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2012年07月04日

プライマリー・ケア(primary care)とかかりつけ医の地域医療:2

プライマリー・ケア(primary care)とかかりつけ医の地域医療:2

この項目は、[前回の記事]の続きの内容になっています。 プライマリー・ケアは一般的な健康診断(医学的検査)の結果を解釈したり幅広く健康上の相談に乗ったり、多くの怪我・病気の緊急対応的な治療を行ったりする医療のことであり、『何でも診てくれる身近な総合医』によって担われている。しかし、『自分だけでは治療できないと判断した疾患・病状(小さな医療施設では検査・治療ができない症例)』に対しては、速やかに自分よりもその疾患の治療に詳しくて慣れている知り合いの専門医や最新の医療設備が整った大病院にオファーして紹介するのである。

プライマリー・ケアを担っている総合医は、外来診療・在宅医療を中心にして活動している『家庭医』と病院内で総合的・全人的な診療行為に携わっている『病院総合診療医(ホスピタリスト,hospitalist)』とに大きく分類される。病院総合診療医は『総合内科医』と呼ばれることもあるが、この家庭医とホスピタリストとが協力することで『在宅・外来・入院・予防の地域医療』が成り立ち機能していくのである。プライマリー・ケアは、定期的な健康診断や感染症の予防接種、ストレス緩和(悩み相談)のメンタルケアなどを通して、病気になってから病院に通うのではなく、事前にできるだけ病気に罹らないようにするという『予防医学』の分野にも力を入れている。

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プライマリー・ケア(primary care)とかかりつけ医の地域医療:1

プライマリー・ケア(primary care)とかかりつけ医の地域医療:1

現代医療は高度な専門化・細分化の役割分担が進んでいて、自分が専門的に学んできた“身体各部の特定の器官・疾患”だけを診て治療するという専門医(スペシャリスト)が増えている。専門医は自分の専門外の器官・疾患を診る事が殆どなく、専門ではない病気(患者)に対しては『他の専門医』に紹介するという選択をすることが多いが、そのことが『気軽に健康・病気の一般的な相談に乗って欲しい』という患者のニーズに応えられない問題を生み出している。

プライマリー・ケア(primary care)というのは、患者のさまざまな健康上の悩みや病気、不安に対して親身になって応えてくれる『地域密着の総合的・継続的な医療』の事である。患者の身体と精神、生活環境、人間関係を総合的に診るというだけでなく、一人の人間としての患者に長く継続的に付き合っていくという意味も、プライマリーケアには込められている。

プライマリー・ケアは病気の身体要因(身体器官の異常)だけに着目するのではなく、精神要因や環境要因(ストレス因子)も合わせて考える“全人医療”であり、『家庭医制度(かかりつけ医制度)』の基盤にあるべき身近で安心できる医療を目指すものでもある。

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2012年06月20日

不偏分散(unbiased variance)

不偏分散(unbiased variance)

F検定を実施して、2つの正規分布する母集団のばらつき(母分散)に違いがあるか否かを調べる時に参照するのが 『不偏分散(unbiased variance)』である。2つの母集団から標本を抽出して『標本分散(sample variance)』のばらつきを求める公式は以下のようになっている。

n個のデータx1,x2,…,x{n-1},x{n}からなる標本があって、yをそのデータの相加平均とした場合に、(y-x{i})^2の相加平均として表されるのが『標本分散(sample variance)』であり、公式は“S^2=1/nΣ(y-x{i})^2”(Σはi=1からnまでの総和)となる。標本分散は統計学の理論的には、『2乗した各サンプルの相加平均』から『相加平均を2乗したもの』を引いた値と同値になる。公式は“S^2=1/nΣx{i}^2-y^2=x^2の相加平均-y^2”(Σはi=1からnまでの総和)となり、Sというのは『標準偏差(SD:Standard Deviation)』を表している。

つまり、標準偏差を2乗すると『分散(V:variance)』に等しくなるということである。サンプル数が十分に大きくない時には、標本分散はその期待値が母分散(母集団の分散)よりも少し小さくなる事が知られている。そこで期待値が母分散に等しくなるようにするために、“n-1”『有限補正(finite population correction)』を掛ける必要がでてくる。この分散は母分散の不偏推定量であることから『不偏分散 (unbiased variance)』と呼ばれており、標本分散の分母の“n”“n-1”の自由度に置き換えたものになる。

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ラベル:統計学 分散
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2012年06月08日

不正咬合(malocclusion)の症状・種類・治療:2

不正咬合(malocclusion)の症状・種類・治療:2

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 不正咬合を矯正治療しないままで放置することのリスクやデメリットには以下のような事がある。

1.的確な歯磨きがしづらいため、虫歯・歯周病の原因となり、永久歯が長持ちしない事が多い。

2.噛み合わせが悪いため、言葉の発音が不明瞭・不正確になってしまうことがある。

3.口を開けた時の外観の印象が悪くなりやすい。

4.食物が上手く噛み込めずに消化不良になりやすい。

5.不正咬合の外観の悪さが気になって、人前で口を開けたり笑うのが恥ずかしくなったり、歯並びがコンプレックス(トラウマ的な記憶の要因)になるなどの心理的悪影響を及ぼすこともある。

典型的な不正咬合の種類には以下のようなものがある。

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不正咬合(malocclusion)の症状・種類・治療:1

不正咬合(malocclusion)の症状・種類・治療:1

不正咬合(malocclusion,ふせいこうごう)とは簡単に言えば、『上下の歯並び(噛み合わせ)』が悪い状態の事であり、不正咬合があると正常な噛み合わせができなくなってしまう。従来、不正咬合は『歯並びが悪いという見た目』よりも『歯並びが悪い事による歯磨きのしにくさ=虫歯・歯周病になりやすく歯が長持ちしにくい健康問題』が重視されていた。しかし、近年では子供の歯並びを矯正歯科的に綺麗に矯正しようとする欧米文化の影響を受けて、『不正咬合の美容的・文化的観点からの歯列矯正』も多くなっている。

不正咬合そのものは程度が酷くなければ病気ではなく、むしろ上顎と下顎(上下の顎関節)、上下のそれぞれに対応する歯がかっちりと綺麗に合わさっている人(全く上下の歯の噛み合わせにズレがない人)のほうが少ない。しかし、上下の噛み合わせがズレている不正咬合を放置することで、『顎関節症(がくかんせつしょう,Temporomandibular joint disorder)』が発症することがある。顎関節症というのは、顎関節部や咀嚼筋などに疼痛が起こったり、異常な関節音(開口音)が鳴ったり、口が上手く開けられない開口障害(顎運動異常)が起こったりする疾患である。顎関節症は主観的苦痛及び日常生活の障害が大きいので治療が必要となる。

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[浮腫(edema)の症状・原因・治療]

浮腫(edema)の症状・原因・治療

浮腫(edema,ふしゅ)は一般に『むくみ』とも呼ばれるが、血液中の水分や血漿成分が細胞(細胞組織の間隙)に異常に多く浸入してきた状態であり、その水分が血管に再吸収されずに貯留されて腫れる。組織間質液が“2000cc〜3000cc以上”に増加した場合に、臨床的な浮腫としての診断が下されるが、こういった病的な浮腫では体重が水分量増加で1日に“2kg以上”も増えてしまう事がある。

顔・手足などの身体の末端が体内の水分貯留により『痛み』を伴わない形で腫れる症候を示す。『浮腫』そのものは軽度のものであれば、特別な病気でなくても自然な生理現象として起こる事があり、特に長時間の立ち仕事をしたりすると夕方に脚のむくみが出やすくなる。細胞組織に水分が貯まってしまう浮腫の物理的原因は、『細胞組織の液体(細胞間質液)と血液との圧力バランスの崩れ』であり、病的な浮腫の場合には腫れが大きくなりやすく(その腫れが元に戻りにくく)、指で押すとその形にへこんだままの状態になりやすい。

浮腫が起こっている部位の範囲によって、『全身性浮腫』『局所性浮腫』とに分けられるが、浮腫は『心疾患・腎臓疾患・腎臓疾患・脚気(ビタミンBの欠如)・静脈瘤・甲状腺機能低下症・フレグモニー(蜂窩炎)・クッシング症候群のムーンフェイス(満月様顔貌)』などと密接な関係があることが知られている。心不全などの心血管障害が発生すると、『うっ血性浮腫』と呼ばれる全身性浮腫が起こりやすくなる。

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2012年06月05日

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:5

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:5

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 男女の性別役割分担のジェンダー(社会的性差)が成り立ちにくくなり、女性の社会進出・就労状況が進展する中で、『女性の家事育児の負担』だけは以前と余り変わらないということも、ストレス性疾患と相関した不定愁訴の要因になっている。『男性の労働負担の増加・賃金水準の低下(失業リスクの高まり)』なども男性の精神的ストレス増加の要因になっており、男女の性別を問わずこういった『社会経済的要因(家庭や生活、仕事を維持するための負担感・緊張感)』も不定愁訴で訴えられる心身の不調と関係している。

何となく身体・精神の調子が悪いという不定愁訴は、『はっきりした病気ではないから・こんな小さなことで相談すると悪いから・気の持ちようで調子が悪いのだろう』ということで、病院には行きづらいという人も多いが、不定愁訴をもたらす他の病気の早期発見をするためにも、とりあえず一回は病院で医師にきちんと相談してみたほうが良い。医師によっては不定愁訴を適当に聞き流して、まともな診療や対応をしてくれないこともあり、患者の診療の動機づけが弱くなってしまう問題はあるが、『丁寧に共感的に話を聞いてくれる・必要な医学的検査をしてくれる・対症療法の薬を出して様子を見てくれる』といった当たりが良い医師を見分ける目安になるだろう。

不定愁訴の不調や悩みを持っている患者で一番つらいのは、『大袈裟に言っているだけではないか・単なるわがままや甘えではないか・わざと病気になりたがっているのではないか・詐病や仮病なのではないか』という医師や周囲の人たちの疑いのまなざしと無理解である。そういった疑いを無くして親身になって話を聞いてもらえるだけでも、『ストレス性疾患としての不定愁訴』であれば軽減してしまうことも多いのである。それは、共感的な理解をしてもらって自分のつらさを肯定してもらうことが、クライエント中心療法のような自然な『カウンセリング効果(感情解放のカタルシス効果・仲間に支持されるバディ効果)』をもたらしているからである。

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不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:4

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:4

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 女性ホルモンのバランスが崩れたり、女性ホルモン(特に情緒安定を司るエストロゲンの卵胞ホルモン)の分泌が減少しやすい時期に、『更年期障害・月経不順・月経前症候群(PMS)』とも相関した不定愁訴は発生しやすくなる。女性の精神状態が不安定になったり漠然とした身体の不調が多くなったりするのは、初潮が始まる10代の思春期、妊娠・出産を経験する人(その結果としての産後うつ・マタニティーブルーなど)も増える20〜30代、あるいは閉経が近づいて女性ホルモン分泌が減ってくる更年期、子宮・卵巣の婦人科疾患に罹患した時などである。

女性の更年期とされるのは、一般的に閉経前後の10年間ほどの期間を大まかに指しており、『卵巣機能の低下・女性ホルモンの減少』によって睡眠障害や頭痛、胃腸症状、めまい、耳鳴り、イライラ、不安感、抑うつ感、肩こり、頭痛などの症状がでやすくなる。こういった女性特有の不定愁訴は、レディスクリニック(婦人科)で相談されることが多いが、診断名がつかないことも多く、診断名がつく場合には『自律神経失調症・更年期障害・抑うつ反応・ストレス性反応』などになってくる。レディスクリニックの治療では、通常、エストロゲンの女性ホルモン補充療法や抗不安薬・抗うつ薬・漢方薬(長期の体質改善を目指す治療)の薬物療法が選択されることが多い。

不定愁訴の背後には、子宮筋腫やがん、うつ病、パニック障害、不安障害など重大な身体疾患・精神疾患が潜んでいるリスクもあるので、ただの精神的な不調やストレスの影響だと簡単に考えずに、きちんとした医学的検査・問診を一通りは受けておくほうが安心である。出血が多かったりする過多月経の場合には、子宮筋腫が関係していることもあるが、子宮筋腫そのものは30歳以上の女性の20〜30%に発症するとされており、必ずしも珍しい婦人科疾患ではない。

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不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:3

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:3

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 自律神経失調症による『不定愁訴の心身症状』の種類と程度はさまざまであり、特定の症状だけが持続的に出ることもあれば、複数の症状が間欠的に出現してその症状の組み合わせが変わることもあって掴みどころがないものである。自律神経失調症・更年期障害などで患者が訴えてくる不定愁訴は個人差も非常に大きいのだが、その代表的な症状を列挙すると以下のようになる。これらの症状は『血液検査・レントゲン撮影・CTスキャンやMRIなど画像診断・心電図・血圧測定』などの医学的検査を行なってもその原因(はっきりした身体的所見)を特定することができないものである。

1.全身症状

疲労感、倦怠感、疲れやすさ、ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、動悸・息切れ、大量発汗、皮膚の炎症やかゆみなど。

2.感覚器の異常

嗅覚の異常、味覚の異常、メニエール病(耳鳴り・めまい)、視覚の異常(モノがぼやける、二重に見える)、唾液分泌の異常、口内の乾燥、眼球の乾燥など。

3.手足・首・肩の症状

首や肩、背中などのコリ、手足のしびれや麻痺、手足に起こる冷え症など。

4.消化器の症状

食欲不振、胃痛、胸焼け、胃もたれ、頻尿、便秘・下痢など。

5.泌尿器・生殖器の異常

残尿感、頻尿、血尿、月経異常(無月経)、性欲低下(インポテンツ)、性交痛(痛みによる性交困難)など。

その他の症状

頭痛、頭重、めまい、易怒性、イライラ、不安感、情緒不安定、抑うつ感、睡眠障害、喉に何か詰まった感じ(喉の異物感)など。

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不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:2

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:2

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 自律神経系は神経活動を興奮させる『交感神経』と鎮静させる『副交感神経』のバランスによって、心身のホメオスタシス(生体恒常性)を維持しているが、それらは意識的に調整することができない『不随意性の神経』である。交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れると、循環器や呼吸器、消化器などにさまざまな違和感・不調がでやすくなってくる。

“活動する神経(行動するための神経)”である交感神経は、血管を収縮させることで心拍数を増やして血圧を高め、呼吸を早めて筋肉を緊張させて、胃腸の消化を抑制する。“休養する神経(行動を抑えるための神経)”である副交感神経は、血管を弛緩(拡張)させることで心拍数を減らして血圧を下げ、呼吸をゆっくりにして筋肉を弛緩させて、胃腸の消化は促進させる。

交感神経は活動量の多くなる昼間に活発に働きやすく、副交感神経は活動量が減ってくる夜間に活発に働きやすいのだが、リラックスした安定した精神状態の時には副交感神経が優位となり、反対に興奮して怒っている時や気持ちが不安定になっている時には交感神経が優位になりやすい。

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不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:1

不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:1

不定愁訴(indefinite complaint)とは、医学的検査をしても原因が特定できない心身の漠然とした不調であり、主観的な症状の訴えが強いという特徴を持つ。『気分が悪い・眠れない・疲れやすい・頭が痛い・胃腸に異和感がある・倦怠感がある・イライラする・不安が強い・肩がこる』などの多様な自覚症状はあるのだが、医学的検査(身体的検査)では異常所見が見られず、客観的な病名診断と治療方針の決定がしづらいのである。そのため、仮病・詐病と誤解されて患者がつらい思いをしたり、医師や家族に病的状態であることを理解して貰えても、治療法が定まりにくいという問題がある。

『不定愁訴』で出現する身体症状・精神症状の多くは、2つ以上の症状が組み合わされて出ることが多く、長期間にわたって持続的(間歇的)にそれらの症状が続くため、患者の主観的な苦しみや痛みは想像以上に大きなものになりやすい。不定愁訴は自律神経の機能やバランスに異常が起こっている『自律神経失調症』として診断されることも多いが、自律神経失調症は正式な診断名ではなく、『ストレス・身体疲労・加齢などで自律神経系のバランスが崩れているという状態』を示しているだけである。

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2012年05月05日

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

『輻輳(ふくそう,convergence)』とは、物が1ヶ所に集中して混雑する状態のことを意味する概念であり、一般的には電話回線やインターネット回線(TCP/IP網)などで、通信要求過多により通信が成立しにくくなっている現象のことを指す通信分野の用語として使われることが多い。輻輳の発生を回避する技術や輻輳状態からスピーディーに回復させる通信技術のことを『輻輳制御(congestion control)』といい、輻輳状態が悪化して通信効率が非常に悪くなったり通信不能に陥るような状態のことを『輻輳崩壊』と呼んでいる。

この項目では、心理学特に発達心理学の分野で用いられる専門用語(テクニカルターム)としての『輻輳説(theory of convergence)』について簡単に説明するが、輻輳説は人間の性格や才能、能力(知能)が何によって決定されるのかという発達要因の議論から生まれたものである。人間の性格や能力が遺伝要因だけによって決定されるという仮説を『遺伝説(遺伝子決定論)』、人間の性格や能力が環境要因・学習要因だけによって決定されるという仮説を『環境説(環境決定論)』というが、『輻輳説』はそれらの中間的な折衷案としての特徴を持つ。

遺伝説は『生得的要因・遺伝的要素』だけを過大に評価しており、環境説は『後天的要因・経験的要素』だけを過大に評価しているという問題があり、どちらもかなり偏った仮説であり意見であるとして、現在では『単純な遺伝説・環境説』のみを主張している発達心理学・性格心理学の研究者はほとんどいない。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)5:西洋的自我と東洋的無我の統合の理想

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)5:西洋的自我と東洋的無我の統合の理想

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教カウンセリングにしても牧会カウンセリングにしても、『宗教的カウンセリング』であって『宗教そのもの』ではないという認識がそこにはある。そのため、宗教的な世界観や宗教の理想をクライアントにただ押し付けるようなものであってはならず、クライアントが直面している現実的な問題や苦悩を解決していくためにはどうすれば良いのかという『プラグマティック(実用的)』な視点をまず第一に持ってくることになる。

仏教は悟り・解脱に象徴される『自己超越』を目指す宗教であり、大いなる観念との合一体験を目指す“トランスパーソナル心理学”との親和性を持っていたりもするが、仏教カウンセリングでは自己超越だけにこだわらずに現実的な問題解決のほうが優先されることになる。

仏教カウンセリングでクライアントの悩みを理解して、その悩みの解決を共に考えていく場合には、仏教の人間の苦悩についての基本教義としてある『四苦八苦』の理解とその解決法を探す態度がクライアント援助のヒントになることも多い。四苦八苦は『生・老・病・死』『愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦』から構成される人間の世俗的な苦しみの象徴である。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)4:カウンセリングの起源としての宗教セラピー

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)4:カウンセリングの起源としての宗教セラピー

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 カウンセリングや心理療法の歴史的起源は、『宗教療法・宗教的なセラピー(宗教教義を応用した暗示療法・催眠療法など含む)』であると考えられているが、仏教の世界観や実践法、概念には宗教的カウンセリングを可能にするものが多くあり、仏教教義・対機説法を活用したカウンセリングのことを『仏教カウンセリング(Buddhist counseling)』と呼んでいる。

仏教の教えや修行、信仰は、衆生が生活している俗世で起こる苦しみや悲しみ、迷いをどのようにして乗り越えていくべきかに応えるものであり、『人と人との関係性』を前提にしていることもあってカウンセリングとの相性は良い。仏教では曹洞宗や臨済宗の禅宗をはじめとして『正師(学師)と弟子との関係』を重視する宗派も多く、それぞれの宗派の奥義や秘術、真理は『師資相承(ししそうしょう)』の形で引き継がれているので、その師弟関係を応用して仏教カウンセリングの『カウンセラーとクライアントの信頼関係(=ラポール)』を構築することができる。

宗教的カウンセリングの系譜としては、キリスト教カトリック(ローマカトリック)で信者が教会の神父(聖職者)に罪の許しを得るために、過去のあやまちや悪事について語る『懺悔・告白(告解)』が知られているが、キリスト教のプロテスタント(牧師)でも近代的なカウンセリングの技法や発想を取り入れた『牧会カウンセリング』が行われていることがある。仏教カウンセリングでは、人間の苦しみや悲しみの原因と結果の『因果論(相依相即の関係性)』について考えてきた仏教の思想・実践が応用されており、特に俗世と人生における『四苦八苦』の解消や緩和を支援するようなカウンセリングの研究・実践が重視されている。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)3:悟りに至るための『四諦八正道』の実践

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)3:悟りに至るための『四諦八正道』の実践

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教の開祖である釈迦(仏陀)は『死後の世界や来世・霊魂の存在・輪廻の実際・人間の存在意義・宇宙の始まりと終わり』などの形而上学的な真理についての問いに対しては、敢えて意味ありげな答えを返さない『無記』の態度を貫いたとされている。釈迦が取った『無記』の態度については、毒矢に当たった人を救うことを優先すべきで毒矢そのものについて質疑応答などしている暇はないという『毒矢の喩え』で示されることが多い。

四諦(苦集滅道)

苦諦(くたい)……苦の発生と現実にまつわる真理

集諦(じったい)……苦の原因にまつわる真理

滅諦(めったい)……苦を消滅させることにまつわる真理

道諦(どうたい)……苦の消滅を成し遂げる道にまつわる真理

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)2:真理を把握するための『四法印』の教義

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)2:真理を把握するための『四法印』の教義

この記事は、[前回の仏教カウンセリングの項目]の続きになります。 仏教は古代インドの伝統的なヒンドゥー教の世界観である『輪廻転生の概念』を刷新した思想でもある。ヒンドゥー教が想定する輪廻の主体である『永遠不滅の魂(アートマン)』の実在を、『諸法無我・般若心経などに見る空の思想』によって否定しており、この世に永遠不滅の実在などは存在しないという『色即是空・空即是色』を提唱した。

すべての存在は、人間の認識と相互の関係性によって成り立っているとするのが仏教の世界観であり、輪廻そのものも生命が死んだ後に起こるのではなく生命が生きているその最中にも展開されているとした。

仏教は、仏陀の教えや説話に従って精神的な安らぎや苦悩の癒しを求めようとする宗教であるが、真理の正しい理解や世界の実相である諸行無常の洞察によって、『生きることの苦しみ・迷い』を離脱しようとする認知療法的な側面を持つ方法論の集積でもある。キリスト教やイスラム教といった一神教では『帰依・祈りを通した神による救済』を求めているが、仏教では阿弥陀如来を信じて念仏(題目)を唱える浄土信仰のような一神教の救済に似たものもあるが、基本的には『悟り(解脱)を目指す自己実践による救済』を目指す型の宗教になっている。

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仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)1:悟りと抜苦与楽を目指す釈迦の思想

仏教思想と仏教カウンセリング(Buddhist counseling)1:悟りと抜苦与楽を目指す釈迦の思想

仏教(Buddhism)は、紀元前6〜5世紀に四門出遊(出家)したゴータマ・シッダールタ(一説には紀元前463年頃-紀元前383年頃)によって創始された宗教である。ゴータマ・シッダールタは、釈迦(釈迦牟尼世尊)や仏陀(ブッダ)とも呼ばれる。仏教はキリスト教・イスラム教と並ぶ『世界三大宗教』の一つに数えられているが、一神教であるキリスト教やイスラム教とは違って“唯一神による救済(唯一神との契約)”といった概念はなく、“煩悩消尽・真理覚醒による解脱”を目指す宗教である。

仏教は煩悩の苦しみと迷いを完全に解脱した“仏陀(覚者・成就者)”の教えであると同時に、自分自身が『修行・学問・瞑想・祈り(念仏・題目)』を通して悟りを開き、“仏陀(解脱者)・菩薩(救済者)の境地”に辿り付こうとする解脱型の宗教である。

仏教の始まりはゴータマ・シッダールタ(釈迦)がこの世に満ち溢れている『生・老・病・死』の苦しみを知って、その苦しみや迷いをどうすれば克服できるのか、どのようにすれば無くせるのかを考えたことにある。そのため、仏教の宗教的な目的は『神との契約・契約に基づく救済』などではなく、人間ひとりひとりの人生に根ざした『抜苦与楽(ばっくよらく)』なのである。

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2012年04月15日

副腎皮質・副腎髄質(adrenal cortex,adrenal medulla)とホルモン分泌:2

副腎皮質・副腎髄質(adrenal cortex,adrenal medulla)とホルモン分泌:2

この記事は、[前回の項目]の続きになります。 副腎髄質が分泌するアドレナリンとノルアドレナリンには『心拍数の増加・血圧の上昇・発汗の増加・血管収縮・細気管支の拡張・瞳孔の拡大・代謝促進』など交感神経を興奮させて活動性・反応性を高める作用があるが、これらの反応は自分の身を外部の危険や外敵から守る為の『闘争‐逃走反応(fight or flight reaction)』の名残と考えられている。この作用があるため、『エピネフリン(アドレナリン)』は心臓が停止しかけたり停止した時に強心剤として用いられることもあるのである。

主にホルモンを作り出す『クロム親和性細胞』によって構成されている“副腎髄質”は、交感神経系の神経節でもあり、中胚葉由来の細胞が索状・塊状に配列しステロイドホルモンを効率的に分泌している“副腎皮質”とはその起源・構造も役割・作用も全く異なっている。

“中胚葉”由来の副腎皮質と“外胚葉”由来の副腎髄質は名前が似ており位置的にも近い場所にあるが、発生学的にも機能的にも直接の関連性はない。副腎のホルモン分泌を統御している重要な内分泌器官には、『脳の視床下部(Hypothalamu)と脳下垂体(Pituitary gland)』があり、副腎皮質ホルモンは脳下垂体が出す“ACTH(副腎皮質刺激ホルモン,adrenocorticotropic hormone)”によって制御されているのである。視床下部(Hypothalamus)は、自律神経系と内分泌系(生体ホルモン)のコントロールを担当する重要な中枢器官になっており、生体のホメオスタシス(生体恒常性)を保つ上で欠かすことのできない役割を果たしている。

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ラベル:医学 疾患 生理学
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副腎皮質・副腎髄質(adrenal cortex,adrenal medulla)とホルモン分泌:1

副腎皮質・副腎髄質(adrenal cortex,adrenal medulla)とホルモン分泌:1

腎臓の上に乗っかるように位置している内分泌器官(生体ホルモン分泌の器官)を『副腎(adrenal gland)』といい、副腎はその位置する場所から『腎上体(suprarenal gland)』と呼ばれることもある。副腎は『二層構造』をしており、中胚葉由来の『副腎皮質(adrenal cortex)』と外胚葉由来の『副腎髄質(adrenal medulla)』から構成されていて、それぞれ異なる種類の生体ホルモンを分泌して心身の機能とバランスを制御している。

副腎皮質は多種の『ステロイドホルモン』を分泌しており、それらのホルモンをまとめて『副腎皮質ホルモン』と呼んでいるが、ステロイドホルモンとは『糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド・アンドロゲン・エストロゲン・黄体ホルモン』のことである。

このうちで、副腎皮質ホルモンに分類されるのは『糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド』であり、副腎皮質ホルモンには炎症・腫れを抑える抗炎症作用があり、糖質コルチコイドはアトピー性皮膚炎などの治療に用いる『ステロイド外用剤(軟膏・クリーム)』として化学的・人工的に合成されたりもしている。スポーツ選手などが筋肉増強の『ドーピング』(多くの大会で禁止されている)に利用することのあるステロイドは、鉱質コルチコイドや男性ホルモンのアンドロゲンである。

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ラベル:医学 疾患 生理学
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風疹(rubella)・先天性風疹症候群

風疹(rubella)・先天性風疹症候群

風疹(rubella)は風疹ウイルスの感染が原因となる感染症で、子ども時代に一度、罹患すると免疫が形成されて再発症しにくい疾患として知られている。日本では『三日はしか』と呼ばれることもあり、英語では『German measles(ドイツはしか)』と表記することがある。6〜9年ごとに大きな流行が起こることが確認されていたが、1996年以降は大きな流行は起きておらず、その伝染力は同じ子どもに多い感染症である水痘、麻疹(はしか)よりは弱い。ウイルスに感染したとしても、約25%は症状の出ない『不顕性感染』になるため、発熱・発疹の症状がでていなくても風疹ウイルスに対する免疫が形成されていることもある。

風疹ウイルスは『トガウイルス科ルビウイルス属』のウイルスであり、直径50〜70nmの一本鎖RNAウイルスで正十二面体のカプシド構造を持っていて、咳やくしゃみ、密接な接触による『飛沫感染』で他人に感染すると考えられている。ウイルスの感染力が維持されている期間は、『赤い発疹が出る発症前の1週間から発疹消滅後の1週間まで』である。風疹は感染してもすぐに症状が出る疾患ではなく、通常、“2〜3週間の潜伏期間”を経てから発熱・発疹といった全身症状が発症してくる。

感染の初期症状は鼻水と咳、痛みのないバラ色(薄い赤色)の斑点の発疹などであり、発疹が出てくる前には耳の後ろや後頭部辺りのリンパ節が腫れやすくなる。風疹の典型的な3症状は『紅色斑丘疹(顔をはじめとする淡い赤色の発疹)・発熱(37〜38度くらいの熱)・頸部リンパ節腫脹』である。この典型的な3症状が認められない場合には、溶血性レンサ球菌による発疹、伝染性紅斑などを疑う必要があり、病原菌(感染したウイルス)が何なのかを調べるための『病原診断』を実施することになる。

発疹症状では、顔が赤くなって頚部や体幹より相互がくっつく癒合性がない『点状の紅斑(発疹)』が広がってくるが、多くの発疹は 3日程度で消失して稀に色素沈着がそのまま残ってしまうこともある。38〜39度前後の発熱も3日程度続くことがあるが、すべての感染者が発熱するわけではなく、発熱するのは感染者の約25〜50%であるとされている。

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