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2009年02月05日

[K.レヴィンの生活空間(life space)と行動の基本原理]

K.レヴィンの生活空間(life space)と行動の基本原理

ゲシュタルト心理学の研究者クルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)は、『葛藤(conflict)』の類型論(3つのパターン)を提唱したことで知られる。レヴィンは、葛藤は『接近−接近(欲しいものと欲しいものでどちらかを選ばなければならない葛藤)』『接近−回避(メリットを得るために必要なデメリットがあるという葛藤)』『回避−回避(嫌なものと嫌なものでどちらかを選ばなければならない葛藤)』の3つのパターンに分類することができると考えた。

K.レヴィンは人間の行動を決定する基本原理として『生活空間(life space)』を考案したが、生活空間とは人間と環境が相互作用することで行動が生起する全体的な空間・事態のことである。レヴィンは人間の行動が動機づけや欲求によって生み出されるという『力動論(力動的心理学)』の前提を採用した。しかし、フロイトの精神分析の力動論とは違って『性(性的欲動としてのリビドー)』『無意識(抑圧された性欲・願望)』を人間の行動の規定要因とは認めなかった。

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[W.ライヒの性格分析と性格のよろい(character armor)]

W.ライヒの性格分析と性格のよろい(character armor)

オーストリアの精神分析家ウィルヘルム・ライヒ(Wilhelm Reich, 1897-1957)は、『性の全面的な解放』によってあらゆる精神疾患(神経症・精神病)と社会的問題(犯罪・戦争)が解決できると考えたラディカルな性一元論の唱道者であった。しかし、20世紀前半の性道徳が厳しいヨーロッパやアメリカで、ライヒの『性の解放』によるユートピア理論が受け容れられる余地は無かったし、ライヒの性欲の充足・他者との結合のみを過剰に重視する思想は現代の自由社会でも認めることが難しい。

アメリカに渡った晩年のW.ライヒは精神に変調を来たして、『オーゴン・エネルギー』という神秘的なオルガズムを生み出す宇宙エネルギー(細胞レベルにまで充満する生命エネルギー)の存在を信じるようになり、オーゴン・エネルギーを集めるという擬似科学的なオーゴン・ボックスを販売して薬事法違反で検挙されることになる。その裁判の過程で荒唐無稽な暴言を吐いたライヒは法的侮辱罪に問われ、不遇な最期を獄中で迎えてしまうことになったのだった。ライヒは投獄中にも、『世界で一番自由な学校(フリースクール)』の建設を目指したイギリスの教育者A.S.ニイル(Alexander Sutherland Neill, 1883-1973)に対して教育分析を行っている。A.S.ニイルは生徒に対して授業への参加を強制しないが、自分の行動基準を自律的に確立することを求める『サマーヒル・スクール』という民主的なフリースクールを建設したことで知られている。

W.ライヒの精神分析理論における大きな功績の一つが、自我防衛機制を重視して自我心理学への発展の道筋を作ったことであるが、ライヒは共産主義者であり精神分析とマルクス主義の理論的統合(統合的な実践可能性)を探求していた。人間の性欲を社会的抑圧から解放するための革命運動を起こすべきだという『性革命理論』も、マルクス主義のプロレタリア革命(労働者革命)のメタファーとして生み出されたものである。ライヒが異常なまでに性の欲求・解放の理論化(目的化)にこだわった背景には、幼少期に自分が母親の不倫を父親に密告したことで、両親が自殺する結末を迎えてしまったという苦痛なトラウマ(心的外傷)があると考えられている。

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2008年09月18日

[禅宗と『十牛図』]

禅宗と『十牛図』

禅宗とは『座禅・瞑想・勤行(作務)・公案』によって世界と人間の真理を洞察し、あらゆる苦悩を克服した悟りの境地に至ろうとする大乗仏教の宗派である。禅宗という呼称そのものは中国の唐末期から使われるようになったが、禅宗の始祖は一般的にインドの達磨(ボーディダルマ, 382-532)とされている。原始仏教の時代にまで遡った禅定修行の祖は、マハーカーシャパ(摩訶迦葉)とアーナンダ(阿難陀)であると考えられている。達磨によってインドから中国へと禅(禅宗)が伝えられ、臨済宗・曹洞宗・法眼宗などの『禅宗五派』が生まれたが、日本では栄西の臨済宗、道元の曹洞宗がよく知られている。

禅宗は『不立文字(ふりゅうもんじ)・教外別伝(きょうげべつでん)』を原則として仏道修行を行うので、特定の経典・言葉に依拠せずに、師資相承(ししそうしょう)で師匠から弟子へと禅宗の奥義が臨機応変に伝達されることになる。『十牛図(じゅうぎゅうず)』『達磨図』と並ぶ禅宗の代表的な題材図である。十牛図は、禅の修行のプロセスと悟り(解脱)に到達する道を象徴的に表現した10枚つづりの絵である。禅宗では座禅と公案(師からの本質的な問いかけ)によって仏性を備えた『本来の自己』を再発見しようとするが、十牛図では牛を探す『牧人(童子)』を修行者に見立て、『牛』を悟り(仏性)や本来の自己に見立てている。

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ラベル:仏教 禅宗 宗教学
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2008年05月02日

[摂食障害(eating disorder)・神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)]

摂食障害(eating disorder)・神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)

食行動と食欲の異常が見られる心身相関の精神疾患を『摂食障害(eating disorder)』といい、食欲が異常に低下して拒食症状が見られる病態を『神経性無食欲症(アノレクシア・ネルヴォーザ)』、食欲が異常に増加して過食・嘔吐症状が見られる病態を『神経性大食症(ブリミア・ネルヴォーザ)』と呼んでいる。摂食障害とは、日常生活における『食欲の調節障害』であり意志的に食行動をコントロールすることが出来なくなる精神疾患である。食欲が異常に低下する神経性無食欲症(拒食症)は、過度に悪化すると栄養失調と身体衰弱によって死亡する事例もあり、患者の心理状態だけではなく『身体面の健康・栄養学的なバランス・体重の増減の幅』に十分な注意が必要となる。重症事例の摂食障害(アノレクシア・ネルヴォーザ)では、希死念慮による自殺企図のリスクが高まるので、献身的な対人サポートと専門的なカウンセリングによる心理的補助が必要である。

神経性無食欲症(アノレクシア・ネルヴォーザ,拒食症)は、肥満度の指標であるBMI(Body Mass Index)が17.5以下となり、『肥満に対する極度の恐れ』『食事を回避するダイエット(体重減少)への異常な努力』が症状として見られる。BMIは『体重÷身長(メートルの二乗)』で算出される指標であり、22.0が平均値とされている。アノレクシア・ネルヴォーザ(拒食症)では実際に痩せているか太っているかとは無関係に『肥満に対する極度の恐れ』が見られ、自分の身体イメージ(身体のスタイルやバランス)を客観的に認知する機能が衰えていて『ボディ・イメージの歪み』がある。ボディ・イメージの歪みというのは、自分で自分の体型やスタイル、身体バランスの客観的な判断ができないということであり、十分に痩せているのに『まだ太っているから、もっと痩せなければならない』と思ってしまうのである。

摂食障害の人は『肥満に対する恐怖』と『食行動に対するこだわり』によって、過食症状と拒食症状を嘔吐(下剤乱用)を伴いながら交互に繰り返すことが多く、神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)は同時に発症することが多い疾患である。過食症のエピソードでは『食べ過ぎたことへの強い罪悪感・自己嫌悪』によって、自発性嘔吐や下剤乱用・利尿剤の乱用などが見られ、過食と拒食のエピソードを慢性的に繰り返しやすくなる。摂食障害は一日の大部分を『食行動の調節(過食・嘔吐・拒食)』に費やすことが多く、職場・学校以外での人間関係が貧困となり社会的に孤立しやすいという問題を抱えている。

拒食症の患者は身体的に弱っていても気分が高揚していて発言頻度が多く、エネルギッシュに活動している人が多い傾向がある。ガリガリに痩せていても『自分は毎日元気に過ごしていて、健康には何の問題もない』と報告する摂食障害の人が多いが、表面的なハイテンション(空元気)・活動性の背後に潜在的な健康状態の悪化のリスクがあることを忘れてはならない。重症度の高い拒食症には、『低血圧・貧血・栄養失調・白血球の減少による免疫能低下・低カリウム血症・アルカローシス・徐脈』などの健康リスクが絶えず存在している。

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2008年03月16日

[精神性発汗の測定・ポリグラフ(うそ発見器)に用いられるGSR(皮膚電気抵抗)]

精神性発汗・ポリグラフ(うそ発見器)に用いられるGSR(皮膚電気抵抗)

人間は精神状態の変化によって自律神経系(交感神経・副交換神経)が影響を受けて、末梢神経が緊張したり弛緩(リラックス)したりする。交感神経は活動性神経であり『心拍・血圧・呼吸・発汗・筋の緊張』などを促進する働きをするが、副交感神経は休養性神経であり『心拍・血圧・呼吸・発汗・筋の緊張』などを抑制する働きをする。交感神経による『心身反応の緊張・興奮・促進』と副交感神経による『心身反応の緩和・鎮静・抑制』によって、自律神経系を持つ脊椎動物のホメオスタシス(生体恒常性)は維持されている。人間は気温が高い(暑い)時に体温調整のために『発汗』をするが、精神的緊張(不安・恐怖)が高まって交感神経が優位になった時にも『発汗量』が多くなる。

精神的要因による発汗のことを『精神性発汗』と呼び、一般的には冷や汗や緊張による発汗のように認識されていて、大勢の人の前で話をする時や何か隠し事をして不安感が高まっている時に精神性発汗が起きやすくなる。精神性発汗は、『GSR(galvanic skin response,皮膚電気反応)』によって測定できる。精神性発汗を引き起こすのは『交感神経系の興奮』であるが、GSRは交感神経系の興奮による汗腺の活動によって発生する『皮膚電気抵抗(皮膚電位変容)』を測定するものである。GSRを測定する場合には、精神性発汗を生じやすい身体部位(手掌部・指先)に電極を装着し、そこに微細電流を流してその電気抵抗の値を測定するのである。

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2008年01月23日

[精神保健福祉士(PSW:Psychiatric SocialWorker)]

精神保健福祉士(PSW:Psychiatric SocialWorker)

精神保健福祉士(PSW:Psychiatric SocialWorker)とは、医療機関(精神科・心療内科)・保健所・福祉施設・司法機関などに勤務する専門性の高いソーシャルワーカーで、精神障害者や心理的問題を抱えた人の社会復帰(社会参加・自己実現)を目的として、社会面・生活面・心理面で総合的な支援業務をしている。精神保健福祉士(PSW)は、精神保健福祉領域における名称独占の国家資格であり、精神医学ソーシャルワーカーとしての仕事に従事することになる。1997年に精神保健福祉士という国家資格が作られる以前には、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric SocialWorker)という名称で呼ばれていたが、1950年代から精神科ソーシャルワーカーは精神科医療機関の医療チームの一員として活躍していた。

精神科医療・保健福祉・介護などの領域で働く精神保健福祉士(PSW)は、社会福祉学やコミュニティ心理学を学問的基盤として、精神障害者の生活支援や精神的な援助、具体的な助言を行っていく。精神科ソーシャルワーカーは、精神障害や心理的困難を持つ社会的弱者の支援を行う仕事であり、各種の社会福祉制度(自立支援制度・公的扶助)や心理相談技術、地域社会のコミュニティを活用しながら『心理的・社会的・経済的問題の解決』を効果的に進めていくのである。精神障害者の医学的な治療は精神科医(神経科医)が行い、心理学的な援助(心理療法)は臨床心理士やカウンセラーが行うが、精神障害者の具体的な生活援助(福祉制度利用)の相談や社会復帰のための支援(職業指導)などは精神保健福祉士(PSW)が行うことになる。

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