ウェブとブログの検索

カスタム検索





2016年07月26日

[人間の労働による自己形成と労働からの解放2:AI(人工知能)によるシンギュラリティーへの到達]

人間の労働による自己形成と労働からの解放2:AI(人工知能)によるシンギュラリティーへの到達

消費主義文明が主流となった近代社会では、人々の自意識も『生産者・労働者』より『消費者・享受者』に傾きやすくなり、労働そのものも経済合理的にリストラされたり、自尊心や動機づけ(モチベーション)を保ちにくいような『労働の商品化・道具化(企業利益を最優先する非正規化・細分化)』が行われやすくなっている。

人間の労働による自己形成と労働からの解放1:消費主義文明

20世紀以前の『労働(職業)』は、個人と人類の『役割分担・自己形成・自己実現=労働道徳の実践』という重要な役割を半ば必然的な義務として担ってきたわけだが、『労働の商品化・道具化・非正規化』『非労働者階層の増加(資産家・経営者・投資家・ノマドワーカー・ニートなど)』は旧来的な人間にとっての労働の位置づけを大きく変える動きを見せている。

アメリカの発明家・フューチャリスト(未来思想家)のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil, 1948-)は、人工知能が人間の知能・能力を超える時点を『シンギュラリティー(技術的特異点)』と呼んでいて、カーツワイルはシンギュラリティーが2045年に起こると予測している。シンギュラリティーに到達して『AI(人工知能)・ロボット』が自己組織化的な進化を継続するようになると、人間の労働機会が大きく損なわれる可能性も指摘されている。

続きを読む


posted by ESDV Words Labo at 10:12 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[人間の労働による自己形成と労働からの解放1:消費主義文明]

人間の労働による自己形成と労働からの解放1:消費主義文明

人類が近代的あるいは科学的な文明社会を構築する前の時代には、『人間の自由』を侵害する大きな脅威として、政治や国家(国王)の権力があったわけだが、それ以上に『自然』こそが人間の自由を阻害する大きな壁であった。

人間にとっての過酷な自然は、まず何もしなければ『飢え(食料の不足)』をもたらすのであり、人間はほとんど必然的に『労働の義務(食糧生産のための労働の義務)』に従うしかなかった。自然と対峙しながら農業・土木建築を中心とする肉体労働を原動力として何とか生き残ってきたのである。

アイザイア・バーリン(Isaiah Berlin)の自由論:消極的自由と積極的自由

18世紀のイギリスの産業革命に始まった産業経済は初期には、児童・女性も過酷な長時間労働を義務づけるものであったが、市場・投資・貿易の拡大やイノベーション(技術革新)の連続によって経済が成長して所得も増えたため、20世紀後半以降の『自然と対峙する形の肉体労働の負担』は機械化・自動化などによってかなり軽くなってきた。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 10:11 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月15日

[老年期における高齢者の性格傾向の特徴と変化:自己中心性の脱却と後続世代の指導・育成]

老年期における高齢者の性格傾向の特徴と変化:自己中心性の脱却と後続世代の指導・育成

老年期心理学において、老年期の一般的な性格特徴として上げられているものには以下のようなものがある。

1.保守性……新しいものを受け入れにくくなり変化を嫌う。現状維持や昔ながらのものを好む保守的な価値観が強くなる。

2.諦め(諦観)……今更、何を努力しても大きくは改善しないという諦め。もう自分は高齢だからダメだといった諦めの感覚が強くなる。

3.義理堅さ……恩義を受けたらそれを返さなければならない、良くしてもらった人には何かお礼がしたいという義理堅さが強まりやすい。

4.活動性・行動力の減退……何かしたくても活動性が高まらず、実際的な行動を起こしにくくなる。

5.不潔・不精……身の回りにあまりこだわらなくなり風呂・シャワーも好まなくなり、不潔になりがちとなる。身奇麗にしない不精が目立ち、身だしなみや服装を整えるのが億劫になる。

6.興味関心の低下……それまで好きだったものにも興味が起きにくくなる。何事にも新たな関心を抱きにくくなる。

7.不安・不平不満……日常生活や老後の人生に漠然とした不安を抱く。日常生活や対人関係における不平不満が増えやすい。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 04:51 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期の心身の機能の個人差:高齢者の獲得が期待される『叡智・配慮・受容』]

老年期の心身の機能の個人差:高齢者の獲得が期待される『叡智・配慮・受容』

知的水準にしても興味・意欲・責任にしても、高齢者の能力的な個人差は非常に大きなものになる。同じ高齢者でも早期に認知症のような症状を呈したりすっかり身体的に弱ってしまう人もいれば、80歳、90歳になっても自分の現状で可能な執筆・芸術・言論などの活動を精力的に行い続けるような人もいて、『何歳だからこのような心身の状態になる(老年期だからすべてが衰退して弱っていく)』とは一概に断定できないものなのである。

高齢者の自己の年齢認識(老い否認)とレオポルド・ベラックのSAT(Senior Apperception Technique)

その意味では、老年期はある人にとっては『衰退・下降の絶望的な段階』かもしれないが、ある人にとっては『老熟・完成の意義ある段階』にもなるという希望を孕んでいると言えるだろう。超高齢化社会が進展していく現代において、老年期心理学・生涯発達心理学の目的は、高齢者に固有の人生経験・人間関係の学びの豊かさを活かして『叡智・配慮・受容』へと結び付けていくことであり、『自分に可能な社会的・関係的・情緒的な役割』をできる範囲で果たせるようにしていくことである。

老年期心理学・生涯発達心理学において『老年期固有の高度な発達課題・老年期の生きる意味や目的』が模索されている一方で、老年期精神医学の現実として70〜80代以上のかなりの割合の人に起こってくる『認知症・ロコモティブシンドローム(歩行障害)・寝たきり』が介護も含めた大きな社会問題になってきている。重症の認知症では、興奮・錯乱・幻覚・妄想などの精神症状と関係した暴言・暴力によって家族間での介護が困難あるいは不可能になることも多い。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 04:49 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[高齢者の愛・欲望への執着とジークムント・フロイトの『リア王』の精神分析:2]

高齢者の愛・欲望への執着とジークムント・フロイトの『リア王』の精神分析:2

S.フロイトは老年期の発達課題として『老いと死の受容』『愛と生と欲望の断念』を掲げ、その二つの発達課題の挫折(老年期にあってなお女性からの愛情に執着して絶望するしかない者)としてリア王の物語を取り上げている。

老年期心理学とジークムント・フロイトの『リア王』の精神分析:1

コーデリアの死を受け容れられないことは、自分自身の死を受け容れられないことでもある。信じていた愛想の良い二人の娘に裏切られたリア王は狂気に冒されたが、その時にも『コーデリアと二人だけで籠の中の小鳥になって祈り歌いたい・牢屋の中でもいいから二人で長生きしたい』という老醜と執念に塗れた夢想をしていたのである。

リア王の前に獄中の死体となって現れたコーデリアは『不可避の死・運命としての死』であり、『愛を断念して死を受け容れよ(人はすべて必ず老いて死ぬ)』という人類共通の運命を伝えるメッセージとしての役割を果たしている。老いてなお生の欲望や異性の愛に執着してすがりついていけば、必然的に『老醜・未練がましい姿』を晒すしかないということになる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 04:46 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期心理学とジークムント・フロイトの『リア王』の精神分析:1]

老年期心理学とジークムント・フロイトの『リア王』の精神分析:1

『老年期』は生涯発達心理学の発達段階における最終ステージであり、その発達課題は『人生全体の統合』とされるが、その統合・受容に失敗すると老年期は『絶望・無力感』に覆われてしまう。老年期は自分自身の人格を円熟させて人生の統合と受容を成し遂げるべき発達段階であり、『死』を遠からず現実に到来するものとして見据えながら、『叡智』の獲得を目指すものとされている。

しかし、生身の人間が生きる実際の老年期では『人生の統合・死の受容・叡智の獲得』といった理想的な老年期の発達課題の達成や心的状態の実現はかなり難しいものでもある。そのため、少なからぬ老齢期の高齢者は自分自身の身体・精神の衰え(心身の病気)に苦しみ嘆いたり、現実の人生のあゆみや孤独を感じる境遇に納得できずに『絶望感・無力感』に苛まれたりもする。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 04:43 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月25日

[老年期精神医学と老年期における統合・英知の可能性3:心身医学的な治療アプローチと敬老精神]

老年期精神医学と老年期における統合・英知の可能性3:心身医学的な治療アプローチと敬老精神

エリク・エリクソンのライフサイクル論の発達段階の捉え方では、老年期の統合の発達課題は『過去の乳児期から壮年期に至るまでの発達課題・他者や社会との関わり合い』を上手く順番に達成して適切に克服できたかどうかに大きく左右されると考えられている。

しかし、過去の発達段階における発達課題で躓いて挫折・失敗・喪失の苦悩を味わわせられていたとしても、老年期になってからの『自分の人生・関係・思想・関係性における認知と行動のポジティブな転換』によって、『今・ここ』から自分の人生をできるだけ受け止めて肯定することは可能なはずであり、それが柔軟性と成熟性を持つ人間の精神の希望につながっているのではないかと思う。

老年期精神医学とエリクソンのライフサイクル理論における統合と絶望:2

老年期精神医学を前提として老年期の心身の疾患の特徴を考えると『免疫力・対応力の低下』によって、ストレス耐性も低下しやすくなり心身のバランスを崩してさまざまな病気(精神疾患も含む)を発症しやすくなってしまう。老化の意味づけは肯定的に転換させることが可能であるが、生物学的・生理的な健康の側面ではどうしても『脆弱性・病気のかかりやすさ』を高めやすくなってしまうのである。

老化の度合いや現れ方は個人差が大きいため、老年期の精神疾患・身体疾患の特徴として『個別性・非定型性(人それぞれの症状の出現をして老化の度合いもばらつきが大きい)』を上げることができ、老年期だからといって一律的・同時的に全ての人の身体・精神の機能が大きく下がっていくというわけではないのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:19 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期精神医学とエリクソンのライフサイクル理論における統合と絶望2:老年期に希望はあるか]

老年期精神医学とエリクソンのライフサイクル理論における統合と絶望2:老年期に希望はあるか

老年期精神医学では『医療者側の人生の先達(高齢者)に対する敬意・関心』を基本的な態度として尊重しながら、『統合』という老年期の発達課題の達成と自分の人生の肯定的な受容を促進していくという目標がある。

老年期精神医学と老化による心身の衰え・喪失:1

心身・生理のさまざまな領域で老化は進行し、身体・精神の疾患を誘発する原因になったり症状を悪化させたり、がん細胞化のリスクを高めたりするが、『身体・生理の機能低下』は不可避でも『精神状態・存在価値の成熟と上昇』は可能であり、老年期精神医学は人間の精神の柔軟さと成長の可能性に『老後の英知・希望』を見出すのである。

社会的精神発達論におけるライフサイクル理論(精神発達の8段階)を考案した精神分析家のエリク・エリクソンは、老年期の発達課題を『統合VS絶望の図式』で捉えて老年期で獲得すべき精神機能を『英知』とした。

老年期は、家庭で子供(孫)が自立したり自らの家族を作るようになったりして『子育て・親としての役割』が終わり、職業面でも退職したり嘱託・アルバイトの雇用形態に変わったりで『社会的・職業的な役割』の縮小が起こりやすく、高齢になった友人知人の間でも少しずつ亡くなる人が現れてくる。老年期が『喪失の時期』と呼ばれる所以でもあるが、そういった社会・仕事と家庭・人間関係の両面において『大きな方向転換・役割の変化』を迫られる中で、さまざまな喪失の悲しみや寂しさ、絶望に適応していかなければならない。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:17 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期精神医学と老化による心身の衰え・喪失1:脳の器質的変化]

老年期精神医学と老化による心身の衰え・喪失1:脳の器質的変化

老年期精神医学は、『老年期』の発達段階にある高齢者の『心理状態・発達課題・精神病理』を対象にした理論研究や臨床実践(精神医療)を行っている。現在は高齢の人の人格・尊厳・自意識などに配慮してかつてのように『老人』という言葉はあまり用いられなくなってきており、一般にマスメディアを中心として『高齢者』という言葉が用いられている。

現代における老年期の定義は概ね『65歳以上』とされているが、平均寿命の上昇や健康年齢の延長によって『老年期・高齢者の定義』は今後も引き上げられる可能性があり、現在でも現代において老人と呼ぶべき年齢は『後期高齢者の75歳以上』であるといった意見もある。

一方で、動物(生命)に必然的な『老化』を隠蔽するかのようなこの言葉の変化が、『人間の老い・衰退・死の現実(不可避な老衰と死)』を見えなくして『若さへの執着』を生んでいるという批判もある。老年期や老人という概念には確かに明るくてポジティブなイメージが乏しく、『老化による心身の衰え・死の接近(人生の最終期)』をどうしても自覚させられるような圧迫感や暗さがある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:14 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月29日

[老年期(初老期)の精神障害5:認知症の心身症状と治療法・新薬開発]

老年期(初老期)の精神障害5:認知症の心身症状と治療法・新薬開発

アルツハイマー病の症状経過の中で、『被害妄想・幻覚(幻視)』『暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(BPSDと呼ばれる一連の認知機能低下による不適応行動群)』が発症することがあるが、幻覚・妄想・BPSDは自宅介護を極めて困難にする要因になる。これらの介護困難を引き起こす認知症の悪化が見られると、自宅介護や施設介護では対応が難しくなり、認知症専門の老人科病棟を持つ精神病院に入院することも少なくない。

老年期(初老期)の精神障害4:アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

認知症の精神症状と身体症状をまとめると以下のようになる。

知的能力の低下……失見当識・認知障害・思考障害・物忘れ(健忘)の記憶障害など。

精神症状……喜怒哀楽の感情の起伏の激しさ・夜間の錯乱や譫妄・うつ状態・幻覚妄想・作話・従前の人格構造(性格傾向)の大きな変化や崩壊など。

異常行動……夜間徘徊・昼間の放浪・睡眠障害・暴力行為・失禁や遺糞・不潔行為(弄便など)

ADL(日常生活動作)の機能的な障害……身辺自立の困難や不可能(食事ができない・衣服の着脱ができない・排泄ができない・歩行できなくなる・転倒するなど)

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:03 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期(初老期)の精神障害4:アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)]

老年期(初老期)の精神障害4:アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

脳血管性認知症とは、脳内の血管障害を原因とする『外因性の認知症』としての特徴を持っており、本態性高血圧と連動しやすいので女性よりも男性に多く見られる傾向がある。脳血管障害が起こった後に、『四肢麻痺・身体の痺れ・運動障害・言語障害(呂律が回らない)』などの後遺症の身体症状を示すことが多い。CTやMRIの画像診断法で、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害の病巣部を直接確認することが可能なので医学的な診断がつきやすい。

老年期(初老期)の精神障害4:アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

アルツハイマー型認知症の患者のCTやMRIを撮影すると『脳全体の萎縮』が確認できることもあるが、脳血管性認知症と比較するとアルツハイマーの場合には健常者(非認知症者)との区別がつけにくい。脳血管性認知症は男性に多いが、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は女性に多いという逆の特徴があり、脳の老化による萎縮や脳内の特殊なタンパク質の蓄積とも相関するアルツハイマー病は近年超高齢化社会と合わせて急な増加傾向にある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:00 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期(初老期)の精神障害3:認知症(旧痴呆)]

老年期(初老期)の精神障害3:認知症(旧痴呆)

老年期(初老期)に発症するリスクが高くなる代表的な器質性の精神疾患・脳疾患が『認知症(旧痴呆)』である。認知症は更に『脳血管性認知症・アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)・ピック病,クロイツフェルト・ヤコブ病,ハンチントン舞踏病・レビー小体型認知症』などに分類される。

これらのうちで、一般的な老年期(初老期)の認知症として認識されているのは脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)である。 脳血管性認知症とは、『脳梗塞(脳の血管が血栓で詰まる)』『脳出血(脳の血管が破れて出血した状態)』『脳外傷(交通事故などのダメージによる脳の物理的損傷)』などの原因によって脳機能障害が起こって認知症の症状が発症してくるものである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 14:58 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月28日

[老年期(初老期)の精神障害2:妄想反応]

老年期(初老期)の精神障害2:妄想反応

『妄想(delusion)・幻覚(illusion)』などの正常な人にはない思念・知覚が現れる精神症状は、一般的には統合失調症の『陽性症状』として知られている。しかし、中年期や初老期になると、診断可能な統合失調症を発症していない人であっても、各種の心理的要因や体調・脳の状態の変化から、『妄想反応』と呼ばれる軽度の妄想・幻覚が発生してくることがある。

老年期(初老期)の精神障害1:初老期うつ病

中年期・初老期以降の妄想反応の特徴としては、男性よりも女性に多く現れることが知られており、40歳以後に発症する精神疾患(精神障害)の約10%にこの妄想反応の症状が見られるという。老年期(初老期)の妄想反応は、中年期以前からあった他人や現実を疑いやすく、自分が陥れられているという被害妄想に陥りやすい基本的な性格行動パターンが影響していることも多い。

初老期の妄想反応を発症しやすいリスクファクター(危険因子)としては、『子供がいない(子供の数が少なくて交流がない)・単身世帯での生活・感覚障害(難聴・視力低下・味覚障害など)・社会的な孤独感や疎外感・高齢で親族がほとんどいない』などの要因が上げられている。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:09 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月18日

[老年期(初老期)の精神障害1:初老期うつ病]

老年期(初老期)の精神障害1:初老期うつ病

60代以降の老年期(初老期)に特に起こりやすい精神障害と言われるものに、『初老期うつ病・老年期の妄想反応・初老期の認知症(旧痴呆症)』がある。

うつ病(気分障害)は、精神運動抑制によって抑うつ気分や気分の落ち込み、不安感、焦燥感、思考力・集中力(知的能力)の低下、倦怠感(だるさ・重さ)、頭痛、腹痛などのさまざまな心身症状が起こってくる精神病である。

うつ病の発症要因には『遺伝・体質気質の生物学的要因』『ストレス・人間関係などの心理社会的要因』があるが、『加齢による認知能力の低下・人間関係の減少(対象喪失の悲哀)』もうつ病のリスクファクターとして捉えられるようになっている。

うつ病が発症しやすい年齢について、かつては社会的責任が重くなり人生の全体が見えてくる40〜50代の中年期後期に多いとされていたが、現在では20〜30代の青年期でも60〜70代の老年期でもうつ病を発症する人が増えており、特定の年代だけがかかりやすい精神障害ではなくなってきている。20〜30代の青年期では、進学・仕事や人間関係のストレス、学業や仕事の挫折感、失恋や離婚の喪失感などによってうつ病の発症リスクが高まることがある。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 12:12 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月16日

[アレキサンダー・ローウェン(Alexander Lowen)]

アレキサンダー・ローウェン(Alexander Lowen)

アレキサンダー・ローウェン(Alexander Lowen,1910-2008)は、体育教師(運動指導員)から医師・精神分析家に転向した異色のキャリアを持つ人物で、エスの性的エネルギーを重視したウィルヘルム・ライヒに米国のニューヨークで教育分析(1942年-1945年)を受けている。

アレキサンダー・ローウェンは、無意識の意識化を目指す精神分析の欠点として『言語的な洞察・分析』に偏りすぎていることを指摘し、対話療法の『精神分析』と身体の運動・ポーズを伴う『ヨーガ(身体運動法)』を統合しようとする壮大な計画を立てていた。A.ローウェンが精神分析と身体運動法を統合しようと思ったきっかけは、自らが学生の指導員をしていた『夏期キャンプ』を通しての心身の相互作用にまつわる体験だったという。

精神の健康(メンタルヘルス)と身体の運動との相関関係に興味を持ったA.ローウェンは、E.ジェイコブソンの『漸進的弛緩法(リラクセーション法)』や古代インドから続く『ヨーガ』を実際に経験しながら学んでいた。体育教師(運動・キャンプなどの指導員)としてそういった独自の心身相関の研究をしていた後に、ウィルヘルム・ライヒの性格分析にまつわる講義を受け、『精神分析』の理論や人間観に傾倒していくことになった。

ウィルヘルム・ライヒは、ジークムント・フロイトの『言語的コミュニケーションによる無意識の自己洞察』だけに依拠した正統派精神分析から逸脱して、クライエントの身体に実際に触れることによって癒しや気づきを得られるとする『植物神経療法(心身医学的な身体技法)』を実施していたが、A.ローウェンはライヒの植物神経療法のボディタッチの効果に着目していたようである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 13:09 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月17日

[ロジャーズ・スキナー論争]

ロジャーズ・スキナー論争

クライエント中心療法(来談者中心療法)を創始して『カウンセリングの神様』と呼ばれたカール・ロジャーズ(C.R.Rogers,1902-1987)は、有機体的な存在である人間は誰もが『成長・適応・健康』へと向かう実現傾向を持っているという前提を提示した。

C.R.ロジャーズはカウンセラーや周囲の人間が、『傾聴・共感的理解・無条件の肯定的受容』などの態度で悩んでいる人を支持して上げれば、その実現傾向が促進されて問題は解決に向かうと考えた。

それに対して、人間の行動の生起・消去を賞罰の強化子によってコントロールしようとする『徹底的行動主義』を唱えたB.F.スキナー(B.F.Skinner, 1904-1990)は、人間の行動は刺激に対する反応あるいは強化子を用いた学習によって決定されるという機械的な人間観を提示した。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:31 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月16日

[ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):2]

ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):2

標準的なロボトミー手術の術式は、前側頭部(こめかみ)の頭蓋骨に小さい孔(穴)を開けて、その孔からロイコトームという専用のメスを脳内に挿入し、円を描くように動かして脳組織を切除するというものだった。しかし、執刀医が脳内のどの部分を切除しているのかをモニタリング(観察)する技術・機器が当時はなかったため、『切除する部位・範囲』については医師の経験・勘のさじ加減に頼っていて、人間の精神を司る重要な脳を切除するにしてはかなりいい加減な手術でもあった。

ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):1

E.モニスのロボトミーの術式は、アメリカの脳神経外科医のウォルター・フリーマンやジェームス・W・ワッツによって更に改良されてアメリカでも普及していったが、1970年代頃からは代替的な薬物療法が中心となっていき、深刻な副作用(人格荒廃・無気力化・衝動性亢進など)があるロボトミー手術は次第に行われなくなっていった。患者が手術に同意していなかったり、手術の副作用や影響範囲についてのインフォームド・コンセント(説明を受けて同意した上での医療)が不十分であったりして、ロボトミー手術を受けた患者が執刀医を恨んだり憎んだりして復讐する事件も発生した。

日本でも1979年(昭和54年)に、東京都内でロボトミー手術を強引に騙されて受けさせられた患者(元スポーツライター・通訳)が、その精神科医の妻と母親を刺殺する事件(通称・ロボトミー殺人事件)を起こしており無期懲役が確定している。この容疑者は、入院中に病院で知り合った女性がロボトミー手術を受けた後に自殺したことについて、精神科医に詰め寄り強く抗議したところ、精神疾患による他害・錯乱・暴力の危険性があると判断されてしまった。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 23:35 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):1]

ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):1

ロボトミー(lobotomy)は、重症の精神疾患を脳に対する外科的手術で治療・改善しようとする『精神外科』の分野で行われていた侵襲的な外科手術である。ロボトミー(lobotomy)という言葉は、脳・肺などの器官を構成する大まかな単位である『葉(lobe)』を切除するという意味である。“tomy”『切断・切除』といった意味であり、ロボトミー手術の正式名称は“prefrontal lobotomy(前部前頭葉切截術)”である。

ロボトミーという言葉には、人間の精神活動を停止させて『ロボット(robot)』のようにしてしまう脳外科手術といった意味合いはないが、ロボトミーを人間のロボット化を進めるための手術と解釈する類の誤解も多く見られた。しかし、ロボトミーを実施された患者は実際には、ロボットのように『無感情・無気力・無感動な精神状態(自我の希薄化・意志の脆弱化・気力の衰退化)』になってしまう事も多く、人間をロボット化する手術というアナロジー(類比)はあながち間違いでもなかった。

ロボトミー手術(前頭前葉白質切截術)の実施は、1935年にポルトガルの神経科医エガス・モニス(E.A.Moniz, 1874-1955)と外科医ペドロ・アルメイダ・リマ(Pedro Almeida Lima)が、リスボンのサンタマルタ病院において統合失調症が悪化した精神疾患の患者に対して執刀したのが始まりとされる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 23:31 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月21日

[老年期心理学(psychology of aging)と老年期(senescence):2]

老年期心理学(psychology of aging)と老年期(senescence):2

今までの人生や人間関係の全体を振り返りながら、自分にとっての人生の意味や価値、納得を作り上げていくこと、子・孫の次世代に自分が経験して得た智慧や価値観を継承すること、これから先の人生における希望や目標を新たに見つけ出していくことが『老年期の発達課題』になる。それらの複合的な発達課題の断続的な達成によって『死に対する受容・納得の感覚』が形成されやすくなると考えられている。

老年期心理学(psychology of aging)と老年期(senescence):1

老年期心理学(psychology of aging)では、高齢者の性格傾向(パーソナリティ特性)や心理状態の特徴、発達課題、心理的困難などを研究対象にしているが、超高齢化社会が急速に進行している現代では特に、『増加する高齢者の心理的問題・人生に対する納得感』に対処するための心理学的ケアの重要性が高まっていると言われる。

老年期にはその時期に特有の喪失感やショックにつながる『ライフイベント』があるため、それらのライフイベントに遭遇した時には心理状態が不安定になり人生に対する否定的な絶望の感情が強まりやすいのだが、そういった老年期の心理的危機を克服していくためにも、各種の心理学的知見が応用されることが期待されている。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 11:17 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[老年期心理学(psychology of aging)と老年期(senescence):1]

老年期心理学(psychology of aging)と老年期(senescence):1

現在の発達心理学は、胎児期の誕生から老年期の死までの心理的特徴・発達課題を研究対象として取り扱う『生涯発達心理学』が前提となっているが、その発達段階のうちの老年期の心理状態・発達課題・意味づけに焦点を合わせた心理学を『老年期心理学(psychology of aging)』と呼んでいる。

カール・グスタフ・ユングの分析心理学における老年期にまつわる元型(archetype)として『老賢者(オールド・ワイズマン)』というものもある。C.G.ユングは集合無意識のイメージである老賢者(オールド・ワイズマン)に『父性・叡智・権威・秩序・包容感』などの肯定的な価値評価をしていたが、老賢者のイメージは神話・童話(昔話)・お伽噺などにおいて『智慧のある老人・人格者の老人・最高神・精霊のような小人・太陽・威厳のある高山』などの形を取って現れることが多い。

C.G.ユングは老年期の集合無意識のイメージ(元型)を、『高度な人格と経験に根ざした智慧・男性の理想的な観念・人生の目的に接近する総決算・威厳と寛容の調和』として高く評価したが、社会的精神発達理論で知られているエリク・H・エリクソンも老年期に獲得すべき発達課題とそれが挫折した時の状況として『叡智と絶望の二項対立図式』を提示している。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 11:15 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。