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2009年09月30日

[トゥレット障害(Tourette disorder)・チック症(tic)]

トゥレット障害(Tourette disorder)・チック症(tic)

チック症(tic)『幼児期・児童期』に発症しやすい不随意性の精神神経障害であり、APA(米国精神医学会)のDSM-IV-TRやWHO(世界保健機関)のICD-10では『トゥレット障害・トゥレット症候群』の症状としてチックが定義されている。トゥレット障害(Tourette disorder)は、疾患の発見者であるフランスの神経科医ジル・ド・ラ・トゥレット(Georges Albert Edouard Brutus Gilles de la Tourette, 1857-1904)の名前に因んで『ジル・ド・ラ・トゥレット症候群』と呼ばれることもある。

トゥレット障害で起こるチックとは、自分の意識とは無関係に突発的に起こってしまう『運動・動作・音声(発声)』のことであり、目をパチパチさせたり鼻をフンフンいわせたり喉をゴロゴロ鳴らしたり、身体をビクンと震わせたり奇声を発したりしてしまう症状である。

チックの運動や発生は『突発性・反復性・習慣性・非律動性・常同性』という特徴を持っていて、自分の意志や判断でチックの突発的に起こる症状をコントロールすることはできない。発作性の症状の発症が18歳未満であり、4週間以上にわたって『身体各部の多彩なチック症』が持続する場合にトゥレット症候群の医学的診断が為される。

チックは精神分析や心理療法の対象として研究された歴史が長く、かつては『心因性の疾患』と考えられていたが、現在では脳の機能的障害(ドーパミン系神経の障害)を原因とする『遺伝性・器質性の疾患』としての側面を強く持っている。トゥレット症候群は親がチックを持つ場合に、子どももチック症を持ちやすくなるという『家族因性』を持っているという報告もあり、神経質・抑制的(消極的)・刺激過敏性といった『親子間の性格的(気質的)な類似性』も指摘されることがある。

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2009年08月02日

[トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:3]

トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:3

トーテム(totem)とはアニミズム(物活説)が発展したもので、『野生の動物・植物・事物』が、自分たちの『部族集団・血縁集団の共同体』と特別な関係を持っていると信じる宗教感情のことである。トーテム(動植物・事物)を信仰の対象として崇拝する原始的な宗教形態のことを『トーテミズム(totemism)』といい、トーテミズムの信仰を物体化したものとして有名なのがアメリカ・インディアンが多く建設したトーテムポールである。

文化人類学者のレヴィ=ストロースは、トーテミズムの目的を『部族集団の心理的統率や軍事的団結』などに機能主義的に求めたが、トーテミズムがなぜ信仰されるようになったのかの理由については様々な仮説が提起されている。

レヴィ=ストロースはトーテミズムに関連する書籍として『今日のトーテミズム』『野生の思考』を出しているが、精神分析の創始者であるジークムント・フロイトも、原始宗教であるトーテミズムが持つ倫理性・規範性に着目して『トーテムとタブー』という論文を書いている。

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2009年07月21日

[トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:2]

トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:2

シャーマニズムは、シベリア・オーストラリア・南北アメリカ・アフリカ・インドネシア・アイヌなど世界各地で発生した宗教現象の原始的形態であるが、シャーマニズムの本質は『脱魂(エクスタシー)』『憑依(ポゼッション)』にあると考えられている。

宗教学者のミヒャエル・エリアーデ『脱魂(ecstasy)』をシャーマニズムの中心に置き、J.A.マッカロック(J. A. MacCullock)『憑依(possession)』を中心と考えたが、I.M.ルイスは文化・地域・民族の違いによってどちらも本質的な宗教現象に成り得るという『折衷説』を提起した。

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[トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:1]

トーテミズム(totemism)・アニミズム・シャーマニズムの原始宗教:1

自然界に神聖性・霊性を見出す原始宗教の基本的な信仰形態には、『アニミズム・シャーマニズム・トーテミズム』がある。アニミズム(汎神論・精霊崇拝)というのは、自然界のあらゆる事象に神の存在や聖性を見出す宗教形態であり、『山・川・大樹・巨石・雨・風』などに神の霊力が宿っていると考えて崇拝・儀式の対象としていた。モノ(物質)にも何らかの精神や霊力が内在しているという世界観がアニミズムであり、人間の乳幼児期の認知機能にも物質に生命や霊性を見出す『アニミズムの特徴』が見られることがある。

古代の人々は、自然界の森羅万象にアニマ(霊)が宿っていると想定し、自然の神(山神・雷神・水の神・太陽の神)の怒りや祟りによって、不作・天災・飢餓などの災厄がもたらされると考えていた。自然環境を破壊したり汚染したりすると、山の神や川の神、海の神が祟って『自然災害』を引き起こすというようなアニミズムの因果関係の認識を『天人相関説』というが、この天人相関説は自然神に動物・人間の犠牲(生け贄)を捧げた『供犠宗教(動物の供犠・人身御供)』を生み出していった。

人間にとって『価値のあるモノ・生命』を神の生け贄として捧げることで、神の怒りや祟りを鎮めることができ、『五穀豊穣・安心息災・天災回避』の恩恵を受けることができると考えられていたのである。

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[トリックスターとユング心理学の元型:既存の社会秩序の破壊と再建]

トリックスターとユング心理学の元型:既存の社会秩序の破壊と再建

普遍的無意識を前提とする分析心理学を創設したC.G.ユング(1875-1961)は、神話・伝説・昔話などの定型的パターンとして表現される人類に共通する普遍的無意識の内容・象徴を『元型(アーキタイプ)』と呼んだ。

『元型』の各種のイメージは、人間の精神機能(思考・感情)を大枠で規定する根源的な作用力を持っており、夢や妄想幻覚、神話・伝承といった形をとって人間の内的世界の活動や行動の動機づけに影響を及ぼしているのである。異性に対して抱く欲求や羨望にも、『アニマ(男性の中の女性像)・アニムス(女性の中の男性像)』の元型が影響しているとされるが、人間のパーソナリティや理想像といったものにも『元型のイメージ・情動・物語性』が関係している。

既存の社会秩序や伝統権威、権力者を風刺して冷笑したり、狡知や策略を用いて人心を惑わしたりするキャラクター(人間・動物)は、神話や昔話に数多く登場するが、C.G.ユングはこういった悪戯者や道化師を『トリックスター(trickstar)』という元型の象徴であると解釈した。

構造主義の文化人類学の研究者として知られるクロード・レヴィ=ストロースは、神話分析の方法論を用いて既成秩序や知の体系を組み替えるトリックスターについて言及している。トリックスターは基本的に『弱さ・無力・のろま・貧しさ』などを表象するが、トリックスターが強力な権力者や支配的秩序に立ち向かう武器は『機知・狡知・策略(計略)・いたずら(秩序の混乱)』である。

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[トリックスター(道化)とチャールズ・チャップリンの喜劇:2]

トリックスター(道化)とチャールズ・チャップリンの喜劇:2

チャールズ・チャップリンはバスター・キートンやハロルド・ロイドと共に『世界の三大喜劇王』と称された。資本主義社会の機械的な労働(単調な分業)を揶揄した1936年製作の『モダン・タイムス』の頃から、チャップリンは共産主義に親和的であるという批判を受けるようになり、アナキズム(無政府主義)的な自由人の生き方を賞賛して国家権力を風刺するチャップリンの喜劇は、アメリカにとって有害無益なものと見なされるようになる。

国家の戦争行為や国民(兵士)の動員を、シニカルな笑いで否定する1947年製作のブラックコメディ『殺人狂時代』には、平和主義・反戦主義のメッセージが含まれていた。国家権力が国民を兵士として徴発し戦地に赴かせることを揶揄する『殺人狂時代』も、国家(アメリカ)にとっては苦々しい権力批判であり、チャップリンに対する政治的圧力は強まった。

1952年に『ライムライト』のロンドン公演に向かっていたチャップリンは、アメリカのトルーマン政権から事実上の国外追放処分を受けることになり、ハリウッド映画の世界を去って自然豊かなスイスで世界の名士として穏やかな余生を過ごした。チャップリンはマスメディアやハリウッド映画を活用して、権力・世相を風刺した『近代の象徴的な道化(トリックスター)』であり、チャップリンが喜劇を通して表現しようとしていたキャラクターは、既存の社会秩序や権力の統制に簡単には屈従しない『永遠の放浪者(eternal tramp)』だった。

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[トリックスター(道化)とチャールズ・チャップリンの喜劇:1]

トリックスター(道化)とチャールズ・チャップリンの喜劇:1

『道化』とは滑稽な動作や演技、面白い冗談や悪戯などによって周囲を笑わせる存在であり、ヨーロッパ世界では中世末期からルネサンスの時代に掛けて、王侯貴族や富裕層に『娯楽・気晴らし・笑い』を提供する役割を担っていた。

国王や貴族を馬鹿げた動作・演技で笑わせる『道化(fool)』は一般に知的能力の低い『愚者(fool)』と見なされることもあったが、道化は『権力・権威の周縁』に存在する自由人としての側面を持っており、“差別(蔑視)の対象”であると同時に“自由の象徴”でもあった。

『宗教的権威からの解放・人間中心主義の世界観』をテーマにしたルネサンス期の芸術家や文学者は道化(ピエロ)を好んで描写したが、それは『道化(ピエロ)』がキリスト教の権威や国王の権力に束縛されない『自由人(人間の本性)』の現れと見なされていたからだと考えられる。『道化』は何も考えていなくて頭の弱い愚者の振りをしているので、国家権力も宗教権威もまともに相手をすることが少なく、法的な懲罰や教義的な制裁、風俗の規制を免れられることが多かった。

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2009年07月19日

[東洋的専制主義(oriental despotism)とK.A.ウィットフォーゲル]

東洋的専制主義(oriental despotism)とK.A.ウィットフォーゲル

皇帝権力(王権)による『大規模な治水灌漑事業(人工的な灌漑・水利)』に着目したアメリカ(ドイツ出身)の歴史学者に、カール・ウィットフォーゲル(Karl August Wittfogel, 1896-1988)がいる。K.A.ウィットフォーゲルは、アジア・中国に中央集権的な国家権力(皇帝権力)が形成される理由を、アジア固有の河川の氾濫と肥沃な土壌が多い『地理的条件(気候・風土)』に求め、『大規模な灌漑事業・水利の活用』によって生産物を独占的に徴集できる巨大な権力機構(王政・皇帝制度)が生まれると考えた。

黄河・長江・ガンジス川・インダス川・ユーフラテス川・チグリス川など氾濫する大河川があるアジア地域には、大きな政治権力が生まれやすいということである。こういった大規模な治水・灌漑事業ができる国王(皇帝)に権力が集中して、専制主義的な体制が確立するという仮説を『水の理論(水力社会)』という。K.A.ウィットフォーゲルは『中国大陸の水力社会』における皇帝権力・官僚機構の成立を仮定しながらも、女真族(金)・モンゴル族(元)・満洲族(清)など中国王朝を征服した好戦的な遊牧民族にも注目して、水力活用の基盤のない乾燥地帯の出身民族によっても『東洋的専制』が実現されるということを立証した。

ウィットフォーゲルは遊牧民族による軍事的な専制主義を拡張して、ロシアの独裁的・圧倒的な皇帝権力(ツァーリの専制統治)についても論理的な解釈を行い、アジアとロシアの類似性を指摘する著書『ロシアとアジア』を書いている。大河川の豊かな水力を活用する利権を国王(皇帝)が独占できる『水力社会・湿潤な風土』であっても、諸民族を強制的な武力によって征服・統治する『軍事社会・乾燥した風土』であっても、東洋的専制主義による強権的な統治は発生する可能性がある。

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[東洋的専制主義(oriental despotism)とアジア的停滞・西欧中心史観]

東洋的専制主義(oriental despotism)とアジア的停滞・西欧中心史観

西欧中心史観から見ると、前近代的な政治体制や社会構造を備えたアジアの専制主義は特徴的なものであり、啓蒙思想家のモンテスキュー(1689-1755)は、中華帝国(中国王朝)の政治体制のことを『東洋的専制主義(oriental despotism)』と呼んだ。皇帝に政治権力が集中する集権的(独裁的)な東洋的専制主義は、アジア的な『農業経済の発展』と『官僚機構の整備』を元にして確立された。中国をはじめとするユーラシア大陸における東洋的専制主義の歴史は、紀元前の『春秋・戦国時代』にまで遡ることができ、秦の始皇帝漢の劉邦によって中央集権的な専制主義・皇帝制度が準備されたのである。

モンテスキューの後に、G.W.F.ヘーゲルカール・マルクスもアジア的生産様式に基づく東洋的専制主義を考察しているが、ヨーロッパ近世の君主政治(王政)においても東洋的専制に近い『絶対王政・専制主義』が現れた。

世界史を概観するとユーラシア大陸(アジア地域)では、紀元前の時代から宗教的権威や軍事的権力を持つ専制君主が登場しており、民主主義・共和政が繁栄した『古代ギリシア・ローマ』の西欧世界とは対照的であった。独裁的で非民主的な東洋的専制主義の対極にあるのが、西欧的な啓蒙思想と合理主義であり、ヨーロッパ人たちは自らの歴史が実現した民主主義や科学技術にアジア地域にはない先進性(進歩性)を見出していた。

ゴットフリート・ライプニッツやバールーフ・デ・スピノザ、ヴォルテールなどは中華王朝(皇帝政治)が備える整然とした階層的な官僚制度や圧倒的な皇帝権力に、理想的な完成度の高い政治秩序を見出して賞賛している。

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2009年07月13日

[ドイツ革命(ドイツ11月革命)の挫折とワイマール共和国の誕生:2]

ドイツ革命(ドイツ11月革命)の挫折とワイマール共和国の誕生:2

11月9日には、首都ベルリンに労働者と兵士、市民が平和とパンを求めて殺到する緊急事態となり、社会民主党党首のフリードリヒ・エーベルト(1871-1925)が首相に任命されてとりあえず政権を掌握した。11月10日に、社会民主党(SPD)、独立社会民主党(USPD)、民主党からなる新政府が樹立されたが、フリードリヒ・エーベルトは急進的な共産主義者ではなかったので、マルキシズム(マルクス主義)に依拠した社会主義国家を建設しようとする『スパルタクス団』カール・リープクネヒトローザ・ルクセンブルクには否定的であった。

エーベルトは社会主義(共産主義)に対しては反革命的であり、穏健な共和主義政権を築こうとしていたので、参謀本部のヴィルヘルム・グレーナー将軍と革命・労働運動の急進化を阻止する協定を結んでいた。共産主義者であるカール・リープクネヒト(1871-1919)ローザ・ルクセンブルク(1871-1919)は、反革命的・保守的なエーベルト政権に反対して、1918年12月30日にスパルタクス団を中心にして『ドイツ共産党(KPD)』を結成した。

1919年1月に入ると、大規模な労働者・市民のデモや武装蜂起が勃発するが、ドイツ共産党は十分な組織力と指導力を発揮することができず、1918年1月9日からの『スパルタクスの週』では、国防軍・フライコール(義勇軍)との激しい戦いでスパルタクス同盟(共産主義勢力・労働者勢力)は敗北を喫してしまう。

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[ドイツ革命(ドイツ11月革命)の挫折とワイマール共和国の誕生:1]

ドイツ革命(ドイツ11月革命)の挫折とワイマール共和国の誕生:1

1918年11月に勃発した『ドイツ革命(ドイツ11月革命)』は、労働者・兵士の大衆蜂起によってヴィルヘルム2世の『ドイツ第二帝政』を終わらせ、共和政の『ワイマール体制』を確立させる契機となった革命である。労兵レーテ主導の社会主義政権を目指す『スパルタクス団の武装蜂起』が鎮圧されたことで、社会主義革命としてのドイツ11月革命は失敗に終わった。しかし、ドイツの第二帝政を終焉させて、ドイツを共和政に転換させたという歴史的意義は大きい。

第一次世界大戦に参戦したドイツ皇帝(カイザー)のヴィルヘルム2世(1859-1941)は、このドイツ革命によってオランダに亡命して退位した。ドイツ革命のトリガーとなったのは、ドイツとフランスが戦った『第一次世界大戦』における国民生活の窮乏と軍部への不満であり、フランス包囲・侵攻作戦である『シュリーフェン・プラン』が挫折したことでドイツの敗戦色は濃厚となった。

フランスとの戦況が悪化する中で、ドイツの軍部は更に独裁傾向を強めて『総動員体制』を敷こうとするが、戦争の徴兵・徴発で生活が窮乏して食べる物にさえ困っていた国民・労働者は、次第に『軍部への反発・平和(停戦)への要求』を強めていく。1917年10月に発生したレーニン率いる『ロシア革命』の影響を受けて、ドイツでも労働者・貧困層のストライキやデモ、暴動が盛んに起こるようになっており政治情勢は混迷の度合いを深めていた。

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2009年02月21日

[R.トリヴァースの“親の投資理論”と“潜在的繁殖速度”:育児をする動物と育児をしない動物の違い]

R.トリヴァースの“親の投資理論”と“潜在的繁殖速度”:育児をする動物と育児をしない動物の違い

[前回の記事]では、R.トリヴァースの親の投資理論を参照して、『雄の配偶努力(新たな雌を求める努力)』『雌の育児努力(子を育てる努力)』の違いを説明したが、その違いが生まれる要因は『卵子と精子の生産コストの違い』に求められた。魚類・爬虫類などの種には“雄”のみが育児をする動物もいるので、どんな時にも“親の投資理論”が成り立つわけではないが、一般的には『子に対する生物学的投資が大きい雌』『子に対する生物学的投資が小さい雄』では、雄のほうが配偶者の雌を求めて『求愛・競争』する傾向が見られる。

精子を低コストで大量に生産できる雄は絶えず『新たな繁殖機会(異性)』を求めることができるが、雌は卵子の生産コストと妊娠‐育児のために必要な時間・労力のコストによって『新たな繁殖機会(異性)』を求めていないことが多い。そのため、『雌を求める雄の数>雄を求める雌の数』となり、絶対数の少ない雌を求める『雄同士の求愛・競争』が激しくなるという仮説である。

複雑な精神構造と社会制度を持つ人間の場合には、動物のようにできるだけ多くの子孫を残そうとする『繁殖の投資理論』は当てはまらないケースも多い。また、男女同権社会の推進によって『女性の社会的地位・経済力』『男性の社会的地位・経済力』に近づくほど、『性愛・婚姻における男性の積極性(求愛行動の頻度)』は低下しているとも言われる。

配偶者(異性)を求めてどちらの性の個体が激しく競争するのかは、人間の場合には『子に対する生物学的な投資量』だけではなくて『社会経済的なリソースと自己肯定感(自信)』が大きく関係している。そのため、現代社会では『男女の経済力・社会的地位』の相対的な差が縮まるほど、『求愛行動・異性獲得競争』の男女差よりも個人差のほうが大きくなるのである。育児行動の雌雄差(男女差)については自然界の動物では千差万別であり、『雌だけが育児する種・雄だけが育児する種・雌雄が協力して育児する種・育児そのものをしない種』がある。

『育児をしない種(動物)』には、昆虫(節足動物)・魚類・爬虫類・両生類(幾つかの例外はあり)などがいるが、これらの動物では親の育児・保護が無いので、卵から孵化(ふか)した子の運命・生死は自然の成り行き(偶然の推移)に任されることになる。『育児をしない種』の繁殖戦略は“多産多死(自然条件や外敵による大量の子の死)”を前提としているので、非常にたくさんの卵を一気に産んで確率論的な生存を期待するという特徴を持つ。例外的に育児をする魚類・爬虫類としては、抱卵して小魚に成長するまで守るグッピーやオタマジャクシを背中に抱える中南米に住むカエルの一種などがいる。

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[R.トリヴァースの“親の投資理論”:雄と雌の繁殖戦略と育児投資]

R.トリヴァースの“親の投資理論”:雄と雌の繁殖戦略と育児投資

アメリカの進化生物学者ロバート・トリヴァース(Robert L. Trivers1943-)は、哺乳類の雄と雌の繁殖行動(異性獲得競争・育児)の違いについて説明する『親の投資理論』を提唱した。哺乳類の“雄(男性)”の多くは配偶者となる“雌(女性)”を巡って様々な形で競争(闘争)をするが、反対に“雌(女性)”は“雄(男性)”よりも育児行動に多くの時間と労力を割くことが多い。近代社会における人間(ヒト)の男性と女性は例外的に『仕事・育児の役割分担(協働・協力)』をすることができるが、動物種の多くは先天的な遺伝要因によって育児の役割が“雌”に割り与えられている。

トリヴァースは雄と雌の違いを『合成する配偶子の違い』に求め、精子を生成する個体を雄、卵子を生成する個体を雌とした。分子量が小さく栄養分を持たない雄の“精子”『生産コストが低い(精子の生産は簡単)』という特徴を持ち、分子量が大きくて栄養分を沢山含んでいる雌の“卵子”『生産コストが高い(卵子の生産は大変)』という特徴を持つ。雄は大量に射精する精子の一つが卵子に受精すれば『生殖(子孫継続)の目的』を達成することができ、同時期に複数の雌の卵子を受精(妊娠)させることが可能である。特に、道徳的な責任意識や法的な子の扶養義務、金銭が必要な育児がない『動物の世界』では雄が複数の雌と交尾をして育児に協力しない傾向が顕著である。

生物学的な生物(動植物)の存在意義は『生存(自己の維持)』『繁殖(遺伝子の保存)』にあり、自分が自然淘汰(自然選択)を生き延びて子孫を残すために『生存戦略』と『繁殖戦略』を駆使することになる。動物の多くは雄が雌に『求愛』したり異性獲得のために『競争(闘争)』したりするが、雌のほうが雄の獲得のために『求愛・競争』することは少ない。人間は例外的な動物として『魅力・権力・富を有する男性』を巡って女性が熾烈な競争をすることもあるが、それでも、一般的な男女関係(恋愛・性愛)では男性が『魅力的な女性』を巡って競争する頻度のほうが多いと言える。

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