マージナル・マン(marginal man)と相対主義
自由化・個人化が進んだ現代社会では、特定の価値観や生き方だけを肯定することを批判する『価値多元主義・文化相対主義』の影響力が強まっており、私たちは『自分たちとは異なる価値観・生き方・文化行動』に対する寛容性や受容性が過去と比べれば格段に高くなっている。
確かに、現代の日本やEU諸国、アメリカといった先進国でも『排外主義・国粋主義・人種や宗教の差別』などの問題は残っている。経済環境や雇用情勢が悪化してくれば、自己アイデンティティを肯定するためのナショナリズムや外国(異民族)への敵対心・嫌悪感が生まれることもあるが、社会全体の空気や価値観は共生・寛容・平等の理念を大切にする『リベラリズム』をベースにしたものになっている。少なくともあからさまに特定の外国を敵視したり外国人を差別したり、自国の利益のためには外国に何をしても良いというような価値観が、先進国の良識的な多数派に支持されることはまずなくなっている。
『自分の立場・利益・価値観』だけではなくて『相手の立場・利益・価値観』にも想像力と共感性を働かせて、できるだけ好意的に解釈し理解しようとするというのが『価値多元主義・文化相対主義』といった相対主義の思考方法である。これらの相対主義は、自分たちとは異なる価値観や利害を持っている他者(集団)との共生の可能性を高めてくれる。その一方で、『自分には言い分があるが、相手の言い分もまた分かる』という中立的・調停的な態度を取ることによって、自分の判断基準や価値観の根拠が曖昧になりやすくなり、自己存在の足場を失って『自己アイデンティティ』が拡散しやすくなってしまう。
相対主義が支配的となってきた現代社会(ポストモダン社会)では、『特定の集団・民族・文化・価値観』への帰属性が弱くなりがちで、絶対的な価値観や存在意義に対して懐疑的な態度を取りやすくなる。
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