2016年09月07日

[DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)]

DSM-W-TRの多軸診断1:機能的障害と器質的障害の除外診断(鑑別診断)

精神疾患と身体疾患の診断には、身体疾患が基礎疾患になっているという『因果関係』が成り立つ場合もあれば成り立たない場合もある。DSMの診断基準では、精神疾患と身体疾患の両者に因果関係が成り立たない場合でも、第V軸の身体疾患として独立的に診断名が記載されることになる。

パニック発作(恐慌発作)と自律神経症状を伴うパニック障害の診断が第T軸で下された時には、第三軸においてパニック発作や自律神経系の異常を引き起こしている『身体疾患(心臓疾患・中枢神経系の神経変性疾患など)』がないかの内科的な検査・診察を追加で行うことになる。これを『純粋な精神疾患』から『身体疾患を基礎に持つ副次的な精神症状』を除外するという意味で『除外診断(negative diagnosis)』と呼んでいる。

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

DSM(マニュアル診断)を前提とする精神医学における『除外診断』では、精神疾患から精神症状を引き起こす身体疾患を除外していくわけだが、例えばパニック障害によって心因性のパニック発作が起きても、それは心臓の異常を伴うような『器質的障害(organic disorder)』ではなく、心因性の自律神経系の異常という『機能的障害(functional disorder)』になるわけである。

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[DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』]

DSM-5の『ディメンション診断(多元診断)』とDSM-W-TR以前の『多軸診断』

2013年出版の『DSM-5』では精神疾患(精神症状)やパーソナリティー障害(人格障害)の重症度をパーセンタイル(%)で段階的に表示する『ディメンション診断(多元診断)』が導入された。

DSM-W以前は、精神障害・人格障害・身体疾患の一覧表を呈示する『カテゴリー診断学』を前提とした網羅的かつ診断的な『多軸診断』が採用されていた。だが、DSM-5の多元診断(ディメンション診断)では、自閉症スペクトラム・双極性スペクトラムに代表される各疾患単位や各パーソナリティ障害で健常・軽症・重症の細かな段階がある『スペクトラム(連続体)』が想定されているのである。

各種の精神疾患・パーソナリティ障害・発達障害の重症度(レベル)を『パーセンタイル表示(%表示)』で表現することによって、個別の症状の特性や重症度に対する精神科医(専門家)の共通理解を促進することができるメリットがある。認知行動療法や論理療法では昔から、思考・認知の記録表における『自己評価方法(気分が最高の時を100%、最悪の時を0%にして評価するなど)』でパーセンタイル表示が採用されてきた経緯もあり、専門家にとっては応用の効きやすさのある方式でもある。

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2016年08月21日

[統合失調症の幻覚・幻聴と双極性障害の躁状態・うつ状態:周囲から精神科受診を勧められる症状・問題]

統合失調症の幻覚・幻聴と双極性障害の躁状態・うつ状態:周囲から精神科受診を勧められる症状・問題

精神医学の診断的面接では、ここまで書いてきたクライエント本人の希望によって自ら治療を求めて受診するケースだけではなくて、家族や上司、恋人・友人などがいつもと違う様子や異常な言動・生活状況に気づいて受診を勧めたり半ば強制したりするケースもある。周囲の人がクライエントの異常や問題に気づいて受診してくるケースで最も多いのは、本人の言語能力がなかったり低かったりする『乳幼児・児童・思春期前後の子供』である。

社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科でクライエントが訴える主訴

青年期・成人期以降において『周囲の勧め・強制』で受診してくることが多い精神疾患としては、『統合失調症・双極性障害(躁うつ病)・てんかん・アルコール依存症・薬物依存症・各種のパーソナリティー障害・症状精神病・老年期の認知症』などがある。

統合失調症の可能性が疑われるクライエントでは、家族や友人が接近すると顔を背けたり自分を陥れようとしているという被害妄想を訴えたりする。誰かにいつも監視されているとか、盗聴器・隠しカメラが仕掛けられているとかいった被害妄想じみた訴えを、頻繁に家族や友人にすることで精神科・心療内科の受診を勧められて来るケースもある。自分のことを非難したりバカにしたり責めたりする声が聞こえるという『幻聴の訴え』を周囲の人にしていることも多い。

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[社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科で患者(クライエント)が訴える主訴]

社交不安障害・強迫性障害・うつ病:精神科で患者(クライエント)が訴える主訴

不安障害の一種としてかつて対人恐怖症と呼ばれた『社交不安障害(社会不安障害)』があるが、これは人前に出たり、人前で何かを話したり行ったりする時に『過剰な緊張・不安・恐怖』を感じる精神疾患である。

社交不安障害では『過剰な緊張・不安・恐怖』を感じることによって、手足が振るえたり顔が紅潮して赤面したり、大量の冷や汗をかいたり、声が振るえてどもったりするので、更に対人緊張・対人不安が強くなっていく。社交不安障害が重症化すると人前で何もできなくなり、強い不安からひきこもりのようになって『他者・外部社会との接触』を拒むような状態になってしまう。

精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴

重症化した社交不安障害(社会不安障害)は、妄想性障害や妄想性パーソナリティー障害、統合失調型とオーバーラップ(重複)することも多く、ある種の被害妄想のような妄想的確信を強めていくこともある。

例えば、別に見られていないのに周囲の視線が絶えず気になる、誰かからいつも見られている監視されている、自分の顔や外見が醜いという醜形恐怖障害、自分から変な臭いが出ているという自己臭恐怖(体臭恐怖)、自分の視線が他人を不快にさせて傷つけているという視線恐怖などを訴え始めるクライエントもいる。精神病かどうかの鑑別診断では、『現実と妄想(空想)の区別』をするだけの現実検討能力(現実吟味能力)が残っているかどうかが問題になってくる。

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[精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴]

精神医学の診断的面接:クライエントの受診動機とラポール形成の傾聴

精神医学の診断的面接では、最初に『クライエントの受診動機の見極め』『質問を介したラポール(相互的信頼感)の構築』から行っていくことになる。クライエントの受診動機では、自分自身が希望して診療に訪れているのか、それとも家族や上司などに言われてきたのか、嫌々家族に連れられてきているのかの見極めが重要になる。

自分で望んでやって来た前者であれば、一般に診療の動機づけが高くなり積極的に治療に参加してくれるが、後者の場合には『本人が自分の現状の問題や病気の存在を認めて前向きに治療に取り組もうとする姿勢』ができあがるまでは治療が停滞しやすい。

記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解

診断的面接では、クライエントの『表情・態度・印象・コミュニケーションの取り方(意志・感情の疎通性)』を丁寧に観察して、受診の動機づけの事情を理解しながらラポール(相互的な信頼感)を形成していく。クライエントの症状・問題の観察と記述を行う精神科医(心理臨床家)の態度は大きく分けて、『クライエントと心理的距離を置く客観的観察』『クライエントの主観に共感したり感情移入したりする了解的理解』の二つに分けられる。

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[記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解]

記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解

精神分析と重なる分野の力動精神医学(力動心理学)では、クライエントの内的世界にある複数の心理機能(心的装置)の力が相互にせめぎ合っているという考え方を通して、現在のクライエントの精神病理や心理状態のプロセスを理解していくことになる。

精神力動的診断では、クライエント(患者)はマニュアル診断を受ける受動的な対象ではなく、『生物学的・心理的・社会的に統合されたホリスティック(全的)な存在』として定義されており、医師や心理臨床家(精神分析家)はクライエントの人生のプロセスや内面世界の力の葛藤をできるだけ共感的に理解しようと努めるのである。実際の精神医学の診察場面(面接場面)では、どちらか一方だけの診断方法が採用されるのではなく、記述的診断と精神力動的診断が組み合わされて適用されることが多い。

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神疾患・精神障害の診断を実施する主体は精神科医であることが多く、心理臨床家(臨床心理士)は心理テストの結果を分析して参考情報を呈示するなどの補助的役割になることが多い。クライエント(患者)の内面世界や人生のプロセスを、その人の立場に立って全人的に理解しようとする精神力動的診断の手法は、臨床心理学の心理アセスメント(心理検査+調査的面接)とも重なり合う部分が大きいという特徴がある。

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[記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論]

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神医学的な診断方法は大きく分けて、『記述的診断』『精神力動的診断』の二つがある。記述的診断とは、身体疾患を診断・治療する身体医学を参照した『一般医学的な診断のフレームワーク』であり、観察可能な症状を中心にして患者の精神疾患を分類・診断していく。

エミール・クレペリンに始まる『記述精神医学』の診断方法でもある記述的診断は、まず患者が発症している観察可能な症状を特定する。その症状の原因が何であるのかの合理的な推測に基づく精神疾患の見立てをして、精神病理学(異常心理学)の精神疾患の分類に従った診断を行い、治療方針を決めていくのである。

記述的診断の基本は、クライエントの症状を詳しく正確に観察して記述すること、記述された症状を一定のルールや基準に従って分類することであり、『観察と記述・疾病分類』に依拠して診断を行っていく。

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2016年08月12日

[EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化]

EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化

20世紀の冷戦体制の一翼を担ったソ連・東欧の『共産主義・社会主義の政治体制』は、民衆による信頼や合意を喪失して民衆を抑圧し苦しめたという意味では、『全体主義・独裁体制・先制主義(デスポティズム)の恐怖政治』と同類のものになってしまった。共産主義革命によって、資本主義の支配や先制的支配から解放されて自由・平等になったはずの人民が『恐怖の情念・自由の抑圧・飢えの苦しみ・人間不信(密告社会)』を味わわされる羽目になったのである。

ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会

アメリカとソ連が対峙する冷戦体制が崩壊して、一時期は世界で唯一の超大国(スーパーパワー)となったアメリカが世界各地に影響力と軍事拠点を拡大して反米政権・石油資源国に対する内政干渉を繰り返していった。

だが、アメリカは『湾岸戦争・米国同時多発テロ(9.11)・アフガン戦争・イラク戦争・アラブの春(リビアのカダフィ独裁政権打倒)・シリア戦争』などを経験していく中で、『中国の大国化・ロシアとの対立』と合わせて超大国としての影響力を相対的に落としており、アメリカとEU諸国は『テロとの戦い・イスラーム圏との不協和音(イスラム過激派の反米的な思想・攻撃)』に疲弊してきている現状がある。

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[ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会]

ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会

ソ連崩壊の決定的な要因は、アメリカに対抗するための終わりなき軍拡による財政赤字の累積と計画経済の需給計算の失敗(軍事に予算が取られ思っていたよりも食料が十分に生産できなくなったこと)によって、国民の生活の基盤にある『食料の配給体制』が機能不全に陥ったことである。

ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家

国民の食料の需要に対して計画経済の集団農場で生産される食料の供給が圧倒的に不足したことであり、ソ連末期には配給所で一日行列に並んで待ってもパン一つ、じゃがいも一個のような配給しか受けられなくなり、その必然の結果として、飢えと貧困による国民の反体制感情は極めて強くなっていった。配給所の行列の長さ、そこで配給される食糧の乏しさというのが、旧ソ連の管理的な計画経済体制の失敗の現れであり、マルクス主義を盾にして『無謬(間違うことなどない)』とされていたエリート官僚の計画経済運営の大きな間違いの具現化でもあった。

共産主義・社会主義はマルクス主義の唯物論(史的唯物論)の影響を受けいているため、人民を理想の共産主義社会を実現するために共産党のエリート官僚の指令・命令にただ従って働くだけの『モノ・事物(システムを構成する要素)』と見なしやすく、『人間の思想信条・表現・内面の自由』が不当に否定されてしまうのである。

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[ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家]

ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家

共産党やエリート官僚が『思想的に無謬』であるという前提が置かれたことで、共産党やエリート官僚の指令に逆らう者は『国家反逆罪の犯罪者』『判断能力のない精神障害者』『西側(敵国)のスパイ』とされてしまうことになり、監獄・精神病院(閉鎖病棟)・労働収容所などに閉じ込められる『人権抑圧の収容所国家の構造』ができてしまった。

マルクス主義の最大の欠陥は、国家の構成要素である国民(民衆)までも『唯物論の対象』にしてしまってその欲望や内面を無視したことであり、共産党独裁の圧政や使役によって『人間的自由の空間の否定』をしたことであろう。

『私的所有権の否定』『生産手段・産業の国有化』によって、人間さえも自己所有権を否定された国家所有の唯物論的な対象にされてしまう。人間も労働力やその再生産の単位として『共産党独裁体制の支配と管理』に直接的に晒されることとなり、最低限度の生活保障以外の人間的な自由・権利・表現の多くを剥奪されてしまったのである。

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