2016年08月21日

[記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解]

記述的診断と精神力動的診断2:力動精神医学(力動心理学)によるクライエントの内的世界の理解

精神分析と重なる分野の力動精神医学(力動心理学)では、クライエントの内的世界にある複数の心理機能(心的装置)の力が相互にせめぎ合っているという考え方を通して、現在のクライエントの精神病理や心理状態のプロセスを理解していくことになる。

精神力動的診断では、クライエント(患者)はマニュアル診断を受ける受動的な対象ではなく、『生物学的・心理的・社会的に統合されたホリスティック(全的)な存在』として定義されており、医師や心理臨床家(精神分析家)はクライエントの人生のプロセスや内面世界の力の葛藤をできるだけ共感的に理解しようと努めるのである。実際の精神医学の診察場面(面接場面)では、どちらか一方だけの診断方法が採用されるのではなく、記述的診断と精神力動的診断が組み合わされて適用されることが多い。

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神疾患・精神障害の診断を実施する主体は精神科医であることが多く、心理臨床家(臨床心理士)は心理テストの結果を分析して参考情報を呈示するなどの補助的役割になることが多い。クライエント(患者)の内面世界や人生のプロセスを、その人の立場に立って全人的に理解しようとする精神力動的診断の手法は、臨床心理学の心理アセスメント(心理検査+調査的面接)とも重なり合う部分が大きいという特徴がある。

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[記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論]

記述的診断と精神力動的診断1:クライエントの状態像(健康度・病態)を知るための方法論

精神医学的な診断方法は大きく分けて、『記述的診断』『精神力動的診断』の二つがある。記述的診断とは、身体疾患を診断・治療する身体医学を参照した『一般医学的な診断のフレームワーク』であり、観察可能な症状を中心にして患者の精神疾患を分類・診断していく。

エミール・クレペリンに始まる『記述精神医学』の診断方法でもある記述的診断は、まず患者が発症している観察可能な症状を特定する。その症状の原因が何であるのかの合理的な推測に基づく精神疾患の見立てをして、精神病理学(異常心理学)の精神疾患の分類に従った診断を行い、治療方針を決めていくのである。

記述的診断の基本は、クライエントの症状を詳しく正確に観察して記述すること、記述された症状を一定のルールや基準に従って分類することであり、『観察と記述・疾病分類』に依拠して診断を行っていく。

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2016年08月12日

[EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化]

EU(欧州連合)の世界連邦国家建設の理想と現実:20世紀の冷戦の終焉と世界情勢の変化

20世紀の冷戦体制の一翼を担ったソ連・東欧の『共産主義・社会主義の政治体制』は、民衆による信頼や合意を喪失して民衆を抑圧し苦しめたという意味では、『全体主義・独裁体制・先制主義(デスポティズム)の恐怖政治』と同類のものになってしまった。共産主義革命によって、資本主義の支配や先制的支配から解放されて自由・平等になったはずの人民が『恐怖の情念・自由の抑圧・飢えの苦しみ・人間不信(密告社会)』を味わわされる羽目になったのである。

ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会

アメリカとソ連が対峙する冷戦体制が崩壊して、一時期は世界で唯一の超大国(スーパーパワー)となったアメリカが世界各地に影響力と軍事拠点を拡大して反米政権・石油資源国に対する内政干渉を繰り返していった。

だが、アメリカは『湾岸戦争・米国同時多発テロ(9.11)・アフガン戦争・イラク戦争・アラブの春(リビアのカダフィ独裁政権打倒)・シリア戦争』などを経験していく中で、『中国の大国化・ロシアとの対立』と合わせて超大国としての影響力を相対的に落としており、アメリカとEU諸国は『テロとの戦い・イスラーム圏との不協和音(イスラム過激派の反米的な思想・攻撃)』に疲弊してきている現状がある。

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[ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会]

ソ連はなぜ崩壊したのか?2:計画経済の失敗と飢え・自由の抑圧と密告社会

ソ連崩壊の決定的な要因は、アメリカに対抗するための終わりなき軍拡による財政赤字の累積と計画経済の需給計算の失敗(軍事に予算が取られ思っていたよりも食料が十分に生産できなくなったこと)によって、国民の生活の基盤にある『食料の配給体制』が機能不全に陥ったことである。

ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家

国民の食料の需要に対して計画経済の集団農場で生産される食料の供給が圧倒的に不足したことであり、ソ連末期には配給所で一日行列に並んで待ってもパン一つ、じゃがいも一個のような配給しか受けられなくなり、その必然の結果として、飢えと貧困による国民の反体制感情は極めて強くなっていった。配給所の行列の長さ、そこで配給される食糧の乏しさというのが、旧ソ連の管理的な計画経済体制の失敗の現れであり、マルクス主義を盾にして『無謬(間違うことなどない)』とされていたエリート官僚の計画経済運営の大きな間違いの具現化でもあった。

共産主義・社会主義はマルクス主義の唯物論(史的唯物論)の影響を受けいているため、人民を理想の共産主義社会を実現するために共産党のエリート官僚の指令・命令にただ従って働くだけの『モノ・事物(システムを構成する要素)』と見なしやすく、『人間の思想信条・表現・内面の自由』が不当に否定されてしまうのである。

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[ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家]

ソ連はなぜ崩壊したのか?1:マルクス主義の唯物論と人権抑圧の収容所国家

共産党やエリート官僚が『思想的に無謬』であるという前提が置かれたことで、共産党やエリート官僚の指令に逆らう者は『国家反逆罪の犯罪者』『判断能力のない精神障害者』『西側(敵国)のスパイ』とされてしまうことになり、監獄・精神病院(閉鎖病棟)・労働収容所などに閉じ込められる『人権抑圧の収容所国家の構造』ができてしまった。

マルクス主義の最大の欠陥は、国家の構成要素である国民(民衆)までも『唯物論の対象』にしてしまってその欲望や内面を無視したことであり、共産党独裁の圧政や使役によって『人間的自由の空間の否定』をしたことであろう。

『私的所有権の否定』『生産手段・産業の国有化』によって、人間さえも自己所有権を否定された国家所有の唯物論的な対象にされてしまう。人間も労働力やその再生産の単位として『共産党独裁体制の支配と管理』に直接的に晒されることとなり、最低限度の生活保障以外の人間的な自由・権利・表現の多くを剥奪されてしまったのである。

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2016年08月11日

[ソ連・東欧の共産党の政治経済体制はなぜ崩壊したのか?:ソ連型の計画経済とエリート官僚の過ち]

ソ連・東欧の共産党の政治経済体制はなぜ崩壊したのか?:ソ連型の計画経済とエリート官僚の過ち

1989年から始まったソ連崩壊へとつながっていく東欧からの政治変革は、『民衆の帰趨(きすう)』が共産主義・社会主義の独裁体制を許さなくなったことの現れであり、個人の自由の抑圧だけではなく衣食住の枯渇(最低限の食料にさえ事欠く配給)も引き起こした共産主義体制を民衆が拒絶したということである。

『世界の警察』となった超大国アメリカの単独主義外交:9.11の米国同時多発テロ

共産主義・社会主義の計画経済体制を理想とした『マルクス主義』という政治思想のアクチュアルな課題は、『人民を自由かつ平等にすると謳った共産主義体制への民衆の同意・参加』であったが、ソ連崩壊はこのアクチュアルな課題の達成が現実的に殆ど不可能であることを示したのだった。

共産主義を目指すソ連の官僚(テクノクラート)は、資本主義の市場原理とは異なる『計画経済・管理経済』の指令型経済運営を行おうとしたが、これは社会全体で必要な物資の総量を官僚が事前に計算して、必要なだけの分量の生産をノルマを割り当てて計画的に行っていくというものであった。

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[『世界の警察』となった超大国アメリカの単独主義外交:9.11の米国同時多発テロ]

『世界の警察』となった超大国アメリカの単独主義外交:9.11の米国同時多発テロ

ソ連というライバルを失って世界の超大国(スーパーパワー)となったアメリカは、『世界の警察』を自認してアメリカ中心の世界秩序を再構築するための軍事・外交政策や内政干渉を積極的に行うようになっていく。アメリカの味方なのか敵なのかの判断基準は、『民主主義・自由主義・人権尊重・親米政権(あるいは米国の市場拡大や資源獲得)』のいずれかに合致しているかいないかである。

ゴルバチョフとソ連崩壊:米ソ冷戦の終結による世界秩序の不安定化

反米の独裁国家や人権侵害の宗教国家、テロリスト擁護のイスラム国家などは『米国の敵(世界秩序の紊乱者・テロ支援国家・人権抑圧国家)』と見なされて、アメリカの指令や要請に従わなければ(拒否権を持つ常任理事国は別だが)『国連決議後の経済制裁・軍事制裁』を受けやすくなった。世界最強の軍事力を背景にして『世界の警察』として支配的に振る舞うアメリカは、1990年のイラクのフセイン政権のクウェート侵攻に対し、国連決議を経て国連軍を結成して『湾岸戦争(1991年)』を戦った。

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[ゴルバチョフとソ連崩壊:米ソ冷戦の終結による世界秩序の不安定化]

ゴルバチョフとソ連崩壊:米ソ冷戦の終結による世界秩序の不安定化

20世紀末の世界情勢における最大の出来事は、ソ連を領袖(リーダー)とする共産主義・社会主義の東側陣営の崩壊であった。1989年5月には中国で民主化運動の学生・市民らを虐殺する『天安門事件』が起こり、1989年11月には東西ドイツを分離していた『ベルリンの壁』が崩されて東欧革命が次々に起こった。ルーマニアの苛烈な支配を行う独裁政権だった『チャウシェスク政権』も、ソ連に見放される形で1989年12月に倒された。

東ドイツの崩壊という象徴的な事件によって始まった東欧革命は、遂に共産主義運動の総本山であるソ連(ソビエト連邦)にまで波及していき、1991年12月にミハイル・ゴルバチョフ大統領がソ連の共産党を解散すること(=ソビエト連邦解体)を宣言した。

ソ連はゴルバチョフ大統領の指導の下で、政治経済の抜本的改革のための『ペレストロイカ(改革)』『グラスノスチ(情報公開)』を断行して、財政破綻に陥っていたソ連経済の立て直しと政治体制の民主化を図ろうとしたが失敗した。

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2016年07月26日

[セルジュ・モスコヴィッシ(Serge Moscovici)の『群衆の時代』と自由論:西欧的デモクラシー(民主主義)と専制主義]

セルジュ・モスコヴィッシ(Serge Moscovici)の『群衆の時代』と自由論:西欧的デモクラシー(民主主義)と専制主義

基本的人権の尊重や結果の一定の平等(財の再配分)を導こうとする『政治権力による自由=積極的自由』は、時に集団全体の目的や利益のために『個人の自由の剥奪・制限』を引き起こすことがある。つまり、積極的自由という言葉とは裏腹に、『不自由な専制主義・抑圧体制』を正当化してしまうリスクを併せ持っているのである。

人間の労働による自己形成と労働からの解放2:AI(人工知能)によるシンギュラリティーへの到達

ルーマニア出身のフランスの社会心理学者であるセルジュ・モスコヴィッシ(Serge Moscovici, 1925-2014)は、著書『群衆の時代』の中で、西欧的デモクラシー(民主主義)が西欧的専制主義に転換する危険性について指摘している。

理性的な自由でもある『積極的自由(権力による自由や権利の実現)』は、個人を抑圧する不自由(正しい全体主義的な政策に個人を従属させる)へと容易に転換する。それと同じように、『選挙の多数決』を意思決定原理として採用するデモクラシー(民主主義)もまた、群衆の感情・利害の対立によって反対者(秩序紊乱の同意しない者)を黙らせるための専制主義へと堕落してしまう危険性を内包しているとモスコヴィッシは語る。

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[人間の労働による自己形成と労働からの解放2:AI(人工知能)によるシンギュラリティーへの到達]

人間の労働による自己形成と労働からの解放2:AI(人工知能)によるシンギュラリティーへの到達

消費主義文明が主流となった近代社会では、人々の自意識も『生産者・労働者』より『消費者・享受者』に傾きやすくなり、労働そのものも経済合理的にリストラされたり、自尊心や動機づけ(モチベーション)を保ちにくいような『労働の商品化・道具化(企業利益を最優先する非正規化・細分化)』が行われやすくなっている。

人間の労働による自己形成と労働からの解放1:消費主義文明

20世紀以前の『労働(職業)』は、個人と人類の『役割分担・自己形成・自己実現=労働道徳の実践』という重要な役割を半ば必然的な義務として担ってきたわけだが、『労働の商品化・道具化・非正規化』『非労働者階層の増加(資産家・経営者・投資家・ノマドワーカー・ニートなど)』は旧来的な人間にとっての労働の位置づけを大きく変える動きを見せている。

アメリカの発明家・フューチャリスト(未来思想家)のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil, 1948-)は、人工知能が人間の知能・能力を超える時点を『シンギュラリティー(技術的特異点)』と呼んでいて、カーツワイルはシンギュラリティーが2045年に起こると予測している。シンギュラリティーに到達して『AI(人工知能)・ロボット』が自己組織化的な進化を継続するようになると、人間の労働機会が大きく損なわれる可能性も指摘されている。

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