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2017年07月10日

[独自性欲求(ユニークネス欲求)と日本語版の独自性欲求尺度]

独自性欲求(ユニークネス欲求)と日本語版の独自性欲求尺度

自分を他者とは異なる独自の存在としてアピールしたい欲求のことを『独自性欲求・ユニークネス欲求』という。独自性欲求が強い人ほど、自分自身を特別な特徴や能力があるユニークな存在であるべきと考えており、『自分が他人と同じであること』『他者と比べて目立つところのない普通・標準であること』を嫌う傾向がある。

日本人は欧米人と比較すると『同調圧力・みんな(普通)から外れる不安』の影響を受けやすく、『他者と同じであること・他者に合わせること』を重視するので、独自性欲求(ユニークネス欲求)は低くなりやすいと言われている。欧米社会でも『帰属集団の標準(普通)からの逸脱』に対するネガティブ(否定的)な評価はあるが、心理学者のC.R.スナイダー(C.R.Snyder)H.L.フロムキン(H.L.Fromkin)はこの標準からの逸脱にポジティブな意味合いを与えた。

C.R.スナイダーとH.L.フロムキンは、ポジティブ(肯定的)な独自性と関係する5つの因子として『独立心・反同調性・改革性・達成・自尊心』を上げて、1980年に独自性欲求の心理測定尺度を作成している。スナイダーとフロムキンの『独自性欲求尺度』は岡本浩一によって1985年に日本語版が作成されている。

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2015年10月14日

[特異的発達障害(Specific Developmental Disorders)・学習障害(Learning Disability):発達障害の子供の療育やサポート]

特異的発達障害(Specific Developmental Disorders)・学習障害(Learning Disability):発達障害の子供の療育やサポート

『広汎性発達障害』という場合には『精神機能・認知能力・対人スキル』の広汎な領域が障害されていることを意味するが、精神・知性の発達の特定の側面だけが障害されている状態を『特異的発達障害(Specific Developmental Disorders)』と呼んでいる。

特異的発達障害は知能指数は正常範囲にあるが、『知能検査(知能テスト)』の下位項目のばらつきが大きい場合を指していて、教育分野では『学習障害(Learning Disability)』と呼ばれることもある。

スタンレー・グリーンスパン(Stanley Greenspan)の『多システム発達遅滞』と愛着形成の障害

どの下位項目の知的能力や学習能力が障害されているかによって、『発達性の読書障害・書字障害・計算障害・言語障害』などに分類されており、そこには幼少期・児童期の運動能力と関係する『発達性の協調運動障害』も含まれている。

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2015年07月29日

[DSM-W-TRにおける統合失調症の症状の特徴と病型の分類]

DSM-W-TRにおける統合失調症の症状の特徴と病型の分類

統合失調症の特徴的症状

以下のうち、2つ以上の症状が存在する。それぞれの症状は、1ヶ月の期間(治療が上手くいった場合にはより短くなる)にわたって殆ど常に存在している。

1.妄想

2.幻覚

3.会話の解体(支離滅裂・頻繁な脱線)

4.解体したまとまりのない言動,緊張病性の反応の乏しい行動

5.陰性症状(感情の平板化・無為・ひきこもり・思考の貧困・意欲の欠如など)

社会的・職業的機能の低下

症状が発症して以降の期間の大部分において、仕事や対人関係、自己管理などの面で、1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している。小児期〜青年期の発症では、発達年齢から期待される学業的・対人的・職業的な能力水準に達していない。

期間

精神疾患の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間にわたって存在する。この6ヶ月の期間には、上記の特徴的症状が少なくとも1ヶ月間は存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状が存在する期間を含んでも良い。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは特徴的症状にある症状の2つ以上が弱められた形で出現することがある。

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[統合失調症の疫学研究と経過・予後2:入院治療の減少と地域精神医療]

統合失調症の疫学研究と経過・予後2:入院治療の減少と地域精神医療

抗精神病薬(メジャートランキライザー)を用いた薬物療法の進歩・普及によって、現在の統合失調症の治療は『入院療法(入院治療)』よりも『通院療法(通院治療)』がメインになっている。

やむを得ずに入院療法が選択されるというケースは、重症の陽性症状(興奮・錯乱・幻覚・妄想)などが見られて、自殺したり他人を傷つけたりする『自傷他害の危険性』が有意に高まっているケースで、この場合には法的根拠のある強制的な『措置入院』になることも多い。

統合失調症の疫学研究と経過・予後1:精神疾患の症例の軽症化と減少

激しい陽性症状だけではなく、『感情の平板化・無為・ひきこもり・全般的な無関心』などの非社会的な陰性症状が重症化したり、自我機能のレベルが著しく低下したりしている社会生活が極めて困難な患者に対しても『入院療法(入院治療)』が勧められることがある。

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[統合失調症の疫学研究と経過・予後1:精神疾患の症例の軽症化と減少]

統合失調症の疫学研究と経過・予後1:精神疾患の症例の軽症化と減少

統合失調症はかつては中長期的には殆どの患者が『人格荒廃・精神崩壊(精神機能の全的喪失)』の予後に行き着く恐ろしい不治の病と考えられていた。だが、近年の統計的・疫学的な研究では、『統合失調症の軽症例(特に2000年代以降は軽症例が多数を占めるようになり統合失調症の軽症化が指摘される)』ではかなりの確率で症状が軽快して寛解に至ることが分かっている。

統合失調症の歴史と症状2:E.ブロイラー“4つのA”とK.シュナイダーの“一級症状”

統合失調症の生涯有病率は、約0.7%〜1.0%であり、概ね100人に1人が発症するリスクのある精神疾患である。統合失調症の症状・経過はその重症度によって相当に大きな個人差があるが、全体の約30%は一回〜数回の急性発症を繰り返した後に、治癒にかなり近いレベルの寛解にまで至るとされている。予後が悪い統合失調症の重症例は全体の約20〜30%であり、そのうちの一部が不可逆的あるいは致命的な人格荒廃・精神崩壊にまで至る。

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[統合失調症の歴史と症状2:E.ブロイラー“4つのA”とK.シュナイダーの“一級症状”]

統合失調症の歴史と症状2:E.ブロイラー“4つのA”とK.シュナイダーの“一級症状”

オイゲン・ブロイラーは、統合失調症の“基本症状”として『4つのA』を定義して、それ以外にも陽性症状をはじめとする『副症状』を上げている。

統合失調症の歴史と症状1:E.クレペリンとE.ブロイラーの精神病理学

1.観念連合の障害・連合弛緩(loosening Association)……観念・思考を適切に意味のある形にまとめることができなくなる症状で、思考プロセスの障害である。連合弛緩が起こると、意味の分からない支離滅裂な発言(言葉のサラダと呼ばれる発言)をしたり、他者との通常のコミュニケーションがあまり成り立たなくなってしまう。

言語的・内面の思考的な機能障害としての特徴を持つ。躁病の観念奔逸のように無数の観念(アイデア)が次々に湧き上がってきて、思考が上手くまとめられなくなるような症状もある。

2.自閉性(Autism)……自分の内面に引きこもったり、他者への興味関心を完全に失って呼びかけに反応しなくなってしまう症状。内的な妄想の世界や病的体験の世界に閉じこもってしまうことで、通常の日常生活や人間関係に適応できなくなってしまう。

3.感情の障害(blunted Affection)……喜怒哀楽の感情が鈍麻したり平板化したりすることで、相手や状況に合った適切な感情の表出・伝達が出来なくなってしまう。統合失調症の『陰性症状』としての特徴を持つ。

4.両価性(Anbivalence)……『愛情と憎悪・歓喜と苦悩』など正反対の矛盾する感情が同時に存在して葛藤する症状。感情に従った価値判断が困難になったり、理屈に従う合理的意思決定ができなくなったりして混乱してしまう(パニックに陥ってまともな判断・行動の選択が不能になる)。

代表的な副症状には、以下のようなものがある。

幻覚(illusion)……実際には聞こえない音が聞こえる幻聴。実際には見えないものが見える幻視。

妄想(delusion)……具体的根拠を伴わない病的な間違った思い込みや誤解のある確信であり、他人から説得されても訂正・修正が困難という特徴を持っている。

関係念慮・関係妄想……実際には自分とは関係のない他人や出来事について、自分と何らかの関係がある(あるいはその他人から何らかの被害・嫌がらせなどを受けている)と思い込んでしまう妄想である。

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[統合失調症の歴史と症状1:E.クレペリンとE.ブロイラーの精神病理学]

統合失調症の歴史と症状1:E.クレペリンとE.ブロイラーの精神病理学

近代精神医学における統合失調症の歴史的な起源は、ドイツの精神科医エミール・クレペリン(Emil Kraepelin, 1856-1926)が、1889年に躁鬱病(双極性障害)と並ぶ『二大精神病』の一つと定義した『早発性痴呆(Dementia Praecox)』にあるとされる。

早発性痴呆というのはその名前が示す通り、老年期にまで至らない早期に発症する重症の痴呆(認知症)のことであり、早発性痴呆の予後は『人格荒廃・精神崩壊(精神機能の全面的喪失)・死』といった悲観的なものであった。しかし、E.クレペリンが想定したような『最悪の経過・予後』を辿らない精神病の事例も多く報告されるようになり、この原因不明の精神病に対して新たな病態の説明理論と理解が要請されることになった。

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2015年06月22日

[トランスセクシャリズム(性同一性障害)と同性愛・服装倒錯(トランスヴェティシズム)の違い]

トランスセクシャリズム(性同一性障害)と同性愛・服装倒錯(トランスヴェティシズム)の違い

二次的なトランスセクシャリズムには、フェティシズム(物神崇拝)と関係した異性の恰好を好んでする『服装倒錯(transvetisism)』も含まれている。服装倒錯(トランスヴェティシズム)の男性は、女性らしい役割行動や言葉遣いなどはそれほど強調しないことが多く、『女性の服装』をすることそのものに非常に強い欲求と関心を抱いており、行動・態度・言葉遣いの部分ではむしろ男らしい特徴を示すことも少なくない。

一次的なトランスセクシャリズムと二次的なトランスセクシャリズム

服装倒錯の男性は、必ずしも性同一性障害や同性愛になっているわけではなく、『男性性・男性的な自尊心(存在意義)が脅かされるトラウマティックな体験』によって女性の服装や恰好をしたがるようになるエピソードが多いとされている。そういった男性性・男性的な自尊心(存在意義)が脅かされるトラウマティックな体験としては、仕事上の大きな挫折や失業、異性との失恋、配偶者との離婚、愛していた母親の死、依存欲求の拒絶などが想定されている。

トランスセクシャリズムの男性は自分自身の男性的特徴・傾向を嫌悪してできるだけそれらを除去したいと願う『性同一性障害(GID)』であるが、同性愛者や異性服装倒錯者の場合は必ずしも『性同一性障害』を持っているわけではなく、男性であれば『男性としての性自認』を持ったままで男性が性的に好きだったり、女性の服装をしたがったりすることも多い。

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[一次的なトランスセクシャリズムと二次的なトランスセクシャリズム]

一次的なトランスセクシャリズムと二次的なトランスセクシャリズム

精神医学領域で性同一性障害と呼ばれるトランスセクシャリズムやトランスジェンダーには、より生得的・先天的な『一次的なトランスセクシャリズム(トランスジェンダー)』とより経験的・後天的な『二次的なトランスセクシャリズム(トランスジェンダー)』とがある。トランスセクシャリズムはかつては性転換症や変性症といった訳語が当てられていたが、近年はそのままトランスセクシャリズムと表記されることが増えている。

一次的なトランスセクシャリズムは、発達早期から自分の生物学的性差に対する違和感・抵抗感が生じているタイプであり、幼少期から『自分の性とは反対の性(男性であれば女性)』の行動・役割・文化などを内面化して習得しているという特徴がある。

一次的なトランスセクシャリズムでは、自分を男と女のどちらの性に帰属していると感じるのかの『中核的性同一性』に深刻な障害があり、自分の性自認に関係する意識(精神状態)に対して生物学的性差(身体的な性差)のほうが間違っていると思い込む。自分の身体的な性差に対する違和感・抵抗感が強い場合に“gender dysphoria syndrome”を発症して、性ホルモンのホルモン投与や美容整形・性転換手術を自ら希望することもある。

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2015年04月08日

[R.H.レイのトラウマ症状の慢性化要因(ASDのPTSD化の要因)とトラウマ・セラピー]

R.H.レイのトラウマ症状の慢性化要因(ASDのPTSD化の要因)とトラウマ・セラピー

ライフイベントとストレスの相関に関する心理学研究で知られているR.H.レイ(R.H.Rahe)は、ASD(急性ストレス障害)からPTSD(心的外傷後ストレス障害)に移行しやすい患者の特徴として以下の点を上げている。

1.問題対処能力や社会スキルが低い。

2.自我防衛機制の強度や応用が弱く、現実吟味能力と関係する自我機能が未熟である。

3.発達早期にトラウマティックな体験(児童虐待・暴力被害・事件事故の目撃)や母性剥奪の体験(ネグレクト・親からの適切な愛情や保護を受ける機会の喪失)をしている。

J.M.シャルコーのトラウマ仮説(瞬間冷凍説)とトラウマによる解離症状

PTSDをはじめとするトラウマ関連障害の精神医学的な治療方略としては、SSRI・SNRIなどの抗うつ薬を処方する薬物療法、行動療法・支持療法などの精神療法(心理療法)を組み合わせていくことになる。トラウマ体験をしたばかりの急性期に、そのトラウマ(心的外傷)の状況や人物、その時の感情などについて話し合う『集団デブリーフィング』は、現在では治療効果が乏しいだけではなく急性ストレス反応を強める副作用が出やすいとされており、国際的評価でも非推奨な治療法になっている。

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[J.M.シャルコーのトラウマ仮説(瞬間冷凍説)とトラウマによる解離症状]

J.M.シャルコーのトラウマ仮説(瞬間冷凍説)とトラウマによる解離症状

トラウマ(心的外傷)がどのようなメカニズムで、精神疾患としてのPTSDを引き起こすのかについて、フランス・パリの神経科医の権威だったジャン・マルタン・シャルコー(Jean Martin Charcot 1825〜93)は、自分(自我)が耐え切れないほどに強いストレスとなるトラウマを意識の外部に排除して『瞬間冷凍』するという仮説を提唱した。

ASD(急性ストレス障害)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)

その瞬間冷凍されたトラウマが、何らかの刺激やきっかけによって部分的に解凍されることで心身症状が発生すると考えたのである。

自分のストレス耐性や問題処理能力を越えた強いストレスを受けた時は、人の精神機能(自我機能)は激しいショックを受けてパニックを起こすのだが、そのショックを和らげるための自我防衛機制として『抑圧・否認・否定・隔離・解離』などが発生して、自分の感情・感覚を麻痺させたりトラウマ記憶の一部を忘却してしまうことがある。

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2010年09月02日

[H.パーカーストのドルトン・プラン(Dalton Plan)]

H.パーカーストのドルトン・プラン(Dalton Plan)

アメリカの女性教育家であるH.パーカースト(H.Parkhurst)が1913年頃に独自に開発した教育方法(学習指導計画)が『ドルトン・プラン(Dalton Plan)』である。初めにアメリカのドルトン市で提唱されたことからドルトン・プランと呼ばれることになったが、1920年代にはヨーロッパ諸国や日本にも少しずつその教育計画法が伝搬してきた。

ドルトン・プランには以下のような特徴や目的があるのだが、現在の学校教育の大きな問題の一つである『いじめ・仲間はずれ』についても、『学級(クラス)』『授業(学習指導)』とを概念的あるいは機能的に区別することによって、システマティックにいじめを防止することができるかもしれない。

1.『学級(クラス)への所属』と『授業(学習指導)の目的』とは区分することが可能である。

2.学習指導要領などで大まかに決められた学習課題はあるが、その課題の達成方法や達成順序については生徒が自主的・計画的に考えていかなければならない。

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[ソーシャル・トリートメント(social treatment)と社会福祉のケースワーク]

ソーシャル・トリートメント(social treatment)と社会福祉のケースワーク

社会福祉分野で実施されるソーシャル・トリートメント(social treatment)とは、生活困窮者や心身障害者などの事例を個別的に支援するケースワークの処遇計画である。社会福祉制度や生活保護の適用を必要とする社会的弱者の個別事例に合わせて、『問題解決・症状改善・心身の回復』を目的にしたケアプランなどを立て、直接的に支援するのがソーシャル・トリートメントである。

社会福祉制度を活用した支援を段階別に考えると、『インテーク面接(初回面接)・スタディ(生活状況や健康状態の調査)・ケースワーク診断(支援方法の選択)』に続く最後のケアプラン作成の段階がソーシャル・トリートメントである。社会福祉事業や制度的支援の実践を担当する『ケースワーカー(社会活動家・福祉担当の職員)』は、直接支援か間接支援かによって生活困窮者や社会的弱者を効果的に支援していくことになるが、ソーシャル・トリートメントはその具体的な支援法の計画立案のプロセスのことである。

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2010年08月22日

[トランセンデンタル・メディテーション(transcendental meditation),自己超越的なTM瞑想]

トランセンデンタル・メディテーション(transcendental meditation),自己超越的なTM瞑想

トランスパーソナル心理学の項目で、自我(自己意識)を超越して宇宙と合一化する手段としてLSD(薬剤)や瞑想が用いられると説明したが、トランセンデンタル・メディテーション(TM)は自己(自我意識)を超越するための瞑想の方法論と実践法のことである。古代インドのヴェーダ哲学やバラモン教(ヒンドゥー教)の影響も受けているトランセンデンタル・メディテーション(transcendental meditation:TM)は、ブラフマンとアートマンを統合する『梵我一如(ぼんがいちにょ)』を実現するための瞑想法でもある。

梵我一如はヴェーダにおける究極の悟りであり、梵我一如を看破して実践することによって『永遠の安楽・幸福』の状態に導かれると考えられていた。『ブラフマン(梵)』とは宇宙・世界の根本原理であり、『アートマン(我)』とは個人・自我の基本原理であるが、ヴェーダ哲学ではブラフマンとアートマンは究極的には同一のものであるという教義があり、個人の実体としての『我』と宇宙に遍在する『梵』とが同一であることを悟ることで、あらゆる苦悩・迷いから自由になるとされていた。

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[トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)]

トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)

トランスパーソナル心理学(transpersonal psychology)は、ユング心理学や人間性心理学、ニューエイジ思想、仏教の悟りや瞑想などの東洋思想、ドラッグ文化、神秘主義などの影響を受けた新しい心理学で、1960年代頃のアメリカで始まった心理学の潮流である。トランスパーソナル心理学は、精神分析、行動主義心理学(行動科学)、人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)に続く『第四の心理学派』とも呼ばれることがあるが、科学的心理学とは異なる主観主義(経験主義)の原理原則に立って『人間の究極的・根源的な存在根拠』を研究している。

トランスパーソナル心理学は、客観的に検証不可能な理論や概念を多く含んでいて神秘的・観念的な傾向も強いので、『科学的心理学の方向性・方法論』とは大きく異なるが、カール・ロジャーズやアブラハム・マズローの人間性心理学を発展させた分野として興味深い内容を持っている。トランスパーソナル心理学の理論的な下敷きとなっているのは、フロイトやユングの『無意識の概念』とA.マズローの『欲求階層説』であるが、特にマズローが人間の最高次の欲求とした『自己実現欲求(超越的な至高体験)』の拡張に注力している。

"trans"には『超える』という意味があり、"personal(個人の人格・意識)"を超えて人間存在の本質的な意味や起源を探求するというのが、トランスパーソナル心理学の目的となっていてその中には神秘的でオカルティックな概念世界の仮定も含まれている。『自己実現の心理学』よりも高次元にあるとされる『自己超越の心理学』であるが、個人(個別の内的世界)を超えた超越的な存在・領域との精神的統合を目指している宗教的・神秘主義的な部分が批判されることもある。

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[トランス状態(trance)と催眠療法(催眠暗示)]

トランス状態(trance)と催眠療法(催眠暗示)

催眠療法(hypnotherapy)をクライアントに実施する時には、『筋肉・呼吸のリラクセーション』を教示してリラックスした心身状態を整えていきながら、言語的な誘導暗示を行って精神症状を緩和していく。催眠療法の効果が現れやすいかどうかは、クライアントの催眠感受性(催眠暗示の受け容れやすさ)によって変わってくるとされるが、『筋肉のリラックス・安静な心理状態になる呼吸法』を適切に行うことができれば催眠の効果が格段に現れやすくなるのである。

筋肉のリラクセーションは『腕・足・首』など力の入れやすい身体部分に意識を向けさせて、段階的に少しずつその部分の緊張を弱めて力を抜いていくが、そのリラクセーションと深くゆっくりとした腹式呼吸法を合わせて行うことで催眠感受性が高まる。催眠感受性が高くなると、言語的暗示(催眠暗示)を受け容れやすい『トランス状態』と呼ばれる意識状態になりやすくなる。

トランス状態は『変性意識状態』とも言われることがあり、意識の覚醒度が低下して通常とは異なるぼんやりした意識状態が作られることを言う。意識水準(覚醒度)が低下しているので、外界との接触が弱まっており外部にある事物の知覚もしにくくなるが、最低限度の適応能力や条件反射は残っているので、他の人から見るとトランス状態なのか通常の意識状態なのかを見分けられないことも少なくない。

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[トンネル視(tunnel vision)の心理効果]

トンネル視(tunnel vision)の心理効果

『トンネル視(tunnel vision)』は認知心理学の選択的注意にも似た人間の心理特性であるが、強い恐怖感や脅威を認識することによって『トンネルから見える風景』のように視野・注意が制限されてしまうという心理効果である。トンネル視という用語そのものは『正確な心理学用語』とは言えないが、多くの人が何処かで経験する可能性のある心理現象ではある。恐怖や脅威、不安を感じる対象(出来事)ばかりに意識が向けられることによって、それ以外の事象や出来事が無意識的に認識不能になり、視野・注意が相当に狭い範囲に限定されてしまうことになる。

トンネル視が起こりやすい典型的な状況としては、過酷な虐待を受けている家庭環境や突然巻き込まれることになった犯罪状況、教師から体罰や差別を受けている学校環境などを想定することができる。両親から身体的な暴力や精神的な虐待を受けている子どもは、『虐待を受けていない時間の記憶力・集中力』が極端に低下してしまったり、部分的に記憶がすっぽりと欠落してしまう心因性健忘が起こったりするが、『恐怖・脅威に関係する事象の記憶』だけが残っている場合にはトンネル視が起こっている。

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[実存主義・実存療法とトランセンデンス(transcendence)]

実存主義・実存療法とトランセンデンス(transcendence)

カウンセリング技法のひとつである『実存療法(existential therapy)』は、人間固有の存在形式である『実存(existent)』を前提とした技法で、自分は自分以外の人生を生きることはできないという『人生の一回性・唯一性』に焦点を当てている。実存というのは社会や他者と同一化できない『自己の特殊性(=自意識を持つ存在形式)』であると同時に、『客観的な人生解釈』ではなくて『主観的な人生体験』によって人生の意味づけ(価値定立)をしていこうとする志向性のことでもある。

フランスの実存主義哲学者とされるジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Charles Aymard Sartre, 1905-1980)『実存は本質に先立つ』という格言を残しているが、この言葉の意味は存在の価値は『普遍的な本質』によって与えられるのではなく『個別的な経験・意識』によって与えられるということである。

ジャン=ポール・サルトルと契約結婚した思想家のシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、『人は女に生まれるのではない、女になるのだ』という格言を述べたが、これも実存主義の基本的理念を反映した言葉である。

ボーヴォワールは生得的あるいは社会的に規定される『女性性の本質』というものを否定して、生まれながらに女性であるわけではなくて社会規範や教育行為によって『時代に適合した女性性』が作られるということに着目していた。これは男女の性差が生物学的に規定される『セックス(sex)』に全面的に依拠するのではなくて、社会的・教育的に規定される『ジェンダー(gender)』によって生まれることを指摘した事例でもある。

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2010年08月09日

[トランキライザー(tranquilizer)・ベンゾジアゼピン系の抗不安薬]

トランキライザー(tranquilizer)・ベンゾジアゼピン系の抗不安薬

『鎮静・催眠・抗不安・筋弛緩』の効果を持つ向精神薬全般のことをトランキライザー(tranquilizer)という。トランキライザーには、統合失調症・重症うつ病などの薬物療法に用いられる『メジャートランキライザー(major tranquilizer)』と不安障害・睡眠障害・心身症・パニック障害・うつ病などに処方される『マイナートランキライザー(minor tranquilizer)』の大きな分類がある。

メジャートランキライザーは『強力精神安定剤』と呼ばれ、興奮・幻覚・錯乱を抑制する強力な鎮静作用と催眠作用があり、短時間で強い眠気やふらつきの副作用を生じることが多い。メジャートランキライザーは比較的重症の精神病に対して処方される薬剤であり、死亡リスクのある悪性症候群(高熱・大量発汗)をはじめとして、ジスキネジア(口囲・頭部などの不随意運動)やアカシジア(焦燥感のある静座不能)などの副作用が発生するリスクがある。

メジャートランキライザーは『抗精神病薬』であり、ハロペリドールやリスペリドン、フマル酸クエチアピン、スルピリド、クロルプロマジンなど様々な種類があり、精神疾患の種類や症状の経過によって医師が使い分ける。

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[S.カープマンのドラマの三角形(drama triangle)]

S.カープマンのドラマの三角形(drama triangle)

エリック・バーンが考案した交流分析には、『表層的(建前的)な感情・考え』をやり取りして強迫的にコミュニケーションするドラマ的交流というものがある。このドラマ的交流の一つの類型として、役割的な態度を演じながらお互いにネガティブなラケット(不快な感情)を手に入れることになる『ゲーム(game)』というコミュニケーション形態がある。ゲームはコミュニケーションの後に必ずと言ってよいほど、『不快な感情・ネガティブな後味の悪さ・自己嫌悪(自己否定)』をもたらすところに特徴がある。

『ゲーム』の交流は相手を自分の思い通りにコントロールしようとする意図によって始まることが多いが、これは相手の人格性や主体性を無視した操作的・支配的なコミュニケーションであり、ゲームが思惑通りに展開する時には自分と相手が『特定の役割行動』を演じるような形式になりやすい。このゲームの役割行動的・役割演技的な要素に気づいた交流分析家のS.カープマン(S.Karpman)は、ゲームのコミュニケーション構造(交流形式)を図式的に理解するために『ドラマの三角形(drama triangle)』という概念を提起した。

S.カープマンがゲームを図式化した『ドラマの三角形』では、コミュニケーションの参加者はそれぞれ以下の3つのどれかの役割を無意識的に演じることになってしまうとされる。

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