2017年09月01日

[現代日本における非婚化の要因2:結婚のコスト増加と結婚の夢・希望のイメージの弱さ]

現代日本における非婚化の要因2:結婚のコスト増加と結婚の夢・希望のイメージの弱さ

結婚率と経済力が男性で相関しやすく、女性でそれほど経済力が重要ではないのは、男女の平均所得の格差もあるが、男性によっては自分が納得できる性的魅力と優しい世話・ケア(家事育児の役割遂行)があれば、妻となる女性はそんなに仕事で頑張らなくても良いとする価値観の人が今でも少なからずいるからである。

現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル

逆に、高学歴で大企業・官庁・専門職などに就職してキャリアアップしてきたような女性だと、『男性は仕事・女性は家事育児(女性はそんなに外で稼いでこなくて良い)』とする伝統的ジェンダーの価値観(妻子の扶養の役割意識)を持つ男性は、自分の自己実現や地位上昇(所得上昇)を妨害する存在と感じられて、結婚相手としては好ましくないと思われる可能性もある。

女性の社会進出が進み、キャリア志向で一生懸命に働く人が増えるにつれて、『結婚して出産すれば今までと同じようには仕事ができなくなるという慣習・現実(相手の仕事と収入に大幅に依存することの不安感・不満感)』が、高学歴で正規雇用の仕事に励んできた女性が結婚を躊躇する一因になっている。

現代で未婚率が上昇している原因の一つとして、『パラサイト・シングル』と呼ばれる実家暮らし・低所得の未婚の男女の比率が高まったことがあるが、これは新卒採用で大手のキャリアコースに乗れなかった平均所得前後を稼げる(数十万円以上の高額ボーナスを支給される)当てのない男女にとって、『結婚のコスト上昇』となり結婚の動機づけを下げているのである。

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[現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル]

現代日本における非婚化の要因1:若者の平均所得低下・非正規化とパラサイト・シングル

現代で20〜30代前半の男女の結婚が過去に比べて大きく減少している要因の一つが、『出会いがない+異性の選り好み(高望み)』『経済的に結婚が難しい+結婚のコスト上昇』である。かつては『一人口は食えぬが二人口は食える』という言い回しがあったように、男一人(女一人)で暮らすよりも男女二人が一緒に暮らした方が生活費が安くなるという考え方があったが、現在ではその『結婚による生活費削減』の考え方は、未婚者のかなりの割合の人に通用しなくなっている。

男性の未婚者には年収200〜300万以下の非正規雇用(派遣社員・臨時職員・期間社員・アルバイトなど)で働く相対的な低所得者が多く、女性の未婚者も男性より年収が低い非正規雇用が多い。しかし、現代の未婚者は低所得でも『実家暮らし・両親との関係も悪くない(中には親子関係が険悪な家もあるにせよ)』の割合が高くなっているため、自立的な結婚をして実家をでなければそれなりの生活水準が成り立つというケースが増えているのである。

結婚による生活費削減という結婚を後押しした要因が、現代では社会学者の山田昌弘(やまだまさひろ)が著書『パラサイト・シングルの時代』で指摘した『実家暮らしの低賃金の独身男女の増加(家賃・食費・家事コストなどの一定以上の部分を実家に負担して貰える独身男女)』によって、通用しづらくなっているというわけである。

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2017年08月23日

[男性・女性にとっての結婚のメリットとデメリット(コスト):なぜ現代人はなかなか結婚しないのか?]

男性・女性にとっての結婚のメリットとデメリット(コスト):なぜ現代人はなかなか結婚しないのか?

男性と女性に分けて『結婚のメリット・デメリット(コスト)』をまとめてみると、以下のような感じになってきます。これらのメリット・デメリット(コスト)には、古典的なジェンダーによる性別役割分担に依拠するものも含まれていますが、現代では『フルタイムの共働き世帯』が増えることによって、ジェンダーに依拠しない夫婦の平等な役割分担や女性の家計収入への貢献度も上がってきています。

結婚の一般的なメリットとデメリット

男性にとっての結婚のメリット

○妻の家事労働や身の回りの世話、家計の節約などのメリット。

○性的・恋愛的な満足、他人から承認される満足。特に美しくて魅力的な(自分が異性として好きになった)妻である場合。

○夫・父・一家の主としてのアイデンティティー獲得。権力・優越感・支配欲・父親性などによる満足。特に従順な妻や可愛い子供がいる場合。

○結婚による生活・関係の安定に基づく精神的な安定・安らぎ。一人前と思われる社会的信用・世間体の獲得。特に恋愛市場でモテない男性、恋愛のしづらい中年以上(30〜40代以上)の年齢を重ねた男性には有利となる。

○子供を持つことによる満足・安心。子育ての楽しみ、老後の相対的な安心感、財産を相続させられる子供など。

○結婚による人間関係・交友関係の広がり。親戚が増えたり学校・地域の知り合いが増えたりして、独身よりも社交的に社会参加する場が増えてくる。

○妻が地位・権威的職業・高所得・財産を持っている場合には、結婚による社会経済階層の上昇もある。

○結婚・子育て世帯に対する政治的な優遇策。税の控除・社会保険の充実・社会保障・住宅優遇・会社によっては家族手当ての賃金増加など。

○性別役割意識の満足度。特に男らしさ・父親らしさを満たしたい人にはメリットになり得る。

○大きな家に引っ越したり、家事を任せたりするなど、結婚によって空間・時間の自由度(相手には負担だが)が上がることもある。

男性にとっての結婚のデメリット

○妻の家事労働への不満、妻が節約できないなど家計負担の増大。

○妻以外の女性と恋愛・性行為ができない不自由、特に妻による性的満足を得られない場合には不満が大きくなる。

○将来のより良い相手との恋愛可能性を失ってしまう。特にモテる男性には不利になるが、誰しも年齢を重ねると純粋に良いと感じる相手との恋愛は難しくなっていく。離婚の難しさと離婚による慰謝料・養育費などのコスト。

○夫・父・一家の主としての自己アイデンティティーを得る代わりに、家族を扶養したり守ったりする義務と責任が重くなりプレッシャーがかかる。

○子育てに必要な労力と経済的負担、子供に一日の多くを縛られてしまうデメリット。

○結婚によって生じる親戚づきあいや地域行事・学校行事への参加の煩わしさ。社交性やボランティア意識の弱い人にとっては特にコストになる。

○妻の地位の低さ・職業や収入がないことによる社会経済階層の低下。

○独身者(単身世帯)に対する優遇政策や社会保障強化。

○男女平等意識・男性(父親)の権威否定に対する不満。特に働いてもあまり感謝しない妻、給与額への不満が多く(自分もパートで働いているからと)何の世話もしてくれない妻などへの不満。

○結婚によって失う自由の程度。

○家事労働を代替してくれる安価な製品・サービスの増加。

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[結婚の一般的なメリットとデメリット]

結婚の一般的なメリットとデメリット

結婚が一定の年齢でみんながするという『義務的な結婚』であれば『結婚のメリット・デメリット』を深刻に考える必要はあまりなかったのですが、現代の未婚化・晩婚化の社会では、結婚は自分が本当にしたい(してもよい)と思った相手としたほうがいいという『選択的な結婚』になっているので、余計に『結婚のメリット・デメリット』を考えすぎて躊躇してしまう人が増えたのです。

現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大

一般的な『結婚のメリット』としては、以下のようなものがあると考えることができます。必ずこれらの結婚のメリットを得られるわけではないですが、夫婦がお互いに努力して経済的に破綻せず、性格や生き方の相性も良ければ得やすいものではあります。

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[現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大]

現代日本ではなぜ非婚化(未婚化)・少子化が進むのか?:義務から選択に変わった結婚と格差拡大

現代の日本をはじめとする先進国は『少子化・未婚化(非婚化)・晩婚化』が進んでいて、『人口減少・少子高齢化(支え手の減る社会保障コスト増大)・経済縮小(労働力不足・消費減退)』といった社会問題の原因にもなっています。少子化が起こる原因もまた、日本の適齢期の若者がなかなか結婚しなくなったことですが、30代以下の若者を中心になぜ結婚しない人や結婚できない人が増えたのでしょうか。

1970年代くらいまでの近代日本は『皆婚社会』で、女性は遅くとも30歳くらいまでには結婚しないと働き口がなくて人生設計・経済生活が成り立たなくなる恐れがあったので、大多数の人は恋愛結婚ができなければお見合い結婚をしてでも一定の年齢までに結婚することが普通でした。

極論すれば、1980年代くらいまでは結婚することが人として当たり前(正常)であり、結婚しないことは何か特別な問題・欠陥があるのではないかと勘繰られる偏見が強かったので、そういった偏見のある世間体に負けて消極的に結婚するという人も多かったのです。

経済成長期で一億総中流社会に近づいていたことも『皆婚の傾向(正規雇用の男性が妻子を扶養する形の結婚)』を後押ししていましたが、2000年代と比べると『結婚後に結婚生活・出産育児が経済的に成り立つか(男性がきちんと仕事をして安定した収入を得ているか)』に重点が置かれていて、今のような『異性としての魅力・容姿での選り好み』があまり無かったことも皆婚に影響しています。

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2017年08月21日

[M.H.デイビスの多次元共感測定尺度]

M.H.デイビスの多次元共感測定尺度

『情動的共感性尺度』の項目では、共感性に他者の気持ちを推測する『認知的側面』と他者の気持ちを擬似体験する『情動的側面』の二つがあることを説明したが、今までの研究では情動的側面が重視されることが多かった。共感性の認知的側面に注目した心理測定尺度(心理テスト)の研究も増えてきているが、その原点としてM.H.デイビス(M.H.Davis)『多次元共感測定尺度(1983)』がある。

M.H.デイビス(M.H.Davis)の『多次元共感測定尺度』は、共感性を四次元(四つの要素)で測定する尺度である。ここでいう共感性の四次元(四つの要素)とは、認知的要素の『視点取得(他者の気持ちの想像・認知)』、情動的要素の『共感的配慮(不幸な他者に対する同情・関心)』『空想(架空の人物への同一化傾向)』『個人的苦悩(緊急事態における不安・動揺)』のことである。

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[『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』と共有経験・共有不全経験で考える共感性の内容]

『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』と共有経験・共有不全経験で考える共感性の内容

『情動的共感性尺度』と合わせて実施されることの多い、過去の共感経験に基づく共感性のタイプを測定するための尺度に、角田豊(1991)の『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』もある。角田は共感性の概念について、他者理解を前提として感情的・認知的なアプローチを統合したものと考え、共感性・共感経験を『能動的または想像的に他者の立場に自分を置くことで、自分とは異なる存在である他者の感情を体験すること』と定義している。

他者理解につながっていく共感が成立するためには、他者と感情を分かち合う『共有機能』と、自他の独立的な個別性の認識がなされる『分離機能』が統合されなければならないとした。

角田の『共感経験尺度・改訂版(ESSR)』『共有経験』『共有不全経験』の二つの下位尺度から構成されているが、共有不全経験というのは他者の感情を感じ取れなかった過去の経験のことで、人は共有不全経験によって自己と他者の独立した個別性の認識を生じることにもなる。

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[共感性(empathy)の認知的側面と情動的側面:『情動的共感性尺度』]

共感性(empathy)の認知的側面と情動的側面:『情動的共感性尺度』

共感性(empathy)とは他者の感情や思考を推測したり感情移入して汲み取ることで、その他者と類似した情動を体験する性質・特性のことである。

他者の言動や感情、生活、人間関係の共感的な理解はカール・ロジャーズのクライエント中心療法でも重視されているが、臨床心理学やカウンセリングではその場の相手の不遇・不幸を心配して思いやるだけの『同情(sympathy)』と相手の立場に立って相手と類似の感情を感じ取って理解しようとする『共感(empathy)』を定義的に区別している。

共感性は他者の立場・視点に立ったつもりで感情・思考・行動を理解しようとする『認知的側面(認知的共感性)』と、他者の感情(情動)の状態を知覚して自分自身も類似の感情を擬似体験する『情動的側面(情動的共感性)』に分けることができる。

ストットランド(1969)は共感性の情動的側面について、『他人が情動状態を経験しているか、または経験しようとしていると知覚したために、観察者に生じた類似の情動的な反応』と定義している。

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2017年08月12日

[心理テストの全体尺度と下位尺度]

心理テストの全体尺度と下位尺度

心理測定尺度(心理テスト)で測定しようとする『概念・特性』が、複数の側面(要素)から構成されていることも多い。その場合には、『全体尺度』と全体尺度の概念を構成する複数の側面(要素)である『下位尺度』に分けてから、心理測定尺度を作成していくことになる。

下位尺度の側面ごとに『得点』を算出して解釈していくが、下位尺度の各点数を合計するかどうかは、それぞれの心理測定尺度(心理テスト)によって異なってくる。心理測定尺度(心理テスト)によって、下位尺度をそれぞれ独立したものと見なして点数を合計しないこともあるし、下位尺度の点数を合計することによって全体尺度の概念を判定することもあるのである。

例えば、ヒルが作成した『対人志向性尺度(親和動機測定尺度,1987)』には、『情緒的支持(Emotional support)・ポジティブな刺激(Positive stimulation)・社会的比較(Social comparison)・注目(Attention)』の4つの下位尺度があるが、これらの下位尺度は独立したものと見なされているため、4つの下位尺度の点数を合計するようなことはしないのである。

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[ヘイザンとシェイバーの『アダルト・アタッチメント尺度』:愛着形成の3タイプ]

ヘイザンとシェイバーの『アダルト・アタッチメント尺度』:愛着形成の3タイプ

精神科医・精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、人間の精神発達過程や人間関係の傾向を説明する『愛着理論(attachment theory)』を提唱した。愛着理論でいう『愛着(attachment)』とは、乳幼児期に特定の近しい他者に対して形成される『情緒的な深い結びつき』のことである。

愛着が形成された他者と一緒にいると『安心感・安全感・信頼感・自己肯定感』などをはじめとする『居心地の良さ』を感じることができる。児童期・思春期・青年期以降にも人は親友・恋人・配偶者など親密な相手に対して愛着を形成することが多く、そういった相手と一緒にいる時には安心して居心地が良くなり、反対に決定的に別れてしまうと(二度と会えないような関係破綻になると)苦痛や孤独、寂しさ、怒りに悩まされることになりやすい。対象喪失の悲哀感にも、愛着の破綻や喪失が関係している。

1980年代前半までの愛着研究は、主に乳幼児期の母子関係に関わるものであり、乳幼児期の愛着以外の愛着を心理学的に測定・評価する心理テストが開発されていなかった。その後、1985年にメインらが成人の愛着を測定するための『半構造化面接法(成人愛着面接法)』を開発して発達心理学の分野で使用され始めた。1987年には、ヘイザンシェイバーが、成人の愛着測定のための質問紙法の心理テストを開発している。

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