2017年05月17日

[R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)の『愛のトライアングル理論』:親密さ・情熱・コミットメント+決心]

R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)の『愛のトライアングル理論』:親密さ・情熱・コミットメント+決心

R.J.スタンバーグ(R.J.Sternberg)『愛のトライアングル理論』を提示して、人間の恋愛経験は三角形の頂点(角)のように『3つの要素』から構成されているとした。R.J.スタンバーグのいう恋愛経験の3要素とは、『親密さ(intimacy)』『情熱(passion)』『コミットメント・決心(commitment, decision)』の3つである。

親密さ(intimacy)……二人の間の緊密さ、密着性、居心地の良さ、結合度の強さであり、二人がそれらを相手に対して実感として感じているということである。親密さのあるカップルは、相互的な自己開示を行っていて、相手への好意・評価・賞賛の思いを抱いており、親密なコミュニケーションを繰り返す傾向が見られる。

情熱(passion)……恋愛関係のプロセスで生じる強い感情・情動であり、『相手と一緒にいたい・相手を自分のものだけにしたい・相手と素敵な時間を共有したい・相手と性的なスキンシップをしたい・相手とロマンティックな雰囲気を楽しみたい』などの欲求と合わさって感じられるものである。情熱を感じているカップルは、相手とのロマンティックな関係を求めて楽しみ、相手に対して性的魅力・身体的魅力を感じている傾向がある。自尊心や擁護、安心、親和、支配と服従などの感情・関係も関わってくる。

コミットメント・決心(commitment, decision)……短期的にはその相手のことを愛して大切にしようとする決意であり、長期的には愛のある相手との素晴らしい関係を頑張って維持していこうとするコミットメント(自己関与)のことである。

『親密さ(intimacy)』『情熱(passion)』『コミットメント・決心(commitment, decision)』の3つの要素のバランスが取れているほど理想的な恋愛関係と言えるが、どれか1つの要素だけが突出していて他の2つの要素がない関係は恋愛とは異なる別の関係性に移行しやすくなるとされる。2つの要素が結びつくと、それぞれ特徴的な恋愛関係が成り立つようにもなる。

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2017年04月27日

[J.A.リー『恋愛の6類型論』とそれぞれの恋愛タイプの特徴]

J.A.リー『恋愛の6類型論』とそれぞれの恋愛タイプの特徴

J.A.リー(1973)やヘンドリック&ヘンドリック(1986)などに依拠する『恋愛の6類型論』では、恋愛の類型(タイプ)を『エロス(情熱的な愛)・ルーダス(遊びの愛)・ストロゲー(兄弟愛・友愛)・プラグマ(実利的な愛)・マニア(熱狂的な愛)・アガペー(無償・献身の愛)』の6つに分類している。

エロス(情熱的な愛)……恋愛を人生のすべてととらえるようなロマンティックな恋愛、相手の外見に一目惚れしたり性的魅力に惹き込まれる恋愛。

ルーダス(遊びの愛)……恋愛を楽しいゲームのようにとらえるような遊びの恋愛、相手に執着せず深い付き合いをしない、軽い複数の相手との恋愛。

ストロゲー(兄弟愛・友愛)……激しい感情ではなく穏やかな友情に近い恋愛、相手との信頼・友好を深めていき気づいたら恋愛になっているような関係。

プラグマ(実利的な愛)……恋愛を目的ではなくメリットを求める手段として考える、社会的経済的な実利の要因によって恋愛相手を選択する。

マニア(熱狂的な愛)……嫉妬・執着・悲哀の激しい感情を持ち、独占欲の強い熱狂的な恋愛。

アガペー(無償・献身の愛)……見返りを求めず自己犠牲も厭わない無償の献身的な恋愛、普遍的な愛情。

6つの恋愛類型の測定尺度を用いた大学生を対象にした統計的研究では、女性に実利・結婚のプラグマの傾向が強い結果が出ている。楽しみ・遊びのルーダスについては日本では女性のほうが強いが、米国では男性のほうが強くなっていて文化差が想定される部分もある。

1990年代には現代の若者の恋愛では、独占欲や嫉妬・執着といった要素が前面に出やすいマニアが強い傾向があるとされていたが、2000年代以降には恋人がいない若者の比率が増えて『若者の恋愛離れ・恋愛格差』が指摘されることも増えている。

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[恋愛心理の“Love(愛情)”と“Like(好意)”の違い:他者に対する好悪感情の質]

恋愛心理の“Love(愛情)”と“Like(好意)”の違い:他者に対する好悪感情の質

一般的な恋愛関係・恋愛心理でも『ラブ(love)とライク(like)は違う』と言われることはあるが、その場合には『ラブ(love)のほうがライク(like)よりも愛情が深くて、相手のために生きる重みがある』といった意味合いが込められている。

恋愛心理学では、ライク(like)は『ただ好きなだけの好意』とされ、ラブ(love)は『異性に対するロマンティックな愛情』とされることが多い。こういったラブとライクを区別する定義を行って心理測定尺度の『love-liking尺度』を作成したのは、心理学者のZ.ルビン(Z.Rubin)である。

『love尺度』は付き合っている恋人のほうが友人よりも高い点数となるように調整され、『liking尺度』は付き合っている恋人と友人との間であまり点数の差がない(あるいは友人のほうが少し高くなりやすい)ように調整されている。

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[恋愛に対する態度(一般的な認識)の心理テスト:恋愛至上主義・結婚・理想]

恋愛に対する態度(一般的な認識)の心理テスト:恋愛至上主義・結婚・理想

恋愛・愛情をどのようなものと捉えて評価するかは、特定の他者に対する好悪感情(好きか嫌いか)とは異なるものである。恋愛・愛情をどのようなものと捉えて評価するかは、『恋愛の一般的な認識・意味づけ』と相関している。恋愛に対する態度は、恋愛をロマンティックな陶酔・熱中するものと見なすか、結婚・経済生活につながる実際的・実利的なものと見なすかによって大きく変わってくる。

B.ムンロとG.R.アダムス(B.Munro&G.R.Adamas,1978)にはロマンティックラブに関連する心理測定尺度の研究があり、『ロマンティックな理想』『ロマンティックなパワー』『結婚ー合理的な愛』の3因子の尺度を上げている。シュプレッカーとメッツ(S.Sprecher&S.Metts,1989)はロマンティックラブと恋愛のパワーに焦点を当てて、『恋愛の障害を越える力強さ』『真の恋愛は一つで一度きり』『理想の恋愛の相手や関係』『恋愛の一目惚れ』の4因子の尺度を上げている。

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2017年04月20日

[対人魅力(interpersonal attraction)の心理学:『好意・愛情』の心理測定尺度の研究の歴史]

対人魅力(interpersonal attraction)の心理学:『好意・愛情』の心理測定尺度の研究の歴史

『対人魅力(interpersonal attraction)』とは、個人が他者に対して抱く肯定的あるいは否定的な評価(認知・感情)のことである。他者に対して抱く肯定的な感情の代表として『好意・愛情・安心・友好・美感』などがあり、否定的な感情の代表として『嫌悪・侮蔑・不安・不快・憎悪』などがある。

他者を見る時や他者と接したり対話する時には、対人魅力とも関係した好悪の感情を感じやすい。近年の研究では『対人魅力の認知的側面』よりも『対人魅力の感情的側面』に焦点を当てたものが多く、『親密な人間関係(close relationships)』にまつわるシンプルな意識調査形式の研究が増えている傾向がある。

個人が他者に対して抱く肯定的な感情の代表である『好意・愛情』については、『人が好意・愛情をどのように捉えているかの態度』『個人が特定の他者に向けて抱いている実際的な態度』を区別して考えることになり、『好意と愛情の質的差異』に着目した心理測定尺度の研究も多い。

グロス(1944)は恋愛における『ロマンティックな態度』『現実的な態度』を区別した古典的な『ロマンティシズム尺度』の80項目を作成したが、ホバートはこれを12項目の尺度に短縮し、ノックスとスポラコフスキー(1968)は85項目からなるロマンティシズム尺度を新たに作って、恋愛には『ロマンティックな態度』と『現実的な態度』の区別があることを再び確認している。

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[ウェブ・コミュニケーションにおける印象評価尺度(心理テスト)]

ウェブ・コミュニケーションにおける印象評価尺度(心理テスト)

対人コミュニケーションには、相手と直接会って顔を見ながらやり取りする『対面コミュニケーション』と相手と会わずにインターネット(ウェブ)・電話・手紙などでやり取りする『非対面コミュニケーション』がある。現代では特に、インターネット(ウェブ)でSNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)を介した非対面コミュニケーションをする頻度が急速に増えている。

インターネットのコミュニケーション(ウェブ・コミュニケーション)

代表的なSNSには、facebookやtwitter、Line、mixiなどがあるが、同じSNSを使ったウェブ・コミュニケーションでも、既に知り合いである友人知人とのコミュニケーションと実際には会ったことがないウェブ上だけの知り合いとのコミュニケーション(あるいはその場だけの匿名者同士のやり取り)ではまた意味合いが異なってはくる。

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[パーソナリティー特性(人格特徴の特性形容詞)の心理測定尺度(心理テスト)]

パーソナリティー特性(人格特徴の特性形容詞)の心理測定尺度(心理テスト)

他者のパーソナリティー(人格特性)を認知する時に用いる判断のフレームワークのことを『対人認知構造』という。対人認知構造の基本次元には『親しみやすさ』『社会的望ましさ』『活動性』の3つがあるが、人間のパーソナリティーの特性・特徴の多くは『形容詞(二項対立的な形容詞)』で表されることが多い。

パーソナリティー特性を形容詞で表現する心理測定尺度は、『相手がどの次元のパーソナリティー特性を強く表出しているか』や『自分が相手のどの次元のパーソナリティー特性に重みづけをして見ているか』などを知ることができる。

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2017年04月09日

[アスペルガー障害のADHD的な不注意(注意散漫)と感情のセルフコントロールの弱さ]

アスペルガー障害のADHD的な不注意(注意散漫)と感情のセルフコントロールの弱さ

アスペルガー障害にはADHD(注意欠如・多動性障害)にも似た『不注意(注意散漫)・集中力の低さの特徴』が見られることがあり、一つの物事や対象に注意力を集中できないことが『実行・遂行機能の低さ』にもつながっている。遂行能力(実行能力)というのは、特定の課題に注意を集中して段取りをつけながら確実にやり遂げていく能力であるが、アスペルガー障害ではこの遂行能力が低くなりがちで、一つの仕事や課題を期日までにきちんとやり遂げることが一般にかなり苦手である。

アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴

ADHDの人との類似したアスペルガー障害の特徴として、『一つの物事に注意を集中できない・計画的に課題の遂行をすることができない・レポートや宿題などを忘れずに期日までに遂行できない・整理整頓や片付けをすることが非常に苦手である(部屋・机の上が乱雑に散らかりやすい)』といったことも上げることができるだろう。アスペルガー障害の人には、幼児期から児童期にかけてADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けたことのある人も含まれている。

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[アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴]

アスペルガー障害の動作のぎこちなさ・非言語性学習障害と外見的な容姿(風貌)の特徴

アスペルガー障害の人は、知能の発達水準・発達速度に対して運動神経系の発達が遅れがちであり、一般に不自然に見える機械的な動きをしたり、書いた文字が年齢不相応に汚かったり、ボール遊び・着替え・食事作法などが異常に苦手だったりと『動作のぎこちなさ・運動能力の低さ・言葉の発音の拙さ』が目立ちやすい。

アスペルガー障害の感覚過敏性とマルチタスクの苦手さ

総じて手先・動作が不器用な印象を与えることが多く、学校の科目でいえば体育・図工・家庭科・技術などの実技科目が苦手な傾向が強い。特にサッカーや野球、バスケットボールといった他者とのコミュニケーションやチームワークが必要な団体競技は苦手であることが殆どである。

アスペルガー障害の問題として、他者の意図や感情を推測できない『心の理論の障害』を前提にする『コミュニケーション障害』が上げられるが、アスペルガー障害の人が特に苦手で学ぶことができないのは、『表情・態度・ジェスチャー・状況・文脈』から相手の意図を読み取る『ノンバーバル・コミュニケーション(非言語的コミュニケーション)』である。ノンバーバル・コミュニケーションは幼少期からの対人関係や日常生活を通して自然に学習が進められていくものであるが、その学習が適切に進まない障害のことを『非言語性学習障害(NLD:Nonverbal Learning Disability)』と呼んでいる。

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[アスペルガー障害の各種の特徴と感覚過敏性の影響]

アスペルガー障害の各種の特徴と感覚過敏性の影響

アスペルガー障害を含む自閉症スペクトラムに見られる特徴として、以下のようなものがある。アスペルガー障害と自閉症(高機能自閉症は知能発達の遅れはないが)の大きな違いは、『言葉・知能の発達の遅れがないこと=言語的・論理的・抽象的な能力が平均以上に高いこともある』である。

1.五感の感覚刺激に対する感覚過敏性。

2.非言語性学習障害(NLD)

3.動作がぎこちなくて運動が苦手

4.実行・遂行機能の低さ

5.ADHD(注意欠如多動性障害)と類似した不注意・多動の問題。

6.空想・夢想に耽溺しやすい、(直接の対人関係よりデジタルな反応・刺激・成果を好んで)ゲーム依存症・ネット依存症になりやすい。

特徴の一つとして『感覚過敏性』がある。『視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感の感覚』で感じ取る『光・音・におい・味・触感』に対する過敏性がでやすいのだが、視覚が過敏だと視野の範囲で動くものがあれば集中できず、白地に黒の文字で書かれた文書はコントラストが強すぎて非常に読みづらく感じたりする。

聴覚が過敏なタイプだと、掃除機・洗濯機・炊事などの生活音にも敏感に反応して苦痛を感じたりイライラしやすく、普通の人にとっては心地よいメロディーである飲食店の小さな音量のBGM(歌謡曲)などもうるさいノイズに感じて落ち着くことができない。味覚も好き嫌いが激しい偏食の傾向があり、『食べられるもの』と『食べられないもの』の違いがはっきりしていることが多い。

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