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2016年06月07日

[バブーフ,サン=シモン,プルードンの思想哲学:ユートピア思想と共産主義]

バブーフ,サン=シモン,プルードンの思想哲学:ユートピア思想と共産主義

ユートピア思想の歴史では、16世紀のトマス・モアやカンパネラを経由して、18世紀の『最後の恋』のレチフ・ド・ラブルトンヌ、共産主義思想(私有財産廃止と完全平等の理想)の先駆けとなる『バブーフの陰謀』フランソワ・ノエル・バブーフ(Francois Noel Babeuf,1760-1797)へと接続していった。

トマス・モア『ユートピア』による理想的・宗教的な世界観:近代ユートピア思想の原点

バブーフの後には、土地・生産手段を公有化するアソシアシオン(協同体)建設の『空想的社会主義』で知られるフランソワ・マリー・シャルル・フーリエ(Francois Marie Charles Fourier、1772-1837)が出た。フーリエは『社会的・動物的・有機的・物質的な四運動の理論』を前提にして、社会運動において物理世界におけるニュートンの万有引力の法則に相当するという『情念引力の理論』を提唱したが、これらは科学的根拠や検証方法がないという意味でも空想的社会主義に該当する概念であった。

アンリ・ド・サン=シモン(Claude Henri de Rouvroy,Comte de Saint-Simon,1760-1825)も空想的社会主義の思想家に分類されているが、社会の重要な任務は富の生産活動の促進にあるとして、資本家・労働者の産業階級を貴族・僧侶より重視する産業資本主義のリアリズムの視点を導入するなど先見の明のある思想家でもあった。

産業資本主義の発展を見据えて『テクノクラート(技術官僚)の予言者』と呼ばれたサン=シモンは『50人の物理学者・科学者・技師・勤労者・船主・商人・職工の不慮の死は取り返しがつかないが、50人の王子・廷臣・大臣・高位の僧侶の空位は容易に満たすことができる』という貴族・僧侶を侮辱する発言をして、1819年に告訴されたりもしている。

ユートピア思想の系譜には、カール・マルクスの論敵であり、『無政府主義の父』と呼ばれたピエール・ジョセフ・プルードン(Pierre Joseph Proudhon,1809-1865)も名を連ねている。プルードンの代表作には『所有とは何か(1840年)』『人類における秩序の創造(1843年)』『貧困の哲学――経済的諸矛盾の体系(1846年)』の三部作がある。

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[トマス・モア『ユートピア』による理想的・宗教的な世界観:近代ユートピア思想の原点]

トマス・モア『ユートピア』による理想的・宗教的な世界観:近代ユートピア思想の原点

人類の政治・経済と戦争・革命の歴史は、『ユートピア』を求めるダイナミックな物語であり果敢な挑戦でもあった。思想家・哲学者の歴史の一部も『ユートピア思想』の系譜と重なっているわけだが、人類は古代ギリシアのソクラテスやプラトンも含めて、二千年以上の長きにわたって今の現実世界にはない理想のユートピアを追い求めてきたのである。

今の現実世界や日々の生活の中にはない『理想的な世界・生活・政治経済などの仕組み』を想像力を駆使して構想・計画していくのがユートピア思想の仕事である。ユートピア思想を歴史的かつ体系的に研究した書物として知られるものとして、ドイツのマルクス主義の哲学者エルンスト・ブロッホ(Ernst Bloch、1885-1977)『ユートピアの精神』『希望の原理 全三巻』がある。

ユダヤ人で米国に亡命したE.ブロッホは、当時の先進的な民主主義国家であったはずのワイマール共和国が、なぜナチスやヒトラーを生み出したのかというナチズム形成に関する批判的な研究も行っている。

ユートピア思想の本格的な歴史の黎明は『ルネサンス期〜近代初期』であり、イングランドの思想家・神学者トマス・モア(Thomas More,1478-1535)『ユートピア(1516年)』がその先駆けとなった。“ユートピア(Utopia)”という言葉は『どこにも無い』という意味であり、日本語では『理想郷・桃源郷』と翻訳されることが多い。明治期の日本では、ここにはない世界といった意味でユートピアを『無何有郷(むかうのさと)』などと訳したりもした。

トマス・モアは『離婚問題・英国国教会問題』で対立したヘンリー8世にロンドン塔に幽閉されて1535年7月6日に処刑されたことから、キリスト教カトリックの殉教者としても知られている。ヘンリー8世はイスパニア王女カザリンと結婚していたが、カザリンの侍女アン・ブーリンに惚れて離婚した。トマス・モアは原則として離婚を認めないローマ・カトリックの立場に立って、ヘンリー8世のアン・ブーリンとの無節操な再婚に反対して結婚式に出席しなかった。

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2013年12月08日

[ユング心理学の『夜の航海(night sea journey)』の元型(archetype)]

ユング心理学の『夜の航海(night sea journey)』の元型(archetype)

カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung, 1875-1961)が創始した分析心理学(ユング心理学)では、無意識領域を『個人的無意識』『集合無意識(普遍的無意識)』に分類している。

“個人的無意識(individual unconsciousness)”とは個人の過去の経験や感情、記憶(個人が実際に経験した重要な出来事)にまつわる無意識であり、S.フロイトは『自分自身が認めたくない反道徳的な記憶・性的な意味のある出来事・トラウマに関連する感情』が抑圧されやすいとした。C.G.ユングは個人的無意識の内容を必ずしも『抑圧された性的な欲求・記憶』とは結びつけておらず、『その個人にとって重要性の高い感情・記憶・欲求』などが潜在する簡単には思い出すことのできない領域という風に考えた。

“集合無意識・普遍的無意識(collective unconsciousness)”とは、個人的無意識よりも奥深い領域にある『集団単位(あるいは民族・人類の全体)で共有される無意識』であって、集合無意識は『普遍的かつ典型的なイメージ』として知覚され体験されることになる。集合無意識の内容を指示するこの普遍的・典型的なイメージのことを『元型(アーキタイプ,archetype)』と呼んでいる。

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2013年11月25日

[UPI(University Personality Inventory)の心理テスト]

UPI(University Personality Inventory)の心理テスト

UPI(University Personality Inventory)は、主に大学生の心理的な悩みを調査するために開発された『質問紙法の心理測定尺度(心理検査)』である。大学生のメンタルヘルス(精神的な健康度)の判定のために有効な心理テストであり、大学入学時のスクリーニング(悩みを持っている生徒の選抜・問題の早期発見)に実施されることが多くなっている。

UPIを大学入学時に実施することによって、『うつ病・パニック障害・社交不安障害などの重要な精神疾患の早期発見』『心理的・家族的な悩みの早期対応』『効果的な援助方法・カウンセリングの選択』に役立てることができる。そのため、大学の入学時点以外の『学生相談・学生カウンセリング』においても、このUPIが相談者に対して用いられることが多くなっている。

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[唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史4:唯識論・諸法空相・唯識無境の相関]

唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史4:唯識論・諸法空相・唯識無境の相関

唯識とは個人の見ている世界やそこにあるすべての事物は、その個人の表象(イメージ)や認識作用が生み出したものであるという考え方(世界観)であり、世界にはただ八種類の識だけが存在するとするものである。唯識論と空の思想を掛け合わせた概念として『諸法空相(しょほうくうそう)』がある。世界のあらゆる存在や事物は、個人の八種類の識によって生み出されたものであるから、それらは主観的な存在に過ぎず客観的な実在ではない。

世界に存在するものは全て主観的な存在なので永遠不滅の実在にはなり得ない、絶えず生成消滅を繰り返す存在は『空』であるとするのが『諸法空相』の世界観である。世界のあらゆる存在や事物は、人間の五感を中心として認識される『色(物質)』であるが、それらの色(物質)は諸行無常の空であり生成消滅を繰り返すことになる、これを『色即是空(色は即ち空である)』という概念で表現することもある。

このように世界にはただ八種類の識(心の作用)だけがあるという『唯識論』は、大乗仏教の『空の思想・諸行無常・諸法空相・色即是空・諸法無我』などとも分かち難く密接に結びついているのである。

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[唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史3:阿頼耶識縁起の思考・記憶のサイクル]

唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史3:阿頼耶識縁起の思考・記憶のサイクル

仏教経典において唯識論が大成したのは、中期大乗仏教経典の『解深密経(げじんみつきょう)』『大乗阿毘達磨経(だいじょうあびだつまきょう)』だが、それらの経典も無著と世親の唯識の思想をベースにしている。唯識はインドのナーランダ寺院において集中的に研究が行われた。中国に渡ってからは西遊記の三蔵法師として知られる玄奘(げんじょう)の弟子の慈恩(じおん)が起こした『法相宗』が唯識の研究に中心的な役割を果たすことになった。

日本でも奈良時代に法相宗は『南都六宗』の一つとなり、奈良の興福寺・法隆寺・薬師寺、京都の清水寺などで唯識論の学術的研究が盛んに行われ、『唯識論』『倶舎論(くしゃろん)』が日本仏教学の基礎として確立されていった。その理論の難解さや高度な抽象性のレベルを理解するまでには時間がかかるということで、『唯識三年倶舎八年』という言葉も生まれた。現在の日本における法相宗の大本山は、興福寺と薬師寺の二つに減っている。

世親(ヴァスバンドゥ)は『唯識二十論』で、世界のあらゆる存在は実在せず、個人の表象や認識が生み出しているものに過ぎないという唯識論のベースとなる世界観を開示しているが、『言葉で表現することが不可能な実体』があるといった唯識論の留保もしていた。世親はその後の『唯識三十頌』においては、世界のあらゆる存在・事物は八識によって構成されているに過ぎないものであるという『八識説』に傾いている。

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[唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史2:無著と世親]

唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史2:無著と世親

『華厳経』では世界のあらゆる存在が心の認識作用であるとするが、この心の認識作用を以下の3種類の『識の転変』としてまとめている。

異熟(いじゅく)……行為の成熟

思量(しりょう)……思考に相当

了別(りょうべつ)……外的対象の識別

大乗仏教では上記の『識の転変』を前提として、人間の認識や事物の存在のレベルとして以下の『三性』があるとしている。

遍計所執性(へんげしょしゅうしょう)……意識によって仮定的に構想された存在,凡夫の日常の認識。

依他起性(えたきしょう)……自他の関係性の縁起で生まれる相対的な存在,他に依存した儚い存在

円成実性(えんじょうじっしょう)……意識や他との関係に依存することのない自律的・絶対的な存在,円熟して完成された真の存在。

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[唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史:1]

唯識(ゆいしき)と大乗仏教の思想史:1

上座部仏教(小乗仏教)に対する大乗仏教の最大の特徴は『衆生救済の教え(一般の人々を助ける教え)』であるということで、その救済を受けるために特別な学問の知識や修行の苦しみを必要としないことである。

大乗仏教の根本理念は、この世界に実在する確かなものなどは存在しないという『空』の思想である。主体と客体を区別せずに確固たる実在の存在を否定する『空』の思想は、人間の心の構造を解明した『唯識(ゆいしき)』へとつながり、更に『諸行無常・諸法無我』といった仏教の四法印の教えにもつながっている。

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2012年03月15日

[ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:3]

ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:3

この記事は、[前回の記事]の続きになります。 フォーカシングにおけるフェルトセンスは、ある特定の状況や人間関係において自然に生じてくる身体感覚であり、時に激しく感じられたり時に穏やかに流れるように感じられたりするものである。内面・身体に意識を向けるまでは、初めは『ぼんやりとした曖昧な感じ・はっきりとしないそこにある感覚』として体験されており、フォーカシングで意識を向けて体験を重ねることによって、次第に『はっきりとした輪郭を持つ感じ・自分にとっての特別な意味やメッセージを含んだ感覚』として全体的で治療的な体験ができるようになってくる。

フェルトセンスを感じようとする体験を繰り返して、それに合致するハンドル(言葉・イメージ)を見つけていくことで、フォーカシングの治療的・改善的なプロセスは進んでいくのだが、そのプロセスには『パーソナリティの成長的・治療的な変容』という効果があるとされている。フォーカシングというカウンセリング技法は、『身体感覚(フェルトセンス)・感情・言語との相互関係あるいは相互作用』を利用した体験的技法であり、個人個人で大きく異なる内的な感じを言葉やイメージに置き換えることで、『気持ちがすっきりとした感じ・自己実現(自分の全体性)に近づけた感じ』を体験しようとするものである。

『身体感覚(フェルトセンス)』と『ハンドル(言葉・イメージ)』がぴったりと一致すると、心地よい気分の変化や胸にじわりと沁みてくる充実感(解放感)を感じることがあるが、この『ぴったりとくる気持ちいい感じ』へ自分の感じ方を変換していくことを、『フェルト・シフト(felt shift)』と呼んでおり、このフェルト・シフトがフォーカシングの作用機序(治療メカニズム)として機能している。

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[ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:2]

ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:2

この記事は、[前回の記事]の続きになります。フォーカシングを実施するカウンセラー的な役割の人を『リスナー(listener)』といい、実際にフォーカシングの体験過程を感じている人を『フォーカサー(focusor)』というが、フォーカシングは他のカウンセリング技法と比較すると、カウンセラーとクライエントの役割分担(カウンセラーがクライエントを主導したり内面を解釈したりする)がそれほど明確ではない。フォーカシングをフォーカサーが体験する時に『重要な態度』については、近田(2002)が以下の3つを指摘している。

1.内面から湧き出てきたり流れていたりする“感じ・身体感覚”は全て大切にする。

2.自分の実感として感じられる“感じ・身体感覚・感情・イメージ”に逆らわずに、そのまま認める。

3.『身体の感じ』と『主体としての自分自身』をきちんと区別する。

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[ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:1]

ユージン・ジェンドリンのフォーカシング(focusing)とそのプロセス:1

アメリカの心理学者ユージン・ジェンドリン(Eugene T. Gendlin, 1926年-)が開発した『フォーカシング(focusing)』は、身体感覚や内的経験の持つ『心身の回復効果・身体と感情のつながり』に着目したソマティック(身体的)なカウンセリング技法である。

アレン・アイビーのマイクロカウンセリングにも同じ名前の『フォーカシング(focusing)』という技法があるが、これはカウンセリングのセッションで特定の問題状況や心理状態を取り上げて焦点づけするという方法であり、E.T.ジェンドリンの身体性を有効活用するフォーカシングとは異なる。

フォーカシングは『体験過程理論に基づく体験過程技法』と呼ばれるように、自分が実際に内的に感じている身体感覚が全てであり、他のカウンセリングのように記憶や言語に基づいた分析・解釈は重視していないのが特徴である。フォーカシングの具体的な過程は、以下の6段階(6つのステップ)によって成り立っている。

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2010年04月13日

[反ユダヤ主義(anti-cemitism)とイスラエル建国]

反ユダヤ主義(anti-cemitism)とイスラエル建国

この記事は、[前回の記事]の続きになります。ユダヤ人たちは紀元前10世紀頃の古代イスラエル王国を建設したが、紀元前960年頃に北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂し、イスラエル王国は紀元前721年にアッシリアに滅ぼされ、ユダ王国は紀元前586年に新バビロニアに滅ぼされた(『バビロン捕囚』)。新バビロニア王国がアケメネス朝ペルシアに滅ぼされると、一時的にユダヤ人による自治国を建設する。

しかしその後、ローマ帝国に対して『ユダヤ戦争(B.C.66年)』で反乱を起こして鎮圧されることになり、自治権を剥奪されたユダヤ人は『亡国・流浪の民』となったのである。ユダヤ人がユダヤ戦争で自らの民族国家を失って、世界各地に離散しながら移民になっていったことを『ディアスポラ(離散)』と呼ぶ。

ユダヤ人は自分たちが『国家・領土』を持たないから迫害・排斥され続けたのだという被害者意識を強めていくが、第二次世界大戦中にナチスドイツ(アドルフ・ヒトラー)からホロコーストの虐殺を受けたことで、カナンの土地(イスラエル)にユダヤ人の国家を建設しようとする『シオニズム運動(ユダヤ人国家建設の思想・運動)』がいっそう強まっていった。アウシュビッツ収容所のガス室に象徴される『ホロコースト』では、約400万人〜600万人ともいわれるユダヤ人が処刑されることになり、人類史上最悪の弾圧・虐殺事件として記憶されている。

シオニズム運動やイギリスの三枚舌外交の結果として、国連決議181号の『パレスチナ分割決議案』が承認される運びとなり、1948年5月14日にユダヤ人の民族国家である『イスラエル(首都エルサレム)』の建国が宣言された。イギリスの三枚舌外交というのは、アラブ人にパレスチナにおける独立を認めた1915年10月の『フサイン=マクマホン協定』、ユダヤ人にパレスチナにおける国家建設を支援すると宣言した1917年の『バルフォア宣言』、ロシア・フランスと共にパレスチナ含むオスマン・トルコの領土を分割統治することを協議した1916年5月16日の『サイクス=ピコ協定』のことである。

最終的にイギリスは、委任統治領だったパレスチナの統治・領有に関する政治的責任を放棄してしまい、国連決議にパレスチナ領有の裁定が委ねられることになった。1948年にイスラエルが独立したことにより、パレスチナ人とユダヤ人がパレスチナの支配権(領有権)を巡って争う『パレスチナ問題』が深刻化した。第一次〜第四次の中東戦争が行われ、ユダヤ人とパレスチナ人の紛争やユダヤ人による入植地拡大(ガザ侵攻・パレスチナ人の囲い込み)は現在に至るまで続いている。

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[反ユダヤ主義(anti-cemitism)とユダヤ人の金融業]

反ユダヤ主義(anti-cemitism)とユダヤ人の金融業

ユダヤ人(ユダヤ民族)とは、ユダヤ教を信仰する人や民族集団(セム族)のことであるが、人種的・言語的・地域的に同一性を持った集団ではない。ユダヤ人とは『旧約聖書』を教典とするユダヤ教を信じていて、ユダヤ共同体に帰属意識を持ち、エルサレムを神に与えられた『約束の土地』と確信している人のことである。ユダヤ人は、古代エジプト王国による奴隷化やバビロニア王国によるバビロン捕囚、帝政ロシアにおけるポグロム(ユダヤ人虐殺)ナチスドイツによるホロコーストなど、歴史上で何度も迫害や弾圧の悲劇を経験してきた。

ユダヤ人を差別したり排斥しようとする思想のことを『反ユダヤ主義(anti-cemitism)』といい、反ユダヤ主義は紀元前の昔から存在していたと言われ、キリスト教が誕生してからは特に、ユダヤ教徒に対する差別感情や排斥行動が度々過激化することがあった。

キリスト教徒たちのコミュニティや国家において、ユダヤ人は被差別民族に近い不当な取り扱いを受けることが多かったが、そのきっかけになったのが12〜13世紀の中世ヨーロッパで開催された『ラテラノ公会議』だった。

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