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2011年07月04日

[半睡暗示療法(half-sleep suggestion therapy)]

半睡暗示療法(half-sleep suggestion therapy)

催眠・筋弛緩・鎮静の作用の強いバルビツール酸系の鎮静薬(睡眠薬)を用いることで、意識水準を低下させて緊張を和らげた上で実施する催眠療法的な面接技法に『アミタール分析』というものがある。バルビツール酸系の睡眠薬は、一度に大量に服用(静脈注射)すると脳幹の中枢神経系が麻痺して、呼吸停止に陥り死亡するリスクがあるため、最近ではよほど重症事例の特殊な心理面接でない限りは行われなくなっている。OD(オーバードーズ=大量服薬)による自殺企図の問題もあることから、現在では睡眠薬としてもバルビツール酸系の薬剤が処方されることは殆ど無い。

代表的なバルビツール酸系の薬剤は、『少量で鎮静・中等量で催眠・大量で麻酔・過剰投与で昏睡もしくは死亡』という中枢神経系を抑制する薬理作用を持っており、精神神経薬の用途では5〜10%希釈のナトリウム塩溶液(カルシウム塩溶液)の静脈注射で投与されることが多かった。

アミタール分析のように薬剤を用いて意識水準を低下させたり、言語的暗示を用いて意識水準を低下させることで、半分眠りかけの状態(入眠期に近い状態)を作り出して行う心理療法(カウンセリング)のことを『半睡暗示療法(half-sleep suggestion therapy)』という。かつては即効性の睡眠薬(催眠導入薬)を用いて、意識水準を強制的に低下させるタイプの半睡暗示療法も多く行われていたが、現在ではクライエントの『身体的負担・副作用・セクシャルハラスメント・プライバシー保護の問題』も考えて言語的暗示・身体運動の制御を利用しながら、段階的に意識水準を低下させていくタイプの技法が用いられている。

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2011年06月16日

[般化(generalization)]

般化(generalization)

行動主義心理学(行動科学)の条件づけや学習の効果が、『初めに条件づけされた刺激(状況)』以外の刺激(状況)にも見られる事を『般化(generalization)』という。生理的な無条件反射を応用したレスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)でも、報酬と罰を応用したオペラント条件づけ(道具的条件づけ)でも『般化』は見られるが、『般化される行動(反応)』には適応的な行動もあれば非適応的(病的)な行動もある。

親から虐待を受けている子どもが、親が帰ってくる時の玄関の鍵を開ける音が聞こえると、条件反射で不安感が高まって心拍数が高まったり汗をかいたりするが、その条件反射が『自宅以外の場所・親以外の相手』に対しても起こってしまうようになることがあり、これも『般化』の一例である。学校の体育の授業でドッヂボールの速いボールをキャッチができるようになると、『般化』が起こって昼休みの友達同士でのドッヂボールの時間にも速いボールをキャッチできるようになる。

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[反抗期(negativistic age)と思春期]

反抗期(negativistic age)と思春期

親の注意や先生の指導、社会のルール、権威的な規則などに従わなくなり、反抗的な態度を示しやすくなる発達過程の時期を『反抗期(negativistic age)』と呼ぶ。思春期の反抗期は、精神的自立や自我の確立を目指す正常な精神発達過程の一部としてあるもので、倫理観や良心の呵責がなくなり他者の権利・生命を侵害する事を楽しむような『反抗挑戦性障害・行為障害』とは区別される。

児童期から思春期に見られる行為障害(conduct disorder)は、社会規範(法律)や道徳観念を無視して、他者の基本的人権・財産を侵害する18歳未満の少年の行動レベルの障害であり、『反社会性パーソナリティ障害』に移行するリスクを孕んでいる。

反抗期には、幼児期(2〜4歳)の『第一反抗期』と思春期(小学校高学年〜中高生頃)の『第二反抗期』がある。2〜4歳頃の幼児は運動機能や言語機能が急速に発達してくる時期であり、『自我の発生・自律性の向上』が見られるので、親の言うことや注意を聞かなくなり、何でも自分のやりたいようにやろうとする頑固さ(意志の強さ)が見られやすくなる。これが第一反抗期である。第一反抗期は『自我・自意識の発生』と密接に関係したものであり、日常的には『子どものイヤイヤ病(何でもイヤ・嫌いといって言うことを聞かなくなる)』という言い方が為されることもあるが、第一反抗期が見られるのは『自発性・自律性の芽生え』として好ましいことでもある。

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[パワー・ポリティクス(power politics)と組織内のカウンセリング]

パワー・ポリティクス(power politics)と組織内のカウンセリング

パワー・ポリティクス(power politics)とは、権力争い・勢力争いによる政治という意味であるが、一定以上の人数がいる組織では不可避的に派閥集団が形成されて、影響力を競い合うパワー・ポリティクスの状況が生まれやすくなる。国家や社会、集団におけるパワーとは一般に『権力・権限』のことを指していることが多いが、実際の集団活動・組織運営の現場におけるパワーとは『勢力・数の多さ・影響力の強さ(貢献度の高さ)』のことを意味することが多い。

パワー(勢力・権力)という言葉からイメージされやすいのは『強制力・支配力』であるが、実際に集団関係で発揮されるパワーとは『個人間の依存関係』であり、パワーを持つ相手に依存して何らかの保護(恩恵)を受け取ることと、服従することとはほぼ同義である。社会学者のR.M.エマーソン(R.M.Emerson)は、AのBに対するパワーの行使は、BのAに対する依存度に等しいという定義で、集団内のパワーの働き方を考えている。

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[犯罪心理学(criminal psychology)]

犯罪心理学(criminal psychology)

犯罪心理学(criminal psychology)とは、犯罪者の特性(発達・背景・心理)や犯罪行動に関する心理・環境の要因を研究する応用心理学であり、生得的犯罪者説を提起したイタリアの精神科医チェザーレ・ロンブローゾに始まるとされている。ロンブローゾは将来犯罪者になりやすい人物には、生得的・遺伝的な身体特徴があり、それは進化論的な退行性(類人猿・サルとの近似性)を意味しているという独特な『遺伝子決定論』の仮説を唱えたのだが、当然ながら現在ではこの犯罪人類学と呼ばれる仮設は科学的に否定されている。

犯罪心理学の目的は、犯罪事象を発生させる犯罪者の特性・傾向を分析し、犯罪の社会的・環境的要因を調査することで、犯罪発生のメカニズムを解明することである。更に、犯罪の背景・原因・動機・心理状態などの研究成果を応用することによって、『犯罪予防・犯罪捜査・犯罪者の更生』に貢献することが目的となっている。犯罪心理学の周辺領域には、犯罪精神医学や犯罪社会学、刑事政策などがあるが、それらの学問は全て『犯罪学』の下位分野とされる。

犯罪精神医学というのは、法廷で被告が犯罪に至った精神的事由を解明することを目指す医学分野であり、鑑定医が『心神喪失・心神耗弱』など責任能力の有無を考察して判断する精神鑑定領域を含んでいる。犯罪精神医学は、犯罪にいたる原因を科学的・統計的に明らかにする『犯罪生物学』と、犯罪を犯した被告に刑事罰を科せる精神状態(理非弁別能力)があったかいなかの責任能力を判断する『司法精神医学』から構成されている。

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[反精神医学(anti-psychiatry)]

反精神医学(anti-psychiatry)

反精神医学(anti-psychiatry)とは、標準的な科学的精神医学をベースとした薬物治療や閉鎖病棟(患者の処遇)、精神病理学に反対する思想潮流であり、現在の先進国の精神医療分野ではほとんどその影響力を失っているが、1960年代の欧米社会において非常に強いインパクトをもたらした考え方である。反精神医学というネーミングは、イギリスの精神科医デイビッド・クーパー(D.G.Cooper)が命名したものである。

このブログでは、[反精神医学(anti-psychiatry)とR.D.レイン]という記事で、反精神医学の思想やムーブメントの概略を解説しているが、反精神医学の内容を理解する上で重要になる著作としてR.D.レインの『レイン・わが半生』がある。反精神医学では、精神病者を『異常・狂気・病気』として審判的な判断を行い、それ以外の精神疾患を持っていない人を『正常・正気・健康』とするような二元論的な価値観を真正面から否定している。

反精神医学は、更に『治療する医師‐治療される患者』という臨床医学の権威的な役割図式そのものを否定し、医師と患者が『ありのままのひとりの人間』として向き合い理解し合うことによって、患者の症状や適応が改善しやすくなると主張した。精神の正常性と異常性の境界線ははっきりと区切られているわけではなく、現時点において正常圏にいると思っている人も、何らかの環境要因や遺伝要因、ストレスの蓄積によっていつ異常圏に移行するか分からないという人間観がそこにはある。

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2011年06月02日

[ハロー効果(halo effect)・ハローエラー]

ハロー効果(halo effect)・ハローエラー

ハロー効果(halo effect)とは、人(事物)を評価する時に、ある特徴的な目立つ一面だけに影響されて、その他の側面に対しても同じように評価してしまう認知的バイアスの効果のことである。『ある特定の項目での目立つ評価が、他の評価項目にも影響すること』というのがハロー効果の定義となる。ハローとは聖像・仏像の背後で光が差している『後光・光背』という意味であり、ハロー効果は『後光効果・光背効果』と呼ばれることがある。背後にあるまばゆい光に意識が捕われて、正確な認知や判断が下しにくくなり、その後光によって全体の価値を単純に判断してしまう認知バイアスが生まれるという意味である。

行動主義心理学の連合学習実験で、猫を使って『試行錯誤実験』を行ったE.L.ソーンダイク(Edward L. Thorndike, 1874-1949)が、軍隊内部の人事評価(上官の部下に対する認知バイアスのかかった評価)を参照したハロー効果の実証実験を行っている。ハロー効果には、顕著な目立つ特徴が良いイメージ・印象と関係している時の『ポジティブ・ハロー効果』と顕著な目立つ特徴が悪いイメージ・印象と関係している時の『ネガティブ・ハロー効果』とがある。

顕著な目立つ特徴として認識されやすいものには、『外見・学歴・職業・地位・衣服(高級品)』などがある。外見が美しかったりカッコよかったりすると、知性も優れていて性格も良いと判断されやすくなるのがポジティブ・ハロー効果である。東大・京大など高学歴者であると、ポジティブ・ハロー効果によって人間性・社会常識にも優れていて仕事能力も高いと判断されやすくなったりする。その他、医師・弁護士・大学教授などの職業によって、人間性を信用されやすくなったり高い道徳観を持っていると判断されやすくなるなどがある。

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[フリッツ・ハイダーのバランス理論(balance theory)]

フリッツ・ハイダーのバランス理論(balance theory)

アメリカ(オーストリア出身)の心理学者フリッツ・ハイダー(Fritz Heider, 1896年-1988年)は、ヴェルトハイマー、コフカ、ケーラー、レヴィンらゲシュタルト心理学者との交流が深かった人物であり、三者以上の対人関係に関する認知・判断の研究で社会心理学に大きな影響を与えた。1960〜1970年代にF.ハイダーは、認知斉合性理論や認知的不協和理論と関係する『バランス理論(認知的バランス理論)』を提示したが、これは安定した三者関係を生み出す基本原理としても知られている。

二つ以上の認知(物事の考え方)や現実が対立・矛盾している認知的不協和の状況では、生理的な緊張感や不快感が生じることになるが、人間は現実に合わせる形で認知を修正してその緊張感を和らげる。イソップ童話のすっぱいブドウの逸話では、『木の上になっているブドウを食べたい』という認知と『高い木の上になっているブドウを食べられない』という現実があり、その認知的不協和によって苦痛が生じるのだが、『あんな高い所になっているブドウなんてどうせすっぱくてまずいに違いない』と認知を現実に合わせて修正することで、認知的不協和の苦痛を和らげている。矛盾する二つ以上の認知や現実の間で、不快感を感じる認知的不協和が生じ、その不快感を軽減するために認知を現実肯定的に修正するというのが、L.フェスティンガーの説いた『認知的不協和理論』である。

フリッツ・ハイダーの認知的バランス理論も、『対人関係における認知の矛盾(バランスの崩れ)』を解消するような対人評価・対象評価の変化が起こるという仮説である。認知的バランス理論を分かりやすく言えば、『好きな人が好きというものは好きになりやすい・好きな人が嫌いというものは嫌いになりやすい・嫌いな人が好きというものは嫌いになりやすい』という対象評価に関する心理的傾向性である。L.フェスティンガーの認知的不協和理論もF.ハイダーの認知的バランス理論も、認知的バランスの不均衡を修正する力が働くという仮説である。人間は認知のバランス(均衡)を自動的に調整することで、精神的ストレスや葛藤の不快を減少させて、心理状態の安定したバランスを保っているのである。

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[パラメトリック検定(parametric test)]

パラメトリック検定(parametric test)

パラメトリック検定(parametric test)とは、母集団の分布パターンや母数について釣鐘型(ベル型)の正規分布(ガウス曲線)を前提とした統計学的な検定方法であり、パラメトリックとは『(仮定に)拘束される』の意味である。代表的なパラメトリック検定には、群間のバラツキや差を検定する“fテスト(f検定)”“tテスト(t検定)”がある。

学校の試験(学力テスト)の点数や色々な能力を測定した数値で分散を調べると、その多くは正規分布曲線(平均点付近の分布が大きくなり、点数が極端に高かったり低かったりの両端が小さくなる釣鐘型の曲線)を描くことになるので、サンプル数が多い統計ではパラメトリック検定が用いられることが多い。パラメトリック検定は、統計手法としてはベーシックなものであり、正規分布曲線が想定される一般的な統計データの検定で用いられる。

fテスト(f検定)というのは、F分布を利用して2群間の分散の比の検定を行うテストであり、『等分散性の検定』で利用されている。F分布(F distribution)は『スネデカーのF分布(Snedecor's F distribution)』『フィッシャー-スネデカー分布(Fisher-Snedecor distribution)』と呼ばれることもあるが、ノンパラメトリックのカイ二乗分布に従う2つの変数の比を示している。F分布は、F検定において帰無仮説に従う分布として用いられ、分散分析にも応用される。

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2011年05月19日

[パラダイム(paradigm)とトマス・クーンの科学革命]

パラダイム(paradigm)とトマス・クーンの科学革命

パラダイム(paradigm)パラダイム・シフト(paradigm shift)といった概念は、現在では一般的な概念として感覚的(拡大解釈的)に用いられているが、その原義は『範例・模範』ということにある。日常的な用語として拡大解釈される時には、パラダイムシフトは『発想の転換・考え方の変化・固定観念の修正・常識の懐疑』といった程度の意味で使われるが、厳密には科学史・科学哲学の文脈を踏まえた『各時代において支配的・規範的な影響力を持つ物事の見方や考え方』という意味を持っている。

学術的な専門的タームとしてのパラダイムには、トマス・クーン(Thomas Samuel Kuhn、1922-1996)の科学史や科学哲学で用いられる『パラダイム』と、ローマン・ヤコブソン(Roman Osipovich Jakobson, 1896-1982)が構造主義的な言語学で用いた『パラダイム』とがあるが、一般的にパラダイムという時には、科学的な『理論・認識の枠組み』としてのT.クーンのパラダイムのことを指している。

R.ヤコブソンのいうパラダイムとは、シンタックス(統語)の対義的な概念であり、文中のある語と置き換えが可能な類似した語の系列のことを指しており、理論的な枠組みや物事の見方(認識の枠組み)としてのパラダイムとは直接の相関はない。科学史・科学哲学におけるパラダイム(paradigm)とは、ある時代や分野において常識的な前提や規範的な知識となる『物事の見方・認識の枠組み』のことであり、かつてのプトレマイオスの天動説やI.ニュートンのニュートン力学(古典力学)なども当時の時代の支配的常識・規範としてのパラダイムだった。

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[パラ・カウンセラー(para-counselor)]

パラ・カウンセラー(para-counselor)

パラ(para)というのは『副・準・二番目の・類似の』といった意味であり、パラ・カウンセラー(para-counselor)というのは、カウンセラーではないがカウンセラー的な役割を果たしている『準カウンセラー・副職的カウンセラー(教師や会社員との兼務など)・メンタルケアの関連スタッフ』といった意味で用いられている。メンタルヘルスの支援体制やカウンセリングの利用状況が進んだアメリカで用いられるようになった概念であり、日本ではパラ・カウンセラーという言葉はほとんど普及していない。

医療分野では、医師ではないが医師と相互協力体制を取っている医療関連スタッフのことを、『コ・メディカル,パラ・メディカル』と呼ぶことがあるが、パラ・カウンセラーという言い方も、カウンセラーと連携を取る心理ケアの専門家(準専門家)といった意味合いを持っている。カウンセラーに準じて『クライアントの悩みについての傾聴・支持・保証・受容』などを行うが、専門的な心理療法(技法の適用)や精神分析的な解釈などを行うことは通常ない。

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[パラフレニー(paraphrenia)と妄想症状]

パラフレニー(paraphrenia)と妄想症状

近代精神医学の始祖といわれるドイツの精神科医エミール・クレペリン(Emil Kraepelin, 1856−1926)が発見した統合失調症の一種がパラフレニー(paraphrenia)である。E.クレペリンは最初、早発性痴呆(統合失調症)の妄想型を除いた妄想性痴呆(認知症)をパラフレニーと定義して独立的な疾患にしようとした。だが、W.マイヤーの精神病理学的な異論によって、パラフレニーは統合失調症の下位分類とされるようになった。

パラフレニーとは現在では、20代後半に発症しやすい妄想型統合失調症(paranoid schizophrenia)のことであり、他の統合失調症では副次的症状になる『陽性症状(妄想・幻覚)』が前面に出て中心的な症状を形成するものである。パラフレニーは統合失調症の中では発症頻度が高い類型であるが、情緒的な錯乱・興奮の症状がでにくく、無為・自閉を示す陰性症状も比較的軽いことが多い。そのため、統合失調症としては予後がそれほど悪くないことも多く、妄想体系は残ったとしても『人格崩壊・性格破綻』にまで行き着くことは少ないとされている。

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[D.W.ウィニコットの破滅不安(annihilation anxiety)と早期発達理論]

D.W.ウィニコットの破滅不安(annihilation anxiety)と早期発達理論

イギリスの小児精神科医・精神分析家であるD.W.ウィニコット(Donald Woods Winnicott, 1896-1971)は、J.ボウルビィやM.マーラー、M.クラインらと同じく発達早期の母子関係を重視した発達理論を提起した。ウィニコットは正常・健全な精神発達のためには『環境としての母親の愛情・保護』が必要不可欠と考えており、自己愛・自我といった個人内面の発達よりも、母親と子どもの間の双方向的な関わり合い(感情交流)のほうが、精神発達過程にとって重要であるとした。

対象関係論を提唱してクライン学派を築いた女性分析家のメラニー・クラインは、乳幼児の無意識的幻想やタナトス(死の本能)を前提とする『妄想‐分裂ポジション→抑うつポジション』という概念的に複雑な発達理論を作り上げたが、D.W.ウィニコットはどちらかというと『程よい母親』という一般的な母性愛や母子関係を中心にして、あまり概念的に複雑ではないシンプルな発達観を提案している。

ウィニコットは発達早期の赤ちゃんの発達段階を、母親の全面的な世話と保護を必要とする『絶対的依存期(0歳〜6ヶ月頃)』と、ある程度の自立性を獲得して分離不安を感じ始める『相対的依存期(1歳頃〜3歳頃)』に分けたが、その中間には依存性が弱まる段階としての『移行期(6ヶ月頃〜1歳頃)』がある。D.W.ウィニコットの早期発達理論は、以下の4つの発達段階に分類することができる。

絶対的依存期(0歳〜6ヶ月頃)

移行期(6ヶ月頃〜1歳頃)

相対的依存期(1歳頃〜3歳頃)

独立準備期(3歳以降〜)

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2011年05月02日

[発達理論と発達臨床心理学]

発達理論と発達臨床心理学

発達心理学は、人間の誕生から死までの段階的な発達プロセスとその発達課題・適応問題(精神病理)を解明しようとする応用心理学の分野である。具体的な発達段階としては、『胎児期・新生児期(乳児期)・幼児期・児童期・思春期・青年期・成人期・壮年期(中年期)・老年期』などがあり、それぞれの分野に特化した『児童心理学・青年期心理学・老年期心理学』などに分類されることもある。

人間の精神発達過程のメカニズムを仮説概念を用いて示し、発達段階や発達課題、社会適応(対人関係の適応)を説明しようとする理論のことを『発達理論(developmental theory)』と呼ぶが、代表的な発達理論には『演繹的な精神分析系の仮説』『帰納的な行動科学系の仮説』とがある。S.フロイトを始祖とする精神分析系の発達理論は『リビドー発達論(性的精神発達論)』であり、性的快感を知覚する部位が『口唇期→肛門期→男根期→潜伏期→性器期』へと移行するに従って、精神機能が発達して成熟した生産的(生殖的)な異性関係を築けるようになるという仮説になっている。

精神分析の自我構造論をベースにした発達理論では、無意識的な『エス(本能的・動物的な欲求)』が思い通りにならない現実原則によって挫折させられ、エスから分化した意識領域にある『自我』によって現実的な適応や欲望・感情の調整が進められると考える。更に、両親の教育やしつけを内面化した無意識的な『超自我』の倫理観・道徳感情が形成されることで、物事の善悪を判断する精神機能が発達してくることになる。

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[パッチテスト(patch test)]

パッチテスト(patch test)

身体に抗原(細菌・化学物質・ダニ・ホコリ)が接触・侵入した場合に、それに対応する抗体が過剰産生されて炎症や発赤、かゆみ、かぶれなどを起こす反応を『アレルギー反応』と呼び、生得的に特定の物質に対するアレルギー反応を起こしやすい体質のことを『アレルギー体質』という。遺伝・体質の要因が関与している代表的なアレルギー性疾患には、『アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・花粉症』などがあるが、その多くは先天性・遺伝性のものである。

ただしアレルギー性疾患の中には、一定量以上の抗原(花粉)に接触し続けることで閾値を超えて、突然ある時点でアレルギー反応としての鼻水・くしゃみ・炎症・かゆみ・発赤を示すようになる『一部の花粉症』のようなものもある。閾値を超えた抗原への暴露によって発症する一部の花粉症のような『後天的なアレルギー性疾患』では、それまで全く何のアレルギー反応も無かった人が突然アレルギー性疾患になってしまうことがあるので、すべてのアレルギーが遺伝性・先天性であるわけではない。しかし、それまでアレルギーがなくて突然アレルギー疾患を発症する人には、『アレルギー体質の潜在的な素因』を持っていたと推測される。

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[ハーフウェイハウス(halfway house)]

ハーフウェイハウス(halfway house)

精神病院で入院治療を受けることになった精神病患者が退院した後に、社会復帰や自立的生活を目標として一時的に居住する家(治療的・訓練的な目標を持つ住居)のことである。現実検討能力が低下する危険な急性期を抜け出して退院をしたものの、まだ自立的・安定的な生活を営めるほどには回復していない患者が、ハーフウェイハウスを利用することになるが、この精神保健福祉と関連する住居は、現在でいえば年齢基準のない『グループホーム』に近いものである。

日本でグループホームというと、認知症の高齢者が数人〜10人程度で集団生活を営んでいる高齢者福祉施設のイメージが強いのだが、グループホーム的な雰囲気を持つハーフウェイハウスは、年齢基準を設けていない精神疾患の患者たちが『社会復帰・自立的生活』を目指して協調的な集団生活を行っている。『ハーフウェイ(halfway)』というのは、半分の道のりという意味であるが、精神科・心療内科で急性期の治療を行って状態を安定させ退院するだけでは、患者たちは安定した社会生活へと戻っていくことはできない。

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[発達性失語症(developmental dysphasia)・ことばの遅れ]

発達性失語症(developmental dysphasia)・ことばの遅れ

失語症(aphasia)は、高次脳機能障害によって言葉を話したり理解したりする機能を失う後天的な障害であるが、発達性失語症(developmental dysphasia)というのは、発達過程によって獲得されるべき言語機能が獲得できないという先天的要因の関与する障害である。いったん獲得した言語機能(話す・聴く・読む・書く)を喪失したり低下させたりする失語症(aphasia)は、成人期(青年期)以降の事故や病気による高次脳機能障害によって発症しやすい障害であり、幼少期から症状が見られる発達性失語症とは異なる。

成人期に起こる代表的な後天性の失語症には、運動性言語中枢(ブローカー野)が障害されて言葉が話せなくなる『ブローカー失語症』と聴覚性言語中枢(ウェルニッケ野)が障害されて言葉を聴いて理解することができなくなる『ウェルニッケ失語症』とがある。発達性失語症とは日常的な表現で言えば『言葉の遅れ・言葉の習得困難の問題』であり、成人期の失語症のように一度獲得した言葉の機能を失うのではなく、初めから言語機能を習得できないという問題なのである。

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2011年04月17日

[ハンス・アスペルガーの“アスペルガー障害”とローナ・ウイングの“ウイングの3つ組”]

ハンス・アスペルガーの“アスペルガー障害”とローナ・ウイングの“ウイングの3つ組”

オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)が1944年に発見したアスペルガー障害(アスペルガー症候群)の概念を普及させたのは、イギリスの女性精神科医のローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)だった。

1944年当時、H.アスペルガーは現在のアスペルガー障害のことを『自閉的精神病質』という疾病概念で呼んでいたが、その特徴は『共感能力の欠如・友人関係を作る能力の欠如・一方的に話し続ける会話・特定の興味関心への極めて強い集中(固執)・ぎこちない動作』などであった。H.アスペルガーは、コミュニケーション能力や社会性の獲得、興味関心の広さなどに特異的な行動パターンが見られるとし、『自分の興味のある事柄』については非常に高い集中力を発揮して、相手の反応を無視して一方的に捲くし立てるように話す特徴(自分の話したいことだけを一方的に話し続ける特徴)があるとした。

1981年にローナ・ウイングがH.アスペルガーのアスペルガー障害に関する研究業績を紹介したことで、『アスペルガー障害』の認知度が高まることになるが、自閉症との差異として『知的障害・言葉の発達の遅れが殆ど見られない事』がある。そのため、アスペルガー障害は高機能自閉症に分類されることもあるが、知能指数が平均以上に高いアスペルガー障害の人でも、他人の気持ちや意図を適切に推測できないなど『対人関係・コミュニケーションの問題』を抱えているので、社会的・職業的な支障(人間関係が上手くいかなくて安定的に働くことができない等)が起こってくることが少なくない。

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[発達障害(developmental disability, developmental disorders)]

発達障害(developmental disability, developmental disorders)

発達障害(developmental disability)とは、何らかの要因によって正常な心身の発達プロセスが障害された状態であり、1980年代以前には『精神遅滞・発達遅滞』という概念で主に知的障害の事を指していた。現在では、精神遅滞や知恵遅れといった差別的意図を感じさせる概念は用いられなくなり、『知的障害』というカテゴリーでまとめられているが、通常は知的障害のみを持っている子どもは発達障害には含めないようになっている。

かつての曖昧で多義的だった発達障害の原因には、『遺伝的要因・器質的要因』『心理的要因・環境的要因(社会的要因)』の両方が想定されていたが、現在の発達障害では『遺伝的要因・器質的要因(脳の障害)』などの生物学的原因によって発症するものだけが発達障害として定義されている。即ち、育てられた家庭環境の機能不全や幼少期に経験したトラウマなど、『後天的な心理社会的要因』による発達障害に類似した問題症状の発生は発達障害には含めないということである。発達障害の原因は、『遺伝・体質・器質(脳機能の成熟障害)・乳幼児期の怪我や疾患』などの生物学的要因に限定されている。

現在の精神医学で『発達障害』として分類されているものには以下のようなものがあるが、その中心的な障害概念を形成しているのは、社会性・言語能力・想像力(共感性)の獲得が困難で他者とのコミュニケーションを円滑に行うことができない『広汎性発達障害(PDD:Pervasive developmental disorder) 』である。知的障害(精神遅滞)のみでは発達障害とは呼ばないが、知的障害がある発達障害を『重度発達障害』、知的障害のない発達障害を『軽度発達障害』として分類することもある。

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2011年03月22日

[発達課題(developmental tasks)とE.H.エリクソン,R.J.ハヴィガーストの発達理論]

発達課題(developmental tasks)とE.H.エリクソン,R.J.ハヴィガーストの発達理論

発達心理学の研究目的の一つとして、生涯発達図式において一定の発達年齢で達成しておくべき課題を発見・定義することがあり、この各年齢段階における心理的・社会的・対人的な課題のことを『発達課題(developmental tasks)』と呼んでいる。最も人口に膾炙している発達課題は、エリク・エリクソン(E.H.Erikson, 1902-1994)社会的精神発達論(漸成発達図式)であり、その発達段階と発達課題(その達成と未達成)は大まかに以下のように定義されている。

乳児期(0歳〜1歳半)……基本的信頼感と基本的不信感,母親との関係で愛情を受け取りそれに反応する。

幼児期前期(1歳半〜3,4歳頃)……自律性と恥・疑惑,母親・父親との関係でトイレトレーニング(排泄の練習)などで基本的・生理的な自律感覚を身に付けていく。

幼児期後期(4歳〜6歳頃)……積極性と罪悪感,家族だけでなく保育園・幼稚園での友達関係を経験して積極的に物事を行う意欲を感じる。注意されたり否定されたりバカにされたりすることで、積極性を失って罪悪感や自信の無さを感じやすくなる。

児童期・学齢期(6歳〜15歳頃)……勤勉性と劣等感,学校のクラスメイトとの力関係や勉強・スポーツの成績の競争(友達との各種の比較・クラス内の力関係)によって、勤勉に努力することの必要性や自分のほうが劣っているという劣等感を感じやすくなる。

青年期前期・思春期(15歳〜22歳頃)……自己アイデンティティ(自我同一性)の確立と自己アイデンティティの拡散,社会的な関係性や役割意識を通して、社会内部での自己の存在意義や目的を確認していく。自分の世界観・人生観を自分の実体験を踏まえて確立したり、イデオロギー(思想哲学)を習得することで再定義したりする。

青年期後期(20代半ば〜30代前半)……親密性と孤立,社会参加して協力や競争をしながら、異性や他者と親密な関係性を発展させていく。人によっては結婚したり家族を形成することで、自己アイデンティティ(自己の存在意義や役割意識)の基盤を固めようとする。他者との関係性の変化を通して、自分自身であることが解体されやすくなるが、再び家族や異性、子どもなどを通して新たな自己アイデンティティが再構築されることになる。

中年期・壮年期(30〜50代)……生殖性と自己停滞,子どもが産まれて教育・文化・伝統を継承させるという生殖性が一つの目的となるが、そういった生殖性や意欲性が障害されて何をして良いか分からなくなると『中年期の危機』である自己停滞に陥りやすくなる。家族・社会において年長者となり責任ある役割を任されることが増えて、後進の若者の指導をしたり世話をしたりする。

老年期(60・70代以降〜)……統合性と絶望,自分自身の衰退や死を自覚するようになることで、今までの人生全体を総括したり自己の存在や人間の価値などについて統合的な了解を得たりすることが目的となる。“私・欲望”という自我意識の執着から離れて、大局的なコスモポリタンの意識を持ちやすくなり、『家族・地域・国・世界・人類』といった経験に裏打ちされた幅広い視野を獲得することで、老成した叡智・知恵・調停力の発揮が期待されるようになる。

E.H.エリクソンの発達段階と発達課題について上で説明したが、『発達課題』という概念そのものを初めて使用したのは、『人間の発達課題と教育』を書いたアメリカの教育学者ロバート・J・ハヴィガースト(Havighurst,R.J. 1900-1991)である。

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