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2009年05月13日

[壮年心理学(adulthood psychology)と中年期の危機]

壮年心理学(adulthood psychology)と中年期の危機

壮年心理学(adulthood psychology)『30代〜50代の壮年期(中年期)』を研究対象にする発達心理学である。壮年期心理学という分野はメジャーなものではないが、自己アイデンティティを段階的に確立する『思春期・青年期』の後に訪れる『壮年期(成人期・中年期)』の発達課題や精神的危機、発達の法則性・プロセスなどを研究する学問である。『老年期』を迎えるまでの心理的成熟や精神の安定などに役立てることを目的の一つとしているが、『中年期の危機』を研究した心理学者・精神分析家にカール・グスタフ・ユングがいる。

C.G.ユングは中年期を『人生の正午』と呼んだが、人生の正午というのは人生における気力体力や社会的地位(社会的役割)がピークに達することであり、中年期以降は徐々に気力体力や社会的影響力が衰える『斜陽の季節』に入っていくことになる。厳密には、30代〜50代の『壮年期』は『中年期』よりもやや幅の広い概念であり、『中年期=斜陽の始まり』というイメージに対して『壮年期=生産性が高い働き盛り』というイメージが持たれやすい。

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2009年04月29日

[V.E.フランクルの『創造価値・体験価値・態度価値』と創造性テスト]

V.E.フランクルの『創造価値・体験価値・態度価値』と創造性テスト

ナチス・ドイツの強制収容所アウシュビッツで生き残ったV.E.フランクル(V.E.Frankl, 1905-1997)は、人生の意味や人間の価値を哲学的に探求する実存療法(ロゴセラピー)を創始し、絶望的環境における希望の可能性を示した代表的著作『夜と霧』を書いた。実存療法の治療機序の中核にあるのが、自分固有の一回性の人生をどのように生きるのかという『価値承認の認知』であり、フランクルは“人間の価値(生きる価値)”について3つのカテゴリーを提示している。

V.E.フランクルは人間にとって不可避な運命として『不治の病・政治的弾圧・感覚的苦痛・宗教的罪責・死』などを想定していたが、内面の自由を獲得して価値実現を志向する態度を貫くことで、それらの絶望的な運命さえも克服できると考えた。フランクルが著書『死と愛』の中で指摘した3つの人間の価値(生きる価値)のカテゴリーが、『創造価値・体験価値・態度価値』である。

創造価値(creative value)……新たな行動や活動をして何かを創り出していく価値。自分の人生に課せられた役割や使命、目的に自覚的になり、新たな何かを創造して成し遂げる価値。

体験価値(experience value)……『芸術・自然・学問・人間関係』など素晴らしく感動的な体験をする価値。

態度価値(attitude value)……自分の実存的な固有の人生を『運命』として受け容れて最期まで生き抜く態度に宿る価値。自分の人生の所与の条件を受け容れて、何らかの価値を実現しようとする真摯な態度。

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[メラニー・クラインの躁的防衛(manic defences)と幼児的全能感]

メラニー・クラインの躁的防衛(manic defences)と幼児的全能感

この記事は、[メラニー・クラインの早期発達論:妄想‐分裂態勢における羨望(envy)と嫉妬(jealousy)]の続きになります。羨望とは『良い部分対象(良い乳房)』に向けられるマイナスの感情であり、自分に満足や安心を与えてくれる『良い部分対象(良い乳房)』を攻撃することで、羨ましさや妬ましさといった不快な感情を和らげようとする。

『良い乳房』を羨望する時に、愛情と憎悪のアンビバレンツ(両価性)が生起するのだが、その場合には『完全な良い乳房』『完全に悪い自分』という二項対立的な図式が成立して正常な精神発達を阻害することになる。攻撃的な羨望によって乳幼児は、『良い乳房』に内在している生命力・保護力・創造性を奪い取ろうとしたり破壊してしまおうとするが、奪い取ろうとする試みは『取り込み』の防衛機制によって行われる。

過度の羨望は、精神病理の形成要因になったり人間関係にトラブルを引き起こしたりするが、羨望の情動には『憧れ』と『憎悪』という正反対の感情がアンビバレンツ(両価的)に含まれており、健全な憧れが強化されれば向上心や好奇心につながる可能性もある。羨望によって『妬み・憎悪』のほうが強化されてくると、公正な競争・努力をする意欲がなくなったり、他者との人間関係や成功への欲求に無関心になってしまうこともあるので注意が必要である。総体的に見て、発達早期の『羨望』や『嫉妬』が過剰になって長く継続すると、正常な精神発達段階が障害されたり、良好な人間関係の構築が難しくなることがある。

乳児の『妄想‐分裂ポジション(0ヶ月〜3,4ヶ月)』で用いられる原始的防衛機制として分裂(splitting)投影同一視(projective identification)があるが、『抑うつポジション(4ヶ月〜12ヶ月頃)』で用いられる特異的な防衛機制として“躁的防衛(manic defences)”がある。感情・気分をハイテンションにして活動力を高める躁的防衛は、抑うつポジションで発生しやすい『抑うつ感・罪悪感・不安感・悲哀感情(対象喪失)』などの苦痛な感情を緩和してくれるのである。

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[メラニー・クラインの早期発達論:妄想‐分裂態勢における羨望(envy)と嫉妬(jealousy)]

メラニー・クラインの早期発達論:妄想‐分裂態勢における羨望(envy)と嫉妬(jealousy)

英国・対象関係論の祖でクライン学派を起こした女性分析家のメラニー・クライン(Melanie Clein, 1882-1960)は、幻想的無意識に基づく早期発達論を呈示した。発達早期の乳幼児は『生の本能(エロス)』『死の本能(タナトス)』によって、幻想的な精神内界における対象関係(自己と対象との関係)を作り上げていく。正統な精神分析では、現実の家族関係や生活経験によって段階的に対象関係が形成されると考えるが、M.クラインの対象関係論では『生得的な生と死の本能』の外界への投影によって対象関係が自然に形成されると考えるのである。

乳幼児の内面にある『生得的な幻想世界』は、自分の原始的本能を外部の対象に反映させた『妄想的・分裂的な世界』であり、乳幼児は他者をまとまった一つの人格としての『全体対象』として認識することができない。その為、生後1年くらいまでの乳幼児にとっての母親・他者は、部分的な特徴や機能だけを反映した『部分対象』として認識されることになり、全体対象は『良い部分対象』『悪い部分対象』とに分裂する。

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2009年04月21日

[発達障害の早期発見・早期療育(early remedial teaching)]

発達障害の早期発見・早期療育(early remedial teaching)

広汎性発達障害(PDD:pervasive developmental disorder)には、『自閉症・アスペルガー症候群・知的障害・LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥多動性障害)・小児崩壊性障害』などが含まれるが、いずれの発達障害の問題がある場合にも早期発見・早期療育が有効である。

“療育”というのは、心身機能及び発達状況に障害を持つ子どもに対する専門的な教育支援のことである。特別支援学級や養護学校、児童福祉施設(療育施設)などで、養護教諭をはじめとする専門スタッフによって、子どもの個性や障害内容に合わせた発達支援(社会適応促進)のための療育が行われている。

各種の発達障害や心身の障害、先天性疾患において、『早期発見・早期療育(early identification and early remedial teaching)』の必要性と有効性は幾ら強調しても強調し過ぎることはないと考えられているが、その理由として以下のようなことがある。最近は、出生前診断による障害判定や新生児の障害発見のためのマス・スクリーニング検査によって、障害の早期発見と1歳以下からの超早期指導(超早期療育)の可能性がより現実的なものになってきている。

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[操作的定義(operational definition)と心理学研究の科学性]

操作的定義(operational definition)と心理学研究の科学性

操作的定義(operational definition)とは、“客観性・検証可能性”を持つ科学的研究や論文作成を行うために、『概念(concept)』を分かりやすく明確に定義することである。現実世界にある事象(事物・状況)を言語化した『概念』には“多義性・曖昧性”があるので、このままでは『研究者間の共通言語』として機能せず、曖昧で多義的な概念を科学的研究(実験・観察・統計・論文作成)に利用することが出来ない。

臨床心理学や精神分析には『不安症状・不適応・無意識・超自我・自我防衛機制・リビドー・ストレス』など多種多様な操作的定義があり、それぞれの概念や専門用語の明確な定義を知っていなければ、研究者間でも生産的な内容のあるコミュニケーションを行うことは難しい。

不安症状(不安感)の操作的定義には、心悸亢進・発汗・過呼吸など『生理学的状態』による定義もあれば、漠然とした将来や社会生活に対する恐れの感情のように『言語化される心理状態』による定義もあるが、科学的研究を行う場合にはどちらかの定義に統一して観察や調査面接を行わなければならない。

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[操作的なカウンセリング・心理療法(manipulative counseling)]

操作的なカウンセリング・心理療法(manipulative counseling)

カウンセリングや心理療法には『操作的な技法』『非操作的な技法』とがあるが、カウンセリングの技法が操作的であるということは『目標設定的(問題解決的)・指示的・意図的・効果測定的』であるということを意味する。クライエントの行動・心理について指示しない『非指示的なカウンセリング』の代表として、カール・ロジャーズのクライエント中心療法(来談者中心療法)があるが、クライエント中心療法ではクライエントの症状や問題行動を意図的にコントロールして改善しようとはしないのである。

支持的技法である“クライエント中心療法”の基本原則は、共感的理解や無条件の肯定的受容といった好意的な態度を用いて、『あるがままの自己・今ここにある自分』をクライエントに尊重させて“治療的・改善的な変化”が自律的に現れるまで“待つ”ということである。

カール・ロジャーズは自身の『自己理論』において、人間には生来的に“成長・健康・回復・発展”へと向かう『実現傾向』が備わっていると考えていたが、『共感的理解や無条件の受容に基づく傾聴』によってその実現傾向が正常に促進されるようになると予測していた。そのため、クライエントの認知や行動、症状を、カウンセラーが意図的に良い方向へとコントロールするようなアプローチに対しては、ロジャーズは否定的だったのである。

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2009年04月13日

[交流分析(TA)の早期決断(early decision)]

交流分析(TA)の早期決断(early decision)

エリック・バーンが創始した交流分析(transactional analysis)には、『自分がどのような性格の人間であり、どういった人生を生きていくのか?』という大まかな人生計画を自己記述する『人生脚本』という概念がある。私たちの人生の大まかな枠組みや展開は『人生脚本の粗筋(あらすじ)』によって支配されている側面があるが、『自分の人生を不幸にするような内容のネガティブな人生脚本』『自分の人生を幸福にするようなポジティブな人生脚本』へと書き換えていくのが交流分析における『脚本分析』の大きな目標となっている。

自分で自分の価値や幸福を破壊してしまうような『ネガティブな人生脚本』の原点はどこにあるのかを考えていく時、エリック・バーンはその原因が『発達早期(幼少期)に親から与えられる禁止令』『禁止令を承諾する早期決断(early decision, childhood decision)』にあるのではないかと考えた。『禁止令(injunctions)』というのはフラストレーション状況にある親が、幼少期の子どもに与えてしまう『〜するな,〜してはいけない』という形を取る不合理(理不尽)な禁止命令のことである。

子どもの心身の発育に悪影響を与える種類の『禁止令』は、『両親の子どもの自我状態(エゴグラムにおける「C」)』から発せられるもので、『子どもの幸福・喜び・自信・安心・愛情を否定する内容の禁止命令』になっている。エリック・バーンは『生存するな・成長するな・楽しむな・所属するな・健康であるな』などの自己破壊的な禁止令を『魔女の呪い』と呼んだが、自己否定的な人生脚本を今までの人生で作り上げてきたクライアントは、この魔女の呪いとしての禁止令を受け容れてきたという過去がある。

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2008年05月02日

[双極性障害(躁鬱病, bipolar disorder)の症状と治療]

双極性障害(躁鬱病, bipolar disorder)の症状と治療

気分障害(感情障害)『気分・感情・意欲の過度の変化(不安定性)』を特徴とする精神病であり、精神医学では伝統的に統合失調症と気分障害(うつ病・躁鬱病)を二大内因性精神病と分類している。気分障害(感情障害)にはうつ病と一般に呼ばれる『単極性障害』と躁鬱病(そううつびょう)と呼ばれる『双極性障害』がある。うつ病(大うつ病性障害)は、精神運動抑制の『うつ病エピソード』だけが見られる精神疾患であり、精神運動性が抑制されることによって『憂鬱感・抑うつ感・気分の落ち込み・希死念慮・意欲減退・知的活動性の低下』といったうつ病に特徴的な精神症状が現れる。単極性のうつ病には双極性障害のような急激な気分の好転やハイテンションな高揚感(興奮感)は見られず、急性期を終えると寛解して回復したり慢性的なうつ病エピソードの経過を示すことが多い。

双極性障害(躁鬱病)は『躁病エピソード』『うつ病エピソード』の二相性を持っており、躁病エピソードでは気分(感情)の高揚感や誇大的なハイテンションの行動パターンが見られる。双極性障害では、気分が高揚して精神運動亢進が見られ活発に行動する『躁病エピソード』と気分が落ち込んで精神運動抑制が見られ活動性が衰える『うつ病エピソード』を数ヶ月単位で交互に繰り返すことが多い。躁病エピソードとうつ病エピソードとの間に『気分変化の明確な違い』が見られる双極性障害を『双極性T型障害(双極性障害T型』と呼ぶことがある。躁病とうつ病の病相(エピソード)に明瞭な違いの見られる双極性障害を『双極性T型障害』といい、比較的軽度の軽躁状態とうつ病エピソードが交互に見られる気分障害を『双極性U型障害(双極性障害U型)』という。

躁病エピソードの症状が軽度であり、ハイテンションな誇大的気分による日常生活への支障が小さいものを『双極性U型障害』と呼んでいる。場合によっては入院治療が必要なほどの気分の高まりや精神運動性の亢進(異常なまでのおしゃべりと活動力)が見られる双極性T型障害と比較すると、双極性U型障害は症状変化が安定しており通院での薬物療法と必要に応じたカウンセリング(心理療法)が第一選択になる。双極性のT型・U型に加えて、2年間以上の長期にわたる気分・感情の変動性が見られる慢性的な気分障害は『気分循環性障害』と診断されることがある。

双極性障害の患者は、躁病エピソード期の社会的経済的不利益に十分に留意する必要がある。躁病エピソードで発言する『精神運動亢進(心理・行動の活発性の異常な高まり)』による軽率な発言や無思慮な判断(契約事項の決定)、公的場面(会社・学校)での振る舞いによって『社会的信用の失墜・経済的に大きな損失』を招くリスクがある。また、うつ病相から躁病相に切り替わるときに、希死念慮とネガティブな活動性が高まりやすいリスクがあるので、本人が『抑うつ感が和らいでハイな気分になってきた』という時には自殺企図や自傷行為などに対する十分な警戒と配慮・患者への心理的配慮が必要である。

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