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2015年09月25日

[乳幼児精神医学(infant psychiatry):乳幼児の問題行動・精神症状の多軸診断システム]

乳幼児精神医学(infant psychiatry):乳幼児の問題行動・精神症状の多軸診断システム

乳幼児期にある子供の精神医学的な『診断・心理評価・治療』には、成人とは異なる各発達プロセスに応じた注意と配慮が求められるが、『親(養育者)との関係性・養育環境の質・非言語的コミュニケーション・情緒的な反応性』などを多面的かつ総合的に見て適切な判断をしていく必要がある。

乳幼児精神医学(infant psychiatry):親子関係を踏まえた子供の問題・症状の評価

乳幼児期の子供の『問題行動・不適応・精神症状』は、以下の各種の要因が相互的に複雑に絡み合うことによって発生するケースが多い。

1.遺伝的・生理的要因

2.身体的・器質的要因

3.家庭環境・親子関係の要因

4.保育園・幼稚園・小学校などの社会的環境(友達関係)の要因

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[乳幼児精神医学(infant psychiatry):親子関係を踏まえた子供の問題・症状の評価]

乳幼児精神医学(infant psychiatry):親子関係を踏まえた子供の問題・症状の評価

0〜3歳頃の乳幼児を研究・診療の対象とする『乳幼児精神医学(infant psychiatry)』は、1970年頃に誕生した比較的歴史の短い精神医学の分野であり、近年では乳幼児のこころの健康全般を取り扱う領域という意味合いで『乳幼児精神保健(infant mental health)』と呼ばれることもある。

乳幼児精神医学では、言語能力をまだ獲得していないか未熟である『乳幼児』が患者であるため、乳幼児の言語よりも『動作・行動(反応)・情緒の観察』から精神的な健康状態を推測することが必要になってくる。

乳幼児精神医学においては、外部から観察できる乳幼児のリアクションや情緒の表現を丁寧に見ていく非言語的コミュニケーションの重要性が極めて高いのである。乳幼児や児童は、その生活と健康状態を大きく家族(親)に依存しているために、何らかの心身の不調があることに気づいた『家族(親)』が医師・病院に診察・治療を求めて相談してくるケースが多い。

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2015年09月09日

[乳幼児精神医学・児童精神医学2:乳幼児に対する非言語的コミュニケーションを用いた診察・心理療法]

乳幼児精神医学・児童精神医学2:乳幼児に対する非言語的コミュニケーションを用いた診察・心理療法

乳幼児・児童精神医学の治療介入モデルは、『正常な発達の促進・回復』『異常な発達の抑制・矯正』に基づくモデルであるが、それだけではなく発達障害などに付随する適切な療育を受けられず周囲に受け入れられないために起こる『二次障害の防止』に力が入れられている。

乳幼児精神医学・児童精神医学1:子供の正常な発育・発達プロセスの理解

乳幼児期にある子供はコミュニケーション能力が未熟であり、特に言語的コミュニケーション能力がほとんど発達していないため、『非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)』を活用した子供の患者の情報収集や心理療法的なアプローチが大切になってくる。

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[乳幼児精神医学・児童精神医学1:子供の正常な発育・発達プロセスの理解]

乳幼児精神医学・児童精神医学1:子供の正常な発育・発達プロセスの理解

乳幼児精神医学とは、『乳児期(0歳〜1歳6ヶ月頃)・幼児期(1歳6ヶ月頃〜5、6歳頃)』の子供を対象にした精神医学の研究・臨床の分野である。児童精神医学とは、『児童期(概ね小学生に相当する6歳頃〜12歳頃)』の子供を対象にした精神医学の分野である。

中学校に進学して12歳以上になると、児童精神医学の対象から外れてきて、思春期の青少年のメンタルヘルスを研究する『青年期精神医学』の対象に入ってくることになる。

青年期以降の成人いわゆる大人を対象とする『一般的な精神医学』と『乳幼児精神医学・児童精神医学』の最大の違いは、身体・精神・価値観共に発達途上にある『未熟な子供』を対象にしているということである。

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2014年06月05日

[A.S.ニイル(A.S.Neill):3]

A.S.ニイル(A.S.Neill):3

ニイルの自由主義的な教育思想は、生徒の自由を尊重することで『生徒の主体性・選択に対する責任感・自己への信頼』が強まるという教育効果に重点があり、規律訓練的な学校教育と自由主義的な学校教育を比較した場合でも、生徒に授業の出欠の自由を認めているからといって『学業成績の低下・自己中心的なわがまま・秩序を乱す行動の増加・無気力な意欲低下やさぼり』は見られなかったという。

A.S.ニイル(A.S.Neill):2

だが、権威主義の規律訓練的な学校教育よりも、特別に優れた学業成績が出せたり、欠席や怠学を減らせたりする効果が実証されているわけではなく、『一般的な学校教育に上手く適応できない不登校・ひきこもり・いじめなどを経験した生徒』がもう一度学校に通学しやすくなるというフリースクールの補完的な役割を実証したというレベルに留まっている。

大人である教師・職員と概ね対等な権利が与えられているサマーヒル・スクールの生徒たちは、一般の同世代の子供と比較すると、『相互性を重視する大人びた態度・問題解決的な議論を好む傾向・自分の行動に対する責任感』が見られやすい特徴があるという。

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[A.S.ニイル(A.S.Neill):2]

A.S.ニイル(A.S.Neill):2

A.S.ニイルは1912年にイギリスのスコットランドにあるエディンバラ大学で教育学の修士号を取得しており、1914年にはスコットランドのグレトナ・グリーンスクールの校長に就任した。ドイツの教育改革運動の影響を受けて、1921年にドイツのドレスデン郊外のヘレナウに学校を開設したが、1923年にはイギリスの南イングランド(ライム・レギス)に戻って、『サマーヒル・スクール』の原型となるフリースクールを創設している。

A.S.ニイル(A.S.Neill):1

A.S.ニイルが学校教育の最大の目標としたのは、『子供の幸福(大人に成長してからも幸福感と主体的な意欲を実感できる人格基盤)』であり、S.フロイトの精神分析の影響も受けていたニイルは、学校教育を介して『児童期の子供のトラウマ(自分は自由に主体的に生きてはならない存在であるという自己否定的・権威主義的な認知)』が形成されることを警戒していたともいう。

神経症(不安障害)やうつ病をはじめとする大人のメンタルヘルスの悪化の原因は、『児童期の自由の剥奪・主体性と意欲の阻害・責任感の欠落(ただ学校や教師の命令に従順に従って勉強し、ルール違反・問題行動を起こさなければ良いという考え方)』にあると考えたニイルは、規律や権威、常識、成績によって子供を統制して区別する伝統的な学校教育の有効性を懐疑した。

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[A.S.ニイル(A.S.Neill):1]

A.S.ニイル(A.S.Neill):1

イギリスの教育家・教育学者のA.S.ニイル(Alexander Sutherland Neill、1883年10月17日-1973年9月23日)は、世界初のフリースクール(自由学校)であるサマーヒル・スクール(Summerhill School)の創設者として知られる。

伝統的な学校教育制度は『規則(校則)・強制(指示)・懲罰(恐れ)・評価(優劣の判定)』によって運営される規律訓練型システムであり、家庭のしつけと学校の教育の相乗作用で、大人(社会)に従順な子供へと育て上げようとしていた。決められた学校システムや集団規範、学習課題に従わせることで、既存社会に適応的な子供を育成することが伝統的な学校教育制度の目的である。

従来の学校では、『生徒の自由や権利の尊重・子供の自主性や主体性の強化・自発的な興味関心の活用』というのは実態の乏しいお題目に過ぎず、『子供を自由にさせたり主体性を重んじていては学校教育の統制・秩序・風紀が乱れる』という教育者・教育行政の本音が見え隠れしていた。人間愛を教育にも応用しようとしたニイルは、教師が生徒を叱責したり懲罰(体罰)したりすべきではない理由について、『憎しみは憎しみを育て、愛は愛を育てる。しかして、いかなる子どもも愛によらずして救われたためしがない』と述べている。

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2013年01月06日

[論理療法・認知療法の弁別的傾聴(discriminative-active listening)]

論理療法・認知療法の弁別的傾聴(discriminative-active listening)

アルバート・エリスの考案した論理療法(rational therapy)やアーロン・ベックが創始した認知療法(cognitive therapy)でも、カール・ロジャーズが定義したカウンセラーの基本的態度である『徹底的な傾聴・共感的な理解・無条件の肯定的受容』の態度は重視されている。だが、C.ロジャーズのカウンセリングとの大きな違いとして『弁別的傾聴(discriminative-active listening)』がある。

カール・ロジャーズのカウンセリングにおける傾聴では、クライエントの話したいことを否定したり批判したりせずにありのままに受け容れながら聴くという『共感性・受動性(受容性)』がベースになっているが、A.エリスの論理療法やA.ベックの認知療法ではクライエントの話の内容を構造的に弁別する『弁別的傾聴』を行うことになる。弁別的傾聴の目的は、精神症状や身体症状、心理的問題が発生している『認知的・論理的な原因』を明らかにすることであり、クライエントに『物事の考え方・受け止め方』と『客観的な現実・出来事』とを弁別(識別)させるような対話をしていく。

論理療法ではアルバート・エリスの『ABC理論』にあるように、“A(Activating Event,客観的な出来事)”“B(Belief,物事の考え方の信念)”がどのように受け止めて解釈するのかによって、“C(Consequence,結果としての問題・症状・感情)”が生まれると考える。アーロン・ベックの認知療法でも、自動的に頭の中に浮かび上がってくる“自動思考(物事の考え方としての認知)”によって“客観的な出来事”が解釈されることによって、抑うつ感や自己嫌悪、不安感、緊張感といった“ネガティブな感情”が生まれてくるという風に考える。

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2010年10月27日

[レオン・フェスティンガーの“認知的不協和理論”と“合理化・知性化”]

レオン・フェスティンガーの“認知的不協和理論”と“合理化・知性化”

アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)が提唱した『認知的不協和(cognitive dissonance)』は、自分の内面に矛盾する二つ以上の認知(考え方)がある時に心理的な不快感・緊張感を感じて、その不快感を低減させるために認知(あるいは行動)の変容が起こりやすくなるというものである。

イソップ物語の『すっぱい葡萄(ぶどう)』の寓話では、キツネが高い木の上にある美味しそうな葡萄を何度も跳び上がって取ろうとするが、どうしても取ることができず、『どうせあんな葡萄は酸っぱくてまずいに決まっている』と不満を述べて立ち去っていくが、これも認知的不協和の一例とされる。

『高い場所にある葡萄が食べたい』という認知と『高くて葡萄を取ることができない』という認知(現実)が矛盾して対立しているために、食べたくても食べられないという心理的な不快感や緊張感が高まるのだが、この認知的不協和を解消するために『どうせあの葡萄は酸っぱくて美味しくない』という認知の転換を行うのである。

このような認知的不協和は、『タバコを吸っている‐喫煙は健康に悪くて発がんリスクになるの認知の矛盾』や『あの人が好きである‐あの人から冷たい対応で振られたの認知の矛盾』などによって引き起こされるが、そういった認知的不協和による心理的な不快感や緊張感(怒り・苦痛・悲しみ)などは認知の変容によって軽減されることが多い。

タバコが健康に悪いと知りつつ喫煙している人は『喫煙者の全員が病気になるわけではなく死ぬまで元気なヘビースモーカーもいる』と認知を変容させ、好きな人に冷たく拒絶されてしまった時には『あの人は性格が悪いから付き合わなくて逆に良かった』と認知を転換させるが、こういった自分なりの理由をつけて現実の不満や苦痛を和らげる心理機制を精神分析では『合理化・知性化』と呼んでいる。

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2010年10月13日

[認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)と認知理論]

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)と認知理論

認知療法は『非適応的・非現実的な認知傾向』を自己肯定的で機能的な認知に修正していく技法であるが、認知療法に『行動療法のアプローチ(非適応的な行動パターンの改善)』を組み合わせた統合的な心理療法を認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)という。認知行動療法(CBT)は、現代の科学的な臨床心理学におけるスタンダードでポピュラーな技法であるが、実際の心理面接・心理療法のセッションにおいては認知療法と認知行動療法が厳密に区別されることは少ないとも言える。

認知行動療法(CBT)では、非機能的で悲観的な認知を修正していくための『認知的アプローチ』と非適応的で効果の乏しい行動を改善していくための『行動的アプローチ』との二つの技法が組み合わされて行われるが、実際の心理臨床の場面では『認知傾向が行動パターンに及ぼす影響』が重視されており、非適応的な認知を中心に取り扱って改善していく。物事が上手くいかなかった原因や自分に自信が持てない原因を何に求めるのかという『原因帰属の分析』を行って、自分自身の能力や努力が足りないから全てが上手くいかないというような『自責的・自己否定的な認知』を和らげたりする。

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[アーロン・T・ベックの認知療法と認知的スキーマが生む『認知の歪み』]

アーロン・T・ベックの認知療法と認知的スキーマが生む『認知の歪み』

アーロン・T・ベックが1970年代に開発した認知療法(Cognitive Therapy)は、A.エリスの論理療法を技法的・理論的に洗練させた心理療法である。認知療法はうつ病(気分障害)に顕著な効果が認められるエビデンスベースドな心理療法であり、『客観的な状況・環境』を変えるのではなく『自分の物事の認知(捉え方)』をポジティブに変えることによって抑うつ感や無気力、絶望感を改善できるとした。

うつ病によって発生する『抑うつ感・億劫感・無気力・絶望感・希死念慮・不安感・焦燥感・イライラ・思考力(集中力の低下)』などの精神症状の原因には、脳内のシナプス(ニューロン間の間隙)におけるセロトニンの不足といった生物学的原因もあるが、認知療法では『非適応的・非現実的な認知の歪み』という心理学的原因に注目して心理療法を実施していく。

A.ベックは、人間は過去の経験や学習の積み重ねによって、物事や状況を解釈する時の基本的な枠組みである『認知的スキーマ』が形成されると考え、この認知的スキーマが非適応的な思考パターンを作り出すことがあるとした。『認知の歪み』による精神症状の発症には、認知的スキーマの偏った思考パターンが関係しているのであり、このネガティブな思考パターンを自己観察で発見するところから認知療法は始まる。

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[人間生態学(human ecology)]

人間生態学(human ecology)

生態学(ecology)とは動物と環境との相互作用を研究する生物学分野であり、動物の種の行動パターンや適応方略、進化論的な自然選択の仕組みと種の地形的分布なども研究の対象となる。動物の生態・繁殖・行動類型を調査する『動物行動学』や人間の各文化圏の生活や宗教、政治の特徴などを比較研究する『文化人類学』などとも関係した分野が生態学であり、生態学の理論やアイデアは応用心理学の分野に援用されることも多い。

人間生態学(human ecology)とは、生態学の研究方法と調査目的を社会学へと応用したものであり、人間社会の生態学的な特徴と機能、個人と社会の間の適応方略を研究する分野となっている。社会科学としての人間生態学は20世紀初頭に始まったとされており、初期の研究者であるR.E.パークR.D.マッケンジーE.W.バージェスらは『シカゴ学派』という社会科学系の研究グループに分類されていた。

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[認知科学(cognitive science)と認知心理学(cognitive psychology)]

認知科学(cognitive science)と認知心理学(cognitive psychology)

認知科学とは、人間や動物が外界を認識して情報処理する『認知のメカニズム』を科学的・学際的に研究する分野であり、『知識の獲得・記憶・利用・思考・言語』などを総合的に関連させて研究するという特徴を持つ。認知科学は脳科学(神経科学)とも密接に相関する分野であり、従来の哲学や心理学のように思弁的・合理的に『認知の仕組み』を推測して説明するのではなく、実証主義的な実験・観察を通して『認知の仕組みにまつわる仮説』を証明(反証)していくことに特徴がある。

認知科学は脳の生物学的機能や情報処理を通して、人間の知的システムや知識の獲得といった認知メカニズムを科学的に検証していく科学分野であるが、その歴史の始まりは1950年代後半に『新行動主義に対する批判』『ダートマス会議(1956年)』にあるとされる。客観的に観察可能な『行動』を研究対象とした新行動主義では、『刺激に対する反応(S-R結合)』として人間の認知メカニズムを仮定していたが認知の具体的な仕組みや知識の形成過程については研究することが出来なかった。

新行動主義者に分類されるB.F.スキナーやC.L.ハルは、人間の行動がどのように生起するのかを実験することによって、認知メカニズムのプロセスを推測できるとしたが、認知科学のスタンスからは、『外見的な行動』を幾ら観察しても内部で展開される『認知プロセス』を解明することはできないという批判が起こった。

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2010年09月28日

[ニュー・グループセラピー(new grouptherapy),ファシリテーター(facilitator)]

ニュー・グループセラピー(new grouptherapy),ファシリテーター(facilitator)

ひとりの個人を対象にして実施される心理療法(カウンセリング)のことを『個人療法』といい、複数の人から構成される集団を対象にして実施される心理療法のことを『集団療法(グループセラピー)』という。集団療法は他者との率直な出会いを通して、ありのままの自己を表現して相互に自己・体験談を受容して貰うという体験から『エンカウンター・グループ(出会いの集団)』と呼ばれることもある。

エンカウンター・グループにはさまざまな目的や集団構成があるが、1960年代からアメリカで隆盛してきたエンカウンターに『ニュー・グループセラピー』というものがある。ニュー・グループセラピーの最大の特徴はセラピスト(心理臨床家)とクライアント(患者)という役割関係にこだわらないところであり、集団療法の参加者すべてが『ありのままの個人・率直な言動をする人間』として無条件に受容・肯定されることになる。

エンカウンターの作用機序は、人間と人間が建前に捕われずに『本音』で向かい合いながら、『心と心の交流』を促進することで、心理的問題が解決に向かい精神的にも成長できるということにある。ニュー・グループセラピーではセラピストやカウンセラーといった呼び方をせずに、『ファシリテーター(facilitator:促進者・進行者)』という呼び方をするが、ファシリテーターとは集団療法やミーティング、セミナーなどの集団活動を、円滑かつダイナミックに進行する役割を果たす人のことである。

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[ニュー・カウンセリング(new counseling)]

ニュー・カウンセリング(new counseling)

身体の働きや感覚を軽視して、言葉による言語的コミュニケーションだけを重視する従来のカウンセリングに対抗して生まれたカウンセリング分野が『ニュー・カウンセリング(new counseling)』である。科学的な研究方法の限界を指摘して、人間の心身を意図的にコントロールしようとする操作主義を批判したのは、心理学者の伊東博である。伊東博が構想したニュー・カウンセリングと呼ばれる技法では、“身体感覚への気づき”を重視して以下のような『実習の方式』が考えられていた。

1.センサリー・アウェアネス(感覚への気づき)……日常生活や面接場面において、感覚的な気づきを高めるように意識すること。

2.身体の動作……実際にリラックスしたりストレスを緩和したりするために体を動かしてみることの重要性。

3.セルフ・アウェアネス(自己への気づき)……自分自身では気づけない側面に対する意識・注意を高めることであり、その気づきによって適応的な自己変革を促進するのである。

4.対人関係……自分自身が持っている人間関係の利点や問題点に対する気づきを深めて、具体的な人間関係への適応性を段階的に高める。

5.表出・表現……自分が抑圧している感情・感覚をありのままに身体を使って表出してみる、あるいは身体の感覚を重視しながら表現してみる。この自己表出・自己表現が、鬱屈した感情を解放するというカタルシス(感情浄化)の効果につながるのである。

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[乳幼児心理学(infant psychology)]

乳幼児心理学(infant psychology)

乳幼児心理学(infant psychology)は、乳児期から幼児期にある人の精神発達(発達課題)や社会適応、心身機能を研究対象とする発達心理学の一分野である。乳児期とは生後4週間の新生児期も含めた『0歳〜1歳半』の時期のことであり、幼児期とは『1歳半〜5歳頃』の時期のことである。幼児期は更に1歳半〜3歳頃の『幼児期前期』と3、4歳頃〜5歳頃までの『幼児期後期』に分類されることがある。

A.ポルトマンの生理的早産の概念では、人間の乳児(新生児)は極めて無力で依存的な存在として定義されているが、最近の研究では乳児は生理的・動物的存在として受け身な生活をしているだけではなく、自己の安心と適応を求めて『母親・外界』に積極的な関わりをしていることが分かっている。精神分析や発達心理学では、乳幼児心理学の対象となる『乳児期の発達段階』を指して、『発達早期』という呼び方をすることもある。

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[荷おろしうつ病・空の巣症候群]

荷おろしうつ病・空の巣症候群

気分・感情が急激に落ち込んで無気力と抑うつ感が強まり、何もする意欲がなくなるというのが『うつ病(depression)』であるが、うつ病の発症要因のひとつとして『自己アイデンティティの拡散』を想定することができる。自分がどういった存在であり、どのような役割・立場を担っているかが明確化されている時には自己アイデンティティが安定して確立されやすいが、『自分の立場・役割・存在意義』が曖昧になってくるとアイデンティティが拡散して抑うつ感・無意味感に襲われやすくなってしまう。

自己アイデンティティの変化・拡散は、『生活環境・仕事状況の急激な変化』『重要な人間関係(役割関係)の喪失』と深く相関していて、家庭内や職場内での役割・存在意義が失われた時にうつ病の発症リスクが高まってくる。仕事の過重な負担や責任がなくなって本来であれば気楽になるはずなのに、どんよりとした気分の落ち込みや何もやる気が起きない億劫感・無気力を感じてしまうことがあるが、これが会社員(サラリーマン)の定年後などに発症しやすい『荷おろしうつ病』である。

荷おろしうつ病とは『自分が絶対にやらなければならない仕事・役割・責任』を失って、肩の荷が下りたような時に発症しやすいうつ病であり、『自分が必要とされている実感・自分が果たすべき役割』を感じられなくなって、何をして良いか分からなくなる方向感覚(生き甲斐)の喪失とも関係している。荷おろしうつ病は『自分がやるべき仕事・役割』がなくなってしまったと感じる時に発症しやすいという意味では、定年後のサラリーマンや子育てを終えた専業主婦に起こりやすいうつ病である。

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2009年12月03日

[ガストン・バシュラールの『認識論的切断』とルイ・アルチュセールの『不回帰点』]

ガストン・バシュラールの『認識論的切断』とルイ・アルチュセールの『不回帰点』

ガストン・バシュラールは、客観的な科学知識を人間が取得するためには、『前科学的な思考形態』を切断して、非科学的な思考を規定する『情緒的・感覚的な障害物』を乗り越えなければならないと考えたが、ここで要請されるのが認識のパラダイムを転換させる『認識論的切断』である。バシュラールは科学的知識・科学的精神を獲得するためのステップとして、以下のような『三段階の法則』を提案している。

1.具体的段階

2.具体的−抽象的段階

3.抽象的段階

バシュラールの『三段階の法則』は非常にシンプルなものであるが、直接的・経験的で一回限りの『具体的事象』を、理論的・普遍的な法則性にまとめていこうとする『近代科学の本質』を上手く言い当てている。

バシュラールは人間のあらゆる認識を不完全なものと考えていたが、『近似的認識の積み重ね(具体的段階の積み重ね)』によって『経験主義的な幻想』を反駁できると想定していた。バシュラールは経験主義と合理主義の対立を超えた『適応合理主義・合理的唯物論』によって、近代的・客観的な科学的知識(科学精神)を獲得できると主張したのである。

ルイ・アルチュセールは、カール・マルクスやフリードリヒ・エンゲルスの科学的社会主義の『科学性』を立証するために、バシュラールの『認識論的切断』のアイデアを利用して、前時代的な哲学・イデオロギーの成果を切断しようと試みた。

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[ガストン・バシュラールの『科学的精神の形成』と認識論的切断]

ガストン・バシュラールの『科学的精神の形成』と認識論的切断

フランスの哲学者ガストン・バシュラール(Gaston Bachelard, 1884-1962)は、主著『科学的精神の形成(1934年)』を通して、有効な科学知識の獲得にまつわる『科学哲学』の分野で多くの貢献をした。

バシュラールは、近代自然科学を成立させるための科学哲学上の難題であった『経験論(唯物論)と合理論(観念論)の対立』を解決しようとして、個別の観察データから一般法則を定立しようとする『経験論的な帰納主義』を批判した。

ガストン・バシュラールは後年に『詩的想像力』の研究に没頭しており、実証的な科学者・科学哲学者としての自己アイデンティティだけを強くもっていたわけではない。バシュラールは偶発的で自律的な『形式的想像力』と物質の知覚によって喚起される『物質的想像力』を分類しており、物質的想像力を科学的思考法の起源として想定していたようである。

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2009年11月20日

[ニーチェの哲学思想の読解3:“ディオニュソス的なもの”と“アポロン的なもの”の対比]

ニーチェの哲学思想の読解3:“ディオニュソス的なもの”と“アポロン的なもの”の対比

1869年に24歳の若さでバーゼル大学の教授になったニーチェは、ドイツのロマン主義的な音楽家ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner, 1813−1883)にはじめ傾倒しており、古典音楽や古代ギリシアの哲学・文化・価値観の研究考察を経由して『悲劇の誕生(1872年)』が書かれることになった。

ナチス党やアドルフ・ヒトラーは、ニーチェの『ニーベルンゲンの指環』『ローエングリン』といったワーグナー作品へのかつての傾倒を、ドイツ民族主義やゲルマン至上主義の賞賛として解釈した。だが、『悲劇の誕生』で重視されているのは、ワーグナー作品に読み取れるロマンティックで陶酔的な精神を奮い立たせる世界観であって、民族主義的な優生思想や異民族の侵略ではない。

ワーグナーのオペラ作品では英雄や国王、民族のロマンティックで情念的な物語が再現されており、ニーチェはこういった理性的判断ではない情念的感動・興奮の総体を『ディオニュソス的なもの』として賞賛しているのである。ニーチェの思想は元来、『政治・経済の野心』よりも『芸術・美学の追求』に焦点が合わせられており、『悲劇の誕生』に始まる古代ギリシアの思想・文化・価値観の研究を通して『アポロン的』『ディオニュソス的』という対照的な類型が提示されているのである。

ニーチェは対比的な『アポロン的なもの』『ディオニュソス的なもの』について以下のように考えていたが、アポロンはギリシア神話における太陽神・予告の神であり、ディオニュソスはブドウ酒・酩酊・豊穣・芸術を象徴する神である。

アポロン的……近代を象徴する“理性・合理性・客観性・計画性・科学技術”を志向するもの。

ディオニュソス的……非近代を象徴する“陶酔・熱狂性・感情性・刹那性・芸術性”を志向するもの。

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