文化心理学(cultural psychology)と文化の定義
世界に存在するそれぞれの社会には、精神的(理念的)な価値を創造して表現したものとしての『文化(culture)』がある。文化とは何かの定義は簡単ではないが、ドイツ観念論の哲学者マックス・シェーラー(Max Scheler, 1874-1928)は『文化とは理念的・観念的な価値を実現しようとする精神によって産出されたものの総体』と語っている。M.シェーラーの文化の定義は、『物質的な生活次元の利便性を実現しようとする道具や技術、環境、規則の総体』としての文明(civilization)と二項対立的な定義になっている。
文化人類学・社会学で用いられる文化(culture)の概念は、M.シェーラーの定義よりも価値中立的で包括的なものであり、アメリカの文化人類学者のクライド・クラックホーン(C.Kluckhohn,1905-1960)は『後天的あるいは歴史的に形成された外面的・内面的な生活様式の体系』として文化を定義した。C.クラックホーンのいう文化とは、社会の全員・大多数や特定集団のメンバーによって共有されている生活様式の体系であり、この文化は人間が社会生活を送っていく中で親(先行世代)から子(後続世代)へ、社会集団から社会集団へと伝承されていく『社会的行動様式(social behavioural patterns)』である。
どんな食材を主食にしていて一日に何回食事を取るかの食文化、どういった素材で作られた住居に住むのかの住宅文化、どのような衣服を伝統的に着ているのかの服飾文化、どんな価値観や宗教に従って生活しているのかの精神文化(宗教文化)などがあり、文化というものは極めて多元的で複雑な様相を持っている。それぞれの社会集団には、衣食住や行為規範(道徳規範)、役割行動、礼儀(マナー)、ジェスチャーなどに関連する社会的行動様式としての文化がある。そして、人間は社会の中で生きざるを得ない『社会的な動物』なので、誰もがこの文化の影響を受けて考えたり行動したりする事になる。
発達心理学における子どもの発達課題である『社会化(socialize)』も、視点を変えれば文化的価値観の内面化である。子どもは周囲にいる大人の言動を模倣して文化を学び、周囲の大人から自分の言動に対する『賞罰(褒められる・叱られる)・助言・説得』を受けながら、『所属する社会集団における適応的な行動様式』を身につけていく事になる。子どもだけではなく大人でさえも、海外の異文化・異民族の生活に遭遇すれば、『郷に入れば郷に従え(When in Rome, Do as Romans do.)』の格言のように、その土地における標準的・支配的な文化(生活様式)に努力して適応していかなければ暮らしていけない。
続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 08:59
|
TrackBack(0)
|
ふ:心理学キーワード
|

|