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2015年12月18日

[青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題]

青年期精神医学と『思春期・青年期』に特有の発達課題

青年期精神医学(adolescent psychiatry)が研究・臨床の対象にしているのは、『思春期・青年期の発達段階』にある人である。『思春期(pre-adolescence)』というのは、子供から成人への心理社会的な移行段階(大人と子供の中間期)であり、日本では特に第二次性徴期が始まり異性・恋愛への関心も高まる中学生〜高校生くらいの年代の未成年者の発達時期を思春期と呼ぶことが多い。

青年期精神医学が対象にしている人の年代は、概ね第二次性徴期が始まる12〜13歳頃から大学生くらいの段階の21〜22歳頃までである。一般的に用いられている『青年の概念・語感』からすれば、かなり幼い中学生くらいまでの年代の子供を含んでいる一方で、大学生より年上の社会人として働く20代の青年までは含んでいない特徴がある。

中学生くらいの年代の子供は、『青年期(adolescence)』というよりは『思春期(pre-adolescence)』に分類されるのが日本語の語感として自然なので、『思春期・青年期精神医学』という分野名を標榜する専門医もいる。

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2015年10月03日

[DSM-W-TRにおいて“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害]

DSM-W-TRにおいて“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害

アメリカ精神医学会(APA)が編纂したDSM-W-TRで、“乳幼児期・児童期(小児期)・青年期”に初めて診断される精神障害には以下のような種類があります。それらの精神障害には、広汎性発達障害(PDD)、知的障害(精神遅滞)、不安性障害(社会不安)、行動の障害、依存症(習癖)などが含まれています。

DSM-W-TRによる子供の精神障害・知的障害(精神遅滞)

精神遅滞(第2軸の知的障害に相当)

軽度精神遅滞・中等度精神遅滞・重度精神遅滞・最重度精神遅滞・重症度が特定不能な精神遅滞

IQ(知能指数)と最終発達年齢による精神遅滞の分類

軽度精神遅滞……IQは50〜70・最終発達年齢は小学生並みの水準・初歩的な教科(読み書き計算)の教育効果に期待ができる・精神遅滞全体の約85%

中等度精神遅滞……IQは35〜49・最終発達年齢は小学校就学前の水準・基本行動の訓練効果に期待ができる・精神遅滞全体の約10%

重度精神遅滞……IQは20〜34・最終発達年齢は2〜4歳程度・自立的行動はできず保護が必要である・精神遅滞全体の約3〜4%

精神遅滞……IQは0〜19・最終発達年齢は0〜2歳程度・保護による生命と生活の維持が中心である・精神遅滞全体の約1〜2%

学習障害

読字障害・算数障害・書字表出障害・特定不能の学習障害

コミュニケーション障害

表出性言語障害・受容‐表出混合性言語障害・音韻障害・吃音症・特定不能のコミュニケーション障害

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2015年09月26日

[親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復]

親の子育てを自分も繰り返してしまう『世代間伝達(intergenerational transmission)』:良い子育てと悪い子育て(虐待)の反復

精神分析的な母子関係の理解では、親(養育者)が自分が育てられたような方法・態度で、自分の子供を無意識的に育ててしまうという『世代間伝達(intergenerational transmission)』の傾向性が指摘される。

精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』

この育児における世代間伝達は、良い方向で作用すれば『子供の倫理的な態度・人生を楽しむ姿勢・良好な親子関係・向上心や忍耐力・規律正しさ』などにつながることもあるが、悪い方向で作用すれば自分が虐待(暴力による懲罰・しつけ)を受けて育てられたから自分も子供に虐待をしてしまうといった『虐待の連鎖』を生んでしまうこともある。

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[精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』]

精神分析の『臨床乳児(clinical infant)』と身体医学・保育・心理学の『被観察乳児(observed infant)』

母子一体感(母子のペアとしての認識)を前提にすると、乳幼児期の発達段階にある子供の問題を考える際には、以下のようなケースを想定することができる。

1.乳幼児本人の要因……遺伝的・生理的な要因に基づく広汎性発達障害や情緒障害など。

2.親(養育者)の要因……マタニティーブルー(産後うつ)や育児不安、育児ノイローゼなど。

3.親(養育者)と乳幼児の相性の要因……“ストレス耐性が低い・神経過敏・心配性・短気・飽きやすい”などの特徴を持つ親(養育者)が、“過敏・わがままで育てにくい性格行動パターンを持つ乳幼児”を育てるケースなど。

R.エムディの『母親参照機能(maternal referencing)』とD.スターン(D.Stern)の『情動調律(affect attunement)』

乳幼児精神医学(乳幼児精神保健)は、“乳幼児の発達プロセス・親(養育者)の影響・養育環境(家庭環境)の要因”などに詳しい各分野の専門家がコラボレートする学際的・総合的な精神医学・メンタルヘルスの分野である。

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2015年09月07日

[摂食障害(eating disorder)の診断基準]

摂食障害(eating disorder)の診断基準

摂食障害の診断基準については、『厚生労働省特定疾患・神経性食思不振症調査研究班の診断基準』『DSM-W-TRの診断基準』が用いられている。

神経性食思不振症の診断基準(厚生労働省特定疾患・神経性食思不振症調査研究班の診断基準)

以下の6項目の診断基準を満たすものを、神経性食思不振症(拒食症)として診断する。1、2、3、5は既往歴を含む。6項目すべてを満たさない場合は疑診例として扱う。

1.標準体重のマイナス20%以上の痩せ

2.『不食・拒食・過食・無茶食い・隠れ食い』などの食行動の異常

3.『体重増加に対する極端な恐怖』などの体重・体型についての歪んだ認識

4.発症年齢は30歳以下である。

5.女性の場合は無月経である。

6.痩せの原因と考えられる他の器質的疾患がない。

神経性食欲不振症の診断基準(DSM-W-TR)

1.年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少、または成長期間中に期待される体重増加がなく、期待される体重の85%以下になる状態)

2.体重が不足していても、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖

3.自分の体重または体型の感じ方の障害。自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認

4.初潮後の女性の場合は、無月経、つまり月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(注意:エストロゲンなどのホルモン投与療法を受けいていて服薬期間中のみ月経が起きている場合は、その女性は無月経の状態にあると認識される)

摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)

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[摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)]

摂食障害(eating disorder)の病態と拒食症・過食症のオーバーラップ(重複)

摂食障害(eating disorder)は、器質的疾患や他の精神疾患が原因ではない心理的要因によって『食行動の異常(拒食・過食)』を発症する精神疾患の総称である。

摂食障害について初めて報告した医師は、イギリス・ロンドンの内科医W.ガル(W.Gull)とされており、1873年に極端に食欲が低下して病的に痩せている女性患者に対して『Anorexia Nervosa(アノレクシア・ネルヴォーザ)』という病名をつけたのである。“Anorexia”というのは、『食欲がない』という意味である。

過度に食欲がなくなったり食事を食べなくなったりして、極端な痩せの状態に陥る摂食障害を『神経性食欲不振症・神経性食思不振症(Anorexia Nervosa,アノレクシア・ネルヴォーザ)』『拒食症』と呼んでいる。

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2015年06月19日

[性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:2]

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:2

トランスセクシャリズム(トランスジェンダー)の人は、生物学的な健康状態には問題がなく性的な身体構造にも異常は見られないが(性ホルモンの分泌に一定の偏りが見られることはあるが)、自分の人格・自己アイデンティティにおいて『自分の生物学的性差とは逆の性(男性であれば女性)』に自分が帰属していると確信していて、自分と逆の性別の社会的役割・行動の傾向に基づいて生きていきたいと感じている。

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1

更には、自分の生物学的性差に従って生きることに非常な違和感や苦痛、耐え難さを感じていることが多く、話し方にせよ服装・化粧にせよ整形手術(性転換手術含む)にせよ、何らかの形で自分が『自分とは逆の性別』に帰属していること(そのように振る舞って生きていくこと)を表現したり確信したりして、社会・他者に認められたいと思っていることも多い。

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[性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1]

性同一性障害(GID)とトランスセクシャリズム、トランスジェンダー:1

精神医学の診断名で『性同一性障害(gender identity disorder:GID)』と呼ばれる性自認(性別の自己認識)や性的アイデンティティと関わる精神障害は、生物学的な性差と社会心理的な性差がズレることによって発症する心理的・生活的な問題である。

性同一性障害(GID)については、『自分の生物学的性差とは異なる性』であるとか異なる性になりたいとかいう性自認やそれに基づく性別役割行動は“障害・異常”ではなく“個性・特徴”であるという意見もあり、障害という概念を用いるべきではないという反対意見もある。

そういう差別感覚を排除しようとするリベラルな意見もあることを踏まえた上で、この項目では精神医学的な概念・診断基準について説明しているので、『性同一性障害(GID)』という精神医学分野における診断名を用いることにする。

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2015年03月29日

[精神分析(心理療法)における適応と自己実現3:精神疾患の再適応]

精神分析(心理療法)における適応と自己実現3:精神疾患の再適応

『真の自己(ありのままの自己)』が過度に抑圧されて所与の環境に束縛され過ぎている時には、『過剰適応』『燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)』の心理的問題が起こりやすくなるので、与えられている環境や人間関係の要因を変革したり調整したりしていかなければならない。

精神分析(心理療法)における適応と自己実現2:真の自己と偽の自己

反対に、『真の自己(ありのままの自己)』を極端に自己主張して発揮しようとしている場合には、与えられた環境や人間関係に対して現実的な適応が難しくなってしまうので、クライエントの『自己愛・承認欲求の強さ』『周囲の環境・人間関係に対する自己中心的な認知』のほうを調整していかなければならないだろう。

精神医療における適応・不適応の問題では、精神疾患を発症した患者の経過・予後(転帰)に配慮した『再適応・リハビリテーション』が大きな課題になってくるが、どういった水準や内容の再適応をするためにリハビリを行うかは、『精神医療を実施した後の患者の適応能力の回復レベル』によって変わってくることになる。

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[精神分析(心理療法)における適応と自己実現2:真の自己と偽の自己]

精神分析(心理療法)における適応と自己実現2:真の自己と偽の自己

『真の自己(ありのままの自己)』は、周囲の環境・他者からの要請(期待)に反することもあるので、真の自己は『表層的な適応・実際的な生活』のために抑制されやすいという現実がある。

そのため、『偽の自己(C.G.ユングの元型でいう仮面のペルソナ)』を作り上げることで、『真の自己(ありのままの自己)』を抑圧して表層的な現実生活(人間関係)への適応を行うという『仮性適応』の状態になりやすいという問題が指摘されることになる。

精神分析(心理療法)における適応と自己実現1:無意識の言語化

自己実現という高次元の心理的目標に到達できないとしても、真の自己の過剰な抑圧や内的な充実感(喜び)の極端な欠如がある『仮性適応(ペルソナによる偽の自己)』の状態は好ましいものではなく、本来は適応と自己実現のバランスを図ることが重要になってくる。

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[精神分析(心理療法)における適応と自己実現1:無意識の言語化]

精神分析(心理療法)における適応と自己実現1:無意識の言語化

ジークムント・フロイトが創始した精神分析では、『無意識の意識化・言語化』によって、過去のトラウマティックな記憶・感情の固着(=幼児的段階への退行の原因)を解消しようとする。

精神分析の精神病理学では、発達早期の過去の発達段階(口愛期・肛門期・男根期など)にリビドーが固着することによって、神経症をはじめとする様々な精神症状・身体症状が発症すると考えられている。

そして、無意識の領域に抑圧されている『社会的道徳的に受けいれがたい願望・欲求・感情』を言語化(意識化)することによって、神経症の症状が改善して、『本来の自己(自己欺瞞・抑圧を解消した自己)』に向き合えるようになるのである。

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2015年03月12日

[精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『退行(regression)』の役割:2]

精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『退行(regression)』の役割:2

自我の過去の発達段階への『退行』は、精神の健康性や正常性を保つためにも必要なものであり、『精神機能の柔軟性・適応性・自由さ』を支えている。

だが神経症のように病的な心理状態になると、過去の特定の発達段階への退行が『固着』してしまう。人格構造の全体が長期的・ストレス反応的に退行してしまうことで、幼児的かつ非適応的な生活様式と対人関係が固定化(パターン化)されやすくなるのである。

精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『不適切な欲求』の抑圧:1

精神分析家のE.クリス(E.Kris)は、正常・健康な範疇にある退行(regression)の特徴として『一時的・意図的・随意的な退行+現実と想像上の退行を自由に行き来できること』を上げている。

具体的にいうと、親密な人間関係の中で冗談を言って笑ったり甘えてくつろいだりすること、映画鑑賞(ドラマ鑑賞)・読書などのコンテンツを通して、物語の刺激的な内容や理想的な人物に一時的に同一化してストレス発散をしたり満足感を覚えたりすることが、適応的な退行の典型的なあり方である。

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[精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『不適切な欲求』の抑圧:1]

精神分析(力動的心理学)の『局所論』の見地と『不適切な欲求』の抑圧:1

ジークムント・フロイトが創始した精神分析(力動的心理学)の中心には、『局所論(精神構造論)』『自我構造論(心的装置論,心的構造論)』という二つの理論的見地がある。局所論(精神構造論)というのは、人間の精神の構造が『意識・前意識・無意識』の3つの領域に分けられるという理論である。

1.意識……今現在の時点で、考えたり感じたり覚えていたりする心理内容が存在する領域。今現在の自分が、無理なくアクセスできる自然な心理状態。

2.前意識……普段は思い出せないが、意識して意図的に思い出そうとすれば思い出すことのできる領域。ちょっとした過去の記憶や今現在の時点では意識されていない心理内容が保存されている場所である。

3.無意識……普段思い出せないだけではなく、『抑圧・否認・合理化・隔離』などの自我防衛機制によって、意識して意図的に思い出そうとしても思い出すことのできない心理内容が保存されている領域。

『無意識』は社会的・道徳的に望ましくない本能的な欲望や反道徳的な衝動、自分が認めたくない過去の苦痛な記憶が抑圧されていることが多い領域である。精神分析ではこの無意識に自由連想でアクセスすることで、症状を根本的に治療することを目指したが、その治療メカニズムのことを『無意識の意識化・言語化』と呼んでいる。

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2015年03月11日

[精神分析・精神力動論と『連続性の原理(continuity principle)』]

精神分析・精神力動論と『連続性の原理(continuity principle)』

精神力動(Psychodynamics)とは、S.フロイトの精神分析の“エス・自我・超自我の心的装置(精神機能)”を前提とする『力動論的観点(dynamic aspect)』に由来するもので、この観点に基づく『力動的心理学・力動精神医学』といった分野もある。一般的には、精神分析の動態的(ダイナミック)な精神構造論や精神機能論を前提としている心理学・精神医学のことを『力動的心理学・力動精神医学』と呼んでいる。

『エス・自我・超自我(欲求の充足と禁止)』『意識化と無意識への抑圧』など、“複数の心的な力(精神的な機能)”が作用してせめぎ合っているような状態が力動(ダイナミクス)であり、精神力動論とはそういった複数の心的な力の相互作用によって精神現象(精神症状)が作られているという見地なのである。

現在では複数の心的な力と力が作用して『葛藤(conflict)』するという意味での精神力動もあるが、より広範に精神分析の各種の基本理論に根ざした人間理解・精神症状の理解と治療的アプローチの方策をまとめて『精神力動論』と呼ぶことが多い。精神力動論の見地に立った異常心理学(精神病理学)の特徴の一つは、精神の正常性と異常性の間に境界線を設けないということがある。

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2015年02月20日

[精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるEタイプの分類):3]

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるEタイプの分類):3

Eタイプ(家族代理の役割)

Dタイプに象徴されるような『全体としての家族の病理』を前提とする医療者と患者家族との関係性を援助して改善するための分野や取り組みには、『家族精神医学(家族療法)・発達臨床心理学・思春期精神医学・救急医療・プライマリケア・コミュニティ精神医学(社会精神医学)・心身医学・リエゾン精神医学・老年期精神医学』などさまざまなものがある。

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):1

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):2

Eタイプは『A・B・C・Dのタイプ』とは異なり、患者個人とのみ関わり、その他の家族メンバーとは関わらない(心理療法的・調査的な心理面接をしない)という意味で変わっている。Eタイプの患者との関わり方は、精神分析の対象関係論のように『患者の内的な対象』や『患者にとって不在の対象(心的表象のイメージとしてだけ存在する対象)』との関わりを分析して治療的な介入をしていくというものである。

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[精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):2]

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):2

この記事の項目は前回の記事の続きで、精神科医・精神分析家の小此木啓吾らが考案した医療関係者と患者家族との関わり方の5つの分類について説明しています。前回は、AタイプとBタイプの家族との関係性について書いたので、ここでは『Cタイプ・Dタイプ』の2つの類型について説明します。

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):1

Cタイプ(家族メンバー間の心理的な相互作用への治療的介入)

Cタイプの医療関係者と家族との関係では、家族のメンバーそれぞれの心理的問題を改善したり、家族相互の病理的な関係性(負の円環的な関係性)を調節したりすることで、患者の総合的な治療効果を高める。

Cタイプは、N.W.アッカーマンの家族システムの異常を修正していく家族療法を前提とした家族との関わり方であり、患者本人に対する個人的療法(個人カウンセリング)だけではなく、父・母・夫・妻・きょうだい・子などの『家族メンバーも同席した心理療法・カウンセリング』を同時に実施していくことになる。

N.W.アッカーマンの家族システムでは、家族メンバー間の相互作用が重視されている。すなわち、家族の誰かの言動・態度が別の家族に影響を与えているという前提の元で、家族間で相互的に共有されている『非適応的(病的)な思考・感情・価値観・不安・自我防衛機制』などを逐次検討しながら、集団力学的な病理構造を段階的に解体することで治療を促進していくという流れになる。

家族メンバーが相互作用しながら集団力学的な病理構造を形成しているという理論モデルを『家族精神力動(family psychodynamics)』と呼ぶが、家族指向的な治療を含むCタイプの家族との関係では『父母療法・夫婦同時療法・家族同席療法』などの心理面接が積極的に導入されるという特徴がある。家族メンバーの相互的関係が生み出す病理を治療するという考え方であり、このCタイプの関係性に基づく診断も『家族力動診断』という独自のものが採用されることがある。

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[精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):1]

精神医学臨床・家族療法と患者家族との関係性の5分類(小此木啓吾らによるA〜Eの分類):1

精神医学の臨床では、医療関係者と患者本人との関わりだけではなく、『医師・看護師・心理臨床家(臨床心理士)と患者の家族との関係性』も重要になってくる。精神科医・精神分析家の小此木啓吾(おこのぎけいご)狩野力八郎(かのうりきはちろう)は、医療関係者と家族との関係性を以下の『A〜Eの5タイプ』に類型化して考えた。

Aタイプ(精神医学・一般医学における診療関係の構築と支持)

Aタイプの家族との関係性は、受診前の相談・調査や家庭訪問から始まり、『受診(初診)・外来通院・入退院・リハビリテーション』において良好な診療関係と患者・家族の受診継続のモチベーションを構築する関わり方であり、『診療関係の構築・維持』にその目的が置かれている。

患者の継続的な診療を可能にするためには『家族の理解・協力』が欠かせないという現実認識に立ったものであり、具体的には患者が病院(クリニック)に通院したり入院したりするために必要な『社会的・経済的・物理的な諸条件』を整えていくことになる。家族による『家庭内での看護・保護や生活環境の調整』も間接的に支援して、通院診療を通した患者の情報についても、患者の同意を得た上で家族とも共有するようにしていく。

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2015年01月24日

[精神医療の治療構造論:空間的‐時間的な治療構造と精神的‐身体的な精神科医のアプローチ]

精神医療の治療構造論:空間的‐時間的な治療構造と精神的‐身体的な精神科医のアプローチ

精神分析の研究者や理論を日本に積極的かつ啓蒙的に紹介した精神科医の小此木啓吾が、治療構造論について日本語の書籍を書いた初めての人とされている。精神医療の治療構造は以下のような条件によって規定されてくる。

精神医学における『治療関係』と『治療構造』1:クライエントの合理的思考力・治療意欲

精神医学における『治療関係』と『治療構造』2:心理臨床家とクライエントの作業同盟

1.通院治療(外来)か入院治療か

『通院治療(外来)』の場合には、患者は今までの家庭生活・社会生活・仕事を継続しながら、ごく短時間の診療時間だけ医師・医療スタッフと関わるので、お互いの『社会的な役割関係・人間関係の距離感』が明確になりやすい。そのため、転移感情に巻き込まれにくいし、完全な患者(病者)としてのアイデンティティには陥りにくい。

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[精神医学における『治療関係』と『治療構造』2:心理臨床家とクライエントの作業同盟]

精神医学における『治療関係』と『治療構造』2:心理臨床家とクライエントの作業同盟

クライエントは自分が抱えている問題を解決したり精神病理的な状態を改善したりするために、『現在の自分が直面している現実』を逃げずに直視したり、『現在の自分に必要な認知・行動』を持てるように努力しなければならないが、その苦痛や努力に耐えられるだけのパーソナリティーや意識の力といったものが要請されることも少なくない。

精神医学における『治療関係』と『治療構造』1:クライエントの合理的思考力・治療意欲

心理療法の作業同盟(working alliance)は、心理臨床家(カウンセラー)とクライエントとの共同作業の根底にあるもので、どうして今この心理療法・心理検査を実施しているのかについての共通認識・動機づけの形成にも役立つものなのである。

心理療法の効果を左右することもある作業同盟であるが、この作業同盟を妨害する要因として、『転移感情(情緒的な反応や混乱)』『認知の歪み(客観的現実を正しく認識できない)』『精神病理の影響(病態水準の深刻さによっては医療・薬物療法の対象となる)』などがある。

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[精神医学における『治療関係』と『治療構造』1:クライエントの合理的思考力・治療意欲]

精神医学における『治療関係』と『治療構造』1:クライエントの合理的思考力・治療意欲

心理療法やカウンセリングでは、心理臨床家(カウンセラー)とクライエントとの間で、協力や共感をし合いながら問題解決(心理状態の改善)を目指していく『作業同盟』が組まれ、予約の日時や料金体系、心理療法の内容・技法・進め方などに同意する『治療契約』が締結されることになる。

精神医学の治療関係論と『固着‐退行』『転移』の自我防衛機制の働き

心理療法やカウンセリングは、一般的な身体医学に基づく医療行為(検査・処方・投薬)とは異なり、『クライエント本人の動機づけ』『クライエントの合理的な思考能力・問題状況の理解力・自分の内面を洞察する内省力(自省的な想像力)』がないと効果がでにくいものである。

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