2017年02月26日

[アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1]

アスペルガー障害における社会性の障害と集団行動・社会的環境(他者の干渉)の苦手さ:1

イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)は、オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)が初めて報告した『アスペルガー障害(Asperger Disorders)』を再発見して当時の精神医学会に広めた功績がある。

“ウイングの3つ組”として知られるアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)の典型的な特徴は、『社会性の障害(対人関係の障害)・コミュニケーションの障害(言語の障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動・興味の偏り)』の3つである。社会性の障害というのは、学校・職場・地域などの社会集団において他者や状況に合わせて適応的に行動できないという障害である。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 22:46 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:孤立型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:孤立型の特徴

孤立型のアスペルガー障害は、周囲や他者に対する興味関心が乏しいタイプで、受動型以上に『対人関係への無関心・消極性』が目立ち、相手から話しかけられてもあまり相互的な反応・返事を返さないような特徴がある。場合によっては、無関心が非常に強いそっけなさや冷淡さ、とっつきにくさといった印象を周囲に与えるため、人間関係が一般に作られにくく幼稚園・学校・職場などで孤立しやすくなる。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴

他者と仲良くなれる機会や友達になれそうな状況があっても、自ら誰かと特別に親しい人間関係を作りたいとか、孤立している孤独な状況がつらいとかいった思いそのものが殆どないので、『友達関係・交友関係・社会的関係』をほとんど築けないままに人生の発達段階を過ごしていくことが多くなる。乳幼児期にも、おもちゃや絵本などで黙々とひとり遊びをしていることが多く、友達の輪の中に自ら入っていくという行動も見られない。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 09:05 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:受動型の特徴

アスペルガー障害の受動型は自分から他者に話しかけたり関わったりしないということであり、積極奇異型と比較すると『対人関係の消極性』が目立っている。他者に対する興味や会話への好奇心はあり、向こうから誘われたり話しかけられれば嬉しそうに応じることもあるのだが、自分から積極的・主体的に『交遊・親密さ』を求めて関わっていくことが少ないのである。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型

受動型のアスペルガー障害は、対人関係やコミュニケーションにおける『受け身(受動性)・消極性』が目立つタイプであり、アスペルガー障害が他者(外部)に対する興味・反応が乏しく、自分の内的世界に閉じこもる自閉症スペクトラムの一部であることと関係している部分が多い。知的障害がないアスペルガー障害では、受動型でも平均以上の知能指数や記憶力を示すことがあり、特に自分が興味関心を抱けた特定分野に関して特別に優れた暗記力・成績を発揮したりもする。

自分一人で興味関心のあることや趣味・娯楽に熱中して楽しむことが多く、向こうから誘われなければ自分から積極的・主体的に『交友関係・親密さ』を求めることがほとんどないという点では、『自閉症スペクトラム的』であると同時に『回避性パーソナリティー障害的』でもあると言えるかもしれない。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 09:01 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型の特徴]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の3つのタイプ:積極奇異型の特徴

イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)は、アスペルガー障害(Asperger Disorders)を以下の3つのタイプに分類している。アスペルガー障害全般に共通する特徴として、積極的でも消極的(受動的)でも『対人関係の不器用さ・トラブル』が目立つということがあり、『双方向的・相互的なコミュニケーションの苦手さ(不自然な身体の動き・表情・堅苦しさ・大げさな感じなど)』もある。

1.積極奇異型

2.受動型

3.孤立型

積極奇異型のアスペルガー障害は、物事に対する興味関心が強く、新たな出来事への好奇心も持っているので、『積極的だが奇妙な印象を与える行動』が特徴となる。アスペルガー障害の中では比較的多い典型的なタイプの一つであり、『相手の都合・感情・事情』などに配慮することなく、一方的に捲し立てるようにしゃべったり、TPOにふさわしくない常識はずれな言動(相手の気にしていることに対するストレートな発言など)をしたりするので、対人トラブルが多くなる。

基本的に節度なく饒舌に良くしゃべるタイプだが、相手の気持ちを考えた言動をしづらく、理屈っぽい知識自慢や批判めいた発言を繰り返したりするので『相互的なコミュニケーション(気軽な楽しい雑談・相手の話を聴きながらの対応)』が成り立たなかったり、話しているうちに相手を怒らせてしまうという問題が起こりやすい。

自分の興味関心のあることばかりを一方的に延々と話し続けたり、相手の話そうとしている内容には完全に無関心で反応がなかったりする(共感・同意・話を広げるなどの反応がない)ので、相手側にコミュニケーションする満足・楽しさを感じてもらうことが難しいのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 08:59 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

[ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性]

ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性

L.ウイングが、アスペルガー障害を含む自閉症スペクトラム(自閉症の連続体)の中核症状として定義したのが『ウイングの3つ組』である。ウイングの3つ組とは、『対人関係の障害(社会性の障害)・コミュニケーションの障害(言語機能の発達障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動と興味の偏り)』の3つの特徴的な自閉症スペクトラムの問題のことである。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

アスペルガー障害にありがちな誤解・偏見として、『人間的な情緒・感情がまったくない』や『人間の個別的な特徴を理解することができない』があるが、実際にはアスペルガー障害の子供も親への愛着を形成しており、親と離れていると寂しさや孤独感(ホームシック)を訴えることはあるし、動物好きで熱心にペットの遊び相手や世話をしたりすることも少なくない。客観的な人間観察をすることでその相手がどのような特徴を持っているかを正確に分析することもできることがあり、人間個人のさまざまな特徴や傾向について全く理解できないというわけではない。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 16:01 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

1943年に、オーストリア・ハンガリー帝国生まれのアメリカの精神科医レオ・カナー(Leo Kanner,1894-1981)が、社会性(対人関係)やコミュニケーション(言語能力)が強く障害されて社会生活が困難になる『カナー型自閉症(知的障害を伴う低機能自閉症)』について論文で発表している。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

翌1944年、ハンス・アスペルガーは現在のアスペルガー障害に該当する発達障害の一群のことを『自閉的精神病質』という疾病概念で紹介している。自閉的精神病質の特徴は『共感能力の欠如(人の気持ちや態度が分からない)・友人関係を作る能力の欠如・一方的に話し続ける会話(心の理論の障害)・特定の興味関心への極めて強い集中(固執)・ぎこちない動作』などであった。レオ・カナーの自閉症と比較すると、自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)には『知的障害・言語障害(言語発達の遅れ)がない』という違いが見られた。

自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)の症例について書かれたH.アスペルガーの小児精神医学の論文(1944年)は長きにわたって多くの人々に知られることはなかったが、イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)が1981年に、H.アスペルガーのドイツ語で書かれた論文の内容を英語圏に翻訳して紹介したことから英米の研究者・人々にも広く知られるようになっていった。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:59 | TrackBack(0) | う:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

フリッツ・Vは、幼児期になると友達と上手く遊べないとか友達と一緒の場に参加できない、他人に興味を示さない、気に入らないと相手を叩く(気に入ると急に抱き着く)、他人との距離感がないなどのアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)に特有の『社会性(対人関係)の障害』が目立ってきたのである。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

知能が高くて言語能力・計算能力(数字の概念)の発達も早かったのに、『他者との関係性・距離感を踏まえた適切なコミュニケーション』ができず『相手がどう感じているか何を考えているかを推測して対応する能力(心の理論と呼ばれる共感と推測の能力)』も著しく低かった。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:57 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)は、1944年にアスペルガー障害(アスペルガー症候群,Asperger disorder)について発表した。アスペルガー障害発見のきっかけになったのは、ドイツがオーストリア侵攻をして第二次世界大戦が始まろうとする混乱期の1939年に診療した『フリッツ・Vの症例』であった。

第一次世界大戦で敗れてからのドイツとオーストリアは、英仏の戦勝国への賠償金の支払いなどによるインフレと失業で経済が疲弊して、親から捨てられて何の保護や教育、医療も受けられない不遇な子供達が溢れていた。この社会混乱の時期にハンス・アスペルガーは、提唱者である医師のエルヴィン・ラツァールらと共に『クリニック併設のデイセンター(生活支援施設)』の運営に参加していたのである。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 15:56 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4

精神分析の『自由連想・夢分析』といった技法では、その『初期の欲動』が何だったのかを明らかにし、その欲動・願望の存在を本人に受け容れさせることで神経症の症状が和らいでいく(欲動を無理に症状に置き換える必要がなくなっていく)のである。精神分析の『欲動(drive)』には、さまざまな形態・表象・内容に変形することのできる特徴とその変形の心的プロセスがある。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

フロイトが創始した精神分析というのは『欲動の変形の心的プロセスの意識化・言語化』を治療機序にしているといえるだろう。精神分析というのは精神症状・夢・空想(白昼夢)の意味を読み取る臨床的な理論・技法であり、その治療機序(治療メカニズム)は『抑圧・変形されている初期の欲動や願望』を明確化していき、本人が道徳的・常識的に認めたくなかった初期の欲動の存在を受け容れさせることである。道徳的・社会的に禁圧されていた欲動・願望を自分が持っていたと認めることによって、症状が治癒する可能性が高まるというのが精神分析の基本的な考え方になっている。

精神分析的な診断的面接では自我の欲動のコントロール機能を判定していくが、道徳的・社会的に認められない欲望の満足を空想する時に、どのような『罪悪感・羞恥心・道徳的批判・周囲からの非難などに対する葛藤』が体験されているかを丁寧に傾聴していくことになる。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:45 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

精神分析(力動心理学)を前提とする力動精神医学の診断的面接では、患者(クライエント)の自我による『欲動コントロールのレベル』について判定していく。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2

精神分析(力動心理学)では、『欲求(want)』を心理的・意思的に欲するものとし、『欲動(drive)』をより生理的・本能的なもの、『欲望(desire)』をジャック・ラカンのいう他者の欲望を欲望するもの(他者から求められたいと思うもの)として区別している。

欲動コントロールのレベルは、自我が欲動を満足させる行為をどのくらい延長できるか、フラストレーション(欲求不満)にどこまで耐えられるかということである。自我の健康度が高いほど、欲動の制御をより柔軟に行うことができるようになり、現実的な条件やハードルに応じて調節することもできる。自我による欲動のコントロールのレベルは『随意的・自律的なコントロールの程度』によって規定され、自我機能の全体的評価の一部を形成している。

続きを読む
posted by ESDV Words Labo at 00:43 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする