双極性障害(躁鬱病, bipolar disorder)の症状と治療
気分障害(感情障害)は『気分・感情・意欲の過度の変化(不安定性)』を特徴とする精神病であり、精神医学では伝統的に統合失調症と気分障害(うつ病・躁鬱病)を二大内因性精神病と分類している。気分障害(感情障害)にはうつ病と一般に呼ばれる『単極性障害』と躁鬱病(そううつびょう)と呼ばれる『双極性障害』がある。うつ病(大うつ病性障害)は、精神運動抑制の『うつ病エピソード』だけが見られる精神疾患であり、精神運動性が抑制されることによって『憂鬱感・抑うつ感・気分の落ち込み・希死念慮・意欲減退・知的活動性の低下』といったうつ病に特徴的な精神症状が現れる。単極性のうつ病には双極性障害のような急激な気分の好転やハイテンションな高揚感(興奮感)は見られず、急性期を終えると寛解して回復したり慢性的なうつ病エピソードの経過を示すことが多い。
双極性障害(躁鬱病)は『躁病エピソード』と『うつ病エピソード』の二相性を持っており、躁病エピソードでは気分(感情)の高揚感や誇大的なハイテンションの行動パターンが見られる。双極性障害では、気分が高揚して精神運動亢進が見られ活発に行動する『躁病エピソード』と気分が落ち込んで精神運動抑制が見られ活動性が衰える『うつ病エピソード』を数ヶ月単位で交互に繰り返すことが多い。躁病エピソードとうつ病エピソードとの間に『気分変化の明確な違い』が見られる双極性障害を『双極性T型障害(双極性障害T型』と呼ぶことがある。躁病とうつ病の病相(エピソード)に明瞭な違いの見られる双極性障害を『双極性T型障害』といい、比較的軽度の軽躁状態とうつ病エピソードが交互に見られる気分障害を『双極性U型障害(双極性障害U型)』という。
躁病エピソードの症状が軽度であり、ハイテンションな誇大的気分による日常生活への支障が小さいものを『双極性U型障害』と呼んでいる。場合によっては入院治療が必要なほどの気分の高まりや精神運動性の亢進(異常なまでのおしゃべりと活動力)が見られる双極性T型障害と比較すると、双極性U型障害は症状変化が安定しており通院での薬物療法と必要に応じたカウンセリング(心理療法)が第一選択になる。双極性のT型・U型に加えて、2年間以上の長期にわたる気分・感情の変動性が見られる慢性的な気分障害は『気分循環性障害』と診断されることがある。
双極性障害の患者は、躁病エピソード期の社会的経済的不利益に十分に留意する必要がある。躁病エピソードで発言する『精神運動亢進(心理・行動の活発性の異常な高まり)』による軽率な発言や無思慮な判断(契約事項の決定)、公的場面(会社・学校)での振る舞いによって『社会的信用の失墜・経済的に大きな損失』を招くリスクがある。また、うつ病相から躁病相に切り替わるときに、希死念慮とネガティブな活動性が高まりやすいリスクがあるので、本人が『抑うつ感が和らいでハイな気分になってきた』という時には自殺企図や自傷行為などに対する十分な警戒と配慮・患者への心理的配慮が必要である。
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posted by ESDV Words Labo at 17:43
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