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2016年09月19日

[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2

精神科医(カウンセラー)が患者(クライエント)に対して抱く強い感情である『逆転移』の中には、患者(クライエント)との治療的対話の相互作用と投影同一視によって生じた精神科医(カウンセラー)自身の強烈な感情・記憶・反応パターンが含まれている。

そして、精神科医(カウンセラー)が自分の逆転移を引き起こしたクライエントの言動を深く掘り下げて分析していくことによって、クライエントの内的な葛藤や過去のトラウマの影響、対象関係のパターンをより実際的なものとして共感的に理解することができるようになるのである。

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

心理療法やカウンセリングにとって最も重要なのは『カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの相性』であり、精神分析家・精神科医のM.ストーン(M.Stone)は心理療法の効果に最も大きな影響があるのは『カウンセラー・治療者が患者のことを気にいるかどうかである』と語っている。

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[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

クライエントの自己理解を『乳幼児期から現時点までの生活歴・感情と記憶』を踏まえて、『連続的かつ内省的な経験の流れ』に位置づけていき、その流れ中のどこまでが健康(正常)であり、どの時点の辺りから精神病理が出てきたのかを評価していく。

正常な精神機能や心理状態が病態化してきた時期と原因を探っていくのだが、クライエントによっては老年期になるまでは自己評価と社会適応が非常に良かったのに、老年期になって自分をサポートしてくれた配偶者を亡くして対象喪失の悲哀感・孤独感から深刻なうつ病(気分障害)を発症してしまうような人も少なくない。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

次に、クライエント(患者)がどのような理由や経緯で、精神科を受診して心理面接を受けるようになったのか、精神科の面接・治療・カウンセリングにどのようなニーズや期待を持っているのかについてもそれとなく聴いていくようにすると、『治療の段階的な目標設定』がしやすくなる。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

力動的精神医学の精神療法では、『自分の記憶・感情・体験』を振り返って再構築したり言語化したり解釈したりしていくだけの抽象的な思考力や言語的な運用力、比喩(メタファー)の理解力などが必要だからである。治療的に効果のある内面的・内省的な自己探求を心理面接(精神分析的な面接)で行っていくには、一定以上の言語的・知的な能力や情緒の豊かさ・意思の強さのようなものが求められてくるということでもある。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神疾患で最も言語的コミュニケーションに問題が発生しやすい統合失調症の診断的面接においてさえも、心理的資質(psychological mind)という概念に象徴される『患者(クライエント)の資質・能力・態度・意欲』は治療の見通しにとってかなり大きな影響力を持っている。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神医学の診断は『記述的診断』『精神力動的診断』を組み合わせることによって、クライエント(患者)の心理社会的な状態像を理解して、今後の治療方針の選択を含む『見立て』をすることができる。

現代の精神医学の診断と治療ではクライエントを網羅的かつ統合的に理解するために、その原因を多角的に考える『生物−心理−社会モデル(bio-psycho-social model)』が採用されている。

初回面接(インテイク面接)では、クライエント(患者)が精神科医と治療同盟(作業同盟)を構築していくだけの『精神機能の正常性・治療的対話の応答性』がどれくらいあるかのチェックも行われる。精神科医やカウンセラーの考える治療方針に協力的・参加的であるかどうかと合わせて、心理アセスメントにおける診断的面接と心理検査(心理テスト)に協力的かどうかということも重要になる。

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2016年08月21日

[統合失調症の幻覚・幻聴と双極性障害の躁状態・うつ状態:周囲から精神科受診を勧められる症状・問題]

統合失調症の幻覚・幻聴と双極性障害の躁状態・うつ状態:周囲から精神科受診を勧められる症状・問題

精神医学の診断的面接では、ここまで書いてきたクライエント本人の希望によって自ら治療を求めて受診するケースだけではなくて、家族や上司、恋人・友人などがいつもと違う様子や異常な言動・生活状況に気づいて受診を勧めたり半ば強制したりするケースもある。周囲の人がクライエントの異常や問題に気づいて受診してくるケースで最も多いのは、本人の言語能力がなかったり低かったりする『乳幼児・児童・思春期前後の子供』である。

社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科でクライエントが訴える主訴

青年期・成人期以降において『周囲の勧め・強制』で受診してくることが多い精神疾患としては、『統合失調症・双極性障害(躁うつ病)・てんかん・アルコール依存症・薬物依存症・各種のパーソナリティー障害・症状精神病・老年期の認知症』などがある。

統合失調症の可能性が疑われるクライエントでは、家族や友人が接近すると顔を背けたり自分を陥れようとしているという被害妄想を訴えたりする。誰かにいつも監視されているとか、盗聴器・隠しカメラが仕掛けられているとかいった被害妄想じみた訴えを、頻繁に家族や友人にすることで精神科・心療内科の受診を勧められて来るケースもある。自分のことを非難したりバカにしたり責めたりする声が聞こえるという『幻聴の訴え』を周囲の人にしていることも多い。

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[社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科で患者(クライエント)が訴える主訴]

社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科で患者(クライエント)が訴える主訴

不安障害の一種としてかつて対人恐怖症と呼ばれた『社交不安障害(社会不安障害)』があるが、これは人前に出たり、人前で何かを話したり行ったりする時に『過剰な緊張・不安・恐怖』を感じる精神疾患である。

社交不安障害では『過剰な緊張・不安・恐怖』を感じることによって、手足が振るえたり顔が紅潮して赤面したり、大量の冷や汗をかいたり、声が振るえてどもったりするので、更に対人緊張・対人不安が強くなっていく。社交不安障害が重症化すると人前で何もできなくなり、強い不安からひきこもりのようになって『他者・外部社会との接触』を拒むような状態になってしまう。

精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴

重症化した社交不安障害(社会不安障害)は、妄想性障害や妄想性パーソナリティー障害、統合失調型とオーバーラップ(重複)することも多く、ある種の被害妄想のような妄想的確信を強めていくこともある。

例えば、別に見られていないのに周囲の視線が絶えず気になる、誰かからいつも見られている監視されている、自分の顔や外見が醜いという醜形恐怖障害、自分から変な臭いが出ているという自己臭恐怖(体臭恐怖)、自分の視線が他人を不快にさせて傷つけているという視線恐怖などを訴え始めるクライエントもいる。精神病かどうかの鑑別診断では、『現実と妄想(空想)の区別』をするだけの現実検討能力(現実吟味能力)が残っているかどうかが問題になってくる。

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[精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴]

精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴

精神医学の診断的面接では、最初に『クライエントの受診動機の見極め』『質問を介したラポール(相互的信頼感)の構築』から行っていくことになる。クライエントの受診動機では、自分自身が希望して診療に訪れているのか、それとも家族や上司などに言われてきたのか、嫌々家族に連れられてきているのかの見極めが重要になる。

自分で望んでやって来た前者であれば、一般に診療の動機づけが高くなり積極的に治療に参加してくれるが、後者の場合には『本人が自分の現状の問題や病気の存在を認めて前向きに治療に取り組もうとする姿勢』ができあがるまでは治療が停滞しやすい。

記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解

診断的面接では、クライエントの『表情・態度・印象・コミュニケーションの取り方(意志・感情の疎通性)』を丁寧に観察して、受診の動機づけの事情を理解しながらラポール(相互的な信頼感)を形成していく。クライエントの症状・問題の観察と記述を行う精神科医(心理臨床家)の態度は大きく分けて、『クライエントと心理的距離を置く客観的観察』『クライエントの主観に共感したり感情移入したりする了解的理解』の二つに分けられる。

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2016年05月23日

[ミシェル・セールの『響きと怒り』とノイズの暴力論]

ミシェル・セールの『響きと怒り』とノイズの暴力論

フランスの哲学者ミシェル・セール(Michel Serres, 1930〜)は、科学的知識の獲得過程について研究した科学哲学者ガストン・バシュラール(Gaston Bachelard,1884-1962)に師事して、ブルバキ構造主義とライプニッツ哲学の影響を受けながら、『現代の百科全書派』と呼ばれる自己の哲学を確立した。

ミシェル・セールは数理哲学を研究して、情報科学分野でもノイズ論や認識論で功績を上げたが、今村仁司(いまむらひとし)によると『響きと怒り』の概念を元にした暴力論も論じているという。セールは『響きと怒り』を哲学の新しい対象として、渡り鳥・蚊・バッタ・遊牧民などの群れを集合体(アグレガ)と呼んだライプニッツ哲学をベースにして、集合体(アグレガ)の本質である『多様性・関係性』を巡る独自の哲学的考察を深めていったのである。

セールの響きと怒りをコンセプトとする暴力論は、集合体の唸りや叫びなど『聴覚』の刺激に基づいており、世界にある騒音と狂乱などの“ノイズ(雑音)”が、暴力の形成や発動の予兆にもなっているのである。本人の意志とは無関係に聴覚を激しく刺激するノイズ(車の騒音・集団の騒ぎ・選挙カーの絶叫・群衆の雑踏・電車の音・大勢の子供の大声・動物の吠え声など)は、確かに視点によっては『避けがたい暴力』にもなり得るだろう。生活音のノイズを巡る近隣トラブルが、殺傷沙汰の事件の原因になってしまうことも少なくないが、それはノイズがある種の暴力として非常に強い怒りや不快を引き起こす危険性を示唆している。

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2015年12月20日

[思春期・青年期の“非社会的問題(不登校・ひきこもり)+反社会的問題(非行・逸脱)+パーソナリティー障害”]

思春期・青年期の“非社会的問題(不登校・ひきこもり)+反社会的問題(非行・逸脱)+パーソナリティー障害”

思春期・青年期に発生する現象面での不適応・問題行動の背後には、各種の精神疾患やパーソナリティー障害が隠れていることもあるので、精神科(心療内科)の専門医はそれらの精神疾患やパーソナリティー障害を見落とさないように鑑別していくことが求められる。

青年期精神医学の診断と治療のポイント2:発達圧力と子供・親・教師の相談体制

思春期・青年期の典型的な現象面における臨床類型(不適応・問題行動)は、大きく分ければ『不登校・ひきこもりの非社会的問題行動群』『非行・暴力・逸脱の反社会的問題行動群』とに分けることができる。

1970〜1980年代くらいまでは中学生・高校生の『校内暴力・家庭内暴力・暴走族への関与』などが社会問題として取り上げられる頻度が多く、『非行・暴力・逸脱の反社会的問題行動群』が警戒されていた。しかし、平成期に入ってからはむしろ、学校生活や社会生活、人間関係から傷つかないように遠ざかって関わらないようにしようとする『不登校・ひきこもりの非社会的問題行動群』のほうが目立つようになってきた。

近年は思春期・青年期の子供だけではなく、中年期・老年期の大人まで含めて『社会的ひきこもり』の状態にある人が、日本に数百万人〜1000万人以上の単位でいるとの推計も出されていて、就労拒絶的なニート問題と絡めて不登校・ひきこもりが話題になることも多い。

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[青年期精神医学の診断と治療のポイント2:発達圧力と子供・親・教師の相談体制]

青年期精神医学の診断と治療のポイント2:発達圧力と子供・親・教師の相談体制

青年期の患者の精神臨床で気をつけるべきポイントとしては、『発達促進的な視点を持つこと』『進学・就職など発達課題を達成しなければならないと思う発達圧力の考慮』がある。青年期の患者に対しては精神疾患を治療するという視点だけではなくて、精神的な発達の停滞を改善したり、発達の障害になっているものを除去したりすることで発達を促進するという視点を持つことが重要になる。

もう一つ、青年期の苦悩の根本的な要因になりやすいのは、いじめの問題を除けば、『進学しなければならない・就職しなければならないという社会的自立を志向する発達圧力』である。

青年期精神医学の診断と治療のポイント1:青年期の急激な精神発達と環境の変化

すなわち、学業や就活が上手く思い通りにいかないことによって、不適応(不登校)や自尊心の傷つき(無気力・ひきこもりなど)に陥りやすいということであり、『社会的・職業的な自立に向かう発達過程の焦燥感・自責感』などが精神疾患・神経症の症状を誘発してしまうことも少なくない。

青年期の精神臨床では、医師や臨床心理士、看護師、カウンセラー、精神保健福祉士などが、患者(クライエント)に特有の心理的世界や苦悩の原因などに共感的に寄り添って支持しながら、一緒に対処方法を探していくという姿勢が基本になってくる。

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[青年期精神医学の診断と治療のポイント1:青年期の急激な精神発達と環境の変化]

青年期精神医学の診断と治療のポイント1:青年期の急激な精神発達と環境の変化

青年期(adolescence)は急速に心身・環境が変化する発達のプロセスであり、青年期に発生する精神医学的な疾患や問題はその発達プロセスの影響を強く受けている。青年期は『第二次性徴期』が成熟してきて、男性・女性としての生理的かつ性自認的な変化が急速に進み、恋愛関係(異性関係)にまつわる喜びと苦悩、優越感と劣等感の両極で揺れ動きやすい時期でもある。

青年期には知識・経験が増加したり抽象的な思考能力が向上したりすることで、それ以前よりも総合的な認知能力も飛躍的に発達するので、『哲学的・実存的な生きる意味(自己の価値)にまつわる苦悩』も深まりやすい。心理的な問題が『多様性・複雑性』を持ち始めることで、それぞれの青年ごとの世界観や人間関係の個人差も大きくなってくる。その結果、『青年個人に固有の性格傾向と悩み・適応水準と発達課題』が浮かび上がりやすくなるわけである。

青年期の患者に対する精神医学的な診断は、一般に正確な診断が難しいことが多いと言われる。それは成人期の患者と比較して『精神発達過程の中途の段階』にあるからであり、『精神疾患なのか一時的な発達の停滞による精神機能の乱れなのか』の判断に一定の曖昧さが含まれやすいからである。

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2015年12月18日

[青年期精神医学における『思春期・青年期』の年代区分:青年期危機説・青年期平穏説]

青年期精神医学における『思春期・青年期』の年代区分:青年期危機説・青年期平穏説

思春期・青年期の年代(発達年齢)は、以下の4つの年代区分に分けて考えることができる。

青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題

1.前青年期(preadolescence)……小学校高学年(10〜12歳頃)の世代で、同性同士の友達で集まって悪ふざけやいたずら、喧嘩などをしやすい『ギャングエイジ』とも呼ばれることがある。小学校低学年では男子と女子が一緒になって遊ぶことも多いが、この年代では男子は男子と仲間集団を作り、女子は女子と仲間集団を作るという特徴がある。異性を意識し始めることによってかえって異性との交流を恥ずかしく感じ遠ざけやすくなる。急速な身体的発達に対して、精神(情緒・コミュニケーション能力)が追いつきにくい年代でもある。

2.青年期前期(early adolescence)……中学生(12〜15歳頃)の世代で、第二次性徴期の始まりと身体的な性差の自覚の強まりによって、児童期の自己イメージを保てなくなり、それ以前よりも異性・恋愛を意識しやすくなる。両親(母親)との心理的距離が開きやすくなり、親から過度に近づかれたり干渉されたりすると強い反発・抵抗を示す子供も増えてくる。同世代の友人関係の心理的・発達的な重要性が高まり、『親友』と呼べるような存在ができたり、親友・仲間集団とプライベートな秘密を共有したりするようになる。

3.青年期中期(middle adolescence)……高校生(15〜18歳頃)の世代で、親への情緒的な依存性・結合性が弱まって、『自己(自分自身の存在・関係・目標)への関心』が非常に高まってくる。自己に対して過大評価あるいは過小評価をしやすく、異性関係(恋愛関係)への興味・欲求が強まる一方で、ささいなことにも悩みやすく傷つきやすい過敏な感受性を持ちやすくなる。

同性同士の付き合いは維持されるが、実際に恋愛をする友人も増え始め、同性よりも異性への関心が強くなりやすい。『異性にモテるかモテないか(今風にいえばリア充か非リア充か)』によって自己評価の揺れやコンプレックスの増減が起こりやすくなるが、社会経済的な能力(感情制御・対人評価の能力)が未熟であるため、恋愛をしても長続きはしにくい。

4.青年期後期(late adolescence)……大学生(18〜22歳頃)の世代で、自分がどのような人間であるかどういった他者と関わっていきたいのか、人生でどんな目標や職業意識があるのかといった『自己アイデンティティー』がかなり確立してくる段階である。

青年期特有の浮遊感・流動性・衝動性のようなものが落ち着いてきて、社会や経済、人間関係における自分の位置づけがわかってくる年代でもあり、『将来の社会経済的自立・職業選択』に向けた準備が整い始めてくることが期待される段階でもある。異性との恋愛関係においても『安定した充実感・将来性のある関係』を構築・維持しやすくなり、この世代で築かれた恋愛関係の中には将来的に結婚・出産などへと発展していくものも出て来る。

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[青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題]

青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題

青年期精神医学(adolescent psychiatry)が研究・臨床の対象にしているのは、『思春期・青年期の発達段階』にある人である。『思春期(pre-adolescence)』というのは、子供から成人への心理社会的な移行段階(大人と子供の中間期)であり、日本では特に第二次性徴期が始まり異性・恋愛への関心も高まる中学生〜高校生くらいの年代の未成年者の発達時期を思春期と呼ぶことが多い。

青年期精神医学が対象にしている人の年代は、概ね第二次性徴期が始まる12〜13歳頃から大学生くらいの段階の21〜22歳頃までである。一般的に用いられている『青年の概念・語感』からすれば、かなり幼い中学生くらいまでの年代の子供を含んでいる一方で、大学生より年上の社会人として働く20代の青年までは含んでいない特徴がある。

中学生くらいの年代の子供は、『青年期(adolescence)』というよりは『思春期(pre-adolescence)』に分類されるのが日本語の語感として自然なので、『思春期・青年期精神医学』という分野名を標榜する専門医もいる。

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2015年10月03日

[DSM-W-TRにおいて“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害]

DSM-W-TRにおいて“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害

アメリカ精神医学会(APA)が編纂したDSM-W-TRで、“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害には以下のような種類があります。それらの精神障害には、広汎性発達障害(PDD)、知的障害(精神遅滞)、不安性障害(社会不安)、行動の障害、依存症(習癖)などが含まれています。

DSM-W-TRによる子供の精神障害・知的障害(精神遅滞)

精神遅滞(第2軸の知的障害に相当)

軽度精神遅滞・中等度精神遅滞・重度精神遅滞・最重度精神遅滞・重症度が特定不能な精神遅滞

IQ(知能指数)と最終発達年齢による精神遅滞の分類

軽度精神遅滞……IQは50〜70・最終発達年齢は小学生並みの水準・初歩的な教科(読み書き計算)の教育効果に期待ができる・精神遅滞全体の約85%

中等度精神遅滞……IQは35〜49・最終発達年齢は小学校就学前の水準・基本行動の訓練効果に期待ができる・精神遅滞全体の約10%

重度精神遅滞……IQは20〜34・最終発達年齢は2〜4歳程度・自立的行動はできず保護が必要である・精神遅滞全体の約3〜4%

精神遅滞……IQは0〜19・最終発達年齢は0〜2歳程度・保護による生命と生活の維持が中心である・精神遅滞全体の約1〜2%

学習障害

読字障害・算数障害・書字表出障害・特定不能の学習障害

コミュニケーション障害

表出性言語障害・受容‐表出混合性言語障害・音韻障害・吃音症・特定不能のコミュニケーション障害

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2015年09月26日

[親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復]

親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復

精神分析的な母子関係の理解では、親(養育者)が自分が育てられたような方法・態度で、自分の子供を無意識的に育ててしまうという『世代間伝達(intergenerational transmission)』の傾向性が指摘される。

精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』

この育児における世代間伝達は、良い方向で作用すれば『子供の倫理的な態度・人生を楽しむ姿勢・良好な親子関係・向上心や忍耐力・規律正しさ』などにつながることもあるが、悪い方向で作用すれば自分が虐待(暴力による懲罰・しつけ)を受けて育てられたから自分も子供に虐待をしてしまうといった『虐待の連鎖』を生んでしまうこともある。

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[精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』]

精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』

母子一体感(母子のペアとしての認識)を前提にすると、乳幼児期の発達段階にある子供の問題を考える際には、以下のようなケースを想定することができる。

1.乳幼児本人の要因……遺伝的・生理的な要因に基づく広汎性発達障害や情緒障害など。

2.親(養育者)の要因……マタニティーブルー(産後うつ)や育児不安、育児ノイローゼなど。

3.親(養育者)と乳幼児の相性の要因……“ストレス耐性が低い・神経過敏・心配性・短気・飽きやすい”などの特徴を持つ親(養育者)が、“過敏・わがままで育てにくい性格行動パターンを持つ乳幼児”を育てるケースなど。

R.エムディの『母親参照機能(maternal referencing)』とD.スターン(D.Stern)の『情動調律(affect attunement)』

乳幼児精神医学(乳幼児精神保健)は、“乳幼児の発達プロセス・親(養育者)の影響・養育環境(家庭環境)の要因”などに詳しい各分野の専門家がコラボレートする学際的・総合的な精神医学・メンタルヘルスの分野である。

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2015年09月07日

[摂食障害(eating disorder)の診断基準]

摂食障害(eating disorder)の診断基準

摂食障害の診断基準については、『厚生労働省特定疾患・神経性食思不振症調査研究班の診断基準』『DSM-W-TRの診断基準』が用いられている。

神経性食思不振症の診断基準(厚生労働省特定疾患・神経性食思不振症調査研究班の診断基準)

以下の6項目の診断基準を満たすものを、神経性食思不振症(拒食症)として診断する。1、2、3、5は既往歴を含む。6項目すべてを満たさない場合は疑診例として扱う。

1.標準体重のマイナス20%以上の痩せ

2.『不食・拒食・過食・無茶食い・隠れ食い』などの食行動の異常

3.『体重増加に対する極端な恐怖』などの体重・体型についての歪んだ認識

4.発症年齢は30歳以下である。

5.女性の場合は無月経である。

6.痩せの原因と考えられる他の器質的疾患がない。

神経性食欲不振症の診断基準(DSM-W-TR)

1.年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少、または成長期間中に期待される体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる状態)

2.体重が不足していても、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖

3.自分の体重または体型の感じ方の障害。自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認

4.初潮後の女性の場合は、無月経、つまり月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(注意:エストロゲンなどのホルモン投与療法を受けいていて服薬期間中のみ月経が起きている場合は、その女性は無月経の状態にあると認識される)

摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)

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[摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)]

摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)

摂食障害(eating disorder)は、器質的疾患や他の精神疾患が原因ではない心理的要因によって『食行動の異常(拒食・過食)』を発症する精神疾患の総称である。

摂食障害について初めて報告した医師は、イギリス・ロンドンの内科医W.ガル(W.Gull)とされており、1873年に極端に食欲が低下して病的に痩せている女性患者に対して『Anorexia Nervosa(アノレクシア・ネルヴォーザ)』という病名をつけたのである。“Anorexia”というのは、『食欲がない』という意味である。

過度に食欲がなくなったり食事を食べなくなったりして、極端な痩せの状態に陥る摂食障害を『神経性食欲不振症・神経性食思不振症(Anorexia Nervosa,アノレクシア・ネルヴォーザ)』『拒食症』と呼んでいる。

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2015年06月19日

[性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:2]

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:2

トランスセクシャリズム(トランスジェンダー)の人は、生物学的な健康状態には問題がなく性的な身体構造にも異常は見られないが(性ホルモンの分泌に一定の偏りが見られることはあるが)、自分の人格・自己アイデンティティにおいて『自分の生物学的性差とは逆の性(男性であれば女性)』に自分が帰属していると確信していて、自分と逆の性別の社会的役割・行動の傾向に基づいて生きていきたいと感じている。

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1

更には、自分の生物学的性差に従って生きることに非常な違和感や苦痛、耐え難さを感じていることが多く、話し方にせよ服装・化粧にせよ整形手術(性転換手術含む)にせよ、何らかの形で自分が『自分とは逆の性別』に帰属していること(そのように振る舞って生きていくこと)を表現したり確信したりして、社会・他者に認められたいと思っていることも多い。

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[性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1]

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1

精神医学の診断名で『性同一性障害(gender identity disorder:GID)』と呼ばれる性自認(性別の自己認識)や性的アイデンティティと関わる精神障害は、生物学的な性差と社会心理的な性差がズレることによって発症する心理的・生活的な問題である。

性同一性障害(GID)については、『自分の生物学的性差とは異なる性』であるとか異なる性になりたいとかいう性自認やそれに基づく性別役割行動は“障害・異常”ではなく“個性・特徴”であるという意見もあり、障害という概念を用いるべきではないという反対意見もある。

そういう差別感覚を排除しようとするリベラルな意見もあることを踏まえた上で、この項目では精神医学的な概念・診断基準について説明しているので、『性同一性障害(GID)』という精神医学分野における診断名を用いることにする。

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posted by ESDV Words Labo at 19:58 | TrackBack(0) | せ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする