2017年01月27日

[ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性]

ハンス・アスペルガーがアスペルガー障害に見た知能・言語能力の高さと知的職業の適応への可能性

L.ウイングが、アスペルガー障害を含む自閉症スペクトラム(自閉症の連続体)の中核症状として定義したのが『ウイングの3つ組』である。ウイングの3つ組とは、『対人関係の障害(社会性の障害)・コミュニケーションの障害(言語機能の発達障害)・イマジネーションの障害(こだわり行動と興味の偏り)』の3つの特徴的な自閉症スペクトラムの問題のことである。

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

アスペルガー障害にありがちな誤解・偏見として、『人間的な情緒・感情がまったくない』や『人間の個別的な特徴を理解することができない』があるが、実際にはアスペルガー障害の子供も親への愛着を形成しており、親と離れていると寂しさや孤独感(ホームシック)を訴えることはあるし、動物好きで熱心にペットの遊び相手や世話をしたりすることも少なくない。客観的な人間観察をすることでその相手がどのような特徴を持っているかを正確に分析することもできることがあり、人間個人のさまざまな特徴や傾向について全く理解できないというわけではない。

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[ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案]

ローナ・ウイングのアスペルガー障害の再発見と自閉症スペクトラムの提案

1943年に、オーストリア・ハンガリー帝国生まれのアメリカの精神科医レオ・カナー(Leo Kanner,1894-1981)が、社会性(対人関係)やコミュニケーション(言語能力)が強く障害されて社会生活が困難になる『カナー型自閉症(知的障害を伴う低機能自閉症)』について論文で発表している。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

翌1944年、ハンス・アスペルガーは現在のアスペルガー障害に該当する発達障害の一群のことを『自閉的精神病質』という疾病概念で紹介している。自閉的精神病質の特徴は『共感能力の欠如(人の気持ちや態度が分からない)・友人関係を作る能力の欠如・一方的に話し続ける会話(心の理論の障害)・特定の興味関心への極めて強い集中(固執)・ぎこちない動作』などであった。レオ・カナーの自閉症と比較すると、自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)には『知的障害・言語障害(言語発達の遅れ)がない』という違いが見られた。

自閉的精神病質(後のアスペルガー障害)の症例について書かれたH.アスペルガーの小児精神医学の論文(1944年)は長きにわたって多くの人々に知られることはなかったが、イギリスの女性精神科医ローナ・ウイング(Lorna Wing, 1928〜)が1981年に、H.アスペルガーのドイツ語で書かれた論文の内容を英語圏に翻訳して紹介したことから英米の研究者・人々にも広く知られるようになっていった。

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[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:2

フリッツ・Vは、幼児期になると友達と上手く遊べないとか友達と一緒の場に参加できない、他人に興味を示さない、気に入らないと相手を叩く(気に入ると急に抱き着く)、他人との距離感がないなどのアスペルガー障害(自閉症スペクトラム)に特有の『社会性(対人関係)の障害』が目立ってきたのである。

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

知能が高くて言語能力・計算能力(数字の概念)の発達も早かったのに、『他者との関係性・距離感を踏まえた適切なコミュニケーション』ができず『相手がどう感じているか何を考えているかを推測して対応する能力(心の理論と呼ばれる共感と推測の能力)』も著しく低かった。

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[ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1]

ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)の『フリッツ・Vの症例』とアスペルガー障害:1

オーストリアの精神科医ハンス・アスペルガー(Hans Asperger, 1906-1980)は、1944年にアスペルガー障害(アスペルガー症候群,Asperger disorder)について発表した。アスペルガー障害発見のきっかけになったのは、ドイツがオーストリア侵攻をして第二次世界大戦が始まろうとする混乱期の1939年に診療した『フリッツ・Vの症例』であった。

第一次世界大戦で敗れてからのドイツとオーストリアは、英仏の戦勝国への賠償金の支払いなどによるインフレと失業で経済が疲弊して、親から捨てられて何の保護や教育、医療も受けられない不遇な子供達が溢れていた。この社会混乱の時期にハンス・アスペルガーは、提唱者である医師のエルヴィン・ラツァールらと共に『クリニック併設のデイセンター(生活支援施設)』の運営に参加していたのである。

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2017年01月04日

[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と精神分析の診断面接・抑圧による神経症:4

精神分析の『自由連想・夢分析』といった技法では、その『初期の欲動』が何だったのかを明らかにし、その欲動・願望の存在を本人に受け容れさせることで神経症の症状が和らいでいく(欲動を無理に症状に置き換える必要がなくなっていく)のである。精神分析の『欲動(drive)』には、さまざまな形態・表象・内容に変形することのできる特徴とその変形の心的プロセスがある。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

フロイトが創始した精神分析というのは『欲動の変形の心的プロセスの意識化・言語化』を治療機序にしているといえるだろう。精神分析というのは精神症状・夢・空想(白昼夢)の意味を読み取る臨床的な理論・技法であり、その治療機序(治療メカニズム)は『抑圧・変形されている初期の欲動や願望』を明確化していき、本人が道徳的・常識的に認めたくなかった初期の欲動の存在を受け容れさせることである。道徳的・社会的に禁圧されていた欲動・願望を自分が持っていたと認めることによって、症状が治癒する可能性が高まるというのが精神分析の基本的な考え方になっている。

精神分析的な診断的面接では自我の欲動のコントロール機能を判定していくが、道徳的・社会的に認められない欲望の満足を空想する時に、どのような『罪悪感・羞恥心・道徳的批判・周囲からの非難などに対する葛藤』が体験されているかを丁寧に傾聴していくことになる。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力とフロイト時代の神経症:3

精神分析(力動心理学)を前提とする力動精神医学の診断的面接では、患者(クライエント)の自我による『欲動コントロールのレベル』について判定していく。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2

精神分析(力動心理学)では、『欲求(want)』を心理的・意思的に欲するものとし、『欲動(drive)』をより生理的・本能的なもの、『欲望(desire)』をジャック・ラカンのいう他者の欲望を欲望するもの(他者から求められたいと思うもの)として区別している。

欲動コントロールのレベルは、自我が欲動を満足させる行為をどのくらい延長できるか、フラストレーション(欲求不満)にどこまで耐えられるかということである。自我の健康度が高いほど、欲動の制御をより柔軟に行うことができるようになり、現実的な条件やハードルに応じて調節することもできる。自我による欲動のコントロールのレベルは『随意的・自律的なコントロールの程度』によって規定され、自我機能の全体的評価の一部を形成している。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と思春期の男女の精神疾患:2

近年は、男性と女性の『ジェンダーレス化・中性化』が進んでいて、若年層の男性では自分がイケメンかどうかなどの格好良さ・綺麗さの美醜(見た目)に女性同等にこだわる人も増えている。そのため、思春期の男性では、外見や肥満のコンプレックスから摂食障害や適応障害、境界性パーソナリティー障害、社会不安障害(対人恐怖症)といったかつては思春期の女性に多かった症例も少なからず見られるようになっている。

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1

狂気的な見捨てられ不安やしがみつき(過度の依存性)が強まると、それまで親身になって心配してくれていた親友・恋人なども手に負えなくなって途中で逃げ出してしまうことが多い。そうなると更に境界性パーソナリティー障害の人の悲しみ・孤独感・怒りが強まっていき、もっと他者にしがみつこう(自分のすべてを受け容れてもらって助けて欲しい)として敬遠されるという悪循環が繰り返される。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の問題の中心には、『自分の感情・気分(欲動が根底にある感情)のセルフコントロールの低さや不全』があり、境界性パーソナリティー障害の人は上記したように自傷行為や口論などで他者を無理やりに巻き込んで、他者とのトラブルを通して自分の気分・感情を処理しようとするところがある。

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[自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1]

自我による欲動(リビドー)のコントロール能力と境界性パーソナリティー障害(BPD):1

自我は現実適応(社会適応)の機能として『欲動(リビドー)のコントロール能力』を持っているが、異性への欲求や自己イメージ(能力・美醜)への囚われ、社会的選択(進学・就職)の不安が強まる『思春期・青年期』にはそのコントロール機能が低下しやすい。

特に自分の異性としての評価や他者と比べた美貌の程度を気にしやすくなる思春期の女性は、美しいか美しくないか(可愛いか可愛くないか)、痩せているか太っているかといった『自己イメージ・外見の相対評価』に囚われやすくなることで、摂食障害(神経性拒食症・神経性大食症)や境界性パーソナリティー障害(BPD)のリスクが高くなりやすい。

自分の他者に対する魅力・需要が低いのではないか、見た目やコミュニケーションの取り方が悪いのではないかといった劣等コンプレックスは、思春期・青年期に特に深刻化しやすいコンプレックスではある。また年代・性別を問わず自分と他者を比較して自分はダメだという劣等コンプレックスを持ちやすい人は、うつ病・摂食障害・適応障害・社会不安障害などの精神疾患の発症リスクが高くなりやすい。自己愛・承認欲求・強迫性・回避性・被害妄想などが絡んだパーソナリティー障害(人格障害)を発症するリスクも上がりやすくなる。

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2016年12月05日

[自我の思考過程の障害と統合失調症:2]

自我の思考過程の障害と統合失調症:2

強迫性障害の思考過程の障害では『迷信・ジンクス・儀式・慣習』に大きな影響を受けやすくなり、現実原則に反した『魔術的な思考・幼児的な全能感』に支配されたかのような不合理な観念・行動を繰り返して反復してしまうことになる。

自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1

統合失調症(Schizophrenia)に典型的に見られる思考過程の障害としては、『観念連合の障害や弛緩・無意識の一次過程の内容の意識領域への侵入(幻覚妄想の原因となる)・現在と過去の記憶内容の混乱や誤認』があり、言葉のサラダと呼ばれる支離滅裂な言語や新語造作、音韻連合などの形で『無意識過程の言語化・表面化』が起こりやすくなるのである。

統合失調症の初期症状や発病前の状態でも、投影法であるロールシャッハ・テストや精神分析の自由連想法を用いることで、上記したような『思考過程の障害』を確認できることがある。

他者に対する興味を失ったり、現実検討能力が低下したりする統合失調質パーソナリティー障害(シゾイド・パーソナリティー)では、夢・白日夢などの空想世界に没頭して、周囲の人々との現実的な交流から遠ざかり、日常生活もひきこもりがちになってしまう。

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[自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1]

自我の思考過程の障害と境界性パーソナリティー障害:1

自我機能の代表的なものとして『思考過程(思考プロセス)』があり、思考過程の能力・発達はスイスの心理学者ジャン・ピアジェ(Jean Piaget, 1896-1980)『思考発達理論(認知発達理論)』とも関係している。

自我の思考過程(思考プロセス)とは『外部の知覚』『内的な感覚・記憶・観念・表象』を一定の意味や形態を持ったイメージ・思考(言語)に構成していく心的過程(心的プロセス)のことである。この思考過程を客観的現実と照合する機能が、自我の現実検討能力(現実吟味能力)である。

思考過程の正常性と異常性を診断する時には、知能検査(知能テスト)で知的能力がどの程度あるかを測定した上で、『概念化の能力・具体的思考(具象的思考)・抽象的思考』がどのくらいまで状況や問題に即応して働いているかを見ていくことになる。

現実適応した正常な思考過程(思考プロセス)は、『論理性』が保たれているという特徴もあり、非論理的な一貫性のない主張(独断的・妄想的な論理性のない主張)を繰り返したり、具体的根拠のない支離滅裂な言動が見られたりする場合には、精神疾患を発症しているリスクが高まる。

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