況(人間関係)から結婚中の生活状況(夫婦関係)の理解と対応が主要な研究領域になっている。男性と女性の結婚に対する価値観の違いや男女のジェンダー(社会的性差)から生まれる結婚生活(夫婦生活)の問題、夫婦の性的関係(性交渉や妊娠出産)にまつわる悩みなども結婚心理学で考察する対象である。

「配偶者との離婚」を決断することが比較的容易な国や地域では、離婚に関係する心理状態や離婚を円滑に進めるための問題解決(離婚相談的な対人援助)までもが結婚心理学の対象になっている。反対に、イスラム教圏や儒教圏など離婚に対する禁忌(タブー)の意識が強い地域や、経済的事情や共同体の慣習により離婚することが難しい開発途上国では、離婚に至る夫婦関係や「別れたい」という男女の心情が問題になることは少ない。

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2007年05月05日

[ケースワーク・スーパービジョン(casework supervision)とソーシャルワーカー]

ケースワーク・スーパービジョン(casework supervision)とソーシャルワーカー

生活環境に恵まれないクライエントの心理相談を継続しているうちに、自分とクライエントを同一化して感傷的に思い悩んでしまう「投影同一視」の心理機制が働いてしまうこともある。こういった陽性・陰性の感情転移に対して適切な気づきを得て対処するために、『ケースワーク・スーパービジョン(casework supervision)』というケースワーカー自身に対して行われる心理カウンセリング(心理面接による指導的な助言・援助)が重要になってくる。

スーパービジョン(supervision)は、カウンセラー(心理臨床家)の専門的な訓練制度やメタレベルのカウンセリング技術(カウンセラーの心理面接に対するカウンセリング技術)として発展してきた歴史を持っている。スーパービジョンは、カウンセラーの自己分析を進めてカウンセリングの質を維持するための訓練制度(研修教育技法)であり、自分の抱えているカウンセリング事例(ケース)についてのアドバイスや指導を「経験のあるカウンセラー」から受けることもできる。スーパービジョンを実施する経験・能力・実績のあるカウンセラーのことを「スーパーバイザー(supervisor)」といい、スーパービジョンを受けるクライエント役になるカウンセラーのことを「スーパーバイジー(supervisee)」という。

スーパービジョンとは、普段主観的にしか体験することのできない自分自身の心理カウンセリング(セッション)を、能力と経験のあるスーパーバイザーの眼を通して客観的に検証する心理面接のことであり、『自分のカウンセリング(心理療法)の技法・理論・実践・話し方の問題点や課題』に気づく研修的な作業でもある。

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[ケースワーカー(caseworker)と社会福祉的な援助]

ケースワーカー(caseworker)と社会福祉的な援助

MSW(医療ソーシャルワーカー)やPSW(精神保健福祉士)が実施するソーシャルワークとは社会福祉事業の総称であり、ケースワーク(casework)とは社会福祉事業の『直接援助技術』の一つである。ケースワークとは、生活保護や育児支援など社会福祉制度の適用(生活環境の改善・経済的な援助)を必要とする社会的困窮者の個別事例(ケース)に合わせて、直接的に援助することである。ケースワークは、生活保護(公的扶助)など物質・経済的な援助に留まるものではなく、生活困窮者の心理社会的なストレスの緩和も重要な職務である。『臨床心理学的な対人援助(カウンセリング・心理療法)』を必要とする社会的弱者(各種の精神症状やストレスを抱えた困窮者)には、ケースワーカーが心理面接(心理相談)のサービスも提供することがある。

ケースワーカー(caseworker)とは、社会福祉事業全般を担当するソーシャル・ケースワーカー(social caseworker, 社会福祉家・社会活動家)の略称であり、社会的困窮者を対人援助するケースワークの専門的実践家のことである。社会福祉領域の拡大に伴い『教育支援・医療介護・保健福祉・障害者支援・児童福祉・産業福祉・老人福祉・司法矯正』などあらゆる領域でケースワーカーは働いており、『経済的困窮・身体障害・精神障害・知的障害・虐待環境』など自立困難な問題を抱えた人たちを心理的・経済的(制度的)に支援している。能力面・健康面・年齢で自立可能な人たちに対しては、段階的に社会的自立を支援していくことになるが、社会福祉制度の適用においてどこまで障害と困難を手厚く保護していくべきなのかについては絶えず議論がある。

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[ゲシュタルト療法のルール・自立的人間を目指すためのゲーム(体験的技法)]

ゲシュタルト療法のルールとゲーム・自立的人間を目指すためのゲーム(体験的技法)

ゲシュタルト心理学を前提とするゲシュタルト療法では、過去や未来に執着せず『今、ここ』から始めて感情と行動を変容させようとする。過去の不快な情動や記憶、人間関係の失敗に囚われると神経症的な症状が発現するが、ゲシュタルト療法では『現在の感情・感覚・長所への気付き(洞察)』を通して『自分の全体性・統合性』を取り戻そうとするのである。自分の全体性や統合性を取り戻す為の『体験的(身体動作的)な技法』のことをゲシュタルト療法では『エクササイズ(exercise)』と呼び、エンプティ・チェアやホットシートなど様々な技法が開発されている。

「あっ、そうだったのか」という『今、ここ』における感覚的(身体的)な気づき(洞察)によって、自分自身の個性と信念を肯定的に受け止められるようになれば、『他人の行動(発言)』『過去の記憶(思い出)』『生活環境の変化』に必要以上に惑わされることがなくなる。「自分の日常の人間関係(家族関係)を再現するロールプレイング」などを取り入れた体験的なセラピーを行うことで、本来の自己に気づくことができる。今まで抑圧していた感情(喜怒哀楽)や無視していた思考(相手・物事が好きか嫌いか)に気づくことで、どのような発言や行動をすれば心理的ストレスを溜め込まず「自然な自分の人生」を歩めるのかが分かってくるのである。

ゲシュタルト療法の理想とする人間観は、自分の人生と行動に対して自分で責任を取ることができる『自立的な人間(自立人間)』である。ゲシュタルト療法の始祖であるフリッツ・パールズ(F.S.Perls)は、自分で自分の人生の責任が取れず『今、ここ』における有効な決断ができない人間を神経症的な『未熟な人間(未熟人間)』と呼び、ゲシュタルト療法では『未熟な人間』から『自立した人間』への変容を促進することが主要な目標だと訴えた。

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2007年04月29日

[ゲシュタルト心理学(gestalt psychology)とゲシュタルト療法(gestalt therapy)]

ゲシュタルト心理学(gestalt psychology)とゲシュタルト療法(gestalt therapy)

フリッツ・パールズ(F.S.Perls)ローラ・パールズの夫妻が創始したゲシュタルト療法(gestalt therapy)については、過去の記憶や情緒に振り回されない「今」の原則(principle of the now)について述べ、ゲシュタルト療法の人格理論である「5つの層理論」についても説明を加えた。

K.ケーラーやW.コフカ、M.ヴェルトハイマーらが創建した人間の知覚特性や認知傾向を中心に取り扱うゲシュタルト心理学派とパールズのゲシュタルト療法には直接的な関係性はないが、ゲシュタルト(gestalt)とは仮現運動などに代表される「まとまりのある全体性(秩序のある構造)」という意味である。つまり、ゲシュタルト心理学とはそれまで科学的心理学の主流であったヴントなどに代表される要素還元主義的な構成主義・連合主義のアンチテーゼであり、科学的心理学に全体的な現象把握と力学的な理論構成という新たな枠組みを与えた心理学の潮流である。

ゲシュタルトという概念自体を始めて提唱したのは心理学者マイノングの弟子として知られるクリスチャン・フォン・エーレンフェルス(1859-1932)であり、エーレンフェルスは音楽のメロディ研究から一つ一つの部分としての音符が全体としてまとまりのあるメロディになることを発見してこの現象をゲシュタルト質(形態質)と命名した。ゲシュタルト質とは、「部分の総和以上の性質を持つ全体」ということであり、ゲシュタルト質は幾ら詳細に要素(部分)を分析しても全体として生み出される法則的な性質にたどり着くことが出来ないとされた。

ゲシュタルト心理学ではレヴィンの壺(多義的なだまし絵)を題材とした「地と図の関係」や、同じ文字を長時間見つめ続けると意味が分からなくなる「ゲシュタルト崩壊」などの研究成果が知られている。ゲシュタルト心理学は、一般的に、人間の知覚特性(物体認知の法則性や体制化)に関する科学的研究を取り扱ったが、ゲシュタルト療法では、過去の記憶や情動に執着せずに「今、ここから」始めて心の直感的・感覚的・身体的な全体性(ゲシュタルト)を回復することが心理療法の目的とされた。

ゲシュタルト(全体性・形態)とは、部分の単なる総和(集合)としての全体ではなくて、部分の総和以上の特性(機能・法則)を示す全体性のことであり、ゲシュタルト療法は全体を部分に分解しようとする要素還元主義や人間を科学的に理解して操作しようとする機械論的人間観を否定するものである。ゲシュタルト心理学は、知覚心理学の分野から研究が始まったが、それ以降、記憶機能を取り扱う学習心理学や思考過程を理解する実験心理学などにもゲシュタルト心理学的な研究手法が応用されるようになった。今日ではゲシュタルト心理学派の勢力は極めて弱くなっているが、アメリカでゲシュタルト心理学が隆盛していた時期には、人間の行動の形成過程を理論化したクルト・レヴィンやK.ゴールドスタインといった著名なゲシュタルト心理学者が登場した。

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[K-ABCアセスメントバッテリー(K-ABC心理教育診断検査バッテリー)]

K-ABCアセスメントバッテリー(K-ABC心理教育診断検査バッテリー)

K-ABCアセスメントバッテリー(Kaufman assessment battery for children)とは、A.S.カウフマンN.L.カウフマンによって1983年に開発された幼児・児童向けの個別式心理教育アセスメントの総合的なバッテリー(組み合わせ)である。日本版のK-ABCは、松原達哉、前川久男、藤田和弘、石隅利紀らによって標準化が行われた。対象年齢は2歳6ヶ月から12歳6ヶ月までとなっており、幼児期の子供から小学校を卒業するまでの児童に対応できるアセスメントであり、ビネー式知能検査やウェクスラー式知能検査に類似した知的能力(知能)を測定することもできる。K-ABCでは知能と言わずに「認知処理能力」と呼んでいるが、K-ABCでもIQ(知能指数)を相対的な比較が可能な偏差値で算出することができる。

その意味で、子供向けのK-ABCとは、個別式の知能検査であると同時に、子供の知的能力を発達水準(生活年齢)と照らし合わせて総合的に評価する教育目的の発達検査としての特徴を併せ持っている。K-ABCでは子供の知的能力の測定に対して、新規の問題を解く「認知処理能力過程」と過去に学習した基礎知識を活用する「知識・技能の習得度(習得知識)」の二つの側面からアプローチする。

K-ABCの心理アセスメントを通して、一人一人の子供の知的能力と認知処理過程の特色(得意な問題分野と苦手な問題分野)を把握することができ,それぞれの子供の能力と適性、ニーズに合った学校教育と学習指導に活かすことができる。K-ABCの目的は飽くまで「子供の知的能力の特性と可能性にフィットした教育機会とアプローチを提供すること」であり、子供の知的能力を相対的に評価して区別することではないことに注意が必要である。

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