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2011年03月22日

[発達検査(developmental test)]

発達検査(developmental test)

発達検査(developmental test)は、被検者の心身の発達の程度(レベル)を測定するための心理検査であり、身体的発達(生理的発達)・知的発達・社会性の発達の問題や遅れについて“早期発見・早期対応(援助及び治療)”を行えるようにするものである。臨床心理学の心理アセスメントで用いられる心理検査は、『知能検査(IQの測定・知的障害のスクリーニング)』『人格検査(個人の性格特性や価値志向を判断するパーソナリティテスト)』に分類されるが、この『発達検査』も心理検査の一つである。

過去の発達心理学は誕生(出生)から『精神的・経済的な自立』を成し遂げて自己アイデンティティを確立する青年期までを対象にしていたが、現在の発達心理学では誕生(出生)から死亡までの『生涯発達』を前提にしている。

そのため、本来であれば発達検査も、乳幼児から青年・中年・高齢者まで幅広い年代を対象にすべきであるが、現在の発達検査の主要な対象と目的は、『乳幼児・各種の発達障害や知的障害の早期発見』になっている。それは、人間の心身発達がスムーズに進んで既存の社会生活や学校生活、職業活動に適応できるか否かの基盤が『乳児期・幼児期・児童期の学習行動と個人的経験』にあるからであり、精神発達・知的活動・社会適応の問題(障害)を早期に発見することで、有効な発達支援や特殊教育支援を行いやすくなるからである。

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[発達指数(developmental quotient)]

発達指数(developmental quotient)

発達検査(developmental test)で出される結果として、標準的な発達年齢で見られる行動・発話と比較した『子どもの発達年齢』があり、1ヶ月で母親を見て笑う、2ヶ月で動く対象を追視する、12ヶ月で自分で立てるなどの基準がある。発達検査の発達年齢などの結果を踏まえて、子どもの発達状況を数量化して示したものを『発達指数(developmental quotient:DQ)』と呼ぶ。

発達指数を求める公式は『発達指数(DQ)=発達年齢(DA)÷生活年齢(CA)×100(小数点以下は四捨五入)』で、標準的な発達年齢で見られる行動や反応ができていれば“100”という発達指数が出るようになっている。発達指数の求め方の基本原理は、標準的な知的水準との差異によって指数を求める『知能指数(IQ:Intelligent quotient)』と同じであるが、発達指数の高低がそのまま知能指数の高低と相関しているわけではなく、発達指数が低くてもその後の学習・努力・意欲などによって知能指数が高くなることも少なくない。

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2011年03月18日

[発達加速現象(developmental acceleration)と大人世代の退行現象]

発達加速現象(developmental acceleration)と大人世代の退行現象

身体・体格の発達速度は戦後間もなくよりも、現代のほうが早くなっている。現代のほうが過去よりも『身長・体重・胸囲』などの体格が著しい向上を遂げており、男子でも女子でも平均身長が伸びていて(脚の長さも長くなっていて)、体重・胸囲も大きくなっているのである。中学3年生の15歳男子の身長を各時代ごとに比較してみると、『明治33年(1900年)・152.1センチ』『昭和29年(1954年)・158.1センチ』『平成21年・168.5センチ』となっており、平成の現代の青少年のほうが戦後よりも10センチも身長が高くなっている。

中学3年生の15歳女子の身長を見てみても、『明治33年(1900年)・144.8センチ』『昭和29年(1954年)・151.5センチ』『平成21年・157.3センチ』となっており、時代が新しくなるにつれて平均身長は一貫して伸びている。脚の長さや体重、胸囲なども同様に向上しており、現代では身体的な成熟に至るまでの時間が短くなっているという時代的特徴がある。思春期が始まって身長・体重が急速に増え始める時期についても、男性で約2年間、女性で約1年間、戦後の時代よりも早くなっているようである。

一定の年齢で区切って『身体的な発達』を比較した場合に、世代が新しくなるほど身体的発達の速度が早くなり体格も向上する現象を『発達加速現象(developmental acceleration)』という。しかし、発達加速現象は長期的にいつまでも加速を続けるような現象ではないという点に留意が必要である。戦後一貫して向上し続けてきた青少年男女の体格も最近では安定的に推移するようになっており、発達加速現象は停滞し始めている。

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2011年03月01日

[パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と来談者中心療法]

パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と来談者中心療法

徹底的な傾聴と共感的な理解、無条件の肯定的受容を基盤に置く来談者中心療法(クライエント中心療法)を開発したのは、アメリカの臨床心理学者のカール・R・ロジャーズ(1902-1987)である。1970〜1980年代において、非指示的・非審判的なクライエント中心療法がカウンセリングの主流の技法としての地位を確立したが、現在では指示的要素を持つ認知療法・認知行動療法の勢力が増している。その結果、C.R.ロジャーズのクライエント中心療法は、クライエント(依頼者)と向き合う時に、ラポールを構築して自己受容を促進させるための『カウンセラーの基本的態度』としての意味合いが強くなっている。

クライエント中心療法のカウンセラーの教育方法(スーパービジョン)に、集団的トレーニング法としての『ベーシック・エンカウンターグループ』という方法論があるが、これは率直な他者との出会い及び本音の交流を通して『人格的・双方向的な成長』を図ろうとするものである。C.R.ロジャーズのクライエント中心療法や有機体理論(実現傾向の理論)は、心理学の第三勢力とされる『人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)』に分類されるが、1960年代には人間性の向上や相互理解の深化を目的とするベーシック・エンカウンターグループが流行した。

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2011年02月11日

[パーソナル・スペース(personal space)]

パーソナル・スペース(personal space)

心理学や社会学でいうパーソナル・スペース(personal space)とは、心理的・感覚的に形成される私的空間(個人的空間)の領域のことであり、他者がこの私的空間に侵入してくると不快感や違和感、不安感を感じやすくなる。パーソナル・スペースは文化人類学的には『原始的な縄張り意識』の名残とされ、外敵や危険から自分の身を守ろうとする防衛本能(自己防衛)と深い関係を持っている。

一般的には、原始的な縄張り意識へのこだわりの違いから、女性よりも男性の方がパーソナル・スペースは広くなりやすいと考えられているが、社会文化や民族、伝統、個人の性格、相手との関係性によって大きな個人差が見られる。人見知りしないフレンドリーで外向的な性格の人であれば、誰が近づいてきても余り違和感や不快感を感じにくいので、パーソナル・スペースは狭くなりやすい。反対に、人見知りする他人に馴れにくい内向的な性格の人であれば、知らない人が近づいてくると非常に強い不安感や不快感を感じやすく、(他人の侵入を許さない)パーソナル・スペースも広くなりやすいのである。

アメリカの文化人類学者エドワード・ホールは、以下のようにパーソナル・スペースを4つのゾーンに区別しており、それらの各スペースを『近接相』と『遠方相』の2つに分類している。各スペースにおいて、個人的な関係性のある親しい相手とであれば『近接相』が見られやすく、個人的な関係性のない余り親しくない相手とであれば『遠方相』が見られやすくなるのである。

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[パーソナル・インフルエンス(personal influence),ウェブのインフルエンサー(influencer)]

パーソナル・インフルエンス(personal influence),ウェブのインフルエンサー(influencer)

インフルエンス(influence)とは『影響力』という意味であるが、個人の発言・行動・態度・交渉などが、他者の行動や意志決定に与える影響のことを『パーソナル・インフルエンス(personal influence)』という。人間は自分の興味関心と関係する情報を受け取ることによって何らかの影響を受けるが、個人の行動・意志決定が影響を受ける情報媒体としては『マスメディア・他者とのコミュニケーション・インターネット(ウェブ)』がある。

テレビ・新聞・ラジオ・雑誌などのマスメディアの影響力は非常に強いとされているが、インターネット(ウェブ)上のソーシャルメディアやブログ、サイトなどの登場によって、その社会的な影響力は分散されることになった。また、マスメディアが発信する情報・広告では、個人の行動や意志決定を直接的に変えることは難しく、マスメディアの情報・広告を受け取った個人が、それを知り合いに対して話題にしたり説得したりする『口コミ』によって、その影響力が格段に大きくなっていく。

E.カッツ(E.Katz)P.F.ラザースフェルド(P.F.Lazarsfeld)は、統計的な調査研究によって『最終的な意志決定・判断内容』に与える影響は、マスメディアよりも個人間のコミュニケーション(会話・口コミ)のほうが大きいという事を明らかにした。つまり、『情報・知識・流行を知覚する』という初期の段階ではマスメディアの影響力はかなり大きいのだが、『受け取った情報を実際の意志決定・判断内容に応用する』という後半の段階では個人間のパーソナル・インフルエンスが大きくなるのであり、マスメディアと個人間コミュニケーション(口コミマーケティング含め)は『相互補完的な役割』を果たしているのである。

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[パーソナル・アイデンティティ(personal identity)とM.マーラーの核心的同一性]

パーソナル・アイデンティティ(personal identity)とM.マーラーの核心的同一性

E.H.エリクソン(E.H.Erikson, 1902-1994)『ライフサイクル論・発達漸成図式(社会的精神発達論)』を提唱して、自我アイデンティティの概念を定義したが、エリクソンは自我アイデンティティを構成する要素として、自分がどのような社会的役割と同一化するかという『社会的アイデンティティ(社会的な役割意識と存在意義の実感))』を重視していた。自我アイデンティティとは、過去から現在まで一貫して続いている連続性のある自意識であり、自分がどのような人間(存在)であるのかという自己確認を含む『自己同一性(私は〜であり〜のような役割を果たしているという同一性)』のことである。

自己アイデンティティには、自分が既存社会の中で果たせる職業や役割を見つけ出して同一化するという『社会的アイデンティティ』と、自分が自分以外の何ものでもない唯一の存在であり他者の人生と代替不可能であるという『実存的アイデンティティ』の二つの要素がある。

女性分析家マーガレット・マーラーは、母親と乳幼児の間に成立する愛着(アタッチメント)を基盤において『分離‐固体化期』の早期発達論を考案したが、M.マーラーは自己アイデンティティを『核心的同一性(コアアイデンティティ)』『職業的同一性』の二元論で解釈していた。『核心的同一性(core identity)』というのは発達早期の母子関係からの分離を通して、段階的に形成されていく『自分は自分である・自分は自分以外の何ものでもない唯一の存在である』という自己意識の実感のことである。

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[パストラル・カウンセリング(pastoral counseling)]

パストラル・カウンセリング(pastoral counseling)

キリスト教のプロテスタントの牧師によって実施されている個人カウンセリングやグループセラピー(グループカウンセリング)のことを『パストラル・カウンセリング(pastoral counseling)』と呼んでいる。パストラル・カウンセリングはカトリックの『懺悔・告解』の歴史とは異なるものであり、人間の原罪による罪深さを強調するのではなく、カウンセリング技法と宗教的博愛(慈愛)の融合による『支持・保証・指導・癒し』を与えていこうとするものである。

プロテスタントの牧師とクライアント(クリスチャン)が1対1で向き合うような個人カウンセリングの形式もあれば、牧師が複数のクライアントと向き合ってグループカウンセリング的な相互の話し合いを促進していくこともある。パストラル・カウンセリングは『教会カウンセリング・牧会カウンセリング』とも呼ばれているが、クリスチャンでもあるクライアントの宗教的信仰心も活用しながら、宗教的な儀礼の要素と臨床心理学的な理論の部分を上手く調和させている。

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2011年01月31日

[恋(エロス)と愛(ラブ)と博愛(アガペー)の違い]

恋(エロス)と愛(ラブ)と博愛(アガペー)の違い

男女の恋愛感情には、『エロス・ルーダス・ストロゲー・プラグマ・マニア・アガペー』の6つの種類が想定されることが多いが、それぞれ以下のような特徴を持つ恋愛感情となっている。交際している一般的な男女の間の恋愛感情は『エロス(eros)』であることが多く、信頼関係や利他感情、生活の共有度が高まるにつれて『愛(love)』へと移行していきやすくなる。

エロス……性的欲求や自己愛を中核に持つ『情熱的な恋愛』

ルーダス……執着心や独占欲が弱い楽しむための『遊戯的な恋愛』

ストロゲー……信頼感情や安心感を基盤とする『友愛的・家族的な恋愛』。友愛を指し示すものとして『フィリア』が用いられることもある。

プラグマ……相手から得られる実際的な利益や便宜を重視する『実利的な恋愛』

マニア……相手を完全に独占して自分のものにしたいという『狂信的な恋愛』

アガペー……利己的欲求や私的感情を超越した自己犠牲・献身を惜しまない『博愛的な恋愛』

一般的な恋愛感情は、性的欲求や自己愛、独占欲など、自分自身が満たされて幸せになることの優先度が高い『エロス』であることが多いが、エロスは燃え盛るような激しく情熱的な恋愛感情を高めるので、『相手と恋愛をしているという実感』が最も強くなりやすい。エロスの起源はギリシアの愛の神エロスにあり、古代ギリシアの哲学者プラトンが唱えた『イデア論』では、完全な統一体である自己のイデアを完成させるために、『失われた半身としての異性』を衝動的・情熱的に追い求めるのがエロス(恋愛)であると考えられている。

プラトンは『不完全な欠落感のある男性・女性』が、『失われた半身としての異性』を見つけ出して性的に結合することで、イデア界にあると想像される『完全な自己のイデア』に近づけると仮定した。現代においても、『自己の不全感・欠落感・孤独感』を補うために、異性(他者)を求めるという自己愛性がエロスの一つの特徴となっている。

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[白内障(cataract)の症状・原因・治療]

白内障(cataract)の症状・原因・治療

白内障(cataract)は加齢によって発症しやすい眼科疾患であり、眼の中でレンズの役割を果たしている『水晶体』が白く濁ってしまって、物が見えにくくなるという病気である。かつては、眼が白濁する症状から『白底翳(しろそこひ)』と呼ばれることもあった。健康な水晶体は透明な組織でタンパク質と水分から成り立っているが、『タンパク質の変性』を引き起こす各種の原因によって、この水晶体が白く濁ってくることがある。

白内障の症状の問題点は、視力低下で対象が見えにくくなって日常生活に支障を来たすという事だが、症状が悪化して進行すると視力の大幅低下によって殆ど物が見えなくなってしまうことがある。白内障の原因は、水晶体内の『αクリスタリン蛋白変性』に伴う不溶性蛋白の増加であるが、大きく『先天性白内障』『後天性白内障・加齢性白内障(老人性白内障)』とに分けられる。白内障の最も大きなリスク要因は『加齢・高齢』であり、60歳代で70%、70歳代で90%、80歳以上ではほぼ100%の人が白内障を発症するという統計的データがある。

老人性白内障以外の後天性の原因としては、『外傷・紫外線や赤外線・放射線・眼内膜炎など炎症・網膜剥離の合併症・アトピー性皮膚炎の合併症・眼周囲の外用ステロイド剤の副作用・全身性疾患』などを考えることができる。ダウン症候群などの染色体異常によっても、白内障が発生することがある。

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[カール・ロジャーズのパーソナリティ変容条件]

カール・ロジャーズのパーソナリティ変容条件

アメリカの臨床心理学者C.ロジャーズ(C.R.Rogers, 1902-1987)は、来談者中心療法(クライエント中心療法)を開発して『カウンセリングの神様』とも称されたが、ロジャーズの来談者中心療法の目的は『直接的な問題解決』よりも『人格的な成長・精神的な成熟による問題解決』のほうに主眼があった。C.ロジャーズは『カウンセラーの基本的態度』を用いて、徹底的な傾聴や共感的な理解、非審判的態度などカウンセリングの交流を促進することで、クライエントのパーソナリティがより適応的で機能的なものに変容すると考えていたのである。

C.ロジャーズの来談者中心療法(クライエント中心療法)をベースとしたカウンセリングでは、『クライエントの問題解決・心理的ケア』と合わせて『クライエントのパーソナリティ変容(人格的成熟・精神的成長)』が大きな目標となるが、ロジャーズ自身は『パーソナリティ変容条件』として1957年に以下の6項目を上げている。

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2011年01月13日

[バイステックの7原則(seven principles of Biestek)とケースワーク]

バイステックの7原則(seven principles of Biestek)とケースワーク

社会福祉的な対人的・制度的な援助を必要とする困窮者を、個別に支援する活動を『ケースワーク(社会福祉援助技術・個別援助技術)』といい、ケースワークに携わる専門職者・担当者のことを『ケースワーカー』と呼ぶ。個別的な対人援助・相談案件を『ケースワーク(casework)』と呼んで、制度的な社会福祉事業全般を『ソーシャルワーク(socialwork)』と呼ぶこともあるが、社会的な困窮者・弱者を社会福祉制度や対人援助技術を用いて支援していくという活動内容は同じである。ソーシャルワークの直接援助技術の一つとして、ケースワークがあるという構図になっている。

日本でケースワーカーの役割を果たしているのは、行政の社会福祉(障害者福祉・高齢者福祉・児童福祉)や生活保護(経済的困窮者の支援)の担当者や病院に勤務する相談員(MSWの医療ソーシャルワーカー)などである。ケースワークの専門的な知識・技術・経験を担保する国家資格として『社会福祉士・精神保健福祉士』などの資格も整備されており、高齢化社会の進展(要介護者)や生活困窮者(失業者)の増加を受けてケースワークの社会的需要は高まっている状況にある。

アメリカのケースワーカーであるフェリックス・P・バイステックは、ケースワーカーとクライアントの共感的な関係性を基盤において、ケースワークの基本的な態度・行動原則を7つの原則にまとめている。フェリックス・P・バイステックの著書『The Casework Relationship(邦訳:ケースワークの原則)』で、『バイステックの七原則(seven principles of Biestek)』として整理されたケースワークの基本的な行動原則・援助技術は以下のようなものである。

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[敗血症(sepsis)]

敗血症(sepsis)

敗血症(はいけつしょう,Sepsis)とは、創傷・産褥・疾患などの細菌感染を原因にして発症する重症度の高い全身性炎症反応症候群(SIRS)であり、治療せずに放置するとショック・DIC(播種性血管内凝固症候群)・多臓器不全などで死亡するリスクもある。傷口・病巣から細菌が血液中に侵入して全身に感染が広がった状態が『敗血症(敗血症ショック)』であり、ただ血液中に細菌が侵入しただけの状態は『菌血症』と呼ばれて区別されている。

敗血症は免疫力・体力が低下している人や感染症に罹っている乳幼児に発生しやすい疾患だが、エイズやがんの化学療法による免疫力低下、糖尿病や肝硬変など慢性疾患の発症によって敗血症のリスクは高くなる。自己と他者を区別する免疫システムが、細菌を死滅させようとして働くと、炎症性物質の『サイトカイン』が発生するが、更に細菌が放出するエンドトキシンなどの毒素が合わさることによって敗血症のショック症状が出現する。

敗血症の診断では、実際に血液中から原因菌が検出される必要性はなく、高サイトカイン血症による全身性炎症反応症候群(SIRS)が起こっていれば敗血症・敗血症ショックとして診断されることになる。炎症性物質であるサイトカインと細菌の出す毒素によって、血管が拡張して血圧が下がることになるが、その血圧低下が危機的なレベルにまで進行すると、身体各部の血流量が不足してしまい、各臓器が機能不全を起こすリスクが出てくる。多臓器不全を防ぐために心臓は血流量を増やそうとして必死に動くが、最終的には心臓への負荷が増大して心臓機能も弱っていき、重要な臓器への血液供給が慢性的に不足して『多臓器不全』へと至る。

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[破瓜型(hebephrenia)の統合失調症と病態に対する『古典的な4つの類型』]

破瓜型(hebephrenia)の統合失調症と病態に対する『古典的な4つの類型』

2002年8月に日本精神神経学会の決議により、オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler, 1857-1939)が命名して以降、精神分裂病(Schizophrenia)と呼ばれていた精神病が、『統合失調症』と改名された。統合失調症と改名された理由は、精神分裂病という言葉の語感が、現実検討能力が低下してさまざまな症状が発生する病態を正確に表現しておらず、精神(人格)が2つ以上に分裂する『多重人格』であるような誤解を与えやすいということがあった。

もう一つの改名の理由は、精神分裂病に対して『不治・狂気・荒廃に至る精神病』という固定観念が強まっており、そういった『世間の差別・偏見・誤解』を減らしていくために、より病気の実態を反映した『中立的な精神疾患名』が必要だということがあった。精神機能の統合性や現実認識能力が失調する(現実適応的な精神機能のバランスが崩れる)という意味で、統合失調症という名前が採用されて、その中心的症状として『陽性症状(幻覚・妄想)』『陰性症状(ひきこもりの無為・感情の平板化・意欲と活動性の消失)』がクローズアップされた。

古典的な精神分裂病の病態は、以下の4つに類型化されることが多かったが、最近ではこの分類が使われる機会はかなり減っており、重症度や妄想・幻覚・衝動性(攻撃性)の有無によってその予後が推測されるようになっている。

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2011年01月12日

[パーキンソン病(Parkinson's disease)・パーキンソン症候群]

パーキンソン病(Parkinson's disease)・パーキンソン症候群

パーキンソン病(Parkinson's disease)は、1817年にイギリスの医師ジェームズ・パーキンソン(James Parkinson)により報告された疾患であり、手の振るえ(振戦)や筋肉の固縮、運動低下などの症状が現れる神経変性疾患である。ジェームズ・パーキンソンは『振戦麻痺 (shaking palsy)』 という名称を付けて、『寡動・安静時振戦・姿勢保持障害・前傾姿勢・小字症(文字を小さくしか書けなくなる)』などの症状を指摘している。

パーキンソンの振戦や運動低下などの報告は長く評価されなかったが、1888年にヒステリー研究で著名なフランスの神経科医ジャン=マルタン・シャルコーが、“筋強剛(筋肉の過剰な硬直)”の症状を追加して『パーキンソン病(Parkinson's disease)』と呼ばれるようになった。パーキンソン病の症状であるパーキンソニズムは他の疾患の副次的症状として出現することも多く、パーキンソニズムが見られる症状を総称して『パーキンソン症候群(Parkinson Syndrome)』と呼ばれることもある。

パーキンソン病の原因は、脳内の情報伝達物質であるドーパミン(運動調整と相関)の不足とアセチルコリンの相対的増加であるが、大脳基底核の神経細胞(ニューロン)の変性変質・脱落も起こってくるので、一般に薬物治療によって症状を改善すること(進行を遅らせること)はできても完治することはないとされる。

パーキンソン病は、40歳以上ではおよそ250人に1人、65歳以上で約100人に1人に発症する疾患であり、初老期・老年期に当たる50〜79歳で発症することが多くなっている。人種による発症率の差もあり、白人は黒人の2倍以上の確率でパーキンソン症候群を発症するリスクがあるとされる。40代以下で発症するパーキンソン症候群のことを『若年性パーキンソン病』と呼び発症率そのものはかなり低いが、手の振るえや筋肉の硬直、歩行の困難などで日常生活・職業活動の支障が大きくなる難病(特定疾患)である。

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2010年12月24日

[バイオリズム(biorhythm)]

バイオリズム(biorhythm)

バイオリズム(biorhythm)とは、安定した生命活動を行っている個体の時間周期的なリズムのことであり、『生物リズム・生体リズム』といった言葉で訳されることもある。バイオリズムの概念は、生命体の生理状態や感情、知性などが周期的パターンに従って変化するという仮説に依拠していて、バイオリズムを図示したグラフなどがよく知られている。 ドイツの外科医ウィルヘルム・フリースが1897年に『生物学から見た鼻と女性性器の関係』で提唱した概念がバイオリズムであるが、統計学的には有意なデータがなく『疑似科学』として批判的に見られることもある。

多くの人間は、朝から昼間に掛けて活動し、夜間は眠って休養するという24時間周期の『概日リズム』を持っているが、この概日リズムがバイオリズムの基準となることも多い。『起床・活動・睡眠の24時間周期』の概日リズムに、生体ホルモンの分泌や血圧の高低、尿の組成などが相関しており、概日リズムが狂ってしまうと不眠症(睡眠障害)や自律神経失調症が起こりやすくなる。

周期の繰り返しによって、未来の自分の体調・心理状態を予測できるというフリースの仮説に基づくバイオリズム(下記を参照)は、確かに疑似科学的な側面を持っている。だが、人間の生活や生理状態にある程度一定の規則正しいリズムがあることは確かであり、特に覚醒‐睡眠のリズムと生体ホルモンの分泌量には相関が見られる。

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[バイオフィードバック(biofeedback)・脳波のアルファ波]

バイオフィードバック(biofeedback)・脳波のアルファ波

フィードバックというのはサイバネティクスの用語であり、結果を初期の時点に差し戻すことによって命令・反応を修正して自動的に制御するシステムのことで、結果を知ることによって反応を改善することができるという利点を持つ。バイオフィードバック(biofeedback)とは、『不随意的な生態情報』を機器で測定してそれを観察することで、“脳波・血圧・心拍数”といった生理学的反応を意識的にコントロールしようとするものである。

バイオフィードバック装置を使った行動療法として、幼児・児童の『夜尿症』に対するバイオフィードバック技法や脳波をアルファ波に調整してリラクセーションを行う技法がある。夜尿症の行動療法では、敷布団や毛布に水分を感知するセンサーを組み込んで、子どもがおねしょをした時にブザーやバイブを鳴らして子どもにおねしょをしたことを知らせるのだが、このバイオフィードバックによって夜尿症の頻度は減ってくる。バイオフィードバックで調整するのは自分の意識や努力によってはコントロールできない『自律神経系の不随意的な生理反応』であるが、自律神経系の反応を機器で測定して知覚させることでその生理的反応を自己制御しやすくなるのである。

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[バイオエナジェティック・アナリシス(bioenergetic analysis)]

バイオエナジェティック・アナリシス(bioenergetic analysis)

性の全的解放によって精神病理(神経症)や社会問題(犯罪・差別)を改善できるとしたウィルヘルム・ライヒ(Wilhelm Reich, 1897-1957)は、性一元論の精神分析家として知られるが、その弟子にアレキサンダー・ローウェン(Alexander Lowen)という分析家がいる。アレキサンダー・ローウェンは、身体や精神内部において蓄積される不快な緊張感の蓄積を解明する『バイオエナジェティック理論(bioenergetic therapy)』を提唱して、その理論を独自の精神療法(心理療法)に応用しようとした。

バイオエナジェティック理論は、『筋肉(身体)の緊張』『精神の緊張(性格の硬さ)』とを相関させる理論であり、筋肉の緊張が亢進することによって人間関係がスムーズに行かなくなったり、物事に向かう姿勢が固くなり過ぎてしまうという。A.ローウェンは、身体・筋肉の緊張が人間の生体エネルギー(リビドー)の自然で自由な流れを阻害すると仮定して、『筋肉の不快な緊張』を独自の運動や姿勢の取り方で緩和すれば、精神的問題の多くを解決できると主張した。

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2010年04月07日

[精神分析の反復強迫とタナトス]

精神分析の反復強迫とタナトス

強迫性障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などで問題になってくる症状に『反復強迫』があるが、反復強迫とは不合理な馬鹿馬鹿しい強迫行為(強迫観念)を反復的に繰り返す症状である。S.フロイトが創設した精神分析では、反復強迫は『抑圧・否認された幼児期の心的外傷』が繰り返されていると解釈するが、患者本人は幼児期の心的外傷(過去の不快な記憶)を思い出すことはできないとされる。

反復強迫の根本的な原因は『抑圧された過去の外傷体験・外傷記憶』とされるが、“抑圧・否認・合理化”といった自我防衛機制によって、その外傷的な記憶を本人は想起することはできない。

更に、本人は『合理的な理由・心理的な動機づけ』があって、その強迫行為を繰り返していると考えていることが多いので、反復強迫を精神的な病理の現れとして認識していることは少ないのである。反復強迫は『苦痛・不快を伴う記憶痕跡の反復(繰り返し)』という現象として症状化するので、精神分析の理論である『快感原則』を反証する症状として理解することができる。

S.フロイトは初期には反復強迫の症状を、『無意識的願望の充足の障害』と解釈したり『現実的な苦痛や不安の回避』と理解しようとしたりしたが、晩年のフロイトは『エロス(生の欲望)』『タナトス(死の欲望)』との中間領域に生起する力動として反復強迫を位置づけた。快楽を求めて不快を避けるという『快感原則(快楽原則)』の彼岸に、万物を自然的な死(無機物)の状態に還元しようとする『タナトス(死の欲望)』が生まれるのであり、タナトスはリビドーの欲動の量をゼロ(静止)に近づけようとするのである。

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[反精神医学(anti-psychiatry)とR.D.レイン]

反精神医学(anti-psychiatry)とR.D.レイン

この記事は、[前回の記事]の続きになります。反精神医学の代表的な思想家として、イギリスの精神科医のR.D.レイン(R.D.Laing)デイビッド・クーパー(D.G.Cooper)がいるが、R.D.レインの自叙伝的な位置づけとなる『レイン・わが半生』では病的な心理状態における徹底的な自省・内省が行われている。

レインとクーパーは1965年4月に、反精神医学思想の理想的な治療関係を再現するための宿泊施設である『キングスレイ・ホール』をロンドンに開設した。キングスレイ・ホールでは反精神医学運動で『現代社会の疎外・抑圧』と呼ばれた診断・薬物・権威のすべてが排除され、医師と患者のヒエラルキーの区別さえも相対化されたので、キングスレイ・ホールはクリニック(病院)ではなくてハウスホールド(共同生活施設)に近いものとなった。

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