2016年11月15日

[自我の支配・達成(mastery-competence)と自己アイデンティティの確立・拡散:1]

自我の支配・達成(mastery-competence)と自己アイデンティティの確立・拡散:1

青年期の発達課題は『自己アイデンティティの確立』であり、その確立に失敗すれば『自己アイデンティティの拡散による不適応・境界性パーソナリティー障害』などの問題が起こってくる。

自己アイデンティティの確立には『社会的選択としての職業選択・異性選択(就職・結婚)』が関係してくることが多いが、社会適応して経済生活と精神状態の安定を得なければ通常は自己アイデンティティが拡散しやすくなってしまうのである。

一般的な社会適応に絡んでくる職業選択・異性選択(就職・結婚)を順調にやり遂げていくための自我機能(自我の能力)のことを、『自我の支配・達成(mastery-competence)』と呼んでいる。この自我の支配・達成は、DSM-W-TRにおける社会適応の機能全体を0〜100点で相対評価する『GAF(Global Assessment of Functioning,全体的評定尺度)』によって測定されることもある。

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2016年10月18日

[自我の統合機能と自己アイデンティティー:境界性パーソナリティー障害の問題]

自我の統合機能と自己アイデンティティー:境界性パーソナリティー障害の問題

健全なパーソナリティー(人格構造)は『一貫性・連続性・自己アイデンティティ』が保たれている。このパーソナリティーの一貫性や連続性を維持して、他者との継続的なコミュニケーション(関係性)や安定した職業生活・社会生活を可能にするのが、『自我の統合機能』と呼ばれるものである。

精神医学の心理面接・精神療法(カウンセリング)においても、自我の統合機能が高い患者(クライエント)の方が、自己規定や会話内容の一貫性が保たれているので『円滑なコミュニケーション』が成り立ちやすく、精神療法の効果も期待しやすくなる。逆に心理面接で語られる話の内容、人間関係、時系列、感情・情緒に秩序だった一貫性や内容のまとまりがなくて、決められた時間の面接の中で『矛盾した考え・感情・価値観』を語っているような場合には、その患者(クライエント)の自我の統合機能は低下しているということになる。

自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論

自我の統合機能の測定・評価の方法としては、そのクライエントが過去・現在・未来における人格(自意識)や感情、記憶の連続性・一貫性を保っているかどうかの『自己アイデンティティーの確立・拡散の度合い』を見ていく方法がある。自己アイデンティティーの安定した確立は『会社・職場・人間関係に対する適応度』とも相関しており、それぞれの環境や関係において自分の存在・役割が認められていて『一貫性のある自己規定』が成り立っているかを見ていくことになる。

自我の統合機能が高い人は、安定した自己アイデンティティーが確立している人でもあるが、それは自分の内面に安定した自分らしさや自分の果たすべき役割があり、周囲の環境や人間関係にもリラックスして前向きに適応できている状況と対応しているのである。パーソナリティーや自意識の連続性・一貫性・統合性が極端に障害されて低下すると、『解離性障害(解離性遁走・解離性健忘・解離性同一性障害・離人症)』が発症することもある。

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[自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論]

自我の弾力性とパーソナリティー障害(人格障害)の影響2:自我機能論

強迫観念・強迫行為に囚われる強迫性障害、各種のパーソナリティー障害によって、この『自我の弾力性』が障害されてしまうことがある。強迫性障害や強迫性パーソナリティー障害では、馬鹿げた観念や不合理な行動に過剰に囚われてしまうことで、思考・行動パターンががちがちに一貫して固定されて(毎日儀式的・規則的な行動しかできなくなって退行的な遊びや娯楽をするどころではなくなり)、自我の弾力性を失ってしまうケースが多い。

自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論

妄想性パーソナリティー障害や統合失調性パーソナリティー障害(シゾイド・パーソナリティー)では、中心的症状としてある『被害妄想』が邪魔をして、退行による遊びや快感原則による気晴らしを楽しむような気分にはなれず、無防備に退行・快感原則の中に入ってしまうと他者から弱みを握られて脅迫や侵害・干渉を受けるのではないかという猜疑心が強くなりやすい。

回避性パーソナリティー障害の人も、退行的な遊び・楽しみを満喫すると後になって『重い責任・負担』がのしかかってくるのではないかという不安や構えがあるので、自我の弾力性は一般的に低くなりやすい特徴を持っている。

人間の社会生活や精神活動に『不安・緊張・恐怖・葛藤』はつきものであるが、そういった一時的(暫時的)な精神の乱れに遭遇したとしても、自我の弾力性(ARISE)が適切に機能している限りは、自我を楽しませたり休ませたり、想像的な物語の世界を活用したりすることによって『回復・再適応』をすることができるのである。

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[自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論]

自我の弾力性と退行・快感原則による回復1:自我機能論

『自我の弾力性(ARISE:Adaptive Regression in the Service of Ego)』という自我機能は、パーソナリティー(人格構造)の感受性・豊かさ・創造性と関係している。『自我の弾力性』は『自我の硬直性』の対義語であり、自我が特定の自己規定や機能性にがちがちに固定されて硬直しているよりも、シチュエーションや必要性に応じて自我の特徴・機能を弾力的・柔軟に変化させられるほうが、結果的に『環境適応・現実適応』が良くなるということである。

自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準

自我の弾力性というのは、具体的にいうと一時的あるいは部分的に自我防衛機制の『退行(regression)』を起こすことによって、疲れたり緊張したりした自我を休養させて回復させることのできる機能であり、直接的には『子供心に一時的に返って無邪気に楽しめる機能』ということもできるだろう。あくまで一時的あるいは部分的な退行であって、退行して楽しんだり癒されたりした後には現実に戻ってきて再適応ができるということでもある。

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[自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準]

自我の自律性とメンタルヘルス2:パーソナリティーの機能・水準

自我の自律性によって人間は『仕事をする・考える・会話をする・勉強する(読み書きする)・歩く・食べる・眠る・排泄する・性行為をする』などを自然に安定して実行することができるのであり、自我の自立性が大幅に低下したり麻痺してしまうと、通常の日常生活や社会活動を続けることが著しく困難になってしまうのである。

自分の願望・欲求とせめぎ合う『葛藤』があったり、強い『不安・緊張』があったりすると、自我の自律性が障害されて当たり前にできるはずの『日常生活・仕事や勉強・社交や対話・人間関係』などができなくなり、遂には病理的な精神疾患を発症してしまうこともあるということである。

自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準

『葛藤・不安・緊張・恐怖』などが生み出す自我の自律性の障害というのは例えば、仕事や勉強が今まで通りにできなくなる、神経症的な失声・失立、摂食障害(拒食症・過食症)、睡眠障害、書痙(しょけい,字を書く時に手が振るえる)、頻尿、下痢(過敏性腸症候群)、性機能障害などである。不安感や緊張感が高まると、自律神経が乱れて頻尿・下痢になる人は多いし、眠れなくなったり食べられなくなったり(逆に食べ過ぎたり)といった病的な症状も出やすくなる。

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[自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準]

自我の自律性とパーソナリティーの健康度1:パーソナリティーの機能・水準

精神医学の診断的面接や心理アセスメントでは治療方針の適切な選択のために、クライエントの情報や体験談(エピソード)を集めて整理していく。クライエントの心理アセスメントで最も重要な情報の一つとして、『パーソナリティー(人格構造)の機能と水準』があり、このパーソナリティーに関する知識と情報は力動的精神医学(精神分析)の心理評価にもつながっている。

現実適応や対人関係と相関するパーソナリティー(人格構造)の機能水準を測定する際には、精神分析家L.ベラック(L.Bellak)などが開発した『自我機能の評価尺度』が用いられることが多い。自我機能の評価尺度は総合的なものであり、対面式の診断的面接だけではなく、SCT(文章完成法)やロールシャッハテストなどの投影法を含めた『テストバッテリー』を組んで実施していくことになる。

心理テスト(心理検査)にもパーソナリティー検査(人格検査)の区分はあるが、パーソナリティーの機能水準を測定する場合には『パーソナリティーの健康度・適応性・豊かさ』などが主要な問題になってくる。パーソナリティーの健康度や正常性の分かりやすい指標として『自我の自律性(autonomy)』があるが、この自我の自律性によって心理療法(カウンセリング)の効果を高める作業同盟(治療同盟)も結びやすくなる。

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2016年09月19日

[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:2

精神科医(カウンセラー)が患者(クライエント)に対して抱く強い感情である『逆転移』の中には、患者(クライエント)との治療的対話の相互作用と投影同一視によって生じた精神科医(カウンセラー)自身の強烈な感情・記憶・反応パターンが含まれている。

そして、精神科医(カウンセラー)が自分の逆転移を引き起こしたクライエントの言動を深く掘り下げて分析していくことによって、クライエントの内的な葛藤や過去のトラウマの影響、対象関係のパターンをより実際的なものとして共感的に理解することができるようになるのである。

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

心理療法やカウンセリングにとって最も重要なのは『カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの相性』であり、精神分析家・精神科医のM.ストーン(M.Stone)は心理療法の効果に最も大きな影響があるのは『カウンセラー・治療者が患者のことを気にいるかどうかである』と語っている。

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[精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1]

精神医学におけるクライエント(患者)の多面的理解と治療方針の見立て:1

クライエントの自己理解を『乳幼児期から現時点までの生活歴・感情と記憶』を踏まえて、『連続的かつ内省的な経験の流れ』に位置づけていき、その流れ中のどこまでが健康(正常)であり、どの時点の辺りから精神病理が出てきたのかを評価していく。

正常な精神機能や心理状態が病態化してきた時期と原因を探っていくのだが、クライエントによっては老年期になるまでは自己評価と社会適応が非常に良かったのに、老年期になって自分をサポートしてくれた配偶者を亡くして対象喪失の悲哀感・孤独感から深刻なうつ病(気分障害)を発症してしまうような人も少なくない。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

次に、クライエント(患者)がどのような理由や経緯で、精神科を受診して心理面接を受けるようになったのか、精神科の面接・治療・カウンセリングにどのようなニーズや期待を持っているのかについてもそれとなく聴いていくようにすると、『治療の段階的な目標設定』がしやすくなる。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか2:クライエントの知的能力とライフサイクル

力動的精神医学の精神療法では、『自分の記憶・感情・体験』を振り返って再構築したり言語化したり解釈したりしていくだけの抽象的な思考力や言語的な運用力、比喩(メタファー)の理解力などが必要だからである。治療的に効果のある内面的・内省的な自己探求を心理面接(精神分析的な面接)で行っていくには、一定以上の言語的・知的な能力や情緒の豊かさ・意思の強さのようなものが求められてくるということでもある。

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神疾患で最も言語的コミュニケーションに問題が発生しやすい統合失調症の診断的面接においてさえも、心理的資質(psychological mind)という概念に象徴される『患者(クライエント)の資質・能力・態度・意欲』は治療の見通しにとってかなり大きな影響力を持っている。

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[精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質]

精神医学の診断的面接はどのように行われるか1:クライエントの心理的資質

精神医学の診断は『記述的診断』『精神力動的診断』を組み合わせることによって、クライエント(患者)の心理社会的な状態像を理解して、今後の治療方針の選択を含む『見立て』をすることができる。

現代の精神医学の診断と治療ではクライエントを網羅的かつ統合的に理解するために、その原因を多角的に考える『生物−心理−社会モデル(bio-psycho-social model)』が採用されている。

初回面接(インテイク面接)では、クライエント(患者)が精神科医と治療同盟(作業同盟)を構築していくだけの『精神機能の正常性・治療的対話の応答性』がどれくらいあるかのチェックも行われる。精神科医やカウンセラーの考える治療方針に協力的・参加的であるかどうかと合わせて、心理アセスメントにおける診断的面接と心理検査(心理テスト)に協力的かどうかということも重要になる。

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