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2016年09月07日

[DSM-W-TRの多軸診断2:第W軸の心理社会的ストレッサー+第X軸のGAFによる機能の全体的評価]

DSM-W-TRの多軸診断2:第W軸の心理社会的ストレッサー+第X軸のGAFによる機能の全体的評価

DSM-W-TRの“第W軸”と“第X軸”については詳細に触れられることが少ないのだが、クライエント(患者)の心理社会的な状態を正しく認識するために必要な診断軸になっている。第W軸は『心理社会的問題および環境的問題』であり、第T軸(精神疾患・精神障害)と第U軸(パーソナリティー障害・人格障害)の治療・経過・予後・診断に影響する可能性があるものを記載していくという形になっている。

DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)

第W軸では、対人関係のストレスや仕事のストレス、離婚・死別など人生の不幸な出来事、環境的な困難といった『心理社会的ストレッサーの強さのレベル』を診断していくのである。第W軸ではストレッサーの種類について、クライエントを支持する一次的支持グループである家族、そして教育・社会環境・職業・住居・経済問題・保険機関(福祉機関)利用上の問題、その他の心理社会的問題といったカテゴリーが分類されている。

第W軸はクライエント(患者)のストレス因子とそのストレスの強度をできるだけ幅広く正確に理解しようとするための診断軸である。そのためには『クライエントの生活歴・成育歴・人生経験・人間関係』を詳しくインタビューしなければならず、実際には精神科医・臨床心理士(カウンセラー)の限られた面接時間・診察時間の中だけでは十分な情報を得ることが難しいという課題がある。

第W軸の診断システムを機能させるためには、クライエントの生活環境・人間関係・成育歴について詳しい情報を常に知ることのできる立場にある献身的なソーシャルワーカーが機能している必要があるとも言われる。

第X軸は、クライエントの心理状態・適応状態を全体的かつ統合的に評価していく『機能の全体的評価(機能の全体的評定)』の診断軸になっている。一人の社会的存在としてのクライエントが、心理社会的状況にどのように適応しているか、どれくらいの適応水準・病的状態にあるかということがこの第X軸『機能の全体的評価』で評価されることになる。

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[DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)]

DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)

精神疾患と身体疾患の診断には、身体疾患が基礎疾患になっているという『因果関係』が成り立つ場合もあれば成り立たない場合もある。DSMの診断基準では、精神疾患と身体疾患の両者に因果関係が成り立たない場合でも、第V軸の身体疾患として独立的に診断名が記載されることになる。

パニック発作(恐慌発作)と自律神経症状を伴うパニック障害の診断が第T軸で下された時には、第三軸においてパニック発作や自律神経系の異常を引き起こしている『身体疾患(心臓疾患・中枢神経系の神経変性疾患など)』がないかの内科的な検査・診察を追加で行うことになる。これを『純粋な精神疾患』から『身体疾患を基礎に持つ副次的な精神症状』を除外するという意味で『除外診断(negative diagnosis)』と呼んでいる。

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

DSM(マニュアル診断)を前提とする精神医学における『除外診断』では、精神疾患から精神症状を引き起こす身体疾患を除外していくわけだが、例えばパニック障害によって心因性のパニック発作が起きても、それは心臓の異常を伴うような『器質的障害(organic disorder)』ではなく、心因性の自律神経系の異常という『機能的障害(functional disorder)』になるわけである。

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[DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』]

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

2013年出版の『DSM-5』では精神疾患(精神症状)やパーソナリティー障害(人格障害)の重症度をパーセンタイル(%)で段階的に表示する『ディメンション診断(多元診断)』が導入された。

DSM-W以前は、精神障害・人格障害・身体疾患の一覧表を呈示する『カテゴリー診断学』を前提とした網羅的かつ診断的な『多軸診断』が採用されていた。だが、DSM-5の多元診断(ディメンション診断)では、自閉症スペクトラム・双極性スペクトラムに代表される各疾患単位や各パーソナリティ障害で健常・軽症・重症の細かな段階がある『スペクトラム(連続体)』が想定されているのである。

各種の精神疾患・パーソナリティ障害・発達障害の重症度(レベル)を『パーセンタイル表示(%表示)』で表現することによって、個別の症状の特性や重症度に対する精神科医(専門家)の共通理解を促進することができるメリットがある。認知行動療法や論理療法では昔から、思考・認知の記録表における『自己評価方法(気分が最高の時を100%、最悪の時を0%にして評価するなど)』でパーセンタイル表示が採用されてきた経緯もあり、専門家にとっては応用の効きやすさのある方式でもある。

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2015年03月29日

[DSM-W-TRで適応障害(適応水準)を判定する“GAF尺度(全体的評定尺度)”]

DSM-W-TRで適応障害(適応水準)を判定する“GAF尺度(全体的評定尺度)”

精神的な健康と病気という1つの仮想的な連続体に沿って、心理的、社会的、職業的能力を考慮していく。しかし、身体的・環境的な制約による機能の障害は含めないようにすること。最高度の適応水準を“100”、最低度の適応水準を“1”として判定する。

100〜91:広範囲の行動にわたって最高に機能しており、生活上の問題で手に負えないものは何もなく、その人の多数の長所があるために他の人々からも期待されて求められている。各種の病的な症状が何もない。

90〜81:症状が全くないか、ほんの少しだけ(試験前の軽い不安など)ある。すべての面で高い機能を発揮しており、広範囲の活動に興味を持って参加し、社交的な交流ができ、日々の生活に概ね満足している。日々のありふれた問題や心配事以上の悩みがない。

80〜71:症状があったとしても、心理的社会的ストレスに対する一過性の症状として予期される範囲内の反応(恋人と喧嘩した後の仕事能力の低下など)である。社会的・職業的または学校生活上の機能にごくわずかな障害(仕事で軽いミスをする・学業でちょっとしたつまずきを経験するなどでその後に不適応状態にまで陥らない)以上のものはない。

70〜61:いくつかの軽い症状(軽い抑うつ感・不安感・睡眠障害・イライラなど)がある。または社会的・職業的または学校生活上の機能にいくらかの困難がある(会社の勤怠が少し悪い・学校をさぼったりすることもある・家庭内でちょっとした不和や反発があるなど)が、全般的には機能はかなり良好なもので、有意義な対人関係もかなりある。

60〜51:中等度の症状(感情の鈍麻・会話のまとまりが悪い・抑うつで行動に多少の支障がある・特定状況でパニック発作を起こすなど)がある。または社会的・職業的または学校生活上の機能に中等度の困難(友達が極端に少なく悩んでいる・職場の人間関係が険悪である・我慢がなく仕事が長く続かないなど)がある。

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2015年03月24日

[適応障害(Adjustment Disorder)の診断基準と治療法(環境調整+薬物療法+心理療法)]

適応障害(Adjustment Disorder)の診断基準と治療法(環境調整+薬物療法+心理療法)

個体のパーソナリティー(人格構造)の機能と水準によって、個体と環境の相互作用のプロセスが規定され、その与えられた社会環境に適応できるか不適応に陥るかが分かれていくことになる。

精神分析家のオットー・カーンバーグは個人のパーソナリティーの機能水準を、『正常なパーソナリティー水準・神経症的なパーソナリティー水準・境界例的なパーソナリティー水準・精神病的なパーソナリティー水準』に分類して、精神病的なパーソナリティー水準に近づくほどに適応障害のリスクが高まるとした。

適応障害(Adjustment Disorder)を引き起こす要因と情緒面・行動面の障害

適応障害の診断基準はDSM-W-TRとICD-10では異なっているが、その重要な診断基準を整理すると以下のようになる。

1.はっきりと確認できる心理社会的ストレスが原因となっている反応で、3ヶ月以内(ICDでは1ヶ月以内)に発症している。

2.ストレス因子に対する反応が、正常で予測されるものより過剰であり、苦痛を伴う情緒面・行動面の症状が出ている。

3.社会生活を送ることが困難になり、職業的・学業的な機能が障害されている。

4.ストレス状況がなくなれば、不適応反応は6ヶ月以上は持続しない。(ストレス状況がなくなっても、6ヶ月以上にわたって症状が続く場合にはPTSDや分類不能のストレス障害の可能性がある。)

5.他の原因となる精神障害(気分障害・不安障害など)がなく、死別の対象喪失によるストレス反応ではないこと。

6.情緒面・行動面の症状の持続時間が6か月以内のものを急性適応障害、6か月以上のものを慢性適応障害としている。

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[適応障害(Adjustment Disorder)を引き起こす要因と情緒面・行動面の障害]

適応障害(Adjustment Disorder)を引き起こす要因と情緒面・行動面の障害

適応障害の各種の心身症状は、日常生活・職業活動・対人関係などを障害して一般的な社会生活に適応することが極めて困難になるが、その生活面・人間関係面の障害は大きく分けると『情緒的な障害』『行動的な障害』に分けることができる。

また適応障害の『情緒的障害の側面』によって、本人自身が内的に苦悩したり内的な不適応感に陥ったりすることもあれば、『行動的障害の側面』によって客観的な不適応行動・問題行動によって、周囲に迷惑をかけたり自分が社会生活を送れなくなったりすることもある。

適応障害(Adjustment Disorder)の精神症状・身体症状と特徴的な性格傾向

情緒的な障害……感情的な興奮、抑うつ感や不安感、気分障害的(うつ病・双極性障害的)な感情の不安定、睡眠障害、摂食障害(食欲不振)、動悸やパニック、頭痛や肩こり、倦怠感や疲労感、希死念慮や自殺企図などで、『内的な苦悩・不適応感』につながりやすい。

行動的な障害……衝動的・攻撃的な行動(喧嘩・無謀運転など)、アルコールや薬物、ギャンブルなど各種の依存症(嗜癖)、虚言癖、社会的規範の無視・違反、借金や返済の拒否、ひきこもり(対人関係の拒絶)などで、『外的な不適応行動(社会生活への不適応)・周囲の他者への迷惑』につながりやすい。

客観的な不適応行動の事例……出社拒否、不登校、家庭内暴力、アルコール依存症、薬物依存症、対人トラブル、借金、法律違反(無謀運転)、喧嘩など。

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[適応障害(Adjustment Disorder)の精神症状・身体症状と特徴的な性格傾向]

適応障害(Adjustment Disorder)の精神症状・身体症状と特徴的な性格傾向

適応障害(adjustment disorder)を精神症状に注目して分類する場合には、『抑うつを伴う適応障害』『不安感(パニック)を伴う適応障害』に分けることができるが、抑うつ感・落ち込み・不安感・パニック以外にも、焦燥感や神経過敏性、自己不信(自己嫌悪)、恐怖感、緊張感のような情緒障害の症状が起こることがある。

適応障害(Adjustment Disorder)とライフイベントのストレス:2つのストレス対処法

適応障害の代表的な精神症状と身体症状をまとめると以下のようになる。

適応障害の精神症状……抑うつ感・気分の落ち込み・絶望感・不安感・焦燥感・神経過敏・パニック・混乱・自己否定・自己不信(自己嫌悪)・緊張感など。

適応障害の身体症状……睡眠障害・食欲不振・倦怠感・疲労感・ストレス性の胃炎(胃潰瘍)・頭痛・めまい・吐き気・発熱・身体の振るえ・精神運動抑制(身体の動きの緩慢さ)など。

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[適応障害(Adjustment Disorder)とライフイベントのストレス:2つのストレス対処法]

適応障害(Adjustment Disorder)とライフイベントのストレス:2つのストレス対処法

ストレスを引き起こす環境変化のストレッサー(ストレス因子)は、大きく『ライフイベントのストレス(life event stress)』『日常生活のストレス(daily stress)』の2つに分けることができる。

適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:2

ライフイベントのストレスというのは、人生の節目や区切りの大きな出来事として訪れる『進学・就職・結婚・出産・子育て・離婚(大切な人との別れ)・近親者の死』などに伴って感じるストレスのことである。日常生活のストレスというのは、毎日の生活や仕事、学業、人間関係(恋愛・交遊)などの中で感じるストレスのことである。

ライフイベントである別離や死別に伴う代表的なストレス因子として『対象喪失』があり、対象喪失の悲哀感・絶望感・虚無感を回復するための心理的な仕事を指して、ジークムント・フロイトは『喪の仕事(mourning work)』と呼んだ。行動主義・行動療法の心理学者として知られるR.S.ラザラス(R.S.Lazarus)は、ストレスに対処する方法として『外的な問題対処型』『内的な情動対処型』の2つを上げている。

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[適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:2]

適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:2

カナダの生理学者ハンス・セリエは、ストレスを『外部環境からの有害な刺激によって起こる生理的・心理的な歪みに対する非特異的反応(誰にでも起こる一般的反応)』と定義している。そして、ストレッサーに曝された生体が見せるストレッサーの有害性に何とか適応(復元)しようとする一般的な生理的・化学的反応を、『適応症候群(adaptation syndrome)』の理論で説明しているのである。

適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:1

適応症候群とは、脳内の視床下部や副腎皮質・副腎髄質などの内分泌腺のホルモン分泌、あるいは自律神経系の興奮・抑制の調整機能によって誰にでも起こる一般的なストレス反応のことである。この適応症候群が発現することで、ストレッサー(ストレス因子)による生理的・心理的な歪みに耐えたり復元したりすることが可能になっており、多少の有害な変化が起こっても元の状態に戻そうとする『ホメオスタシス(生体恒常性)』が維持されている。

ハンス・セリエが唱えた適応症候群は、『全身反応』と『局所反応』の違いに着目すると『汎適応症候群(GAS)』と『局所適応症候群』の二つに分けることができる。汎適応症候群(GAS:General Adaptation Syndrome)というのはストレッサーに対する生体の全身適応反応のことであり、局所適応症候群というのはストレッサーに対する生体の局所的な適応反応のことである。

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[適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:1]

適応障害(Adjustment Disorder)とハンス・セリエの適応症候群のストレス学説:1

心理的・社会的ストレスが原因となって、職業的・学業的・対人的な能力が大幅に低下したり、社会生活や日常生活が一時的に送れなくなったりするストレス反応性の精神疾患を『適応障害(adjustment disorder)』という。

適応障害は『ストレス障害』の一種に分類されているが、生死の危険に関わるような深刻なストレスが原因となって発症するASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)とは異なり、『仕事・家庭・人間関係の一般的なストレスや苦痛・重圧』によっても発症することがある。

適応障害の原因となる心理社会的ストレスの代表的なものとしては、『仕事上の負担・叱責・責任(重圧)』『家族関係の不仲・DV・虐待(モラハラ)・別離』『対人関係や恋愛関係の悩み・葛藤・不安・別離』などが想定されるが、自分自身の存在価値や生きがい、自尊心を否定されるような言動・非難によっても発症する恐れがある。

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2014年05月04日

[フレデリック・テイラー(Frederick Winslow Taylor)と科学的管理法]

フレデリック・テイラー(Frederick Winslow Taylor)と科学的管理法

アメリカの経営学者・エンジニアのフレデリック・ウィンズロー・テイラー (Frederick Winslow Taylor, 1856-1915)は、工場などの生産現場を効率的かつ生産的に稼働させるための科学的管理法を発案したことから『科学的管理法の父』と称される人物である。労働者管理のマネジメントでもある科学的管理法は、『テイラー・システム』と呼ばれることも多い。

フレデリック・テイラーはアメリカのフィラデルフィアで弁護士を営んでいる裕福な家庭に生まれ、自身も弁護士を目指してハーバード大学に進学するが、眼科疾患の悪化で弁護士になる勉学を諦めて、1874年から工場で機械工見習いとして働き始めた。

エンジニア(技師)としての資格を取得したテイラーは、1878年に大手鉄鋼会社のミッドベール・スチールへ作業者として転職し、そこで『テイラー・ショップ・システム(Taylor Shop System)』という科学的管理法の原型となる効率的な工場生産のためのシステム(工作機械の改良・作業時間や作業工程の改善など)を開発した。

当時の工場労働は、単純作業の分業の組み合わせから成り立っていることから、どうしても馴れと飽き、疲れによる『組織的怠業』の問題を克服するのが難しかったが、テイラー・ショップ・システムの効率的生産方法の導入によって労働コストの削減や怠業の減少に成功したのである。このシステム開発の功績によって、テイラーは職長の地位に当たる主席技師にまで昇進しており、ミッドベール・スチール社に在籍している間に200以上もの特許も取得した。

元々、勤勉で有能であったフレデリック・テイラーは、工場労働に従事している間に、200以上の特許を取得しただけではなく、スティーブンス工科大学にも通って工学修士の学位も授与されている。1890年にミッドベール・スチール社を退職してから、複数の会社で工場管理の業務を請け負い、1898年に転職したベスレヘム・スチール社では、工場管理の再編成を実施して労働者の作業や道具などの標準化を実施した。

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[エミール・デュルケーム(Emile Durkheim)の『自殺論』の四類型と道徳性の要素]

エミール・デュルケーム(Emile Durkheim)の『自殺論』の四類型と道徳性の要素

E.デュルケームは、近代化によるアノミー状態(無規範状態)の促進で『個人の孤立化・無気力化・方向感覚の喪失(自己アイデンティティ拡散)』といった精神的危機(自殺リスク)が高まる恐れがあるという警鐘を鳴らしたが、その精神的危機を克服する方策の一つが『社会集団に共有される道徳的秩序(規範意識)の再建』であった。

デュルケームは『道徳教育論』において、道徳性の三要素として『規律の精神・社会集団への愛着(帰属感)・意志の自律性』を上げている。

E.デュルケームは19世紀後半のヨーロッパにおける『自殺率の上昇』を受けて、『自殺という社会的事実』を社会学研究の対象に据えた。自殺を生み出す社会的要因(社会的事実)に着目したデュルケームは、各社会で起こる自殺を実証的かつ客観的に分析する研究を進めて、自殺を以下の4つの類型に分類している。

1.利他的自殺(集団本位的自殺)……社会集団の価値規範や常識・慣習に絶対的な強制・服従を求められる社会、あるいは、社会集団の価値規範や常識を無条件かつ自発的に受け容れる圧倒的多数の個人で構成される社会で発生しやすい自殺類型。

自分自身の欲求や主張、価値観を通すことができない抑圧的な社会や職業集団(軍隊など)で起こるタイプの自殺で、『(大多数の人が当たり前のように適応している)社会集団に上手く適応できない個人』が自責感や自己否定感を感じて自殺する。また、『過剰適応して集団と一体化した個人』が国や組織と運命を共にして殉死(自害)したり自己犠牲を払ったりする。

2.利己的自殺(自己本位的自殺)……社会集団の価値規範や常識・慣習の強制力が弱まってきて、社会に対する帰属感(仲間との連帯感)を感じにくくなった社会集団で発生しやすい自殺類型。個人が社会集団や他者との結びつきを感じにくくなった結果、『孤独感・無力感・焦燥感』などを感じて自殺してしまう人が増える。

ヨーロッパでは集団で集まって信仰生活を共有する機会が多いカトリックよりも、個人単位で聖書を通して神と向き合おうとするプロテスタントのほうが自殺率が高いと思われていた(その後の統計的研究で宗派による自殺率の違いは否定されたが)。大家族で生活する人よりも核家族で生活する人のほうが自殺率が高く、既婚者よりも独身者(老後の単身生活者)のほうが自殺しやすいなど、『個人が孤立しやすい社会環境』が自殺リスクを高めるというもの。

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ラベル:人物 科学 社会学
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[エミール・デュルケーム(Emile Durkheim):2]

エミール・デュルケーム(Emile Durkheim):2

デュルケームは、同じ社会集団に所属する人と会った時には挨拶をしなければならない、弱者や高齢者は助けて上げなければならない、嘘をついたり騙したりしてはいけないといった社会集団に共通の規範や慣習の効果を重要視しており、こういった社会共通の規範・慣習が『社会的事実の基盤』を形成していると考えていた。この社会的事実は、多数の他者と共有されている事柄や規範、慣習であることから、『集合表象(集合的意識)』と呼ばれることもある。

エミール・デュルケーム(Emile Durkheim):1

1902年に、E.デュルケームはソルボンヌ大学のフェルディナン・ビュイッソンの後任として教育学を講義することになったが、この時期に社会学の方法論を教育学に応用する研究を始めて、『教育と社会学』『道徳教育論』などの草稿をまとめている。宗教学に対する社会学の応用として『宗教生活の原初形態』といった論文も書かれているが、デュルケームは『教育社会学・宗教社会学』の開祖としても認識されているのである。

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ラベル:人物 科学 社会学
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[エミール・デュルケーム(Emile Durkheim):1]

エミール・デュルケーム(Emile Durkheim):1

フランスの社会学者のエミール・デュルケーム(Emile Durkheim,1858-1917)は、オーギュスト・コントの実証的社会学の系譜を引き継いで、実証主義的な方法論をあらゆる社会現象に対して採用する『総合社会学』を確立した人物である。

エミール・デュルケームは、個人の行動や社会現象の原因を『個人の内面的な意志・感情・信念』ではなく『社会集団的・統計的な確率的要因』に求めたので、その社会学の立場は『方法論的集団主義』とも呼ばれる。

E.デュルケームは方法論的集団主義を社会学研究のベースにした機能派社会学(デュルケーム学派)を立ち上げ、1887年には『社会学年報』を創刊しているが、その総合社会学の特徴は、客観的な社会環境の要因が個人の行動・心理に与える作用を重視するというものだった。デュルケームの社会学は、社会現象(個人の行動も含む)を客観的に観察して法則化・理論化することを目的としており、社会現象を『生物学的・心理学的な要因』には還元することができない独自の社会学的現象であると定義していた。

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2014年04月21日

[J.M.デュセイ(John M. Dusay)]

J.M.デュセイ(John M. Dusay)

アメリカの精神科医で心理療法家のJ.M.デュセイ(John M. Dusay,1935-)は、交流分析(TA:Transactional Analysis)を創始した精神科医エリック・バーン(Eric Berne,1910-1970)の高弟である。

J.M.デュセイは、5つの自我状態を前提とした交流分析の性格分析テストとコミュニケーション分析のテストである『エゴグラム(egogram)』を開発した人物として知られている。J.M.デュセイはエゴグラムを開発した功績によって、『エリック・バーン記念科学賞』を受賞している。

交流分析では人間(自我)の持つ精神機能のことを『自我状態』と呼んでいるが、自我状態は『その人を特徴づける思考・認知・感情・行動の類型化されたパターン』でもある。エゴグラムの心理テストで前提にされている5つの自我状態は以下のようなものである。

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2014年04月20日

[ジョン・デューイ(John Dewey)3:ジョン・デューイの教育思想と道具主義]

ジョン・デューイ(John Dewey)3:ジョン・デューイの教育思想と道具主義

ジョン・デューイは自分の哲学的・思想的な立場をプラグマティズムではなく『道具主義』と呼んでいたが、この名前には経験主義的な学問を道具として実際の社会や生活に役立てていくという意味合いが込められている。デューイは『真理』について『人々にとってより好ましい知識として信じられているもの』と定義し、真理の実際的な社会機能や社会関係における作用のほうを重視して、従来の観念主義的な絶対的な真理(普遍的な理論)という考え方を退けた。

ジョン・デューイ(John Dewey)2:ジョン・デューイの機能主義心理学と分野横断的な著述

デューイの教育理論とも関係する道具主義の基本的な方法論として、失敗や間違いを繰り返しながらより正しいと思われる知識・理解に近づいていくという『可謬主義(試行錯誤主義)』を採用した。人間は技術的・哲学的・社会文化的な実験(試行錯誤)を繰り返すことによって、真理だと人々が信じている知識体系・方法論に接近していくことができるという考え方であり、デューイは『科学的思考・科学的方法』が従来の宗教に代わって人間の善を実現すると考えた。

宗教規範・神よりも科学的思考を重視するデューイの倫理学は、人間の目的を『最も十全かつもっとも自由な形で、自らの力をそれにふさわしい対象のうちに発揮すること』だと定義した上で、人間の善については、『友情・家族・政治的な関わり・機械の経済的な活用、科学、芸術から構成される実用的・道具的なものだ』とした。このような実際的・道具的な人間の人生や社会に役立つ事柄から離れて、道徳的な善が独立的・絶対的なものとして実在するわけではないというのがデューイの道具主義的(プラグマティック)な善悪の分別なのである。

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[ジョン・デューイ(John Dewey)2:ジョン・デューイの機能主義心理学と分野横断的な著述]

ジョン・デューイ(John Dewey)2:ジョン・デューイの機能主義心理学と分野横断的な著述

1894年には、新設されたばかりのシカゴ大学にジョン・ハーバート・ミードと共に哲学科の主任教授として招聘されるが、シカゴ大学では“Thought and its Subject-Matter”“Studies in Logical Theory (1903)”といった経験に基づく知識の確立に関する論文を発表して、『プラグマティズム(実用主義)・経験主義・機能主義心理学』の思想家・学者として認知されることになった。哲学者リチャード・ローティは、ジョン・デューイについて『我々を観念主義的なプラトンとカントの呪縛(ドグマ)から解放した経験主義の哲学者』として高く評価している。

ジョン・デューイ(John Dewey)1:ジョン・デューイの略歴と経験主義

機能主義心理学の心理学者としてのジョン・デューイは、1896年に実験心理学・行動主義心理学にもつながる“The Reflex Arc Concept in Psychology(心理学における反射弓の概念)”という論文を発表している。1896年1月には、後のシカゴ大学附属実験学校やデューイスクールになる『実験学校(Laboratory School)』を創設している。

この実験学校で行われた各種の心理学・教育学の実験とその成果について講演した内容をまとめて出版されたのが、教育理論・教育学の古典的名著とされる『学校と社会(1899年)』である。1903年には、デューイはアメリカ心理学会会長にも選出されており、心理学会においても中心的地位を占めるようになっていた。ジョン・デューイのウィリアム・ジェイムズの『心理学原理』の影響を受けた機能主義心理学のグループは、『シカゴ学派』とも呼ばれた。

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[ジョン・デューイ(John Dewey)1:ジョン・デューイの略歴と経験主義]

ジョン・デューイ(John Dewey)1:ジョン・デューイの略歴と経験主義

ジョン・デューイ(John Dewey, 1859-1952)は、プラグマティズム(実用主義)の思想家に分類されるアメリカの哲学者・教育哲学者で、20世紀前半以降の実際的で民主的な『経験主義教育』を推進した。ジョン・デューイは、チャールズ・サンダース・パースやウィリアム・ジェームズと並んで称されるプラグマティズムの哲学者であり、20世紀の社会生活と学校教育を実際的な問題解決の方法論に結びつけようとする『新教育運動』の理論的支柱となり、進歩的な民主主義者として政治的な発言も行った。

ジョン・デューイは1859年に、アメリカバーモント州バーリントンの食料品店に、父アーチボルトと母ルシナの三男として生まれた。デューイ家はイギリスから移住してきた開拓民の末裔の家柄で裕福ではなかったが、ジョンは才気煥発で成績優秀な子供であり自分の学力の高さと勤勉の精神によって、自らの教育者(学校教員・大学教授)・哲学者・思想家としてのキャリアを切り開いていった。

教育活動によって人生や社会が変わるというジョン・デューイの基本的信念は、成育環境(生まれた家庭の経済状況)のハンデキャップを乗り越えて教育者・思想家として評価を高めた『自分自身の経験主義的な成功体験』にも裏打ちされている側面がある。

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2014年04月08日

[パウル・ティリッヒ(Paul Tillich):2]

パウル・ティリッヒ(Paul Tillich):2

信仰的実在論の立場を取るティリッヒは『応答する神学』を主張していたが、その神学は『哲学の問いと神学の答え』という図式に基づいたものである。哲学と神学、宗教と世俗社会という二つの異質な世界の境界線を架橋して統合しようとする応答する神学の目的は、『強制の他律』『孤独の自律』を乗り越えた『最高規範の神律』へと人々を導いていくことであった。

パウル・ティリッヒ(Paul Tillich):1

ティリッヒにとって聖書の啓示は、人間の存在や生活と切り離された『永遠普遍の真理』ではなく、人間の存在・実存そのものに生得的に内蔵されている『大きな問い』に答えてくれるものであり、強制される他律の信仰や孤独に陥りやすい自律の信仰を克服する『最高規範の神律』の価値を示唆してくれるものであった。ティリッヒの宗教の定義は『究極の関わり』であり、人は何かと究極的に関わりたいという本質的な志向性を持ち、その何かから自分の存在を根底的かつ絶対的に支えられているという感覚を持ってその感覚が誰かと共有される時に『宗教』が生成されてくる。

ティリッヒにとっての神とは『私たちの存在あるいは非存在を決定するもの』であり、存在と非存在を超越した『存在の究極的根拠(存在そのもの)』であるが、有限の存在である人間はある選択をすれば他の選択が排除されるので『自律性の限界(自律から生まれる孤独)』を抜け出ることができないとされる。

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[パウル・ティリッヒ(Paul Tillich):1]

パウル・ティリッヒ(Paul Tillich):1

神学者パウル・ティリッヒ(Paul Tillich,1886-1965)は、ドイツ出身のプロテスタント系神学者でナチスの迫害を逃れてアメリカに亡命したが、20世紀のキリスト教神学だけではなく、思想哲学や政治学(宗教的社会主義)、美術史などにも幅広い影響を及ぼした。1886年にフランクフルト近郊のシュタルツェッデルにプロテスタントの牧師の子供として生まれ、ベルリン大学で哲学と神学を学んで、第一次世界大戦では自ら希望して従軍牧師(その功績で第一級十字勲章受章)として働いた。

1907年に知り合って友人となった哲学者のエマヌエル・ヒルシュとは、キリスト教と社会主義を融合させようとするティリッヒの『宗教社会主義』を巡って激しい論争を戦わせることになった。パウル・ティリッヒのインターナショナルな万民救済を説く『宗教社会学・人間平等主義』とエマヌエル・ヒルシュが近寄ったナショナルなナチズムの『優生主義・民族主義(アーリア人の選民主義)』は、お互いに相容れることのない思想だったからである。

パウル・ティリッヒは1924年からマールブルク大学やドレスデン大学で哲学・神学の教授を務めていたが、1933年にアドルフ・ヒトラー率いるナチスが政権を掌握すると『反ナチズム勢力への弾圧・迫害』が強まり、キリスト教的社会主義を主導していたティリッヒも弾圧対象となってしまった。ナチス政権下の弾圧に苦しめられたティリッヒは、アメリカに亡命して1940年にアメリカ国民へと帰化している。アメリカに帰化したティリッヒは、ユニオン神学校及びハーバード大学などで教授を務めて、アメリカのキリスト教神学の世界や宗教社会主義の思想、宗教的な人間観に大きなインパクトを与えることになった。

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