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2013年12月08日

[V.E.フランクルの『夜と霧』:2]

V.E.フランクルの『夜と霧』:2

収容所の過酷な環境や無慈悲な仕打ちに耐える『意味への意志(人生に対する意味・希望)』は、人によって様々な形や想像として現れたが、最も典型的な意味への意志は『生きてもう一度家族・恋人・友人に会いたい(意地でも何としてでもこんな所で絶対に死ぬわけにはいかない)』という大切な愛する人への思いだったという。

『やり残したことを何としてもやり遂げたい』や『今まで世話になった人たちに恩返しもせずに死ねない』『自分の人生にはまだ行きたい場所(見たい景色)ややりたい事、やらなければならない事が多く残っている』など、収容所体験を何とか必死で生き延びようとした人たちには必ず何らかの『意味への意志(希望・楽しみ・執着・使命感・宗教感情など)』があったのだという。

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[V.E.フランクルの『夜と霧』:1]

V.E.フランクルの『夜と霧』:1

オーストリアの精神科医でロゴセラピーの創始者でもあるヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl,1905年3月26日〜1997年9月2日)は、1947年に自身のテレージエンシュタット強制収容所の悲惨な収容体験を元にして『夜と霧』という代表著作を出版した。

邦訳書の『夜と霧』のドイツ語の原題は、“trotzdem Ja zum Leben sagen:Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager(それでも人生に然りと言う:ある心理学者の強制収容所体験)”というものであった。

『夜と霧』というタイトルには、アドルフ・ヒトラーが1941年12月7日に発令した『政治犯・レジスタンス勢力・ユダヤ人を秘密裏に抹殺する命令』という意味も込められており、ナチスドイツは抹殺対象を行方不明者(実際には強制収容・処刑)にして家族や友人にもその死亡・所在の情報を一切知らせず『暗黙裡の恐怖・威圧・萎縮』を与えるという冷酷無比な政策を実行した。

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2012年10月27日

[分析的心理劇(analytic psychodrama)]

分析的心理劇(analytic psychodrama)

心理的・感情的な苦悩をテーマにした演劇(演技)を用いる心理療法として、ヤコブ・レヴィ・モレノ『サイコドラマ(心理劇,psychodrama)』がある。サイコドラマ(心理劇)とは、自分のありのままの感情や本当に伝えたい思いをロールプレイング(役割行動の演技)で表現する事によって、カタルシス(感情浄化)やアウェアネス(気づき)といったカウンセリング効果を得ようとするものである。

分析的心理劇(analytic psychodrama)とは、精神分析の理念やパーソナリティを応用した“思春期以前の児童(子ども)”を対象にしたサイコドラマ(心理劇)である。フランスの精神科医であるD.アンジュー(D.Anzieu)が、『体験的・情感的な児童精神療法』の一環としてこの分析的心理劇を創始した。分析的心理劇で採用されている精神分析的な発想というのは、『仮想的な物語世界』で発生したり変化したりする心理的力動(エス・自我・超自我のせめぎ合い)を考慮したサイコドラマを展開するという事である。

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[分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:3]

分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:3

ユング心理学における個性化の鍵は、『ペルソナ(仮面)からの離脱』『シャドウ(影)との対話』『アニマ・アニムスとの出会いと受容』『夢やイメージに投影されるアーキタイプ(元型)の解釈』にあるが、それは『社会・親・他者によって演じる事を強制されている自己』から距離を置いて、『本来の自己・自分が生きたい人生・心的エネルギーが活性化する目標』を求めていくプロセスの中にあるのである。

元型(アーキタイプ)の一つであるペルソナ(仮面)とは、社会や他者に無難に適応するためにかぶっている仮面のような表層の人格を象徴したものである。シャドウ(影)とは、自分が今までの人生で生きることができなかった『自分とは正反対の人格・生き方』を象徴しているイメージであり、一般的には人はシャドウに対して『嫌悪感・軽蔑感‐嫉妬感・憧憬(憧れ)』という対照的な感情を同時に抱きやすいのである。ペルソナやシャドウ、アニマ(アニムス)のイメージを適切に解釈して、それらの元型と対話を重ねて受容したり克服したりしていく事で、『本来のあるべき自己』に接近する個性化が進展していくというのが分析心理学の基本的な考え方である。

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[分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:2]

分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:2

フロイトは個人の過去の抑圧された記憶を自由連想法で想起させると、そこにクライアントができるだけ思い出したくない『幼少期のトラウマ(心的外傷)』が見つかるので、それを意識化して言語化していくことで神経症やヒステリーの精神疾患を治療できるという理論を構築した。しかし、ユングは無意識領域には個人の記憶・体験に基づく“個人的無意識(personal unconsciousness)”だけではなくて、民族・人類といった人間の集団社会に文化的・神話的(伝承的)あるいは遺伝的に共有されている“集合無意識・普遍的無意識(collective unconsciousness)”があると考えたのが、フロイトの理論との最大の違いになっている。

ユングは性的欲動の抑圧や個人の過去のトラウマだけでは、その起源や原因が説明できない種類の無意識(精神症状・夢・イメージ)があるとして、その無意識を個人的無意識の範囲を越えて人間集団(民族・人類)に共有される『集合無意識・普遍的無意識(collective unconsciousness)』と命名した。分析心理学は、夢やイメージ、神話、昔話などに投影されている集合無意識の内容・変化・影響を分析していくことで、精神疾患の心理臨床に役立てることができ、個人の潜在的な自己実現の可能性を高めることができるという前提に立っている。

C.G.ユングは『集合無意識を象徴するイメージとの対話』『集合無意識と個人的無意識が相互作用する物語性』を特に重視しながら、精神疾患や心理的困難を抱えるクライアントのイメージ療法的な精神分析を行っていたという。夢やイメージの内容に出現してくる人物や動物、それらが関係するシチュエーションを分析して表現していくことで、『集合無意識の中における自己の布置(内面世界における位置づけとしてのコンステレーション)』が明らかとなり、心理的エネルギーが活性化されて健康や成長が促進されていくというのが分析心理学の治療機序(治療メカニズム)である。

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[分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:1]

分析心理学(analytical psychology)とカール・グスタフ・ユング:1

ジークムント・フロイトの後継者と目されていた時期もある、スイスの精神分析家カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung, 1875-1961)が創設した精神分析の学派が『分析心理学(analytical psychology)』である。精神分析の始祖であるS.フロイトは、リビドー発達論や性の抑圧説、個人的無意識を中心とする自説に強いこだわりを持ち、頑固で権威主義的なパーソナリティであったとされ、高名な弟子のA.アドラーやC.G.ユングと理論的・性格的に対立して訣別する事になった。

C.G.ユングは、心的現象や精神病理の原因、夢の無意識的な意味などを全て性的欲動(リビドー)の充足と抑圧で説明しようとしたフロイトの『汎性欲説的なエディプス・コンプレックスを中心とした精神分析』に同意できなくなっていく。更に心理学学会に参加した旅先のアメリカで、ユングが自分の見た『地下室にドクロがあるという夢』をフロイトに語った際、フロイトはその夢の意味を『ユングが自分の死を無意識的に願望しているのではないか(自分の地位に取って変わろうとしているのではないか)』という風に解釈して疑念を抱いてしまう。

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2012年10月16日

文化遅滞(cultural lag):物質的価値と精神的価値の文化的なバランス

文化遅滞(cultural lag):物質的価値と精神的価値の文化的なバランス

“文化(culture)”とは精神的な価値を表現する諸活動であると同時に、物質的な生活を習慣化する諸活動である。文化は人間の生活や思考の物心両面を包摂する諸活動であるということができるが、ある特定の地域・民族・部族に根付いている文化は、『物質文明・科学技術・学術知識の進歩』によって影響を受ける。またそれだけではなく、『カルチャーショックを伴う異文化との接触(例えば日本における古代の遣隋使・遣唐使や幕末の黒船来航による開港など)』によっても影響を受けることがある。

衣食住や土着の生業、祭祀、婚姻儀礼、芸能などの『物質的文化』と政治体制や秩序意識、身分、社会機構、宗教思想、善悪観などの『精神的文化』は必ずしも同じスピードでバランス良く変容・展開していくとは限らない。

アメリカの社会学者であるW.F.オグバーン(William F. Ogburn)は、物質的文化が異文化とのコンタクトや技術・知識の進歩によって変容した場合でも、伝統的にその地域・民族にずっと存在し続けている精神的文化(宗教・政治・身分的偏見・価値観)のほうは殆ど変わらない事があるという事実を指摘して、この文化の物質的側面と精神的側面とのミスマッチのことを『文化遅滞(cultural lag)』という概念で表現したのである。

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文化的孤島(cultural island)とエンカウンター

文化的孤島(cultural island)とエンカウンター

建前を排した本音の交流(ぶつかり合い)を促進させる集団精神療法として実施されているグループ・エンカウンターでは、『文化的孤島(cultual island)』の環境をイメージさせることで集団精神療法に取り組む心理状態を整えていく。グループ・エンカウンターでは、一般社会で通用しているような“良い・悪い”の価値判断や“〜すべき・〜してはならない”の常識観念、行為規範、善悪観などをいったん脇に置いて忘れて、『ありのままの自己の純粋性・主体性』をセッションで表現していくことが何より大切である。

新たな他者と出会って語り合うグループ・エンカウンターでは、自己洞察やトラウマの慰撫、共感的(受容的)体験などのカウンセリング効果を期待している部分もあるが、そのためには既存の文化や規範の影響を離脱した『文化的孤島』に近い環境(あるいは心理状態)をそれぞれが意識的に作り上げる必要がある。

なぜなら、カウンセリング(個人療法)にせよエンカウンター(集団療法)にせよ、既存の社会環境や人間関係に適応できない個人がクライアントとして参加する場であり、そういったクライアントに既存の文化的常識や社会的規範を更に強制する事はトラウマティックな悪影響を強めるだけだからである。

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分子矯正精神医学(orthomolecular psychiatry)とライナス・ポーリング

分子矯正精神医学(orthomolecular psychiatry)とライナス・ポーリング

1970〜1980年代にアメリカで考案された『脳内の栄養状態・脳髄液に含まれる物質』に注目する生物学的精神医学の一派が、『分子矯正精神医学(orthomolecular psychiatry)』である。分子矯正精神医学(分子矯正医学)を推進した理論的リーダーとしては、ノーベル化学賞・ノーベル平和賞を受賞したライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling, 1901‐1994)がいるが、L.ポーリングが提唱した大量のビタミンC投与によるがん治療の可能性(=メガビタミン療法)などは現在の医学研究では科学的根拠に欠けるとされている。

ライナス・ポーリングの造語である“orthomolecular(分子矯正)”という概念は、病気の抑制や治療のために体内・体液中の物質の濃度を分子レベルで操作する手法(実際にはビタミンCやミネラルなどを大量に摂取するなど)という意味を持っている。分子矯正精神医学の研究者・臨床家は、人間の精神活動を司る脳と脳髄液(脳内の体液)の成分バランスを重視して、『心脳一元論(心は脳の神経伝達活動に還元可能)』『精神疾患・発達障害に対する食事療法』の立場を取る。

分子矯正精神医学は、人間の脳を『脳髄液で濡れたコンピューター』というモデルで理解しているのだが、脳重量の約85%を占めるとされる『脳髄液(脳内の体液)に含まれている化学物質の成分』によって、人間の精神状態が変化する(その物質の過剰・不足によって精神疾患が発生する)という仮説に基づいた治療を行っている。

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2012年10月05日

[文化人類学(cultural anthropology)と人類学:3]

文化人類学(cultural anthropology)と人類学:3

レヴィ=ストロースは、『親族の基本構造』においてオーストラリア先住民(アボリジニ)や東南アジアの部族など未開社会の婚姻規則の体系についてフィールドワークで調査した。その調査研究によって、『インセストタブー(近親婚禁忌)の構造・社会を構築し拡張する婚姻の持つ機能・女性の贈与と交換による婚姻の歴史』などを明らかにしているが、記号学や構造言語学などの知見を応用したという所にもレヴィ=ストロースの功績がある。

レヴィ=ストロースは『野生の思考(パンセ・ソバージュ,1962年)』において西欧中心主義を批判し、混沌や無知の象徴とされた『(近代化していない)未開社会・部族社会』にも一定の秩序・構造がある事を指摘した。この事はヨーロッパ世界におけるオリエンタリズムのイメージ(未開性・神秘性・後進性)を変容させる事にもつながった。

日本の文化人類学では、京都大学の生態学者・今西錦司(いまにしきんじ,1902-1992)とその弟子である梅棹忠夫(うめさおただお, 1920-2010)らで構成された『京都大学人文科学研究所』が、アジア・アフリカの各地に探検隊を派遣して多くのフィールドワークを行いその成果をまとめている。京都大学の人類学は、チンパンジーの生態・知能・社会構造を研究する霊長類学・進化生物学とのコラボレーションが多い事が特徴であり、今西錦司も自然人類学のカテゴリーに当てはまるチンパンジー(サル学)に関係する論文を多く残している。

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[文化人類学(cultural anthropology)と人類学:2]

文化人類学(cultural anthropology)と人類学:2

現在の文化人類学・人類学は、経済的・産業的な先進国の文化が途上国の文化よりも価値的に優れているという前提を否定しており、それぞれの文化には固有の歴史や価値がありその価値の優劣を判断することには意味がないとする『価値多元主義・文化相対主義』を取るようになっている。

かつては文明的・技術的に発展していない『未開部族の社会』を研究対象にしている事が多かったが、アメリカの女性文化人類学者ルース・ベネディクトが1946年に日本の文化・伝統・気質を調査した『菊と刀 日本文化の型』を発表したように、20世紀後半になると先進国・文明国を対象にした文化人類学の研究も増えてきた。

未開社会を実地にフィールドワークするのが『文化人類学』、文明社会を質問紙や観察法で調査するのが『社会学』というような区分が成り立たなくなっており、その意味で文化人類学と社会学の学問の境界線は曖昧になっていると言えるだろう。近代的な文化人類学の始まりは、体系的なフィールドワークの手法を確立したマリノフスキー『西太平洋の航海者』ラドクリフ=ブラウン『アンダマン島民』が出版された1922年だとされている。

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[文化人類学(cultural anthropology)と人類学:1]

文化人類学(cultural anthropology)と人類学:1

文化人類学(cultural anthropology)は現存する諸民族の文化・生活と社会構造について、フィールドワーク(実地調査)やインタビュー、文献調査などを手段としながら、実証的にその民族・社会集団の調査研究を進める社会科学の一分野である。文化人類学は基本的には『社会科学(social science)』の一分野に分類されているが、文献資料の調査を重視すれば『人文科学』、心理学的な行動の生成変化の分析を重視すれば『行動科学(行動主義心理学)』としての側面も持っている学問分野である。

人類学は、人類の進化プロセスや生物学的な特徴を研究する『自然人類学(natural anthropology)』と人類の社会的・文化的な側面の特徴・傾向性を研究する『文化人類学 (cultural anthropology)』とに大きく分類することができる。文化人類学は人類の生活様式のほぼすべての現象について、『文化の観点』から研究する総合的な学問分野であり、その歴史的な起源は19世紀のイギリスやフランスの『民族学(ethnology)』にあるとされる。

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[文化心理学(cultural psychology)と文化の定義]

文化心理学(cultural psychology)と文化の定義

世界に存在するそれぞれの社会には、精神的(理念的)な価値を創造して表現したものとしての『文化(culture)』がある。文化とは何かの定義は簡単ではないが、ドイツ観念論の哲学者マックス・シェーラー(Max Scheler, 1874-1928)『文化とは理念的・観念的な価値を実現しようとする精神によって産出されたものの総体』と語っている。M.シェーラーの文化の定義は、『物質的な生活次元の利便性を実現しようとする道具や技術、環境、規則の総体』としての文明(civilization)と二項対立的な定義になっている。

文化人類学・社会学で用いられる文化(culture)の概念は、M.シェーラーの定義よりも価値中立的で包括的なものであり、アメリカの文化人類学者のクライド・クラックホーン(C.Kluckhohn,1905-1960)『後天的あるいは歴史的に形成された外面的・内面的な生活様式の体系』として文化を定義した。C.クラックホーンのいう文化とは、社会の全員・大多数や特定集団のメンバーによって共有されている生活様式の体系であり、この文化は人間が社会生活を送っていく中で親(先行世代)から子(後続世代)へ、社会集団から社会集団へと伝承されていく『社会的行動様式(social behavioural patterns)』である。

どんな食材を主食にしていて一日に何回食事を取るかの食文化、どういった素材で作られた住居に住むのかの住宅文化、どのような衣服を伝統的に着ているのかの服飾文化、どんな価値観や宗教に従って生活しているのかの精神文化(宗教文化)などがあり、文化というものは極めて多元的で複雑な様相を持っている。それぞれの社会集団には、衣食住や行為規範(道徳規範)、役割行動、礼儀(マナー)、ジェスチャーなどに関連する社会的行動様式としての文化がある。そして、人間は社会の中で生きざるを得ない『社会的な動物』なので、誰もがこの文化の影響を受けて考えたり行動したりする事になる。

発達心理学における子どもの発達課題である『社会化(socialize)』も、視点を変えれば文化的価値観の内面化である。子どもは周囲にいる大人の言動を模倣して文化を学び、周囲の大人から自分の言動に対する『賞罰(褒められる・叱られる)・助言・説得』を受けながら、『所属する社会集団における適応的な行動様式』を身につけていく事になる。子どもだけではなく大人でさえも、海外の異文化・異民族の生活に遭遇すれば、『郷に入れば郷に従え(When in Rome, Do as Romans do.)』の格言のように、その土地における標準的・支配的な文化(生活様式)に努力して適応していかなければ暮らしていけない。

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2012年09月19日

[プロフェッション(profession)]

プロフェッション(profession)

高度な学識・学歴を有していて、卓越した専門技能や必要な資格を身に付け、職務遂行に必要なトレーニングを受けて実務を積み重ねている専門職を『プロフェッション(profession)』と呼ぶ。プロフェッション(専門職者)は一般的に社会的な権威・威信を持っているが、その権威や威信を守るために『プロフェッショナリズム』の職能的な自信と倫理的な規範を備えていなければならない。

専門職の職業人であるプロフェッショナルには、その公共性・権威性に鑑みて厳しいパブリックサービスの『奉仕性』とクライアント保護を目的とする『倫理性』とが課せられている。歴史的に語られてきたプロフェッションとは高度な学識と技能、経験に基づいた問題解決力を備えた専門職の事であり、どちらかというと組織人(サラリーマン)というよりは自営業的な職人・専門家のイメージを持っていた。

プロフェッションはその専門的な知識と能力に対して、一定の報酬・権威が与えられているのだが、厳しい職業倫理を守って公共的な利益や目標の為に自己研鑽することが期待されている存在でもある。近年では、医師や教師、宗教家、警察官などのプロフェッションの職業倫理や専門的な職能が弱まってきている事が指摘されたりもする。逆に、現代の資本主義社会ではそういったプロフェッションも特別な権威・役割を持つ聖職者ではなくなっており、一般の知的サービス業の提供者と同じ取り扱いをすべきだという意見も出てきている。

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[プロフェッショナリズム(professionalism)]

プロフェッショナリズム(professionalism)

プロフェッショナリズム(professionalism)とは、クライアント(顧客)から対価を受け取るプロ(専門家・熟練者)としての職能的な自信であり、倫理的な自覚である。プロフェッショナリズムは、自分の専門的な知識・経験・技術・能力を縦横に駆使して、報酬を支払ってくれるクライアント(顧客)の問題解決を促進できるという自信に根ざしており、クライアントのニーズを満たせなければ報酬を受け取らないような自尊心となって現れる事もある。

またプロフェッショナリズムは、プロとクライアントとの立場の違いを明確化して、プロに相応しい価値を持つ仕事を確実に提供し、クライアントの利益・プライバシーを守るという職業倫理も含んでいる。『職能的な卓越性・自信』『職業倫理的な自覚・行動規範』とが一体化して機能することでプロフェッショナリズムが成立するが、プロフェッショナリズムにも長所(メリット)と短所(デメリット)とがある。

プロフェッショナリズムの長所(メリット)は言うまでもなく、アマチュアよりもプロのほうが平均的には高い能力・技術と深い知識・経験を持っている可能性が高いという事であり、クライアントに提供する仕事(サービス・商品)の付加価値も高くなりやすいという事である。カウンセリングや心理療法の分野でも、自己流の理論や実践的な経験だけに裏付けられたアマチュアのセラピストよりは、体系的な知識や専門的な資格に裏付けられたプロのセラピストのほうが、平均的に効果のあるカウンセリング(心理療法)を提供しやすいだろう。

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プログラム学習(programmed learning)

プログラム学習(programmed learning)

プログラム学習(programmed learning)とは、自分の能力・努力で段階的に学習課題を進めていくことができるステップ学習法の一つで、学習心理学の知見を応用したものである。難易度の高い複雑な学習課題を効率的に短期間で学べるという利点があり、その難しい課題を細分化して順序正しく配列することで、『各ステップ』を難易度の簡単なものから難しいものへと順番に確実に学んでいく事ができる。

分量の多い学習課題を『各ステップ』に細分化して分割する事で、その各ステップを最後まできちんと勉強しやすくなり、途中でその学習課題の勉強に挫折したり諦めたりするリスクを低くする事ができる。『各ステップ』の学習を最後まで粘り強くやり遂げる事で、自分もやればできるという自己効力感(有能感)が高まる事になり、次のステップを学習するモチベーションも上昇するのである。

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2012年09月18日

プログラム化社会(programmed society)

プログラム化社会(programmed society)

現代社会は“学校教育・企業雇用・社会保障制度・情報機器”などによって、個人の人生の大枠が管理されて規定されている社会であり、何歳でどのような活動をしているのかの予測可能性が高まっているという特徴がある。6歳で小学校に入学して15歳で義務教育の中学校を卒業し、それぞれの学力水準に応じた高校・大学へと進学して、就職活動(就活)や職業訓練(資格取得)をして企業・官庁に就職して働き始めるというオーソドックスな人生プロセスの流れが決まっているようなイメージで理解される。

国民健康保険(企業の社会保険)や公的年金に強制加入させられる事で、更に『個人の健康管理・老後の生活設計・人生の終幕』までが事前にプログラムされているようなシステマティックな社会のことを『プログラム化社会(programmed society)』と呼んでいる。制度や規則、情報、企業(組織)によって作り上げられるプログラム化社会とは、高度な管理主義社会(情報化社会)であると同時に、国民を揺り篭から墓場まで計画的に保護しようとするパターナリズム社会でもある。

プログラム化社会は『産業化・情報化・管理化・教育訓練』によって形成された社会であり、『社会成員の計画的に安定した人生を生きたいという欲求・不安や失敗のないプロセスを準備して欲しいという願望』によって再帰的に強化されていくものである。プログラム化社会の最大の特徴は、社会成員の『自分の将来の予測可能性』が高まるという事であり、その現れの一つが『終身雇用制度・年功賃金制度・公的年金制度』であったが、近年ではこれらの予定調和的な制度設計が崩れてきて、将来のプログラムが描きにくくなっている。

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2012年09月12日

プロテウス的人間(Proteus man)

プロテウス的人間(Proteus man)

古代ギリシア神話のプロテウス(Proteus)は、ポセイドン以前の海神とされ、ポルキュス、ネーレウスと一緒に『海の老人』とも呼ばれる。プロテウスは古い甕絵には身体に魚の尾が付いていて、その身体から獅子や鹿、蝮などが顔を見せているという不気味な姿で描かれている。この不気味な掴みどころのない姿は、プロテウスがどんな姿にも変身する能力を持っている事を示しているという。

プロテウスは未来に対する予言能力を持っているが、その未来を知る力を行使することを嫌っており、プロテウスの予言を聞きたければ、捕まえて無理矢理にでも聞き出さねばならないという。しかし、あらゆる動物や植物、モノに自由に変身する能力を持っている為、捕まえて予言を聞くことは相当に困難である。

アメリカの精神科医であるR.J.リフトン(Robert Jay Lifton 1926-)は、この変身能力と予言能力を持つ海神プロテウスにちなんで、『プロテウス的人間(Proteus man)』という現代社会に適応的な人間類型・性格特性を提唱した。プロテウス的人間は確定的で持続的な自己アイデンティティを確立せずに、『暫定的・一時的な自己アイデンティティ』を形成することで、絶えず変化し続けている外的世界や人間関係に適応していくので、決定的なアイデンティティの崩壊や無力感(自己無価値感)を回避することができる。

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プログレッシブ・リラクセーション(progressive relaxation)

プログレッシブ・リラクセーション(progressive relaxation)

プログレッシブ・リラクセーション(progressive relaxation)とは、一気にではなくて段階的に少しずつ身体をリラックスさせる方法の事であり、『漸進的弛緩法』と訳されている。アメリカの精神科医であるE.ジェイコブソン(E.Jacobson)が考案したこのプログレッシブ・リラクセーションは、催眠療法や自律訓練法の原理とも関係した技法であり、身体各部の筋肉から力を抜いて完全にリラックスさせる方法として知られている。

ドイツの精神科医J.H.シュルツ(J.H.Shultz, 1884-1970)が開発した自律訓練法(autogenic training:AT)は、筋肉と精神をゆったりと弛緩させたり感覚の変化を生じさせる自己暗示を応用したリラクセーション技法である。E.ジェイコブソンのプログレッシブ・リラクセーションも、その自律訓練法と同じく段階的な自己暗示と感覚のトレーニングによって、治療的効果のある筋肉の弛緩状態を引き起こそうとするものであり、ジェイコブソンは特に『筋肉の緊張‐弛緩の感覚体験』を重要視した。

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プリ・セッション(pre-session)

プリ・セッション(pre-session)

プリ・セッション(pre-session)とは、集団的なカウンセリング・心理療法(サイコセラピー)のセッションの前に実施するセッションの事である。本番のカウンセリングの前に行われる事前説明や打ち合わせ、話し合いなど『準備的なセッション』のことを指して、プリ・セッションと呼んでいる。プリ・セッションを実施する事によって、集団療法に参加しているメンバー達の間に、打ち解けた雰囲気や自然な信頼感を生み出しやすくなり、その後の集団カウンセリング(集団精神療法)へとスムーズに移行していく事ができる。

本番のスポーツ競技をする前に、筋肉をほぐしたりリラックスしたりするために『ウォーミングアップ運動』が行われる事があるが、それになぞらえて『ウォーミングアップセッション』という呼び方をすることもある。あるいはプリ・セッションの社交的かつ雑談的な会話内容から、単純に『待合室セッション』と呼んだりもする。ウォーミングアップにせよ待合室の雑談にせよ、プリ・セッションをする目的は『集団精神療法のメンバーの緊張感・警戒感の緩和』『クライアントの心理的力動の把握』にある。

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