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2016年03月21日

[男性と女性の『中年期の危機』の違い2:女性の更年期障害と中年期の親らしい心(generativity)]

男性と女性の『中年期の危機』の違い2:女性の更年期障害と中年期の親らしい心(generativity)

女性(妻)の場合には、仕事・夫婦関係の変化によるストレスよりも、閉経・生理学的変化が関係する『更年期の心身の変化・更年期障害(各種の自律神経失調症・ホルモン分泌の減少)』のほうが問題になってきやすい。排卵・月経(生理)が起こらなくなる『閉経(menopause)』は生物学的なプロセスであり、『更年期(climacteriume)』というのは閉経に到る生理的変化に対する心理的適応過程(身体的・心理的・内分泌的な変化のプロセス)のことである。

男性と女性の『中年期の危機』の違い1:男性の孤独感・虚無感・対象喪失(熟年離婚)のリスク

同じ女性でも40〜60代くらいの『更年期障害』の個人差は大きいが、一般的に自律神経失調症の症状を示すことが多く、神経過敏な易刺激状態となり身体・顔がほてって発汗しやすくなるような『循環器系・血管系の自律神経症状』が目立ちやすくなったりする。気分が高揚したり怒ったり、抑うつ的になって落ち込んだりする『気分・感情の変動の激しさ』が見られ、『めまい・吐き気・気分の悪さ・イライラ・易怒性・衝動性』などの生理学的症状や精神状態の変調も起こりやすくなる。

女性に多い更年期障害(近年は男性にも更年期障害があることが分かっているが)の根本原因は、エストロゲンの女性ホルモンが減少するという内分泌系の変化・不均衡であるが、更年期障害の心身症状の重症度および退行の自我防衛機制の深刻度は一般に『出産経験のない女性(未経産婦)』のほうが重症になりやすい傾向(乳がん・生殖器関連のがんのリスクも上がる)があるとされる。

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[男性と女性の『中年期の危機』の違い1:男性の孤独感・虚無感・対象喪失(熟年離婚)のリスク]

男性と女性の『中年期の危機』の違い1:男性の孤独感・虚無感・対象喪失(熟年離婚)のリスク

『中年期の精神的危機(middle age crisis)』には、これ以上の成長・発展が望みにくく下り坂になりやすいという『上昇停止体験(meta-pause syndrome)』や子供が自立して家庭生活の内容が空疎になってしまって虚しいという『空の巣症候群(empty nest syndrome)』が関係していることが多い。

上昇停止体験や空の巣症候群によって、自分の社会的・家庭的な居場所がなくなってしまったように感じて孤独感に苦しんだり、自分の人生や生活が下り坂になって衰退していくという予測から抑うつ感・無意味感に襲われやすくなることもある。神経症的な身体症状や精神的ストレスによる胃潰瘍・本態性高血圧などの心身症も発症しやすくなり、悲観的・自己否定的な認知が強まって絶望感・無価値観が深まってくると『希死念慮・自殺企図』という最悪のリスクさえも生じてきてしまうのである。

中年期の精神的危機とは、それまでの人生で積み重ねて自己定義してきた自己アイデンティティーが拡散してしまうリスクを含むもので、簡単に言えば『自分がどのような方向に進めば良いのか分からなくなった・どんな目標や価値、相手を求めて努力していけばいいのか分からなくなった』という方向感覚や目標設定の混乱に襲われやすいのである。こういった自己存在に対する空虚感や人生における無意味感から逃れるために、『仕事への過剰適応・アルコール依存症・薬物依存症・恋愛や性への依存症(不倫・ストーカー・盗撮・性犯罪などへの逸脱)』などの問題が起こってくることも少なくない。

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2016年03月15日

[中高年精神医学と『中年期の危機』『上昇停止体験(meta-pause experience)』:2]

中高年精神医学と『中年期の危機』『上昇停止体験(meta-pause experience)』:2

今までの人生や仕事、人間関係のプロセスを振り返りながら、『もっと違う生き方もあったのではないか?もっと自分に適した仕事や働き方があったのではないか?もっと別の相手と付き合っていれば違った人生になっていたのではないか?もっと家族関係を円満にできる方法はなかったのか?』など様々な葛藤や後悔、反省(やり直したい欲求)に襲われることも多いが、こういった過去から現在までの自分の人生の積み上げに迷いや不安を感じることが『中年期の危機(ミドルエイジ・クライシス)』の原因になりやすいのである。

中高年精神医学と『壮年期の人生のピーク』『ユングのいう人生の正午』:1

社会的アイデンティティーが固まりきっていない20〜30代の青年期(成人期前期)とは違って、30〜40代以上の中高年期になると『人生全体の再設計・人間関係のやり直し』が難しくもなってくる。今まで長い時間と大きな労力をかけて作り上げてきた『職業的地位・家族関係・社会的役割・財産』が中高年期になって失われると、深刻な精神的危機や絶望状態に陥りやすくなるのは『ゼロからそれらを取り戻す努力(やり直す取り組み)をする時間』がもうあまり残されていないからである。

20歳の頃の失恋は何度でも別の魅力的な若い相手とのやり直しが効くが、50歳で離婚するとそこからまた新しい相手と出会って恋愛して再婚をする(しかも自分が思い描く魅力的な相手との再婚を目指す)というのはなかなかハードルが高く、そういったやり直しをするための気力体力が十分に残されていない事も多いのである。『中年期の危機』につながってくる発達上のリスクとして、『リストラ・失業・離婚・子どもの自立(孤独な空虚感)・老親の死』などがある。

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[中高年精神医学と『壮年期の人生のピーク』『ユングのいう人生の正午』:1]

中高年精神医学と『壮年期の人生のピーク』『ユングのいう人生の正午』:1

戦後日本は『医療・栄養・介護の改善』などによって平均寿命が大幅に伸び、『人生50年(人生60年)』から『人生80年』の時代へと大きな変化を遂げてきた。かつては60歳から高齢者(老人)と言われることが多かったが、現在ではまだ元気な人が多い60歳は『現役世代(老人とまでは言えない世代)』と見なされることが多く、高齢期の始まりは65歳くらい(本格的な老人になるのは70〜75歳以上)という認識に変わってきている。

少子高齢化と平均寿命の延長によって、『公的年金制度・公的健康保険制度の財源不足』といった社会保障の持続性に関する問題が深刻化してきていたりもするが、現代社会では『中高年世代(中年期+初老期)』の仕事・経済生活だけではなくて、心身の発達プロセスや発達課題、メンタルヘルスも大きな問題になってきているのである。

人生約80年の人間のライフサイクル(人生周期)を前提として、中高年の精神状態や精神病理、発達過程、社会的役割、自己アイデンティティーなどを研究する発達臨床心理的な精神医学の分野を『中高年精神医学』と呼ぶことがある。

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2015年11月09日

[チック(tic disorders):運動性チック・音声チック]

チック(tic disorders):運動性チック・音声チック

チック(tic)は乳幼児から児童期にかけて見られやすい『習癖・神経障害』の一種であり、軽度で一過性のチックであれば心身の成長過程で多くの子供に見られる。チックは女児よりも男児に多く見られる習癖であり、心身の発達に呼応する形で自然に軽快・消失してしまうことも多い症状である。

子供にみられるチックの多くは『一過性チック・発達性チック』であり、精神疾患(心身症・神経症)・神経障害によって起こるチックとは区別される。

チックとは、突発的で不規則な身体の一部の速い動き、無意味で無目的な発声を繰り返す不随意的な状態のことである。それが一定期間継続して慢性化・固定化し、日常生活や人間関係の上で障害を来すようになったものを『チック症(tic disorders)』と呼ぶことがある。

チック症の重症型で、『不随意的な運動チック(顔をしかめる・肩を動かす・まばたきする・突然無意味な発声をするなど)』が頻繁に見られる慢性多発性のチック症のことを『トゥレット症候群(トゥレット障害)』という。チックは主に以下の3つの類型に分けることができる。

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2011年11月01日

[治験の二重盲検法(Double blind test)・二重盲検比較臨床試験:3]

治験の二重盲検法(Double blind test)・二重盲検比較臨床試験:3

前回の記事では四段階に区分される治験の具体的な内容について解説しましたが、ここでは薬剤の有効性・副作用を検証するための二重盲検法(二重盲検比較臨床試験)について見ていきます。

治験では試験する薬剤の効果や副作用を厳密に判定するために、被検者あるいは検査者の薬に対する認識をなくす『盲検試験法(ブラインドテスト)』という方法が採用されている。治験で新薬・医療機器の効果や安全性、副作用を調査する時には、被検者を『実験群』『対照群』とに分けて、実験群には本物の新薬(治験薬)を与えるが、対象群のほうには偽薬(プラセボ)を与える。どちらの群にも薬を与える時には、『病気に効く新薬を処方するので飲んでください』という教示を与えるので、対照軍で砂糖などの偽薬を飲む被検者も、本当の薬を飲んでいると思って飲むことになる。

実際には、効果がないはずの偽薬(プラセボ)を本物の薬と思って飲んだ被検者にも、症状が改善する効果が出ることがあるが、これは偽薬とは知らされていない事によって生じる『プラセボ効果(偽薬効果)』である。実際は偽薬であっても本当に効く薬だと思い込んだままで服用すれば、心理的な暗示効果が発生してプラセボ効果が得られることがある。治験では『新薬の本当の効果』を調査するためにこのプラセボ効果を排除する必要が出てくる。そこで新薬を投与しているのか偽薬を投与しているのか、被検者本人に知らせずに調査を行う『単盲検試験(single blind test)』を行うことになる。

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[治験の二重盲検法(Double blind test)と標本抽出法(sampling method):2]

治験の二重盲検法(Double blind test)と標本抽出法(sampling method):2

前回の記事では、標本抽出法では『検査者の意図・恣意』をできるだけ交えずに、母集団からサンプル(標本)を無作為抽出することが望ましいという話をしたが、この検査者や被検者の意図をできるだけ交えないほうが正確な結果を得られるという考え方は『治験』にもある。

『治験(治療のための臨床検査)』は法律的な定義では、医薬品や医療機器の製造販売に関してその有効性と安全性を確認し、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験のことである。簡単に言えば、インフォームド・コンセント(適正な情報提供をした上での同意)を得た実際の患者(人間)を対象として、薬剤や治療法、医療機器の有効性・安全性を調べるための臨床試験のことを『治験』と呼んでいる。

新薬の許認可に必要なデータを提供する治験は、一般的に第I相から第IV相までの4段階に分けて進められる事になっている。本格的な二重盲検比較臨床試験を実施する場合には、かなり長い年月や大きな経済コストが掛かる事になるが、新薬(被験薬)の効果と安全性を確実に調べるために、厳密かつ複雑な手順を踏むものになっている。

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2009年11月07日

[カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険]

カウンセリングの終結(termination)と論理療法の治療的冒険

治療的カウンセリングの基本は共感的な理解と無条件の肯定的受容であり、クライアントの人格や信念を尊重しようとする誠実な態度を保持することで、治療的に有効な『ラポール(相互的な信頼関係・親愛感)』を確立していくのである。カウンセリングの実施に当たっては『カウンセリングの終結(termination)』が問題になることがあるが、カウンセリングの終結は以下のような各種の基準や心理・行動の変化によって判断されることになる。

1.自我の強化や自己肯定感の向上……自分で自分の存在や言動を肯定的に認識できるようになり、『自己評価の高まり』と共に現実的な生活行動が改善されたときにカウンセリングを終わらせる。

2.他者との対人関係やコミュニケーションの改善……他者と安定した人間関係を築くためのコミュニケーションスキルを習得したり、自分の言いたいこと(伝えなければならないこと)を過度に抑圧せずに自己主張できるようになったときにカウンセリングを終わらせる。

3.社会生活・職業活動の適応性の改善……うつ病などの精神症状によって学校・会社に定期的に通うことができないという問題がある場合には、『毎日の通学・通勤』が無理なくできるようになったときにカウンセリングを終わらせる。会社・学校に行けなくなる原因には、うつ病以外にも『いじめ・学業不振・パワーハラスメント・モラルハラスメント・アパシー(意欲減退症候群)・対人恐怖症(社会不安障害)』などがあるので、それぞれの問題状況や精神症状に合わせた治療的カウンセリングを実施していくことになる。

4.ストレス耐性や状況対応力の向上……現実の社会生活や対人関係で経験することになる『精神的ストレス』に耐える能力や肯定的認知を獲得したときにカウンセリングを終わらせる。現実の生活状況やコミュニケーションには『さまざまな状況・予測困難な事態』が存在するので、そういった各種の状況に苦痛や不安を感じずに対応できる能力(=臨機応変な状況対応力)を培うことも、カウンセリングの目標の一つになっている。

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2009年10月31日

[治療的カウンセリングと助言的カウンセリング]

治療的カウンセリングと助言的カウンセリング

カウンセリングには大きく分けて、『調査的カウンセリング・助言的カウンセリング・治療的カウンセリング』という3つの目的を達成しようとするカウンセリングがある。“調査的カウンセリング”とは、クライアントの心理状態や生活状態、人間関係、成育歴などの情報を収集することを目的としたカウンセリングであり、『質問紙法・投影法・インタビュー』といった心理アセスメントをメインにしてカウンセリングを行っていく。調査的カウンセリングは、精神医学の分野では患者の診断名を判断するための『診断的面接』と呼ばれることもある。

“助言的カウンセリング”とは、内面的な問題や過去の心的外傷をできるだけ取り扱わずに、『クライアントが求める知識・情報・対処法』のみを的確なアドバイスとして伝えるためのカウンセリングである。助言的カウンセリングは、『不安感・抑うつ感・焦燥感・強迫観念・対人緊張・トラウマ』などの精神症状(病的な心理状態)を改善するためには余り役に立たないことが多いが、『進路相談・学業の指導・生活指導・人生相談・仕事のやり方の教育』などではクライアントが必要とする知識・情報を与えることによって問題の解決が促進することも多い。

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[H.サールズの治療的共生(therapeutic symbiosis)と転移分析]

H.サールズの治療的共生(therapeutic symbiosis)と転移分析

精神分析家のH.サールズ(H.Searles)が統合失調症患者への対象法として呈示したのが、『治療的共生(therapeutic symbiosis)』である。H.サールズは、M.マーラーの『乳幼児発達理論(分離‐個体化理論)』に基づいて治療的共生を考えているが、これは『幻想的な母子一体感』をカウンセラーと統合失調症患者との間で再現しようとする意欲的な取り組みであった。

女性分析家のM.マーラーは、母親と乳幼児を対象にした発達早期の精神分析を実施する中で、『分離−個体化理論』の仮説を提示した。M.マーラーの理論では乳幼児期(0歳〜3歳)の発達段階は、『正常な自閉期→正常な共生期→分化期→練習期→再接近期→個体化期』に分類されるが、未分化期にまとめられる『自閉期・共生期』では母親と赤ちゃんが心理的に分離していないという特徴が見られる。

自己と他者が未分離である『共生期』では、母親が自分と子どもが一体化しているという『幻想的な母子一体感』を感じることがあるが、H.サールズはこの母子一体感を心理療法で再現することによって『統合失調症の患者』の精神発達をやり直させようとしたのである。精神分析の精神病理学では、統合失調症の原因は『口愛期(共生期)への固着・退行』だとされていたので、口愛期で受け取ることができなかった『母親の愛情・好意』を精神分析の治療関係の中でもう一度与えようとしたのである。

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2009年10月21日

[家族療法の彫塑技法(ちょうそぎほう)]

家族療法の彫塑技法(ちょうそぎほう)

家族システム論に基づく家族療法は、『家族成員の病因・問題』のみを解決しようとするのではなく、『家族相互のコミュニケーションの作用・歪んだ関係性』を修正することによって家族が抱えている問題を解決しようとする。家族療法は家族の誰かひとりに『問題の原因・精神の病理』を求める要素還元的な心理療法ではなく、家族全体のシステマティックな相互作用を改善しようとするホリスティック(総合的)な心理療法としての特徴を持っている。

円環的因果論を前提とする『家族療法』にはさまざまな技法があるが、非言語的なコミュニケーションを活用した技法として『彫塑技法(sculpture)』というものがある。彫塑技法(スカルプチャー)では、家族の一人が『彫刻家』の役割を引き受けて、『家族関係のダイナミクス+現在の状況』を家族の身体を使って象徴的に再現していくことになる。

家族関係の動態的な現状を、『動作・姿勢・表情・恰好・空間』を用いて部屋の中で象徴的に表現していくのが彫塑技法であり、『家族関係のあり方・各家族成員の役割』などを視覚的・直感的に理解しやすくなる。

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2009年10月12日

[禅宗の『調身・調息・調心』]

禅宗の『調身・調息・調心』

禅宗の基本思想は、言語的に表現したり伝達することが不可能な『不立文字(ふりゅうもんじ)・教外別伝(きょうげべつでん)』にある。禅宗の修行の本質や教えの奥義を『図像(絵画)』で表現したものとして『十牛図』があるが、『牛』を悟り(仏性)や本来の自己に見立てた十牛図では、『悟り・解脱の境地』の奥深さと菩薩行(ぼさつぎょう)による衆生救済が分かりやすく説かれている。

インドの達磨(ボーディダルマ, 382-532)が開祖となった禅宗は、『座禅・瞑想・勤行(作務)・公案』によって世界と人間の真理を洞察しようとする大乗仏教の宗派である。文字の学問ではなく身体を用いた『座禅(瞑想)』によって、あらゆる苦悩を克服した悟りの境地に至ろうとする特徴を禅宗は持っている。精神統一を持続する『無我の境地』によって悟り(解脱)を直観しようとする禅宗では、『調身(ちょうしん)・調息(ちょうそく)・調心(ちょうしん)』といったボディワークを修行法として採用している。

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2009年10月05日

[腸炎ビブリオ(vibrio parahaemolyticus)]

腸炎ビブリオ(vibrio parahaemolyticus)

腸炎ビブリオ(vibrio parahaemolyticus)は、細菌性食中毒の原因菌の一つである。ビブリオ属の好塩性のグラム陰性桿菌の一種であり、この細菌に感染すると『腸炎ビブリオ食中毒』を発症する。日本における食中毒では、腸炎ビブリオとサルモネラ菌の感染による症状が圧倒的に多い。

1950年に大阪府で『シラス食中毒事件(白子干しによる集団食中毒)』が発生して272名の患者と20名の死者が出たが、この原因を解明する調査・研究の過程で大阪大学の藤野恒三郎(ふじの・つねさぶろう)によって腸炎ビブリオが発見された。腸炎ビブリオは元々海中に棲息している細菌であり、塩分濃度2〜4%の環境において繁殖しやすいという特徴を持ち、腸炎ビブリオで汚染された魚介類を食べることで食中毒が発症する。

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[うつ病と朝刊シンドローム(morning newspaper syndrome)]

うつ病と朝刊シンドローム(morning newspaper syndrome)

『退却神経症』『軽症うつ病』の著書がある精神科医・笠原嘉(かさはらよみし)が、うつ病の“朝の時間帯の気分障害(抑うつ感)”を説明するために用いた造語が『朝刊シンドローム』である。精神医学的には、うつ病(気分障害)の『日内変動(にちないへんどう)』のことを意味する言葉である。

うつ病(大うつ病)に特有の日内変動というのは、朝の時間帯に『抑うつ感・気分の落ち込み・億劫感・意欲減退』といった精神症状が発生するが、夕方以降の時間帯にはそういった精神症状が和らいでくるという一日の時間帯における『気分の周期的な変化』のことである。同じうつ病の患者でも、どの時間帯に気分が良くなってどの時間帯に調子が悪くなるのかには個人差がある。特に、大うつ病性障害ではない『非定型うつ病』の場合には、『朝に気分が良い・夕方から悲哀感情や憂うつ感が増してくる』というタイプの日内変動が見られやすい。

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2009年09月30日

[精神分析とチューリヒ学派]

精神分析とチューリヒ学派

ジークムント・フロイト(S.Freud, 1856-1939)によって創始された精神分析は、オーストリアのウィーンやドイツを中心にして19世紀後半〜20世紀初頭に掛けて普及していったが、精神分析運動の躍進を支えた精神病院の拠点としてブルクヘルツリ病院がよく知られている。スイスのチューリヒにあるブルクヘルツリ病院は、1867年に建設された精神医学・心理療法の名門であり、チューリヒ州立大学の付属病院として、先端的な精神科治療に取り組んでいた。

フロイトの弟子となるC.G.ユング(Carl Gustav Jung, 1875-1961)も、このブルクヘルツリ病院に勤務していた履歴を持ち、ユングの上司である院長には統合失調症(スキゾフレニア)の命名者として有名なオイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler, 1857-1939)がいる。E.ブロイラーは統合失調症の典型的な症状として、『4つのA(観念連合の障害・自閉性・感情の障害・両価性)』を指摘しているが、最先端の精神医療を追求する中でフロイトの精神分析にも関心と理解をし始めたという。

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[河合隼雄の『中空構造(empty centered structure)』]

河合隼雄の『中空構造(empty centered structure)』

ユング心理学の研究で知られる臨床心理学者の河合隼雄(かわいはやお,1928-2007)は、『中空構造日本の深層』『昔話と日本人の心』『神話と日本人の心』などの著作において、日本人の深層心理や行動原理である『中空構造(empty centered structure)』を分析している。

ユング心理学の第一人者である河合隼雄は、日本の臨床心理学の発展と整備に尽力した人物であり、臨床心理士資格認定協会の創設も主導した。スイスのドラ・カルフ(D.Kalff)が開発した非言語的なプレイ・セラピーである『箱庭療法』を、日本に導入したのも河合隼雄である。

ユング心理学(分析心理学)の臨床家は、民族・集団・共同体が歴史的に共有するとされている『普遍的無意識・集合無意識(collective unconsciousness)』を想定している。個人的無意識よりも奥深い領域にある普遍的無意識の内容(=元型)は、『夢・神話・昔話・宗教・妄想症状』などに反映されることになる。その為、ユング心理学の臨床家はクライアントの『夢・イメージ』を分析したり、社会共同体に伝承されている『神話・物語(昔話)』のエッセンス(構成要素)を抽出したりするのである。

河合隼雄は『古事記』『日本書紀』の記紀に書かれた神話的世界観や神々の相互関係を分析して、日本人の心の深層に普遍的に流れている『集合無意識の内容』を探求しようとした。2,000年近い悠久の歴史的時間を超えて、日本人の間で伝承されてきた『記紀の世界・神々』を物語的に解釈した河合隼雄は、日本人の原型的・本質的な精神構造(心のあり方)として『中空構造(empty centered structure)』を発見した。

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2009年09月22日

[知能検査(知能テスト)・知能偏差値:知的能力とは何か?]

知能検査(知能テスト)・知能偏差値:知的能力とは何か?

『知能とは何か』という定義は心理学者によって様々な仮説が提起されているが、[知能の定義と知能検査:キャロル・ドウェックの熟達志向の知能理論]で説明したように、知能は『結晶性知能(crystallized intelligence)』『流動性知能(fluid intelligence)』に分類することができる。心理検査(心理テスト)や知能に興味のある方は、[知能検査(知能テスト)で測定される知能指数(IQ)は何を意味するのか?]の記事も合わせて読んでみて下さい。

流動性知能とは、臨機応変に状況や相手に合わせて問題を解決していく知能のことである。結晶性知能とは、勉強・学習行動による『知識の記憶』によって蓄積されたある程度固定的な知識(情報)のことである。

一般的には、流動性知能のほうが結晶性知能よりも『生得的要因(遺伝的要因)』に左右される割合が大きいと考えられており、結晶性知能のほうが『後天的・意識的な勉強の努力(学習の積み重ね)』によって向上させられる余地が大きいと言える。良好な人間関係を維持するためのコミュニケーション・スキルも知能に関係しているが、こういった対人関係に役立つ経験知に根ざした結晶性知能のことを『社会的知能(social intelligence)』と呼んだりする。

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[知能検査(知能テスト)で測定される知能指数(IQ)は何を意味するのか?]

知能検査(知能テスト)で測定される知能指数(IQ)は何を意味するのか?

ビネー式知能検査やウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)などの知能検査によって、『知能(intelligence)』は測定される。『知能指数(Intelligence Quotient:IQ)』とは知能の発達水準を示す指標であるが、知能指数は『実年齢に対する精神年齢(知的能力)の相対的な発達の度合い』を示すものであり、『知能の絶対値(最終的な頭の良さの到達点)』を示すものではないことに注意が必要である。

スタンフォード・ビネー式検査などの知能検査で測定される知能指数(IQ)は、『相対的に数量化された知能の発達程度』を示す数値なので、その人の“知能の発達スピード”を推測することはできても“知能の最終的な到達点”を推測することはできない。平均値を“100”とするIQは、一般的に年齢が低くて発達スピードの早い子どもほど高い数値がでるが、年齢が高くなると知的能力の高い人でも高い数値はでにくくなる。

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[チアノーゼ(cyanosis)の症状・原因・対処]

チアノーゼ(cyanosis)の症状・原因・対処

血液中の酸素濃度が低下して、皮膚や粘膜が青紫色になった状態のことを『チアノーゼ(cyanosis)』という。チアノーゼの症状が出やすいのは主に『唇・頬・手足の先・爪』などである。酸素を運搬して血液を赤色に見せる『ヘモグロビン』が二酸化炭素(炭酸ガス)と多く結合することでチアノーゼの症状が発症する。チアノーゼは『血中酸素濃度の低下』によって皮膚や粘膜が青紫色に見えている状態なので、酸素濃度が高まって炭酸ガスが減ってくれば元の肌色へと段階的に回復する。

炭酸ガス(二酸化炭素)と結びついたヘモグロビンのことを『還元ヘモグロビン(デオキシヘモグロビン)』と呼び、酸素と結びついたヘモグロビンのことを『酸化ヘモグロビン』と呼ぶ。チアノーゼ症状は医学的には、毛細血管の血液中の『還元ヘモグロビン』が“5g/dL以上”に増えたときに発症するとされる。チアノーゼは通常、身体各部の毛細血管の『血流障害』によって発症するが、それ以外にもさまざまな身体疾患などによって起こることがある。

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2009年09月09日

[交流分析の“C(子ども)”の中にある“小さな教授(little professor)”]

交流分析の“C(子ども)”の中にある“小さな教授(little professor)”

エリック・バーンが創始した交流分析(TA:Transactional Analysis)では、人間の精神機能(心の状態)を『P(親)・A(大人)・C(子ども)』という3つの“自我状態”で表している。

“P(親)”は更に『CP(Critical Parent:批判的な親)』『NP(Nurturing Parent:擁護的な親)』に分類することができ、“C(子ども)”『AC(Adapted Child:従順な子ども)』『FC(Free Child:自由な子ども)』に分類することができる。交流分析のエゴグラム(性格テスト)で参照する自我状態は、正確には『CP・NP・A・AC・FC』の5つになる。

交流分析では、自我状態のバランスによってJ.M.デュセイが完成させた『エゴグラム(egogram)』という性格分析を行うことができるが、エゴグラムを参考にしながら他者とのコミュニケーションの特徴や問題を分析する『やり取り分析(交流分析)』をしながら実際の人間関係の問題(悩み)を改善していくのである。交流分析の『自我状態』は精神分析の『自我構造論』とも対照させることができ、『CP=超自我(道徳命令)・A=自我(現実適応)・FC=エス(イド,本能的欲求)』という風に解釈することができる。

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posted by ESDV Words Labo at 21:20 | TrackBack(0) | ち:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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